物語の育て方
この記事では、誰でも簡単に物語の種を育てる事が出来る方法の一つを紹介します。
ここでは、例として「このマンガがすごい!」でも話題になった「ダンジョン飯」を想定して、前回に引き続きシミュレーションしていきます。
この記事を読まれる方は、創作者であれば自身の作品に当てはめたり、創作中の物語や、新たな物語を想像しながらお読み頂ければ幸いです。
創作者で無くとも「ダンジョン飯」や、ご自身の好きな作品を思い出しながらお読み頂きたく思います。
※本記事は、あくまでもシミュレーションなので「ダンジョン飯」が実際に作られた工程とは一切関係ありません。
その点は、ご了承ください。
前回のおさらい
第一回は、
- 世界観「ファンタジー世界」で
- キャラクター「冒険者」が
- 行動「冒険する」話。
と言うネタ出し段階から、
- 世界観「ローグライクダンジョンRPG風ファンタジー世界」で
- キャラクター「パーティを組んでいる冒険者達」が
- 行動「ダンジョンに潜り、宝を発見する」話。
と言うアイディア段階を踏まえ、
- 世界観「ローグライクダンジョンRPG風ファンタジー世界」で
- キャラクター「パーティを組んでいる冒険者達」が
- 行動「危険なダンジョンに潜り、はぐれた仲間が生きている内に助けに行く中で、道を踏み外していく」話。
と言うコンセプト段階から更に、
- 世界観「ローグライクダンジョンRPG風ファンタジー世界」で
- キャラクター「パーティを組んでいる冒険者達」が
- 行動「危険なダンジョンに潜り、はぐれた仲間が生きている内に助けに行く中で、必要に迫られモンスターを料理して食べていく」話。
と言うハイコンセプトの段階に来て、
- 「ダンジョンに潜って、はぐれた仲間が生きている内に助けに行く中で、倒したモンスターを料理して食べていく話」
と言うログラインに落とし込みました。
ここまでで「ネタ出し」「アイディア化」「コンセプト化」「ハイコンセプト化」「ログライン化」と順に物語の種を育てて来た事になります。
現時点で「どこで」「誰が」「何をする」かが想像出来て、どういう物語なのかも想像できます。
物語のコンセプトに必要な3要素、
- 「普遍性」と「新規性」があるか?
- 「解決すべき問題」が連想出来るか?
- 「テーマ」と共に「感情」を表現出来るか?
も満たしていますね。
そこから第二回では、
- 冒険者達は、仕事でダンジョンに潜っている。
- 「だから」ダンジョン内で仕事中に事故が起き、仲間の一人がはぐれてしまった。
- 「だから」はぐれた仲間が生きている内に助けに行かなければならない。
- 「だから」食べ物を現地調達でダンジョンに潜るしか手段がない。
と、作った「ログライン」に「なぜ」を問いかけ、「だから」を引き出し、
更に、
- 「その結果」仲間を無事に助ける事が出来た。
- 「その結果」しかし、絶対に食べたく無かったモンスターを沢山食べる羽目になった。
と、「テーマ」に沿って想定した結末に対して「なぜ」を問いかけ「だから」の先に待つ「その結果」を考えました。
それから、
- 「最後の壁」ダンジョンの奥で、仲間を助ける為に、強力なモンスター、ドラゴンを倒した。
という風に「その結果」の前に置かれる、物語の「最後の壁」を考え、
