【連載第10回】けっこう真面目な魔法の歴史。現実で魔法がどのように生まれ、どう変わっていったのか

魔法の歴史のお話

この記事では、魔法の歴史について多分に推測を含んで考察していきたいと思います。

神話や宗教にも触れますが、それらを否定も肯定もする意図はないので、悪しからず。

18世紀以降の魔法、後編

プロニスワフ・カスペル・マリノフスキー(1884~1942)が動機的人禍を黒魔術、公共の利益を白魔術と定義したり、エドワード・エヴァン・エヴァンズ=プリチャード(1902~1973)が意図的な呪術をソーサリー、非意図的な妖術をウィッチクラフトと定義した。

元は、科学と同じところにあった「魔法」だったが、科学の登場と発達によって合理性を剥がされてしまった事で、その多くは「実証主義へのオルタナティブ」な存在になってしまった。

事象が原因不明である「オカルト」である事が「魔法」の証明と言う事になったのだ。

本来持っていた「生きる為の知恵」や「世界の法則」と言う面での「魔法」は、皮肉にも死に絶え、残された「魔法」は「不可思議な物」と言う、科学にも宗教にも属さない「隙間の存在」にされてしまった訳だ。

そんな流れの中、ジェラルド・ガードナー(1884~1964)は、キリスト教によって駆逐された多神教の神々への信仰をベースとした「ウィッカ」を創設し。アレイスター・クロウリーとは別の道で魔法の復活を目指した。

この様な、魔法の世界において原理主義的な流れも起こったが、科学の味を知ってしまった人類全体の流れからすれば、極一部のロマン主義や懐古趣味が大半であり、魔法の復活には遠く及ばなかった。

19世紀の魔法

すっかり魔女狩りは過去のものとなり、発達する科学によって馬車は自動車に、鉄道が物を運び、飛行機が空を飛ぶ時代がやってきた。

世界の大半は3大宗教で占められ、魔法の存在を心の底から信じている人が少数派となった時代でもある。

それでも、人々の間で「魔法」の概念だけは生き続けていた。

この頃の「魔法」は、本来の意味も価値をも失い、過去の遺物として人々の想像を膨らませる「魔法それ自体がシンボル」と言う立ち位置となっていた。

1818年に出版された「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」で登場したフランケンシュタインの怪物は、神話と科学が融合した画期的な物語だった。

※「フェイト」に登場する「フランケンシュタインの怪物×戦う美少女」

1886年出版の「ジキルとハイド」は、二重人格が悪魔の仕業では無く、精神疾患と考えらるようになった時代に登場した読み物である。

そして1897年に出版されたブラム・ストーカーの「ドラキュラ」は、15世紀の実在の人物「ヴラド・ツェペシュ」の逸話と悪魔を足したキャラクター化であった。

※「ドラキュラ×アメコミ」でヒットした「ブレイド」

こういった娯楽作品によって過去と現代の想像が融合し、まったく新しい存在が生まれ始めた。

20世紀の魔法

人類の数は、20億人を超えた。

1926年には、ラブクラフトによって「クトゥルフ」と言う全く新しい神話の創造が行われたりもした。

※「クトゥルフ×オタク美少女」でヒットした「這いよれニャル子さん」

1930年になると「ダンジョン&ドラゴン」が空前のヒットを飛ばす。

このゲームは、古代神話と近代魔術を融合させた画期的なゲームであった。

「魔法」のゲーム化の中で、モチーフとなった古代神話や近代魔術をベースに「消費する仮想エネルギー」の概念が一般化した。

マジックポイント、マナ、オド、MPと言った概念である。

さらに、「黒魔術、白魔術」以外に「火、水、風」等の属性ごとの魔法の概念が生まれたのもゲームの世界に魔法が取り込まれた事による変化であった。

1937年、トールキンによる「ホビットの冒険」が発表され、1954年には後のファンタジー世界の方向を決定づける「指輪物語」が登場した。

「指輪物語」によって、ハイファンタジー世界の精密な構築、多様な異種族、魔法や魔王の在り方が決まったと言っても言い過ぎではない。

1962年に赤塚不二夫が作り出した「ひみつのアッコちゃん」の登場以降、様々な文化の吸収を図って「魔法少女」と言うサブカルチャーのジャンルが生まれた。

※「魔法少女×SF」でヒットした「魔法少女まどか☆マギカ」

1981年、パソコンゲームとして発表された「ウィザードリィ」は、明らかに「指輪物語」の影響を受けた作品として登場し、大ヒットした。

1986年には「ドラゴンクエスト」が登場。

ドラクエは、ウィザードリィを始めとしたRPGの影響を受けつつ、日本の漫画との融合を果たし、大ヒットした。

1986年には「リンクの冒険」の登場で「ゼルダ」シリーズが始まる。

※一押しキャラ「ミドナ」

1987年には「ファイナルファンタジー」が登場し、当初からビジュアル的な表現へのこだわりやキャラクターメイキング等によって他のRPGと差別化を図った。

日本ではドラクエと共に二大RPGとして君臨している。

1988年に「ロードス島戦記」が登場し、これはTRPGのリプレイが始まりであったが、RPGと小説との融合と言う側面もあり、時代の波に乗り大ヒットした。

そして、人類の人口が60億人に差し掛かる頃。

1996年、「氷と炎の歌」が発表され、これが2011年に「ゲームオブスローンズ」として空前のブームを起こす。

これは、中世のイギリスや薔薇戦争(1455~1485)をモチーフにした架空戦記にゲーム世界のファンタジーやゾンビと言った要素を融合させた作品で、滅茶苦茶面白い。

ファンタジー好きは必見。

※シーズン8で完結予定。

近い時期の1997年、「ハリーポッター」シリーズの登場によって「魔法」は、再定義される。

現実世界の裏側に存在する魔法の世界、魔法学校、魔法使いの血筋、架空の生物、特別な呪文、魔王の存在、等々の様々な「それまでの創作物でも散々使われた事のある魔法の要素」を「イギリスの文化」と深く融合する事で全く新しい物語に再構築し、世界的ヒット作となった。

「ハリーポッター」は、12世紀から17世紀まであった「魔女狩り」や、18世紀から19世紀まであった「オカルティズム」と言う「ネガティブなイメージのある魔法」を綺麗に迂回し、「ポジティブなイメージのある魔法」として「フィクションの魔法」を現代と見事に融合させ、人々に提示したと言う訳だ。

おわりに

抜けた事件や、重要人物がいくらでもあると思うので、この記事シリーズは後々追加・修正していくつもりだ。

ヨーロッパを中心にした事で、日本に最後しかクローズアップしなかったが、シルクロードを通って中国や朝鮮半島経由で宗教と共に入ってきた「魔法」によって、卑弥呼が生まれ、後に日本神話や陰陽師が登場したりするので、気が向いたらまとめたいと思う。

最後に、ローレンス・M・プリンチペとクロード・レヴィ=ストロースの言葉で「魔法」を説明して終わりたい。

プリンチペ

「理性と観察で因果関係を正当化出来ない物事、その原因を求める思考が呪術的思考だ」

レヴィ=ストロース

「有り合わせの材料でする思考こそ、野生の思考である」

この記事群が、新しい「魔法」を作る手助けになれば、幸いです。

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