【連載第7回】けっこう真面目な魔法の歴史。現実で魔法がどのように生まれ、どう変わっていったのか

魔法の歴史のお話

この記事では、魔法の歴史について多分に推測を含んで考察していきたいと思います。

神話や宗教にも触れますが、それらを否定も肯定もする意図はないので、悪しからず。

近代ヨーロッパの魔法

1241年にロビンフッドが亡くなり、1378年に生まれたクリスチャン・ローゼンクロイツによって薔薇十字団が結成されたり、様々な出来事を経て時代は流れた。

初期の近代ヨーロッパでは、キリスト教の認めた「合法魔術」が発展していた。

長年、研究された「占星術」や「錬金術」や「カバラの数秘術」によって「世界の法則」は、何らかの秘密の形で隠れていると知識人は考えていた。

その考え方は、キリスト教とも相性が良かった。

世界に隠された「記号」を探すという「探求」の基本に則り、キリスト教神学は「摂理」を探求するために、万物の「記号化」を行っていった。

だが、世界に隠された記号を探す事を広く許した事で、キリスト教は思わぬ痛みを味わう事になった。

研究された「神学」や「合法魔術」が、優秀な「魔法使い」達によって研究、体系化され、詳細が具体化し始め、そこに「神秘」は無くなり始めていたのだ。

つまり中世に大学が出来て以来、「魔法」の「学問化」が起きた事で、神秘を「解明し切る」という事案が発生しだした。

神秘は、要因や原因が分からない「超常現象」だからこそ神秘なのであって、構成要素が解明してしまえば、それは、もはや神秘ではない。

こうして「魔法」から「科学」が生まれたのが、この時代だった。

一般には、科学革命と呼ばれるこの時期に

  • 占星術→天文学
  • 錬金術→科学、化学

の様な、今に繋がる学問の誕生があったのだ。

ルネサンス期

14世紀に突入すると、もはやキリスト教会にとっては、何もかもが手遅れだった。

「魔法」と「科学」が同居する世界で、キリスト教会は宗教改革を強いられる。

封建社会は、今までの文明と同じように権力が機能不全を起こし、内政は混乱。

外国とは戦争が続き、文明の完全な貨幣経済化が起きたのもこの頃だ。

あまりにも激しい時代の変化に対応できず、社会は権力者の腐敗と共に退廃し始めた。

だが、この頃から、現在に当時の資料が多く残っていて、当時何があったのかが具体的に、良い塩梅で分かり始める。

その為か、ファンタジー世界で描かれる「中世ヨーロッパ風の世界」は、「近代ヨーロッパ」の方が近かったりする事も多い。

恐らく、残された資料の多さと、「魔法」と「科学」が同居し「宗教」が力を持っている世界観が魅力的だからだと思われる。

近代の魔法使い

マルシリオ・フィチーノ(1433~1499)、ネテスハイムのハインリヒ・コルネリウス・アグリッパ(1486~1535)、テオフラストゥス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイム(別名パラケルスス、1493~1541)、デッラ・ポルタ(1538~1615)、トマソ・カンパネッラ(1568~1639)と、この時期は有名な魔法使いに事欠かない。

その中でも、飛びぬけて有名なのは「パラケルスス」だろう。

漫画「鋼の錬金術師」の主人公兄弟の父親「ホーエンハイム」のモデルでもある。

著書は「妖精の書」「アルキドクセン」「ヴォルーメン・パラミールム」「正餐論」「物性論」「ホムンクルスの書」と、錬金術関連の書物が多いが、錬金術師であると同時に科学者であり、医者でもあった天才である。