- 「最後の壁の攻略に必要」チームワーク、剣と戦士1、盾と戦士2、目つぶし用の短剣と盗賊、魔法を使う為の回復薬と魔法使い、等々
と、出来る限り最高に盛り上がるクライマックスを想像し、「最後の壁の攻略に必要」そうなアイディアをいくつも考えました。
最高に盛り上がるクライマックスに必要なアイディアには「コンセプトに従っている」「魅力的で面白い」「連続性とシナジーがある」が必要でした。
そこで、
- 「クライマックス」ドラゴンに対して「目つぶし(盗賊)」で作った死角に「爆発魔法(魔法使い)」と「鍋の盾(戦士2の持ち物)」を利用して一気に近づき「剣のモンスター(戦士1の持ち物)」で弱点を攻める「チームワーク」によって攻略
と、頭の中で組み立て、少なくとも自分の中では盛り上がる、壁を超える画を作りました。
徐々に、答えの無いパズルを組み合わせる様な試行錯誤が増えてきます。
今回は、この段階から更に、物語を育てたいと思います。
その1:設定を考える
前回で、作ってきた物語は、かなり育ってきたと思います。
まとめると、だいだい……
- 冒険者達は、仕事でダンジョンに潜っている。
- 「だから」ダンジョン内で仕事中に事故が起き、仲間の一人がはぐれてしまった。
- 「だから」はぐれた仲間が生きている内に助けに行かなければならない。
- 「だから」食べ物を現地調達でダンジョンに潜るしか手段がない。
- 「最後の壁の攻略に必要」チームワーク、剣と戦士、盾と戦士、目つぶし用の短剣と盗賊、魔法を使う為の回復薬と魔法使い、等々
- 「クライマックス」ドラゴンに対して「目つぶし(盗賊)」で作った死角に「爆発魔法(魔法使い)」と「鍋の盾(戦士2の持ち物)」を利用して一気に近づき「剣のモンスター(戦士1の持ち物)」で弱点を攻める「チームワーク」によって攻略
- 「最後の壁」ダンジョンの奥で、仲間を助ける為に、強力なモンスター、ドラゴンを倒した。
- 「その結果」仲間を無事に助ける事が出来た。
- 「その結果」しかし、絶対に食べたく無かったモンスターを沢山食べる羽目になった。
この程度の分量には、最低でもなっている筈です。
ここまで想像を膨らませ、物語と向き合っていると、世界観や登場人物達を最初に比べれば容易に捉える事が出来ると思います。
人によっては、この段階までで、相当に細かい設定まで思い浮かんでいると思います。
登場人物達で言えば、
- パーソナル情報:個人を特定する情報。名前とか誕生日とか。
- フィジカル情報:肉体の情報。金髪碧眼とか中肉中背とか。
- メンタル情報:優しいとかズボラとか。人生で培った価値観とか。
- キャリア情報:今まで何をしてきたか。
これらが自然に浮かんできたなら、それは、ここまで想像してきた世界の中で、あなたが生み出し、プロットにある人生を生き、ちゃんと動いてくれる、そんなキャラクターが出来て来たのかもしれません。
まだ設定は仮で構わないし、ここで一度決めてしまっても構いません。
登場人物の名前は? どんな顔で、どんな表情を浮かべていますか?
体型は? 着ている服や持ち物は? 性格は? どんな声で、どんな口調で話をして、何が好きで、何が嫌いで、何を大切に思っていて、何が苦手ですか?
