【なるほど】愛される「切ない」キャラクターの創り方

人の不幸は蜜の味?

カッコいい、可愛い、美しい、そんな表面的な要素よりも、キャラクターが愛される様になる強烈な属性があります。

それが「切なさ」です。

切なさとは、悲しい、寂しい、と言う事です。

今回は、愛される「切なさ」をキャラクターが持つために必要な要素を説明します。

最強の愛される設定「切ない」

「切ない」キャラクターは、一度ハマってしまえば、簡単には抜け出せない麻薬の様な魅力があります。

読者・視聴者は、そのキャラクターを応援し、見守り、自分が近くにいれば助けてやりたくさえなります。

例え、そのキャラクターの「見た目」や「性格」と言った解かり易い設定が不愉快である場合でさえも、「切なさ」を設定すれば、一発で愛されるキャラクターになってしまいます。

愛される「切なさ」は、それほど強力な設定なのです。

では、どの様な要素で「切なさ」は構成されているでしょうか?

その1:悲しい過去

愛される「切なさ」に必要な設定は、前提として悲しい過去、不幸な境遇等があります。

キャラクター本人には、どうする事も出来なかった「不可抗力」の過去を背負っている事が大前提になります。

これが「自業自得」の過去になってしまうと、途端に愛される「切なさ」から乖離してしまいます。

あくまでも「不可抗力」な、キャラクター本人には、どうする事も出来なかった悲しい過去が必要なのです。

例えば、虐待を受けていた、戦争に巻き込まれた、事件・事故に遭った、等のキャラクター本人は抗いようの無い過去を背負う事です。

その2:大切な存在

悲しい過去の中で、大切な存在と共にいた設定にしましょう。

その大切な存在は、悲しい過去を生き抜く上で、キャラクターの心の支えです。

例えば、家族や友人です。

同じ境遇の中にいた、悲しい過去を共有する存在を設定しましょう。

大切な存在とは、お互い支えあい、心が通じ合っていた事が重要です。

その3:大切な存在を失う

悲しい過去の中で、大切な存在を失わせましょう。

大切な存在との間に、キャラクターから向けられた「絆」だけを残し、存在自体はキャラクターのもとを離れてしまうのです。

すれ違い、行き違い、相手の為に、自分の為に、どうしようもなく、理由は様々ですが、相思相愛の大切な存在の片割れを、必ず失うのです。

その4:失った大切な存在を求め続ける

失った大切な存在を、以降も求め続けている設定にしましょう。

一途である事は、重要です。

ここでポイントなのは、決して元には戻らない失った大切な存在を設定する事です。

家族や友人を失ったのなら、失った本人は望み通りに戻らない様にします。

死に別れるでも、裏切られるでも、もう元の状態には戻りようが無い物を設定します。

その5:心の穴を埋める存在と出会う

愛される「切ない」キャラクターは、代替品を求めてその後の人生を生き続けます。

本物を再び手に入れられないからこそ、満たされる事は無く、穴を埋めようと必死に行動します。

代替品で無く、もう元の関係には戻れない相手を一途に想い続けるパターンもありますが、どちらにしても心の穴を埋める存在に対して、見返りを求めずに一途に尽くすのです。

その6:過去を清算する

本当に満たされる為には、悲しい過去と向き合い、何らかの方法で過去を清算する必要があります。

過去を清算しない限り、本当の意味で前には進めません。

重すぎる過去は、清算する為の対価も相応に重くなります。

その7:心の穴を埋めようとした行動が、代替品としていた別の誰かの救いになる

過去は清算され、負の連鎖が断ち切られ、「切ない」キャラクターが当初望んでいた形とは別の形で、努力が報われます。

その結果、命を落としたりする事もあるでしょう。

ですが、過去を清算したことで、キャラクターは救われるのです。

さらに、愛される「切ない」キャラクターの、悲しい過去から、満たされない現在までの全ての行動が、新しく出会った代替品となっていたキャラクターの救いになります。

バトンは、どんな形であれ次に繋がると言う事です。

例となる切ないキャラクター(ネタバレ注意)

