キャラクター類型を知ろう!
物語を創る時に、絶対に欠かせないのが登場人物です。
主にキャラクターと呼ばれる架空の人物ですが、彼らには必ず「役割」や「機能」があります。
この記事では、様々な切り口でキャラクターの類型を見ていきたいと思います。
キャラクタータイプを分けていく
メインキャラクターの中でも欠かせない存在が「主役」や「主人公」です。
この良く似たキャラクターの類型は、厳密に言えば別物です。
名称 | 主役 | 主人公 | 語り手、狂言回し |
説明 | 主題の中心人物 | 行動視点の中心人物 | 観測視点の中心人物 |
この様に、役割によって分解する事が出来る為、ある作品では全てを一人のキャラクターが背負い、ある作品ではキャラクター毎に役割を分散する事が出来ます。
例えば、
名称 | 主役 | 主人公 | 語り手、狂言回し |
例:涼宮ハルヒの憂鬱 | ハルヒ | キョン | キョン |
例:ドラえもん | ドラえもん | のび太 | のび太 |
例:ショーシャンクの空に | アンディ | アンディ | レッド |
例:フラッシュ | バリー | バリー | バリー |
例:ターミネーター | T-800 | カイル | カイル |
例:シャーロックホームズ | ホームズ | ワトソン | ワトソン |
例:ブギーポップは笑わない | ブギーポップ | 複数視点 | ブギーポップ |
これ等の表を見れば分かる通り「主役」と「主人公」が同じ作品と別の作品もあれば、語り手を別に用意している作品、主役が敵対者の作品、主人公が複数いる作品と、構成は実に様々です。
「主役」や「主人公」、そして「語り手」は意識しないと同一視しがちですが、与えられた役割をこなす「機能」をどれだけ持っているかで、これだけの差が出る存在と言う事を分かっていれば、物語のバリエーションはその分だけ多彩になります。
次は、主役を別の切り口で見てみましょう。
名称 | ヒーロー | ヒロイン | ヴァージン |
説明 | 自己犠牲的に正しい行いをする。いわゆる男性的物語の主役。 | 本来はヒーローの女性版。男性的物語の恋人的役割でも使われる。 | 自己実現的に環境に対して抗う。いわゆる女性的物語の主役。 |
例:アイアンマン | トニー | ペッパー | |
例:シンデレラ | シンデレラ | シンデレラ |
表を見る通り、主役の定義によって更に細分化する事が出来ました。
自己犠牲的な主役(身を削って悪と戦う)と、自己実現的な主役(夢をかなえる為に行動を起こす)と言う物語の構造の差によって、表現にも差が生まれます。
ここまで見てきたように主役の存在が決まれば、相対的に必要なキャラクターが浮かんできます。
名称 | サイドキック | ヴィラン |
説明 | ヒーローを扱う物語で、ヒーローを補助する助手やパートナー、相棒となるキャラクター | ヒーローを扱う物語で、ヒーローの反対の存在 |
例:バットマン | ロビン | ジョーカー |
ヒーローの物語であれば、こういった役割のキャラクターが咄嗟に思いつくでしょう。
アーキタイプによる物語の構造的キャラクター分類
ここまで見て来た分類を含む、キャラクターのアーキタイプとして有名なのは、
キャンベルの構造的アーキタイプ | 説明 |
英雄(ヒーロー) | 冒険を通して成長を見せる存在 |
賢者(メンター) | 英雄を導く存在 |
仲間(アライズ) | 英雄を支える存在 |
使者(ヘラルド) | 英雄に切欠や動機を運んでくる存在 |
影/悪者(シャドウ) | 英雄を追い詰める存在 |
いたずら者(トリックスター) | 冒険を混乱させるコミックリリーフ |
門番(シュレスホールド・ガーディアン) | 冒険の入り口に立つ障害の存在で、キャラクターとは限らない |
変化する者(シェイプシフター) | 英雄を利用しようとする存在、味方として近づき罠にはめる事も |
これがもっとも有名でしょう。
他にも、別のアプローチをしたアーキタイプとして、
プロップの行動領域分割 | グレマスの行為項目分割 | 物語上の機能分割 | 説明 |
主人公 | 主体 | 主人公 | 問題に向き合う |
派遣者 | 送り手 | 依頼者 | 主人公を旅に送り出す |
対象者 | 主人公の旅の目標 | ||
贈与者 | 恵与者 | 援助者 | 主人公に試練を与え、力を与える |
助手 | 補助者 | 協力者 | 主人公の旅を支える |
敵対者 | 敵対者 | 敵対者 | 主人公と対決する |
偽の主人公 | 対抗者 | 主人公の手柄を奪おうとする | |
王 | 受け手 | 主人公の功績を認める | |
王女 | 主人公と結ばれる | ||
犠牲者 | 主人公に旅の危険を身をもって提示する | ||
語り手 | 主人公の旅を観測者として語る |
等があります。