それを一度、わかる範囲で出し切り、まとめてみましょう。
まだ、そこまで出て来なければ、最低限でも構いませんが、少しずつキャラクターは育てましょう。
最低限「ダンジョン飯」では、こんな感じでしょう。
登場人物1
- パーソナル情報:ライオス
- フィジカル情報:男性、金髪、人間
- メンタル情報:優しい
- キャリア情報:冒険者、戦士、剣が得意
登場人物2
- パーソナル情報:マルシル
- フィジカル情報:女性、金髪、エルフ
- メンタル情報:優等生
- キャリア情報:冒険家、魔法使い、攻撃魔法が得意
登場人物3
- パーソナル情報:チルチャック
- フィジカル情報:男性、茶髪、小人
- メンタル情報:皮肉屋
- キャリア情報:冒険家、盗賊、飛び道具が得意
登場人物4
- パーソナル情報:センシ
- フィジカル情報:男性、黒髪、ドワーフ
- メンタル情報:達観
- キャリア情報:冒険家、戦士、斧が得意
と、プロットのクライマックスに必要な登場人物が出来ました。
本当は、もっと細かく設定するべきですが、ここでは省略します。
ここでのポイントは、要素をばらす事。
つまり、似たキャラクターを作らない事です。
このプロットには、まだ必要な登場人物がいますので、そちらも埋めていきます。
登場人物5
- パーソナル情報:ファリン
- フィジカル情報:女性、金髪、人間
- メンタル情報:ほんわか
- キャリア情報:冒険家、魔法使い、回復魔法が得意
登場人物6(最後の壁)
- パーソナル情報:レッドドラゴン
- フィジカル情報:竜
- メンタル情報:狂暴
- キャリア情報:ダンジョンにいるモンスター
これで、プロットの現段階での最低限の登場人物が決まりました。
更に、世界観も考えて行きます。
世界観を考える上で思い出して欲しいのは、
- 現実
- サイエンスフィクション
- ファンタジー
そして、
- 時代
- 場所
と言うネタ出しの段階で使った要素です。
これらの要素で、世界観は定まりましたよね。
ここでは、ここまで出来ている段階のプロットで、更に世界観を定めて行きます。
コンセプトやプロットを破綻させなければ、どんな設定でも構いません。
魅力的な世界観を想像してみましょう。
世界観
- ローグライクRPG的、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界
- 舞台は、ダンジョンで栄える島
- 地下墓地の下にある滅んだ古代王国のダンジョン
- 王国をダンジョンに変えた魔術師を倒せば財宝が手に入る噂が冒険者達を呼び込んでいる
ここも登場人物と同じく、もっと詳細に、想像力が膨らみ画が頭に浮かぶ様に設定を書いてみましょう。
その2:プロットに落とし込む
なぜ第一回目の記事で「世界観」「登場人物」「行動」を最初から詳細に作る事を、あえて避けたのか、ここまで物語を作ってみて、わかって頂けたでしょうか?
最初に、あまりにも詳細に設定を詰めてしまうと、この手法の場合はプロットにそぐわない設定が大量に生み出されるからです。
創作法は、他にも無数にあります。
他には「世界観」を起点にしたり、「登場人物」を起点にする方法や、「行動」をデザインしたり「ワンアイディア」を膨らませる方法もあり、物語を作る手法は実に多彩です。
ですので、記事で紹介している方法が肌に合わなくとも、自分に合った物語を作る方法や、使う場面に合った方法は必ずあるので「簡単に作れないじゃないか」と言う人も、そう言う意味では安心してください。
と言う事で、ここまで物語の最初と最後を明快にしてきた為、プロットに沿った設定が出来る様になった訳です。
ここからは、設定を更に練り、プロットとも密接に連動させていきます。
現時点をまとめると(段々とボリュームが出てきました)、
世界観
- ローグライクRPG的、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界
- 舞台は、ダンジョンで栄える島
- 地下墓地の下にある滅んだ古代王国のダンジョン
- 王国をダンジョンに変えた魔術師を倒せば財宝が手に入る噂が冒険者達を呼び込んでいる
登場人物1
- パーソナル情報:ライオス
- フィジカル情報:男性、金髪、人間
- メンタル情報:優しい
- キャリア情報:冒険者、戦士、剣が得意
登場人物2
- パーソナル情報:マルシル
- フィジカル情報:女性、金髪、エルフ
- メンタル情報:優等生
- キャリア情報:冒険家、魔法使い、攻撃魔法が得意
登場人物3
- パーソナル情報:チルチャック
- フィジカル情報:男性、茶髪、小人
- メンタル情報:皮肉屋
- キャリア情報:冒険家、盗賊、飛び道具が得意
登場人物4
