絶対役立つ!おすすめの実践的脚本術!「ストーリーの解剖学」を紹介!

どんな本か?

本の帯にある通り、ディズニー、ピクサー、HBO、フォックス、ソニーピクチャーズ等が製作する作品でストーリーコンサルタント&スクリプトドクターを務めてきた著者による実践的な脚本講座を詰め込んだ本です。

タイトルには解剖学とありますが、中身はストーリーを構成している様々な要素の構造や働きを分かりやすく解説しつつ、物語の書き手が実際に”どのようにやればよいのか”を書いた濃厚な脚本創作講座です。

 

この”解剖学”と言うタイトルは、”物語は生物である”と言う著者の考え方から来ているのですが(原題もザ・アナトミー・オブ・ストーリーで、そのままです)本書の脚本講座でその考え方が一貫して通されていて、こういった類のハウツー本を過去に読んだ事があっても、なるほどと思わせてくれるかなりの良書です。

 

むしろ、この本はハウツー本をかじった事があったり、頼っているのに書けない人や、言われた通りにしているつもりなのに面白くならない、そんな人に向けて書かれています。

 

物語創作の罠

 

多くの創作者が、物語を作る時にミスを犯すと著者は説明します。

 

まず、オリジナリティを求め、物語に存在する普遍的な”型”を無視しての創作です。

多くの初心者が、いとも容易くこの罠にハマります。

自己流でも感覚的に”型”を掴んで物語を創作できる人の真似をしてしまうのですが、大半の人は上手に出来ません。

これは、料理のレシピを無視して、創作で美味しい料理を作れるかで考えれば想像しやすいと思います。

 

次に、基礎からの習得だったり、自分の足りない部分を補おうと”型”を勉強する人。

勉強ではないけど、自分の好みの作品の設定を変えてオリジナル作品として、既にある成功作品の”型”を借りて創作しようとする人。

完全自己流を諦め、面白い物語とは何かを探求する努力を各々で始めます。

自覚無自覚を問わず、自己流が駄目なら、素直に”型”を使おうと思うわけです。

レシピを見ながら料理をするか、食べた事のある料理を目指して作るので、素人の創作料理ほどの危険性は下がります。

 

ですが、著者は”型”通りに作るだけでは不完全で、多くのプロも罠の中で苦しんでいるのだと説明します。

(※本内では料理などで例えていません。念のため)

 

”型”どおりに当てはめて物語を作った事がある人なら分かると思いますが、「序破急」「起承転結」「三幕構成」等、様々な創作論がありますが、”型”を見て物語を作りたくなりませんか?

 

ここで著者は、”型”を使って物語を作る方法を教えつつ、”型”を使う時に陥る罠をセットで教えてくれます。

そこで出てくるキーワードが”自然”です。

 

自然を心がける大切さ

”型”を効率よく使って物語を作ろうとする時によく落ちる罠が、穴埋め戦法です。

「このタイミングで、型通りならこれが起きなければいけない」等と考えて、型に入れたのに物語がイマイチしっくり来ない時があると思います。

 

穴埋めは楽です。

それに場合によっては、かなり有用です。

ですが、物語で穴埋めをする場合は優先すべきは”型”ではなく、”アイディア”だと著者は主張します。

 

どういう事かというと、アイディアありきで型にはめるのは、料理で言うと素材を見てから最適な料理に調理すると言う事になります。

ですが、型ありきで型にハマりそうなアイディアを探すのは、料理で言えばレシピを見ながら食材を探す事になります。

 

ここでポイントなのは、アイディアと言うものが”あなたの頭の中”に大いに依存している事です。

言ってしまえば、冷蔵庫の食材は限られています。

 

アイディアなんて無限に湧いてくるなんて人もいるかもしれませんが、それはそれで問題があります。

型ありきで考えると、どちらにしても必要なアイディアは、”型にマッチするアイディア”だからです。

 

罠の意味が分かったでしょうか?

 

物語を創作すると言う一見ですが形の無い作業をしていると、可能性は無限大だし、何でも作れると錯覚してしまいます。

 

ところが料理で例えると、可能性は無限大かもしれないですが、レシピと食材のマッチの重要性も同時に分かる筈です。

 

極端な話が、カレーのレシピ(例えば王道冒険もの)を見ているのに、冷蔵庫の中身がチョコレートケーキ(ラブロマンス)の材料がメインと言う事も大いにあるわけです。

もしそうなら、素直にチョコレートケーキを作るべきですよね?

 

著者は、これは型を優先して見る事で陥る初歩的な罠であり、創作の始点を型より前に自分が作りたい物語(完成イメージ)とアイディア(食材)を定めて、初めてそれにマッチする型(レシピ)に当てはめる事が重要と説いています。

その方が、自然な流れに感じませんか?

 

まとめ

 著者が訴える自然な創作法や、陥る罠の紹介は、勿論これだけではありません。

11章構成、600ページを超えるボリュームで、全編濃厚かつ丁寧に22ステップで脚本創作をリードしてくれます。

嬉しい事に、各章の最後に数ページにまで簡潔まとめられたハウツー一覧がついており、600ページ超えに尻込みしてしまう方でも重要なポイントは拾って読んでいける親切設計です。

値段が定価3000円と気持ち高めですが、間違いなくそれ以上の価値がある良書だと思います。

ちなみに日本では2017年7月28日初版発行。

 

迷える創作者から、ワンランク上の物語を作りたい人まで、

ほんとにおススメです!

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