ストーリーアドバイス事例紹介
この記事では、過去に実際にあった事案をベースに、良くある失敗と対処法を紹介していきたいと思います。
あくまでも紹介する事例は、特定の個人を名指すのでは無く、実際の例を挙げても良くある失敗パターンとして紹介いたします。
前提の失敗「物語がねじれてしまい、辻褄が合わない」
物語を創る上で、整合性は重要な要素です。
今回は、言われてみれば当たり前のことを意識しなかった事で、物語が捻じれてしまい、整合性が失われてしまった、そんな実際にあった相談をベースに説明します。
こんな相談者様
その相談者様は、webで漫画投稿をされている方でした。
絵もストーリーも発展途上と言った感じの方です。
投稿する次回作の相談をしたいと言う事で、来られました。
こんな御相談
相談者様からの要望は、物語が今一つ面白くならないが、理由が分からないと言う相談でした。
短編マンガ作品の内容は、現代日本を舞台にした学生の部活モノでした。
読んですぐに気付いたのは、物語として散らかった印象がある事でした。
詳しく物語のコンセプトやテーマを聞くと、描きたいのは「同じ部活の中で切磋琢磨する仲間の姿」で、テーマは「友情」ですが、物語を通して伝えたいメッセージは「個人の努力」についてでした。
冒頭で切磋琢磨するのですが、途中から主人公は一人で猛特訓を始め、主人公のおかげで大会に優勝して……って、あれ?
友情どこ行ったの?
と言う様な物語だったのです。
こんな分析
聞くところによると、描きたい「キャラクター」「シーン」「要素」「テーマ」等を出してから、それらの点と点を繋いで行き、詰め込みたい物を詰め込んだ物語の筈、かつ、脚本の型にも合っているのに、面白く無いと言う事でした。
当事者でない人なら、すぐに分かる失敗でしょう。
型に入れたい要素を詰め込んで整えただけでは、物語上に整合性は生まれないのです。
と言うのも「シーン」で重要なのは「登場人物の行動」です。
登場人物の、一貫した行動によって、物語のテーマやメッセージが浮かび上がる訳です。
ところが、バラバラにテンプレートシートに記入した為、「行動」と「テーマ」や「メッセージ」が繋がっていない状態が発生していたと言う事になります。
こんな解決
行動の末に得られる結果=メッセージに変えるか、メッセージに辿り着く行動をデザインするか、そのどちらかに物語の要素を足並み揃えさせれば、それで一本のねじれの無い物語になるとアドバイスしました。
結果、相談者様はメッセージに合う様に全体の行動をデザインし直し「友情」と言う要素はメインではなく、努力をする物語としてプロットを直す事が出来ました。
まとめ
テンプレートを利用する時に陥りがちなミスの紹介と言う事でした。
これは、要素の関係性を理解していない時に起きる失敗です。
例えば、
- キャラクター×行動=作品のメッセージ
と言う式が、仮に成立するとします。
この様に言葉で式を表すと「=」の意味を忘れてしまう人がいます。
「=」を挟んでいる以上、左右の物は等しい筈なのにです。
- 2×3=6
と言う風に、数字で見れば分かり易く、間違えない事でも、言葉に変えた途端に「形式的な例え話」と思い込む人がいます。
ですが、違います。
「=」で挟んでいると言う事は、等しい必要がある表現なのです。
物語の要素を好きに選んで、テンプレートに入れると言う行為は、数字で見ると
- 2×3=60
と言う場合がある訳です。
それなら、物語の要素に追加する事で
- 2×3×10=60
- 2×3×2×5=60
と言う風に、必要な要素を足せば整合性が取れます。
ですが、今回の場合は、
- 2cm×3cm=6ℓ
と言う風に、使う単位や尺度を間違えた要素を入れ、合ってそうなのにおかしい物語「ねじれた物語」になっていた訳です。
テンプレートを使う事は、悪い事ではありません。
ですが、あなたの物語の要素は、式に当てはめた時に成り立ちますか?
成り立てば、納得性の高い物語になるでしょう。
後は、演出や構成で魅力的にブラッシュアップしていけば、良い物語に成長する筈です。
もし、式が成り立たない要素を入れている場合は「成り立つ様に要素を足し引きする」必要の検討や、「尺度が間違っていないか」の確認をするだけで失敗は減り、スランプから抜けだせます。