- パーソナル情報:センシ
- フィジカル情報:男性、黒髪、ドワーフ
- メンタル情報:達観
- キャリア情報:冒険家、戦士、斧が得意
登場人物5
- パーソナル情報:ファリン
- フィジカル情報:女性、金髪、人間
- メンタル情報:ほんわか
- キャリア情報:冒険家、魔法使い、回復魔法が得意
登場人物6(最後の壁)
- パーソナル情報:レッドドラゴン
- フィジカル情報:竜
- メンタル情報:狂暴
- キャリア情報:ダンジョンにいるモンスター
プロット
- 冒険者達は、仕事でダンジョンに潜っている。
- 「だから」ダンジョン内で仕事中に事故が起き、仲間の一人がはぐれてしまった。
- 「だから」はぐれた仲間が生きている内に助けに行かなければならない。
- 「だから」食べ物を現地調達でダンジョンに潜るしか手段がない。
- 「最後の壁の攻略に必要」チームワーク、剣と戦士、盾と戦士、目つぶし用の短剣と盗賊、魔法を使う為の回復薬と魔法使い、等々
- 「クライマックス」ドラゴンに対して「目つぶし(盗賊)」で作った死角に「爆発魔法(魔法使い)」と「鍋の盾(戦士2の持ち物)」を利用して一気に近づき「剣のモンスター(戦士1の持ち物)」で弱点を攻める「チームワーク」によって攻略
- 「最後の壁」ダンジョンの奥で、仲間を助ける為に、強力なモンスター、ドラゴンを倒した。
- 「その結果」仲間を無事に助ける事が出来た。
- 「その結果」しかし、絶対に食べたく無かったモンスターを沢山食べる羽目になった。
最低限ですが、この様な感じでしょう。
では、これからどうするか。
登場人物達の関係を決めましょう。
相関図を作っても、一覧表に書き出しても、形式は問いません。
ただし、全員がちゃんと関係で繋がっている様にしてください。
そして、仮にでも良いので、主人公と定めたキャラクターから一番多く関係線が出る様にしてください。

これだと、ライオスを仮に主人公として、最低限の相関図を作った事になります。
面倒なので省略しましたが「冒険者パーティー」と言うボックス内の登場人物は同じ所属として、全員関係がある物として処理します。
なので、設定ではお互いが知人で、関係しあう様に関係性を構築してください。
ボックス内では線が伸びていなくても、お互いを認識し相手の事を知り合いだと思っています。
また、ボックスから伸びた線の先にいるドラゴンも、ボックス内の全員が敵として認識していると処理します。
この「人物相関図」ですが、もし作った事が無いなら騙されたと思って一度作って見て下さい。
物語創作に置いて、かなり有用なツールです。
この登場人物同士の繋がりは、物語内にある社会性に他なりません。
この繋がりこそが、物語を更に生き生きと育てる事になります。
では、少しずつですが、プロットを見ながら育てていきましょう。
- 冒険者達は、仕事でダンジョンに潜っている。
- 「だから」ダンジョン内で仕事中に事故が起き、仲間の一人がはぐれてしまった。
- 「だから」はぐれた仲間が生きている内に助けに行かなければならない。
- 「だから」食べ物を現地調達でダンジョンに潜るしか手段がない。
- 「最後の壁の攻略に必要」チームワーク、剣と戦士、盾と戦士、目つぶし用の短剣と盗賊、魔法を使う為の回復薬と魔法使い、等々
- 「クライマックス」ドラゴンに対して「目つぶし(盗賊)」で作った死角に「爆発魔法(魔法使い)」と「鍋の盾(戦士2の持ち物)」を利用して一気に近づき「剣のモンスター(戦士1の持ち物)」で弱点を攻める「チームワーク」によって攻略
- 「最後の壁」ダンジョンの奥で、仲間を助ける為に、強力なモンスター、ドラゴンを倒した。
- 「その結果」仲間を無事に助ける事が出来た。
- 「その結果」しかし、絶対に食べたく無かったモンスターを沢山食べる羽目になった。
と言うプロットが現状出来ています。
ここに登場人物を当てはめて考え、登場人物同士の関係を深掘りしていきます。
このプロットやコンセプトが破綻しない限り、どの様な設定を付け加えても、物語は機能します。
ここでも役立つのは「なぜ」です。
そして、この辺から「どの様に」も物語創作に手を貸してくれるでしょう。
「なぜ」と「どの様に」、順に想像しながら問いかけ、答えて行きましょう。
以下、こんな感じです。
- 冒険者達は、仕事でダンジョンに潜っている。
「なぜ1」魔術師を倒して財宝を手に入れる為 「なぜ2」金が欲しい 「なぜ3」必要な理由がある=登場人物達にダンジョン探索の動機が必要。
「どの様に」パーティを組んで、装備を整えて、階層を順に攻略。
- 「だから」ダンジョン内で仕事中に事故が起き、仲間の一人がはぐれてしまった。
「なぜ」ダンジョンが崩れて寸断された? 敵に捕まった? 穴に落ちた?
