【連載第8回】けっこう真面目な魔法の歴史。現実で魔法がどのように生まれ、どう変わっていったのか

魔法の歴史のお話

この記事では、魔法の歴史について多分に推測を含んで考察していきたいと思います。

神話や宗教にも触れますが、それらを否定も肯定もする意図はないので、悪しからず。

魔女狩りの始まり

魔女狩りの歴史は12世紀から始まっていたが、本格化したのは15世紀以降と言われている。

当時、魔女狩りがキリスト教会が抱えた問題を一石三鳥で解決する秘策として登場し、当初ターゲットにしていたのは「ユダヤ人」であった。

魔女の鷲鼻と言うシンボリックなイメージは、当時のキリスト教の人々がユダヤ人に悪いイメージを持たせる為の謀略であり、「サバト」と言う言葉も、ユダヤ人の安息日からつけられていた。

つまり、最初の魔女狩りは、反ユダヤ主義のキリスト教会による運動が始まりだった。

運動が本格化する15世紀に入ると、悪魔や異端者と言ってユダヤ人を吊るし、財産を奪い取る形だった従来の魔女狩りは、変化し始めた。

文明の発展による人口の密集、不衛生な環境、外界から運び込まれる様々な物品、複数の要因によって伝染病が蔓延した時、ウィルスなんて知りもしない当時の人々は、見えない恐怖に対して原因をこじつける事になる。

当然「悪魔」「魔女」「魔法」が市民の近くに実在し、常識の概念となっていた時代である。

「魔女」と「伝染病」は、ほどなくして因果関係があるとして、いとも容易くこじつけられる事になる。

当初は、キリスト教会もそれで問題はなかった。

免罪符を売り、魔女としてユダヤ人を殺しては財産を奪いを繰り返し、教会は貨幣経済化が進んだ社会でも、経済力と信者からの信仰を獲得する事に成功し、圧倒的な権力を握り続けた。

しかし、いつしか歯車が狂い始める。

魔女狩りの変化

伝染病は、いつまでたっても解消されなかった。

それはそうだ。

魔女と言っていくらユダヤ人を殺しても、人々を本当に蝕んでいるウィルスは居心地の良い不衛生な環境でピンピンしているのだ。

すると、人々の行動は狂い始める事になる。

当初は、邪魔なユダヤ人を殺す方便と言う側面もあったのだが、そんな余裕はなくなり、次第に疑心暗鬼に支配されるようになる。

人々は、最初はキリスト教会が「悪魔」や「魔女」と言う「嘘」の設定によって邪魔者の排除をしていた事を世代交代によって忘れ、残ったのは「嘘の設定」だけとなっていた。

恐らく、キリスト教会側としては想定外の部分も多分にあった筈だ。

人々は「嘘の設定」とは知らずに従い、社会に隠れている「魔女」を探す様になってしまった。

さらに、この社会的な機運を利用して「魔女」として「邪魔な相手」を消そうという人々まで現れたのだ。

この、小さくも迷惑な「嘘」から始まった運動は、「嘘つき」が不在の状態で人々を突き動かしはじめ、歴史的に見ても異様な「集団ヒステリー」と言っても良いレベルの社会的大混乱を巻き起こした。

ヨーロッパ各地では魔女裁判が行われ、異端審問官やパニックになった人々によって、最終的には5万人前後の無実の人々が魔女として、凄惨な拷問の末に殺されてしまった。

こうなっては、神秘魔術、自然魔術、悪霊魔術なんて合法非合法の区別もなく、錬金術師や占星術師、しまいには学者の命まで危険にさらされる事となった。

1412年に生まれたジャンヌ・ダルクは、1431年に教会にとって都合が悪い存在だと判断された末に魔女として焼き殺されたが、この悲劇は魔女狩り全体としてみると、有名でこそあるが、ほんの序章に過ぎなかったわけである。

自分達で生み出した「嘘の存在」である「悪魔」や「魔女」をいつからか信じるようになり、恐れるあまり、無関係の人や、時には仲間を死に追いやる事になったのだから皮肉が効きすぎた事件である。

ある意味で「嘘」こそが「悪魔」や「魔女」であり、本当の「魔法」だったのかもしれない。

中近代ヨーロッパ

16世紀、ニコラウス・コペルニクスとガリレオ・ガリレイによって地動説が唱えられた。

天文学が発達し、科学解明時代に突入する。

魔女として殺されない様に振舞う事に人々が慣れた頃、ようやく神秘性や秘儀性が剥ぎ取られ、宗教や魔法を守っていた超常的力という幻想のメッキが剥がれ落ち始める。

この時代に、フリーメーソンが結成され、サンジェルマン伯爵やカリオストロ伯爵が歴史に登場する。

世界の人口は5億人を超え、この頃の先進国に住む知識人たちの間で、ようやく「魔法は不合理」と言う「魔法の完全否定」が時代に登場した。

だが、魔法が死んだわけではなかった。

キリスト教を始めとした宗教が、その力を失ったわけでもない。

学者が「すべてを理論的に解明できる」事に確信を持った最初の時代と言うだけで、科学によってすべて神秘を剥がしきる事は出来なかった。

科学を始めとした学問の津波によって、洗い流されなかった「残留物」を見て、人々は「真の魔法」や「真の奇跡」が存在する事に確信を持ち「魔法」も「宗教」も、むしろ力を強めるに至った。

次回予告

次回、18世紀以降の魔法。

科学の確立によって、以前以上に勢いを増す事となった魔法の世界。

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