「変化」が感動を呼ぶ
映画を見ていて、自然と感動する事って、ありますよね。
感動って言っても、何も泣くだけが感動じゃなくて「感情が動く」事全部が感動です。
その感動には、大きく分けて「喜怒哀楽」があります。
細かく分ければ、こんなにたくさん。

どこで感動する?
人が感動するポイントは、大きく分けて3つあります。
- 「キャラクターの成長の瞬間」や「どんでん返しの瞬間」と言った溜めが必要な『仕掛けによる感動』
- セリフ、表現、画の情報量、空気感と言った『細部が刺さる感動』
- 唐突な驚きによる『ギャップによる感動』
これらを総動員して、創作者は見る者を夢中させる必要があります。
仕掛けによる感動
物語で欠かせない感動が、この『仕掛けによる感動』です。
観客の大半は、これに対してお金を払っていると言っても良いぐらい重要な物です。
仕掛け方のコツは「ピタゴラ装置」です。
一見バラバラな物が、一つの連鎖装置として機能している事に気付いた時に、人は感動します。
そして、その連鎖装置の中では「主人公の変化」が描かれる事が、望まれます。
主人公が「成長」したり、何かを「入手」したり、そんな「変化」を連鎖装置の様な物語を通して見せる訳です。
細部が刺さる感動
これは、何かを「尖らせる」事で、感動を呼ぶ手法です。
「尖らせる」とは、極端にすると言う事です。
手法として「繰り返されるセリフ」「繰り返されるシンボル」と言った「繰り返し」によって「尖らせる事で刺す」と言う手法があります。
例えば、映画「インセプション」に登場するコマは、繰り返されるシンボルで、登場するたびに存在として尖っていき、最終的にはラストシーンの重要な小道具として提示されます。
映画「モンスターズインク」では、毎回仕事に行こうとするとトラブルに遭うモンスターが繰り返し登場し笑いを誘います。
ゲーム「タイタンフォール2」では、BT-7274と言う主人公の乗るロボットのAIが、主人公をピッチング(掌に乗っけて投げる)度に「信じて」と言うのが、クライマックスで効果的に使われます。
ゲーム「エースコンバットゼロ」では、主人公の相棒であるピクシーが「よう相棒、まだ生きてるか?」と主人公に繰り返し語りかけ、物語を通して意味が変わっていきます。
この様に、注目させたい、印象付けたいモノや事を「繰り返す」手法は、非常に効果的です。
繰り返し出てくる同じモノ、事が変化するのは、仕掛けによる感動を分かりやすくするのにも役立つため、同時に使われる事が多い手法です。
別の手法だと、「徹底的に処理しきれないぐらいの情報を詰め込む」のが、技術的には難しいですが、シンプルな手法です。
例えば「マクロスシリーズ」の通称板野サーカスは、ハイスピードで動く戦闘機と無数のミサイルの攻防や回避行動を立体的に描写する事で、「何が起きているかは分かるが、細かい所は良く分からない」と言う、情報過多の気持ち良さがあるアニメーションとして有名です。
映画「トランスフォーマー」のロボットの複雑な変形シーンも、この手法で行われています。
映画「インセプション」の夢の中で町が弾けたり、曲がって地面同士が天地で向かい合うシーンも、何が起きているのか分かるが情報過多になる名シーンです。
小説より漫画、漫画よりアニメーションと言った具合に、より多くの情報を詰め込めるメディアの方が向いている手法と言えるでしょう。
ギャップによる感動
これは、笑いや、ホラーのビックリするシーンなどでよく使われる手法です。
笑いでは、話や絵の中に流れを作り、その流れでは在り得ない展開が唐突に挟まり、そこに「音などで韻を踏んでいる」や「流れの中の歯車のズレが分かる」といった「見ている人の納得」が来ることで笑いに繋がります。
真面目な話をしていたのに、唐突に非道徳的や馬鹿馬鹿しい展開は、お約束です。
ホラーの場合、大抵は「この後、怖いのが来ますよ」と言う予告をしてから、いつ来るか分からない状態のまま話が進んでから「タイミングをずらして怖いのが来る」事で、予測できずに驚く事に繋がります。
来ると思ったら来ない。
安心したら来るって感じです。
ここら辺は、お化け屋敷も同じです。
どちらも「仕掛けによる感動」とも近いですが、仕掛けとしてシンプルです。
連鎖装置と言うよりは、仕掛け時計です。
お笑いは、予想外の人形が出てくるカラクリ時計、ホラーは、時限爆弾ですね。
「変化」に必要な物
感動の種類は分かりました。
それを作るコツも、なんとなくわかったと思います。
では、変化を表現する為には、何が必要でしょうか?
