「叶わぬ野望」とは?
ここでは「叶わない野望」をテーマにした物語を解説します。
主人公が持っている夢や野望が叶わない物語なんて面白くないと思いますか?
解説や該当作品を見れば納得されると思いますが、それは大きな間違いです。
この形式の物語は、構造カテゴリーで別の言い方をするならば「変わり者となって、人生の岐路に立たされる物語」となります。
解説
叶わない野望って?
まず、そもそも「叶わぬ野望」とは、何を指すのでしょうか?
この記事では「主人公が持っている目標が、そもそも間違えている状態」として解説していきます。
やたらとハイスペックな主人公、ただし問題あり
このタイプの物語の主人公は、能力と言う点では圧倒的な力を持ちます。
ただし、総じて詰めが甘いか、そもそもアホだったりします。
倫理観や道徳心よりも、目先の損得勘定に流されやすいのも特徴です。
考えている様で、感情に従って生きています。
そんな主人公は、自分の能力や境遇を活かした夢や野望を持っていて、それに従って生きています。
叶わぬ野望の訳
この形式の物語では、主人公が野望達成の為に明確な目標を持って行動します。
ですが、目標までの距離は最初と最後で変わりません。
どんなにハイスペックで、努力をしたとしても目標に全然辿り着けないのには3つの深い訳があります。
- 主人公自身の問題:主人公の持っている野望がそもそも叶える事が不可能か、叶えたとしても維持する事が難しい事ばかりです。そもそも目標を見誤っているのですが、主人公がそれに気づいていません。
- 主人公が身を置く環境の問題:どう考えても、野望を叶えるのに適さない場所に身を置く事になってしまいます。これによって野望を叶える事に大きなブレーキがかかる事になります。
- 天敵による監視の問題:主人公が身を置くことになってしまう場所には、必ず天敵がいます。天敵と言っても、悪者とは限りません。どちらかと言うと、メンターの様な存在です。この主人公よりも力を持っている存在によって、個人的な野望を否定され、集団の中での役割を強制されます。
漫画「侵略!イカ娘」では、主人公は世界征服を目論見、手始めに海の家を制圧しようとします。初っ端から持っている野望が大きすぎる事は誰にでもわかります。
更に、高い身体能力があるにも関わらず、海の家を拠点にすると言う最初の目標さえ叶いません。海の家を切り盛りする姉妹の姉が、偶然にも主人公より強く、そのまま海の家の弁償をする為に従業員として居候する事になってしまいます。
小説「幼女戦記」では、神を信じない主人公が死の直前に異世界行きを神に知らされ、神に対して傲慢な態度を取ってしまった為に、異世界では信仰が必要とされるであろう戦場に少女として送り込まれてしまいます。
そこで主人公は、神に送り込まれたのにも関わらず、神の存在を否定し続け、安息の場所を求めて戦場を飛び回る事になります。ですが、神が監視しているので、主人公が長時間安全な場所に身を置ける事はありません。
身を置く場所で、光り輝く
この形式の物語の主人公は、とにかくハイスペックで有能です。ですので、身を置くことになる場所では、その有能さを高く買われることになります。
主人公は次第に周囲の信頼を得て、自分の居場所を獲得します。周囲を固める多くのキャラクターは、主人公の本性を最初は知りません。基本的には、主人公の立場と能力を先に見る事で、主人公に興味を持ちます。
野望を隠して猫をかぶり、やたらと自信にあふれ、超が付くほどに有能で魅力的な主人公の事を、すぐに人々は好きになります。一番近くで主人公を支える仲間は、主人公の本性の片鱗に気付いたとしても、性格的な欠点ぐらいにしか思いません。
ライバルの目にさえ、主人公は脅威であると同時に魅力的に映るのです。
漫画「侵略!イカ娘」では、海の上で従業員として働いてもライフセーバーをしても有能で、すぐに浜で遊んでいた子供に懐かれます。
小説「幼女戦記」では、幼くして軍人になった主人公は、戦果をあげ、上官からも部下からも信頼を獲得します。
野望に近づくために
役割を果たす事で皆に愛される主人公ですが、本人の持ち続ける野望は変わりません。
主人公は、隙あらば思い出したように野望を叶える為の行動を起こします。
ですが、その行動は大多数の人には求められていません。
持ち前の有能さによって計画を立て、一見ですが野望に近づいている様に見える行動をしますが、それは実は許された行為では無いのです。
天敵に見つかる
主人公が野望に近づこうと動き出すと、主人公の事を監視していた天敵に見つかってしまったり、巡り巡ってその耳に情報が入ったりします。
その時には、主人公は目標に手が届く寸前か、今更引き返せない所にいます。
こうなると主人公は、引き返せないし、引き返したくもない事を自覚しつつ、勝てない天敵と対決する事も避けられない状況のジレンマに陥ってしまいます。
主人公は、野望の為の準備には余念がありませんが、天敵に対する対抗策が見つからないまま戦いを挑むことになるのです。
つまり、負け戦になる事は決まっています。
フィナーレ
ついに天敵の魔の手が主人公に迫ります。
主人公は、成す術もなく負けてしまいます。
ですが、天敵は主人公の事をどうにかしたい訳では無く、あくまでも役割に戻って欲しいだけなので、主人公には罰を与えられるだけに留まり、物語はフィナーレを迎えます。
主人公の真の野望の終わりは、持ち続ける野望を叶える事よりも、身を置くその場所こそが自分の居場所である事に気付く事です。
ですが、野望を捨てきれず、問題を起こし続け、まるで成長しないでワンパターンに野望に手を伸ばし続けるからこそ、この形式の物語は面白く続いて行きます。
まとめ
以上、叶わぬ野望物語とは、ハイスペックな主人公が自分の居場所や在り方に気付くまで、届かぬ夢を追っては敗れ去る物語と言う事でした。
この形式の物語のポイントは、叶わない野望なのにドンドンと近づいて行ってしまう主人公の成功描写の気持ちよさでしょう。
最後にはすべて失って元の生活に戻るお約束なパターンと分かっていても、有能な人間が計画を進める姿にはワクワクする物があります。
この記事が好きな作品探しや、この形式の物語を作る時の参考になればと思います。
必須要素
変わり者
- 図太いメンタルの主人公
- 変化する行動or見た目or名前
- 主人公を脅威に感じる存在
- 変わり者で無ければ解決できない問題
人生の岐路を迷走
- 問題に対して平凡非力な主人公
- 持ち前の力で野望に突き進む
- 現実を受け入れる結末
「叶わぬ野望物語」該当作品
※地道に追加、修正予定。
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