その物語が面白いか否か
「あの作品すっごい面白かったから見てみて!」
そう親友に言われて見てみると、何が面白いのか『まるで分らない』なんて事ありませんか?
私は、しょっちゅうです。
世間で大ブームになった作品でも、話題だから見に行ったものの、まるで面白く感じない何て事が、良くあります。
この現象が起きる原因は、大きく分けて二つ。
- 「面白かった」の説明不足。
- 「面白かった」と感じる要素の違い。
主に、この二つから起きる物なんです。
今回は、そんなバラバラで好き勝手な物語の評価基準を整理したいと思います。
物語側の評価される要素
まずは、物語側の要素から順番に見ていきます。
最初の要素は、
得たい感情カテゴリー

人は、現在の気分から「こんな気分になりたい」と言う欲求に従って物語を選びます。
その「こんな気分になりたい」の期待に応えられる物語は、感情装置としての役割を果たす良い物語です。
期待させた気分にさせてくれる物語と、期待とは違ったが良い意味で裏切る物語が、評価の高い物語となります。
キャラクター
キャラクターは、恐らく感情の次に多くの人が評価基準に持ってくる物です。
分解すると、キャラクターの容姿、性格や、持っている動機、葛藤、欠点、特技、そして成長・変化をするか、行動するか、愛されるか、憧れられるか、等々の多岐にわたる要素が総合的に見られ、感情的に判断されます。
可愛い、カッコいい、共感できる、嫌い、不愉快、等の印象が最後には残る訳です。
当然、印象に残り、また見たいと思われるキャラクターがいる物語が、良い物語と判断されます。
表現
表現は、あらゆる視覚的・文章的表現から台詞等のセンスまで含まれた物です。
世界観を含んだモチーフテーマが面白かったり魅力的だったり、センスが良かったり共感できると、受け取った者の記憶に残ります。
ユーモアやインパクトの表現が刺されば、もう一度味わいたいと思ってもらえます。
これも、評価基準の中では多くの人が優先する物です。
あのシーンをもう一度見たい、あんなセリフを言われたい、言ってみたい等と思ってもらえれば、創作者からすれば最高の誉め言葉です。
ストーリーテーマ
テーマは、他にもメッセージや、作品全体の普遍性に対する物です。
表面から見え辛いので、この観点から物語を見る人は少数になります。
ですが、この要素が広い人に伝わる物語は、力強いテーマがある証明にもなる基準でもあります。
ストーリーストラクチャー
ストーリーストラクチャーは、物語の大筋、全体構造、プロットや、それらの進行ペースです。
この観点から物語を見る人は、全体から見ると少数派でしょう。
物語全体を通して、洗練されていたり、整っている事に価値を見出す訳です。
この視点を重視するのは、創作者に多いと思います。
視聴・読者側が持つ要素
物語で面白いと人が感じる基準は、感情移入(共感)、予測不能(謎)、納得(リアリティ)です。
感情移入
キャラクターを通して「自分だったらこうする」「応援したい」「こうなりたい」と共感出来るか否かが評価に深く関わります。
これが難しい物語は、キャラクターを評価基準にする人達には、それだけで受け入れられないからです。
予測不能
人は、謎が好きです。
物語世界がミステリアスでも、キャラクターがミステリアスでも、興味を惹かれます。
進行している事件や動いていく状況の変化で、まるで先が読めない事もジェットコースターを楽しむように、面白く感じる物です。
人によっては、振り回される事に疲れる人も、明示されない謎に、なかなか興味が湧かない人もいます。
それでも、人は基本的に予測不能な物を見ると「結末や結果、答えを知りたい」と思わずにはいられない生き物です。
納得
人は、納得出来ない事に厳しいです。
納得出来ないと、大きな不満を持ちます。
キャラクターの動機、世界の設定、ミステリーのトリック、あまりにも荒唐無稽だったり、説明不足だと納得感が下がり「リアリティに欠けた作品」と言う評価をします。
物語が評価される基準
ここまで見てきた、
- 得たい感情
- キャラクター
- 表現
- ストーリーテーマ
- ストーリーストラクチャー
と言う物語側の要素と
- 感情移入
- 予測不能
- 納得
と言う視聴・読者側の要素によって、物語に良し悪しの判断が下されます。
ここで気を付けたいのは、物語側の評価基準は、下に行くほど、ある意味で上級者向けになる事です。
つまり、世の中の大多数の人は、上に行くほど重要だと考えています。
そして、視聴・読者側の評価基準は、個人差によってバラつきがあります。
この評価基準の多様さとバラつきによって「物語の面白さは、人それぞれ」現象が起きます。
例えば「なろう系」の物語は、物語側の3、4、5まで求める層には不評になりやすい傾向にあります。
他に、アート系作品は3に突出して5を無視したりしがちです。
評価が高い作品は、1~5が全て高レベルにまとまり、感情移入・予測不能・納得も幅広い層に届けられます。
伝わる物語評価の仕方
冒頭、
「あの作品すっごい面白かったから見てみて!」
のやり取り。
熱い気持ちは分かりますが、本来、より正確な意思の伝達をする為には、
「終始ドキドキが止まらない!」
「○○ってキャラクターが本当に泣かせる!」
「あのシーンは鳥肌が立った。ヤバい!」
「ギャング映画に見せかけて、家族再生の話だった!」
「複線も上手いし、トントン拍子でイベントが起きて目が離せない!」
の様に、どこが面白い要素だったかを伝え、また、受け取れればコミュニケーションが円滑に進みます。
これは、映画のレビューを読んだりする時にも役立つ指標です。
褒めるだけでなく、苦言を呈する場合も同じですね。
悪い評価の仕方
「自分の好きな作品は、全てが素晴らしい!」
「自分の嫌いな作品は、全てが酷い!」
こういう評価の仕方は、評価に値しない物です。
完璧な物語が存在しない以上、一つの物語に対して良し悪しに公平に目を向けない事には、正確な判断が出来ません。
感情に任せバイアスのかかった評価や、わざと嘘を伝える評価は、正しい評価を隠す害悪でしかありません。
悪意がないなら、やめましょう。
終わりに
物語の評価は、物語側の要素、
- 得たい感情
- キャラクター
- 表現
- ストーリーテーマ
- ストーリーストラクチャー
と視聴・読者側の要素、
- 感情移入
- 予測不能
- 納得
で決まると言う事でした。
物語側の要素は、
1に近い方が難易度が低く、感情的で、表面的で、主観的になり、
5に近い方が難易度が高く、論理的で、内面的で、客観的になります。
視聴・読者側の要素は、人によって知識や経験の個人差がある為、物語側の要素にある普遍性が高いほど評価が安定します。
これらの複合的な要素の組み合わせで評価され、物語は判断されます。
他人に評価を伝える時は、相手のレベルや重要視する要素に合わせると伝わりやすくなります。
好きな作品の布教活動でも(こそ?)役立つはずです。