ガンスリンガーガール

ガンスリンガーガールの主要キャラクターは、愛される「切ない」キャラクターだらけです。

その中でも、ジョゼとヒルシャーは、それぞれに重い過去を背負い、代替品としてジョゼはヘンリエッタと、ヒルシャーはトリエラとコンビを組んでテロリストと戦います。

面白いのは、ヘンリエッタとトリエラも重すぎる過去を背負い、ヘンリエッタにとってもジョゼは代替品である共依存関係にある事です。

ラストバトルの切なさも、何とも言えない気持ちになります。名作です。

ガングレイブ

主人公のブランドンと、相棒のハリーが最高のコンビだったのに、大きなすれ違いから争う事になる本作。

ブランドンが愛していたヒロインが組織のボスと結婚し、ブランドンはヒロインとボスの娘を、かつて相棒だったハリーから守るのが大きな流れです。

ブランドンにとって、ハリーに殺されたヒロインの代替品として、その娘が出てきます。

ブランドンとハリーの因縁と友情の物語です。これも名作です。

ベルセルク

ジュドーがキャスカを、蝕の中で最期の時まで守ろうとしたシーンでは、どれぐらいの人が泣いたでしょうか?

ジュドーにとっての大切な存在を失うきっかけは、ガッツの入団です。

親友となるガッツがキャスカの気持ちを引いてしまい、ジュドーの片思いは永遠に報われない物となります。

ですが、ジュドーは最期までキャスカのそばから離れる事なく、支えながら力尽きました。

気持ちも伝えられずに死ぬと言うバッドエンドながらも、最後まで軽口を叩いていた生き様は切なさと同時に意地を感じて、本当に名シーンです。

終わりが見えない作品ですが、間違いなく超名作です。

メイドインアビス

ナナチとミーティも泣かせます。

人体実験によって呪われて半人半獣にされてしまった二人。

人格を失い、不死になったミーティを永遠の苦しみから救う為に、ナナチはミーティの殺し方を探します。

ミーティだった慣れ果てを救う為に殺すと言う「過去の清算」を完了するまで、ナナチはミーティに尽くす事が全てと言う切ないキャラクターです。

その愛らしさもあって、切ない過去を知った後は、愛さずにはいられない存在となります。

ナナチ可愛いよナナチ。

アドベンチャータイム

絵柄と前半のカオスな物語によって、見る人を選ぶ本作。

アイスキングとマーセリンの話は、そこだけでも見て貰いたいぐらい切なく、魅力的で面白いです。

36-A、B、52-A、59-A、77-B、88-Aがアマプラ配信中の話の中では、関連してる話です。

アイスキングは、例えるならマリオの「クッパ」の様な存在です。

お姫様をさらっては、自分の嫁にしようと日々婚活に励んでいます。

最初は、ガンターと言う名前のペンギンしか友達のいない、孤独な氷の魔法使いです。

シーズン1までは、ただの迷惑な、どこか憎めない悪役でした。

ですが、36話以降、アイスキングの過去が徐々に明かされ始める仕掛けがあるんです。

30分番組で36話以降に動き出す仕掛けなので、それだけで未見の人にはキツイのです。

ですが、36話分の伏線の重みがあり、52話や59話で詳しく過去が語られる話では、不意打ちの感動話に泣かされる人が続出しました。

以下、激しいネタバレです。

アイスキングは、ガンターと言うペンギンだけが友達で、お姫様と結婚したいだけのキャラクターとして登場します。

ですが、36話で、1000年前に話がさかのぼり、魔法を使える王冠を手に入れたサイモンと言う青年の、成れの果ての存在と言う事が判明します。

魔法の王冠は、強力な氷魔法が使える代償に、別次元が見えるようになり、気が狂うと言う、とんでもない代物だと判明するんです。

さらに、気が狂った事で恋人に逃げられ、それからサイモンは失った恋人を、気が狂いながらも1000年間求め続けていた事も分かります。

気が狂いながらも失った恋人の代替品として、お姫様を求めていたんです。

既に、かなり「切ない」ですよね。

52話で、サイモンことアイスキングと同じく、1000年前から生きているヴァンパイアクイーンのマーセリンが、実はアイスキングと知り合いと言う事が判明します。(黒髪がマーセリン)

しかも、マーセリンが知り合いだったのは、気が狂う前のサイモンの方なんです。

59話で、マッシュルーム戦争(劇中の終末戦争)を生き延びたサイモンと、幼いマーセリンが、大戦後の化け物(ゾンビみたいなやつ)で溢れた世界を二人で生き抜いてきた過去が明かされます。