「どの様に」はぐれ方を考える必要がある。
- 「だから」はぐれた仲間が生きている内に助けに行かなければならない。
「なぜ」大事な仲間だから? 恋人? 家族? 死んでるかも? 生きている確証は?
「どの様に」急いで、ダンジョンを潜る必要がある。
- 「だから」食べ物を現地調達でダンジョンに潜るしか手段がない。
「なぜ」金が無い? 身軽にしたい? 物資が無い? 集める時間が無い?
「どの様に」モンスターを倒して、料理して食べたり、他の人に譲ってもらって。
- 「最後の壁の攻略に必要」チームワーク、剣と戦士、盾と戦士、目つぶし用の短剣と盗賊、魔法を使う為の回復薬と魔法使い、等々
「なぜ」ドラゴンを倒す為?
「どの様に」どこで手に入れる? いつから持っている?
- 「クライマックス」ドラゴンに対して「目つぶし(盗賊)」で作った死角に「爆発魔法(魔法使い)」と「鍋の盾(戦士2の持ち物)」を利用して一気に近づき「剣のモンスター(戦士1の持ち物)」で弱点を攻める「チームワーク」によって攻略
「なぜ」正攻法では勝てないから。
「どの様に」クライマックスの壁の超え方と同じ。
- 「最後の壁」ダンジョンの奥で、仲間を助ける為に、強力なモンスター、ドラゴンを倒した。
「なぜ」仲間を助ける為。
「どの様に」クライマックスの壁の超え方と同じ。
- 「その結果」仲間を無事に助ける事が出来た。
「なぜ」ドラゴンを倒して救助が間に合ったから。
「どの様に」仲間はドラゴンから逃げていた? 捕まっていた?
- 「その結果」しかし、絶対に食べたく無かったモンスターを沢山食べる羽目になった。
「なぜ」食べ物を現地調達する以外に、手段が無かった。
「どの様に」モンスターを倒して、料理して、食べる描写が必要。
と、どうでしょうか?
太字は、プロットの実現に必要で、これから考えなければならない設定や描写、または、新しく思いついた使えそうな設定案です。
以上を踏まえ、登場人物とプロットに設定を適応します。
- ライオス達冒険者パーティーは、仕事で島にあるダンジョンに潜っている。
- 「だから」ダンジョン内で仕事中に事故が起き、モンスターから逃げる中、仲間の一人でありライオスの妹でもあるファリンがはぐれてしまった。
- 「だから」はぐれたファリンが生きている可能性がある内に助けに行かなければならない。
- 「だから」それには、時間も金も無い為、食べ物を現地調達でダンジョンに潜るしか手段がない。急がないとファリンがモンスターの餌食になってしまう。
- 「2幕必要要素」モンスターを倒し、我慢しながらも料理して食べ、時には他の冒険者に食べ物を譲って貰ったり、交換したりしながら、ダンジョンを急いで潜っていく。
- 「2幕必要要素」ダンジョン探索の中で、ライオスは剣を、センシは盾を、チルチャックは短剣を、マルシルは魔法の薬を手に入れ、その過程でチームワークや絆が深まった。
- 「クライマックス」ファリンを助ける最後の戦い。ドラゴンに対して「チルチャックが目つぶし」をして作った死角に「薬で魔力を回復させたマルシルの爆発魔法」と「センシの鍋の盾」を利用して一気に近づき「ライオスが剣のモンスター」でドラゴンの弱点を攻める「チームワーク」を見せる。
- 「最後の壁」ファリンを助ける為に、ライオス達はドラゴンを倒す事に成功した。
- 「その結果」無事救助に間に合い、ファリンを無事に助ける事が出来た。
- 「その結果」しかし、道中、食べたく無かったモンスターを沢山食べる羽目になってしまった。

これでも、十分に物語としては理解出来ます。