変化とは、対象が別の物に変わる事ですよね。
つまり「元の状態」と「別の状態」が必要になります。
笑いの場合は、「大喜利の様な柔軟な発想」が必要になります。
ホラーの場合は、見る人との読み合いに「お化け目線」で勝利しないと、驚かせません。
それぞれ、急激な変化と言うギャップで一気に持っていく事が重要です。
情報過多にするには「過剰さと精密さ」が必要になります。
雑だと、そもそも情報過多では無く、情報が散らかっていると判断されてしまうからです。
名作絵本「ウォーリーを探せ」みたいな、一目で分からないけど、精密に描かれ方が良い訳です。
仮に、絵が下手な人が描いた「ウォーリーを探せ」もどきをやる事になったら?
描き分けがハッキリしていたり、丁寧に清書されていれば、まだ見れます。
ですが、書き殴られていたら長時間見るのは辛くなるでしょう。
過剰さと共に、精密さも必須なのです。
普通の情報量から、一気に過剰で精密な情報の海に変化させる事で、一瞬認識がショートする感覚が気持ち良いので、当然ですが全編情報過多だと、物語としては追いにくいです。
情報量に緩急をつけましょう。
最後に、仕掛けによる感動ですが、そもそも物語とは、何でしょうか?
主人公の「行動を通した変化」を描くものです。
仕掛けによる変化とは「行動の結果の変化」です。
物語は「世界・人物・行動」で出来ていると、このサイトでは何度も説明してきました。
これは、
- 行動の結果、主人公が変化=主人公の成長
- 行動の結果、世界の見え方が変化=どんでん返し
の2種類がある事を表している表現でもあります。
主人公の成長とは、精神的な欠点を克服する事です。
どんでん返しは、最後に一つ重要情報を足すだけで、世界が本当の姿を現す事です。
この「仕掛けによる変化」に必要な物は、「変化させるモノ(欠点か世界)」で、「足りない物」を集める事にあります。
どんでん返しの場合、最初は、嘘で塗り固められた世界を見ている事になります。
「嘘を暴く真相」と言う「足りない物」によって「本当の世界に意味が反転する仕掛け」が重要です。
映画「スティング」では、どんでん返しが何度も効果的に使われているので、たった一つの情報で意味が反転する世界を学ぶのには最適です。
映画「ユージュアル・サスペクツ」や映画「シックス・センス」も、最高のどんでん返しを持った映画です。
後回しにした、主人公の成長ですが、こちらは「精神的な欠点を、結果的に反転させる仕掛け」が重要です。
具体的には、欠点を浮き彫りにし、克服しなければ破滅したり、欲しいものが手に入らない状況をデザインする事になります。
例えば、映画「ライアーライアー」では、嘘をつく欠点を克服しなければ、大事なものを失うクライマックスまでに、主人公は嘘の悪さや、正直さの大事さを学ぶ行動を取ります。
まず欠点があり、欠点の便利さ・害悪さ・欠点の反転した物の大事さ、などを順に学び、最後に欠点克服の試練が待っている為、視聴者は主人公と共に自然と学び、最後の選択で成長を示せれば祝福する事が出来ます。
主人公の成長に関する基本は、大体これで、欠点と、それが反転した状態の変化が決まれば、作る際は一気に考えやすくなります。
おわりに
物語の中の変化によって感動させるコツ、と言う事でいくつか紹介しました。
この記事が、創作の幅が広がる助けになればと思います。