近代の学者

それと、もう一人ピックアップして紹介したいのはアタナシウス・キルヒャー(1601~1680)だ。

イエズス会の司祭であると同時に、キルヒャーは学者でもあった。

ルネサンス期の終わりごろに活躍していた事もあり「魔法」との接点は薄く「純粋な学者」に近い存在だ。

東洋学、地質学、ヒエログリフの解読、地理学、音楽理論の研究、磁性研究、光学、詩学、天文学と多岐にわたり研究し、医学の世界では伝染病の仮説を立て、予防して見せた。

医者としての功績は素晴らしいのだが、失敗も多い。

ヒエログリフの解読には難しく考えすぎて失敗してしまい、地質調査の際、恐竜の化石を調べたが、見当違いな仮説を立ててしまうなど、後世に響く大失敗も多い(ヒエログリフや化石の正しい認識を遅らせた男として有名になってしまった)。

偉大な学者だったキルヒャーだが、司祭だった事もあり、神秘を信じていた為に、科学に思考が染まっておらず「おしい」仮説が面白い人でもあった。

と言っても、キルヒャーだけが面白いのではなく「魔法」と「科学」が分離し切っていない時代なら、仕方がないと言った方が良いかもしれない。

例えば、

  • 磁性も、重力も、愛も、引き付けあう力
  • ヒマワリは、太陽を見続ける
  • 雨が降ると虹が出る
  • アヘンを使うと催眠状態になる
  • 月の大きさで潮の満ち引きが変わる

みたいな、原因は分からないが関連している事柄に気づき始め、人々はそこに「神の神秘」や「魔法」を感じた。

すぐに、科学的解明をしようとは思わなかったのだ。

それだけならいいが、仮説が大間違いと言う事も往々にしてあった。

例えば、

  • レモンバームの葉は形が心臓に似ているから、心臓に良い
  • クルミは形が脳味噌に似ているから、脳に良い
  • 水銀は、不老長寿の薬の材料になる

この様な勘違いは、下手をすれば命を落としたりにも繋がった。

だが、思わぬ副産物を得る事もある。

バケツ60杯分の尿を沸騰させて「金」を作ろうとした事で「リン」を作る事に人は成功している。

この失敗が無ければ、もしかしたら「マッチ」の発明が遅れかもしれない。

近代の宗教

近代ヨーロッパ、ルネサンス期。

宗教改革、科学革命、貨幣経済化、政治腐敗、疫病の蔓延。

社会システムの急激な変化と、社会不安。

キリスト教会は、これらに対応しなければならなかったが、余りにも無力だった。

科学は天敵で、金を稼ぐ策は無いし、伝染病を止める手段など知る由もない。

宗教改革と科学の登場によって権力が落ち、貨幣経済化が進むことで力の象徴が「貨幣」になり、疫病の蔓延で人々は不安に陥っている。

その中で、腐敗している政治の権力者とは自分達なのだ。

この状態を解決する策として考案されたのは、簡単に言えば「敵を作る」事だった。

どういう事か?

一石三鳥の計画

科学はキリスト教から見れば、まだ「魔法」であった。

聖書から外れる事柄は、基本的に異端であり、邪魔だ。

異教徒も邪魔でしかない。

邪魔者を消したい。

それにしても、金が欲しい。

貨幣経済化が進んでしまった事で、とにかく金が欲しくてたまらない。

そこで思いつく。

「邪魔者から金を奪えば、金は手に入り異教徒も科学者も消せる」

更に気付く。

「伝染病の蔓延も、邪魔者のせいにすればいい」

そして始まったのが「邪魔者を消し」「民衆を味方につけ」「金を得る」一石三鳥の計画。

そう、「魔女狩り」である。

キリスト教会は、貨幣経済化と内部腐敗によって、数百年ぶりに再び悪魔を自らの手で作り出してしまった。

いや、以前作った悪魔を再利用しただけかもしれない。

そして、今回は掲げる正義など、どこにも無いのだが、止められる者も誰もいなかった。

次回予告

次回、魔女狩り編。

「神の奇跡」では無く「悪魔の印」を探す様になったキリスト教会の暴走。

キリスト教会が生んだ、新しい「魔法」の存在。

「悪魔」と「魔女」。

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