登場人物達の関係も、ライオスとファリンの関係を兄妹と言う家族に変え、助けに行く動機を強めました。
ですが、このまま進めても良いのですが、まだ足りません。
「ダンジョン飯」を読んだ事があれば、分かっていると思いますが、設定が違いますよね。
その3:全体をコンセプトに照らし合わせて、また「変」にする
世界観や登場人物、そしてプロットをもう一度見てみましょう。
楽しく設定を考えた事で、物語が掴みやすくなりました。
ですが、ここまで行ってきたパートで使ってきた、「なぜ」と「どの様に」は、どちらかと言えば整合性や納得性を高め、物語を構築するのに有用なツールです。
つまり、今の状態の物語は、整っている可能性があります。
物語には「普遍性」と「新規性」が求められます。
そこで、もう一度「変」にする事で「新規性」を全体に広げ、追加する事が出来ると共に、それによってコンセプトに沿った物語に磨き上げる事が出来ます。
ここまでで、2つ大事な事があります。
それは、物語の「世界観の特徴を利用する」事と、「前提を崩さない」事。
世界観の特徴を利用するとは、
例えば、ロボットの出て来るSFを世界観にした場合は、必ずロボットが出るべきと言う事です。
今回の場合で言えばダンジョンのあるファンタジーの世界なので、ダンジョンやモンスター、魔法の存在が、特徴となるでしょう。
その設定を活かすプロットなので問題ありませんが、中には、この設定をチグハグに作ってしまう場合があります。
それは、避けるべきです。
魔法少女のいる世界観にしたなら、魔法少女がメインで出てしかるべきです。
超能力者がいる世界観なら超能力者が注目されなくては、その世界観を選んだ意味がありません。
そして、もう一つの大事な事、前提を崩さないと言うのは「そもそも」を考えると言う事になります。
例えば、今回は「ダンジョン飯」を手本に、世界観として魔法が出て来る物を選び、そこで仲間の救助を急がなければならないと言う物語を選びました。
ここでの「そもそも」を崩す設定は、排除しなければなりません。
目的や目標、必要要素に対して「そもそもどうなの?」と言う根本的否定を試みてください。
その否定的な質問に、真摯に答えて下さい。
ダンジョン飯であれば、こんな感じです。
Q.「そもそも」魔法で生き返らないの?→A.生き返らないor生き返るには条件がある
Q.「そもそも」何で助ける必要があるの?→A.大事な仲間、家族だから
この様に「そもそも」で、物語の目的や目標が崩れない設定を作らないと、物語自体が破綻してしまう事があります。
これは、当たり前の事に思えますが、プロでも時々やってしまいます。

これは有名な一例ですが、こんな事は小説、漫画、アニメ、映画、ゲーム、物語が係わる物であれば媒体や規模に問わず、何にでも起きる時には起きてしまう事です。
些細な描写なら気にならない時もありますが、主目的でこれをやると目も当てられません。
ほんの些細な注意を向けるだけで避けられるので「そもそも」と設定やプロットに質問して答えて見て下さい。
仮に、
Q.「そもそも」魔法で生き返らないの?→A.生き返る
の場合、
じゃあ、急がなくて良いじゃないかと言う話になり、物語が破綻してしまいます。
それでは気をつけながら、ここまで出来た物をコンセプトに照らし合わせて「変」にしていきたいと思います。
コンセプトを見て下さい。
- 「ダンジョンに潜って、はぐれた仲間が生きている内に助けに行く中で、倒したモンスターを料理して食べていく話」
と言うコンセプトを見て、どこに目が向くでしょうか?
