シナリオの書き方「許されざる和解物語」の脚本構造を紹介!争わないことが罪?

「許されざる和解物語」とは?

ここでは「許されざる和解」をテーマにした物語を解説します。

和解が許されないとは、どういう状況でしょうか?

この形式の物語は、構造カテゴリーで別の言い方をするならば「禁忌を破って、革命する物語」となります。

解説

許されざる和解って?

まず「許されざる和解」とは、どの様な状況を指すのか?

この記事では「社会規模で行われている争いの中、勝手に結ばれた和解」として解説していきます。

 

主人公は板挟み

この形式の物語の主人公の基本的な立ち位置は、体制側の中間管理職です。

組織のトップで無ければ、下っ端でもありません。

あくまでも真ん中です。

そして、重要なのは所属が体制側である事。

社会を支配する組織の中で、組織の意向に沿って生きている人間と言う事です。

なので、その地位にいられる程度には有能な人物が多いです。

敵を管理する

主人公は組織の為、引いては自分の出世や金儲けの為に日夜仕事をしています。

この形式の物語では、主人公が所属する組織は、組織をあげて何かと本気で戦っています。

所属する組織が国ならば、戦う相手は敵国やレジスタンス、テロリスト、または国家に害をなす犯罪者となります。

少なくとも、所属する組織は、そう考えています。

その組織の中で主人公の立場は、組織をあげて倒すべき何者かに触れる事が出来るポジションとなります。

言うなれば、主人公の仕事とは「敵を管理する仕事」なのです。

映画「シンドラーのリスト」では、田舎から出てきた実業家の主人公が、ドイツが目の敵にするユダヤ人を利用して、ドイツ軍向けに鍋工場を開業します。

主人公は社長ですが、ドイツの高官達に対して賄賂を贈り、機嫌を取らなければやっていけない立場です。

映画「善き人の為のソナタ」では、東ドイツのシュタージ(国家保安省)で反逆者の監視の任務を仕切る役人が主人公で、反逆や脱走を企てる市民を監視しています。

組織が定めた倒すべき敵に触れ続ける中でも、主人公は最初は何も感じません。

きっかけとなる出来事

組織の手足となり、管理し続ける主人公に転機が訪れます。

一つは、組織への疑念、不信感です。

主人公が所属している組織の実態が、従うに値するものなのかを考えさせられる出来事に遭遇します。

敵に対して極度に反道徳的、非人道的な行いが許されていたり、仕えている上層部の汚職、腐敗、無能にまみれた実態を知ってしまい、組織に持っていた忠誠心や信頼が揺らぎます。

揺らいだ主人公に、追い打ちとなる転機が訪れます。

それは、今まで管理すべき敵と認識してきた相手からもたらされます。

敵と言う記号ではなく、一個人として認識する出来事が起きるのです。

敵の一人と友人になったり、恋をしたり、本来の管理者としては、あるまじき行いをしてしまいます。

そして、主人公は一人の敵を特別扱いし、好きになってしまった後で気付くのです。

今まで敵と考えてきた人達が、好きになった人と同じ存在だと言う事に。

こうして、管理者である主人公は、管理者の立場を利用して組織から自分の手が届く人々を守り始めます。

管理しているふりをする

主人公は、今まで通り敵の管理をしているふりをしながら、組織の敵を自分の管理下に置いて守っていきます。

主人公にとっては、既に敵ではなく、守るべき人々となっています。

この人々は、主人公が守らなければ、いずれ組織によって殺されてしまいます。

組織には嘘の報告をし、何かあれば理由をつけて遠回しに守り、組織の上層部に対しては賄賂を渡したり、ハッタリをかましたり、あらゆる手段を使って自分の管理下にある人々だけは守ろうとします。

人々を救う弊害

主人公が管理せずに守ろうと動く裏側で、守られている人々の方が問題を起こします。

「主人公の所に行けば助かる」「主人公が助けてくれた」等と、噂や手紙が秘密裏に行きかい主人公は一気にピンチに陥ります。

主人公が人々を管理下に置くキャパシティにも限界があり、人々が増え過ぎても支えきれません。

また、守られている人々からすれば、直接であれ間接であれ、主人公は救世主ですが、主人公が所属している組織から見れば主人公は、職務怠慢か、悪ければ反逆者です。

反逆者になってしまえば、守ってきた人々はおろか、自分の身も危険な状況になっています。

何とかしなければなりません。

嘘がバレる時

組織につき続けてきた嘘の報告にも、やがて限界が来ます。

組織の中に主人公が裏切っていると考える者が現れ、主人公を追い詰め始めます。

主人公の一番のウィークポイントは、守ろうとしている人々に他なりません。

組織は、別の命令系統から主人公が守ろうとする人々を攻撃したり、揺さぶりをかけてきます。

それでも、主人公は抗い、自分を犠牲にしてでも人々を守ろうとします。

嘘がバレた後

嘘がバレてしまいました。

嘘をつき通す事は出来ません。

主人公は組織の上層部の人間に、組織に逆らってきた償いか、不正を見逃す見返りを求められます。

償いを求められる場合は、力を奪われた上で組織に再編成され、酷い目に遭わされます。

見返りを求められる場合は、主人公は相手にプラスに働く取引材料を持っていないといけません。

多額の賄賂でなくても、見逃してくれたらこんなお礼をしますと言う約束の場合もあります。

フィナーレ

主人公と守るべき人々は、ようやく解放されます。

主人公が所属していた組織の手からなんとか逃げ延びたり、組織自体が悪として、より大きな力によって断罪されたのです。

主人公に守られ、生き残った人々。

彼らが主人公の勇気ある行いに感謝し、恩人であると表明し、物語はフィナーレを迎えます。

 

まとめ

以上、許されざる和解物語とは、社会的に敵とされる立場の弱い人々を、主人公が自分の立場を利用して守り抜く物語と言う事でした。

この形式の物語のポイントは、主人公に次々と降りかかる組織の上からの命令を、いかに理由をつけてギリギリかいくぐっていくかでしょう。

登場人物達が機転やアイディアで危機を脱する姿こそ、最大の見所です。

この記事が好きな作品探しや、この形式の物語を作る時の参考になればと思います。

必須要素

タブー破り

  • その社会での禁忌
  • 禁忌を破らないと満足出来ない主人公と仲間
  • 禁忌を破った代償

革命

  • 社会の問題に対して有能な主人公
  • 変化に抵抗する人々
  • 主人公一人では変えられない社会
  • 変化を受け入れ、共に革命する仲間

「許されざる和解物語」該当作品

地道に追加、修正予定。

※他の形式の物語も知りたい場合は、物語カテゴリーをご覧ください。

※アイキャッチはヒューマンピクトグラム2.0様より使わせて頂いています。

スポンサーリンク

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。