これらを見ていくうえで最も重要なポイントとなるのは、物語の中にキャラクターを出した際、「この中のどれに当てはまるか?」を見る事よりも「キャラクターに役割があるか?」と言う、より根本的な所に目を向ける事です。
アーキタイプ等の類型は、非常に抽象的かつ広い範囲に適応出来る分類なので、キャラクターに役割があれば、自然と一つ以上は当てはまる物が見つかる筈です。
機能が明確になったキャラクターは、創作者にとっては物語の中で役割を果たさせる事が容易になり、結果、物語のクオリティ向上に繋がります。
また、登場キャラクターにタイプ毎の役割を割り振った際、まだ機能を持っていないキャラクタータイプがあれば、それが必要か必要でないかのチェックが出来る事も、非常に有用です。
で過去に紹介したパラダイムのパート(ビート)毎に、キャラクターが登場できるタイミングが限られています。
それもあわせて考える事で、構造主義的物語論は真価を発揮します。
別のアプローチ
もう一つ紹介するアーキタイプは、

- キャラクターの成長の仕方が「男性的(外面的)」か「女性的(内面的)」か、
- 行動原理が「与える」か「奪う」か、
- 精神の発育状態が「未熟」か「成熟」か「完熟」か、
でキャラクターを分割する、キム・ハドソンのアーキタイプ分割です。
物語上の必須機能では無く、ステレオタイプのキャラクターアーキタイプです。
それぞれ象徴する単語を見て、どんなキャラクターかイメージ出来るモノがあると思います。
この表が役立つのは、テーブルのグリッド毎に考えると、物語の必要要素がスッキリと分かる点にあります。
例えば、主人公をヒーローとヒロイン(あるいはヴァージン)で悩み、どちらかに決めたとします。
ヒーローに決めると、自動的に他に必要なキャラクターアーキタイプが見えてきます。
ヒーローには王や賢者と言った旅を援助するキャラクターが必要になります。
もっと具体的に例えましょう。
- スターウォーズのルークは、ヒーローです。
- オビワンが、賢者に該当するのは分かると思います。
- 王のグリッドは父等も象徴し、ここには育てのオジサンが入ります。
- ルークは当初、旅立ちを拒絶しますが、これはヒーローの正反対のアーキタイプが臆病者である事に符合し、臆病者がヒーローに変化する必要がある事が分かります。
- 倒すべき暴君は、ダースベイダーです。
ヒロインに決めた場合はどうでしょう?
- シンデレラは、ヒロイン(ヴァージン)です。
- フェアリーゴッドマザーは、老婆のグリッドで、良い魔法使いです。
- 姉達は、悪女ですね。
- シンデレラは、当初はヒロインの正反対の娼婦のグリッドで、奴隷の様に扱われています。娼婦はヴァージンに変化する必要がある事が分かります。
- 継母は、シンデレラを支配する魔女です。
分かりやすい例を選びましたが、物語に必要な要素が、主人公を決める事で半自動的に決まったのが分かりますね。
表の行や列に沿って、左右や上下に考えていけば、重要要素を考えやすくなっている訳です。
表現の類型キャラクター
ストックキャラクターと呼ばれる類型があります。
これは、文化的類型、または、ステレオタイプの、強い基盤を持った個性、しゃべり方、その他の特徴を持つ、キャラクターパターンです。
構造ではなく、表現に関わる類型になります。
- 「スケプティック」皮肉屋。
- 「エモーション」感情的。
- 「クール」冷静沈着。
などは、基本で「ツンデレ」や「貧乏人のふりをする金持ち」等、どこかで見た事のあるお決まりのキャラクターが、これに当たります。
テオプラストスの「人それぞれ」
には、古くからあった多彩なキャラクターパターンが収録されているので、面白いですよ。
おわりに
いかがだったでしょうか?
物語の構造的に必要となる役割のあるキャラクター類型と、
いわゆる「キャラを立たせる」為の表現のキャラクター類型は、
長々と説明した通り、別物である部分がありました。
ですが、物語に登場するキャラクターは、必ず両方を所持し、「主人公」や「主役」は同一キャラクターの事も多く、同時に「ヒーロー」でもあり、その上に表現上のキャラクターが乗って、一人の調和の取れたキャラクターとしか見えません。
そうなると、不必要に細分化せず、「主人公=主役=ヒーロー」みたいな考え方をしても大きな問題はありません。
ただ、キャラクターの機能として、それだけの物が内包されている事は、知っておいて損は無いでしょう。
実用が意外と難しいキャラクターの類型ですが、創作の現場で実用的に役立つ助けになればと思います。
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面白い物語を創りたい同志諸君、よろしくおねがいします!
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もし良ければアンケートに答えて欲しいな。:)


“キャラクターの類型・役割・タイプを色んな切り口でまとめてみました!” への3件の返信