特異な点は「倒したモンスターを料理して食べていく」事でしょう。
これが、物語の肝になる訳です。
この特異な点を見て、何をイメージするでしょう。
枝を伸ばす感覚で、連想して見て下さい。
ある種、マジカルバナナの要領です。
この際「マインドマップ」を用いると、視覚化出来てわかりやすいです。
「マインドマップ」も非常に強力なツールです。

この様な感じで、連想出来ます。
ここで大事な事は、イメージ同士が関連づいて思えた事は、思いつく限り書きだす事です。
想像力を働かせましょう。
コンセプトをベースに連想する事で出たアイディアは、コンセプトに関連があり、そのまま物語に入れては「変」な物も多い筈です。
このコンセプトベースに生み出されたアイディア群を使って、プロットを「変」にします。
では「ダンジョン飯」を手本に、プロットを「変」にする流れを見て行きます。
まずは、冒頭部分から。
- ライオス達冒険者パーティーは、仕事で島にあるダンジョンに潜っている。
- 「だから」ダンジョン内で仕事中に事故が起き、モンスターから逃げる中、仲間の一人でありライオスの妹でもあるファリンがはぐれてしまった。
- 「だから」はぐれたファリンが生きている可能性がある内に助けに行かなければならない。
- 「だから」それには、時間も金も無い為、食べ物を現地調達でダンジョンに潜るしか手段がない。急がないとファリンがモンスターの餌食になってしまう。
このプロット内に、コンセプトベースのアイディアを加えて、物語を破綻させずに「変」にします。
ここでも「なぜ」「どの様に」「そもそも」は役立ちます。
納得性や整合性を保ったまま、変なアイディアを入れて行く訳です。
Q.「なぜ」「どの様に」「そもそも」(プロットの疑問)→A.(ここにコンセプトベースのアイディアを大喜利の様に入れます)
例えば、
Q.「そもそも」何で事故が起きたの→A.空腹で力が出なかった?
Q.「そもそも」何ではぐれたの?→A.ドラゴンに食べられてしまった?
と、コンセプトベースのアイディアを入れると、一貫しますが、同時に新たな疑問が湧きます。
それにも答えます。
Q.「なぜ」他の人は逃げきれたの?→A.転移魔法? ドラゴンが来れない場所に逃げ込んだ?
Q.「そもそも」食べられて助かるの?→A.魔法で蘇生できる? 丸のみ?
Q.「そもそも」蘇生できるとしたら、急がなくていいのでは?→A.消化されきる前に蘇生させないと生き返らせる死体が無くなる?
という風に、コンセプトベースのアイディアを適応している為、親和性があり破綻しない設定を思いつきつつ、物語が良い感じに「変」になりそうです。
この調子で、ドンドン適応します。
Q.「そもそも」モンスターを食べるのって嫌?→A.この世界ではゲテモノ扱い?
Q.「そもそも」じゃあ、誰が食べようなんて?→A.苦渋の決断? ゲテモノに興味がある?
Q.「そもそも」モンスターで料理なんて、普通に出来るの?→A.モンスター料理のレシピか専門家が必要?
続いて、2幕の必要要素にも適応していきます。
- 「2幕必要要素」モンスターを倒し、我慢しながらも料理して食べ、時には他の冒険者に食べ物を譲って貰ったり、交換したりしながら、ダンジョンを急いで潜っていく。
- 「2幕必要要素」ダンジョン探索の中で、ライオスは剣を、センシは盾を、チルチャックは短剣を、マルシルは魔法の薬を手に入れ、その過程でチームワークや絆が深まった。
Q.「そもそも」金も無く、食べ物もゲテモノだけで交換出来る?→A.相手も困っていたら?
Q.「どの様に」絆が深まるの?→A.共に戦って? 食事を囲んで?