マーセリンが劇中で持っていたぬいぐるみも、サイモンから貰ったものだと判明します。

さらに、サイモンは、気が狂う事を分かっていながら、まだ幼いマーセリンを化け物から救う為に、魔法の王冠をかぶり続け、それが原因で気が狂ってしまった事実が判明します。

サイモンが、マーセリンを助けようと決死の覚悟で、すぐに狂わない様に歌いながら王冠を被って戦う姿は、犠牲的でかっこよすぎます。

話の最後に、王冠によって気が狂う事で、サイモンはマーセリンの事をガンターと呼び始めます。

ここで、アイスキングがガンターと呼ぶペンギンが、マーセリンの代替品である事が分かります。

サイモンがアイスキングになり1000年間、マーセリンと一緒にいたかった事だけは、気が狂って記憶が無くなっても変わっていない事が分かる訳です。

また、52話を見ていれば、マーセリンが、気が狂ってもサイモンの事を1000年間、家族として慕っていたと言う、滅茶苦茶切ないキャラクターと判明する訳です。

以降、アイスキングが気が狂った行動をしても、視聴者はアイスキングの事を憎めません。

絵柄で可愛い話を想像して油断して見ていると、泣く事になります。

以下、アイスキングとマーセリン関係の話をピックアップしておきます。

アマプラの見放題でシーズン6の途中まで視聴できるので、興味がある人は見てみてください。本当におすすめです。興味が出たら、全話見てほしい名作です。

  • 3-A:アイスキングの花嫁
  • 4-A:ハートを奪われて
  • 6-B:恐怖のヴァンパイアクイーン
  • 8-A:人生のお楽しみ
  • 9-A:結婚式パニック
  • 11-A:マーセリンはご主人さま
  • 12-A:バブルガムの極秘指令
  • 14-A:王様に忠誠を
  • 15-A:パパは魔王、B:誰かが見てる
  • 19-A:忍者!
  • 23-B:映画を僕と共に
  • 25-B:ヴァンパイアの修行
  • 26-A:愛は勝つ、B:本当に愛は勝つ?
  • 28-A:記憶の中の記憶、B:必殺お仕置き人
  • 29-B:ありがとう
  • 30-A:フィオナとケイク
  • 31-A:動けない!、B:戦え、魔法使い
  • 32-A:僕の大切なもの
  • 36-A:素敵なクリスマス その1、B:素敵なクリスマス その2
  • 37-A:マーセリンのクローゼット
  • 40-A:五つの物語
  • 43-A:ナイトスフィアの支配者、B:パパのやんちゃ娘
  • 44-A:いとしのモンスターワイフ
  • 45-A:現実の向こう側
  • 49-B:レディとバブルガムの冒険
  • 51-B:留守番キライ
  • 52-A:君を忘れない
  • 53-B:ジェイクの願い
  • 54-A:続・5つの物語
  • 55-B:フィオナとマーシャルリー
  • 57-A:不思議なダンジョン
  • 59-B:サイモンとマーシー
  • 60-A:コワレタセカイ
  • 62-A:パーティー荒らし
  • 64-A:彼女は島女、B:続々・5つの物語
  • 67-A:夢のお告げ、B:空の魔女
  • 71-B:赤が欲しい!!
  • 73-A:アイスキングの相棒
  • 77-B:ベティ
  • 81-B:マーセリン&ランピー
  • 83-A:理想のプリンス
  • 85-B:楽しいバス旅行
  • 88-A:エバーグリーン
  • 94-B:アイスキングの親友
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“【なるほど】愛される「切ない」キャラクターの創り方” への5件の返信

  1. 最近、アドベンチャータイムの最終エピソードを見ましたが、なんと最後はアイスキングとその恋人べティの死に別れって言う
    主人公のフィンとジェイクを完全に食う形で締めた感じです
    まさに主人公を食ってしまった最強のキャラ(悪役)
    凄い魅力的なキャラ、アイスキング
    アメリカアニメ、ホンと侮れません。

  2. コメントありがとうございます。
    アドベンチャータイムの絵柄とギャップのある物語運びとか、展開の意外性は本当に魅力的ですよね。
    日本で、もっと大勢の人に見て欲しい作品の一つです。

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