ここでは、必要なアイテム(能力、技能、人物等、途中で手に入れる物全て)もコンセプトベースのアイディアを適応します。
- ライオスの剣→剣に擬態したモンスター(食べられる)
- チルチャックの短剣→料理で使う包丁
- マルシルの魔法の薬→モンスターで作ったスープ
Q.「どの様に」手に入れる?→A.モンスターを倒して? 宝箱? 誰かの持ち物?
- 「クライマックス」ファリンを助ける最後の戦い。ドラゴンに対して「チルチャックが目つぶし」をして作った死角に「薬で魔力を回復させたマルシルの爆発魔法」と「センシの鍋の盾」を利用して一気に近づき「ライオスが剣のモンスター」でドラゴンの弱点を攻める「チームワーク」を見せる。
- 「最後の壁」ファリンを助ける為に、ライオス達はドラゴンを倒す事に成功した。
- 「その結果」無事救助に間に合い、ファリンを無事に助ける事が出来た。
- 「その結果」しかし、道中、食べたく無かったモンスターを沢山食べる羽目になってしまった。
Q.「どの様に」仲間を助ける?→A.倒したドラゴンの胃袋から? 蘇生魔法で?
という風に、プロットに対して質問し、コンセプトベースのアイディアを適応する事で、よりコンセプトに沿った「変」なプロットになりました。
- ライオス達冒険者パーティーは、仕事で島にあるダンジョンに潜っている。
- 「だから」ダンジョン内で仕事中に、空腹が原因で事故が起き、ドラゴンから転移魔法で逃げる中、仲間の一人でありライオスの妹でもあるファリンがドラゴンに食べられてしまった。
- 「だから」食べられたファリンを魔法で蘇生出来る可能性がある内に助けに行かなければならない。
- 「だから」それには、時間も金も無い為、食べ物を現地調達でダンジョンに潜るしか手段がない。急がないとファリンが完全に消化されてしまう。
- 「2幕必要要素」モンスターを倒し、我慢しながらも、レシピに従い料理して食べ、時には他の冒険者に食べ物を譲って貰ったり、交換したりしながら、ダンジョンを急いで潜っていく。
- 「2幕必要要素」ダンジョン探索の中で、ライオスは剣のモンスター(食材)を、センシは鍋の盾を、チルチャックは包丁を、マルシルはモンスターから作った魔法のスープを手に入れ、その過程で戦闘を経験し、食事を囲み、チームワークや絆が深まった。
- 「クライマックス」ファリンを助ける最後の戦い。ドラゴンに対して「チルチャックが包丁で目つぶし」をして作った死角に「スープで魔力を回復させたマルシルの爆発魔法」と「センシの鍋の盾」を利用して一気に近づき「ライオスが剣のモンスター」でドラゴンの弱点を攻める「チームワーク」を見せる。
- 「最後の壁」ファリンを助ける為に、ライオス達はドラゴンを倒す事に成功した。
- 「その結果」無事救助に間に合い、ドラゴンの胃袋からファリンを無事に見つけ、蘇生する事が出来た。
- 「その結果」しかし、道中、食べたく無かったモンスターを沢山食べる羽目になってしまった。
これで大分「ダンジョン飯」に近づいてきましたね。
終わりに
第一回のネタ→アイディア→コンセプト→ハイコンセプト→ログラインと物語の種を育てて出来た物を、第二回のプロット化→壁の設定と育てた物に、今回は設定を加えて具体化し、再度コンセプトを適応して磨きをかけました。
プロットも2幕に入れる要素が見え始め、人によっては書き始める事も容易になったと思います。
今回も物語創作の一手法でしたが、いかがだったでしょうか?
前回、前々回に続き、行き当たりばったりでなく、計画的に新しい物語を創作する手法の一つとなりますので、工程を細かく分けての説明でした。
以上、物語の種を更に育てる方法の紹介でした。
次も、ここまで育てた物語をベースに、物語を更に成長させる方法を紹介したいと思います。
※この記事は、加筆や修正をする可能性があります。
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