モチーフの機能を説明します
モチーフとは、題材です。
モチーフテーマとは、表現する物の主題となる題材を、ここでは指します。
では、モチーフテーマの選び方って、気を付けていますか?
今回は、モチーフテーマ選びについて、大事な事をこっそりと解説しようと思います。
モチーフテーマには種類がある
と言う事で、モチーフのテーマには種類があります。
絵画であれば、りんごをモチーフにデッサンしたり、よくしますよね。
なんで「りんご」なのでしょうか?
例えば「ガンプラ」でも、良いじゃないですか?
でも「ガンプラ」は一般的にはならない。
これには、ちゃんとした理由があります。
その1:一般度
「りんご」と「ガンプラ」では、客観的な認識に違いがあります。
絵画の場合は「描く難易度」とか「目指す絵の練習に適しているか」みたいな理由もあります。
それら理由を除いても、一般的に描くモチーフは「ガンプラ」よりも「りんご」が選ばれます。
「ガンプラ」よりも「りんご」の方が、一般的だからです。
より手に入れやすく、触れやすい存在である以上、「りんご」は「ガンプラ」よりもモチーフとして選ばれる可能性が高い訳です。
その2:抽象度と具体度
まず抽象度、です。
うん、分かりませんね。
説明します。
「ガンプラ」は「ガンダム」の「プラモデル」で「ロボット」です。
つまり「ガンプラ」は、抽象的にするなら「ロボットのプラモデル」と言う事になります。
「ガンプラ」が含まれる概念ですが、より曖昧な表現ですよね。
逆に「りんご」を「ガンプラ」と近い抽象度にするなら「りんごの品種」を指定する必要があります。
「ガンプラ」は「ロボットのプラモデル」と言う抽象度にすれば「ガンプラ」よりは選ばれる可能性が高まります。
なんとなく、分かりますよね?
それでも選ばれにくいのは、1で触れた一般性に問題があるからです。
結局は一般性や普遍性で劣ります。
ですがデッサンの練習や、授業などで「りんご」を描くより「好きな漫画やアニメの絵を描きたい」と思った事のある人も、いると思います。
これにも、理由があります。
そこで、抽象度の反対の概念の登場です。
つまり、より具体的な物に対して、人は惹かれます。
例えば、「りんご」と「ガンプラ」では無く「キャラクターの絵」を描くとします。
その時「知らないキャラクター」と「好きなキャラクター」、あなたはどちらを描きたいでしょうか?
恐らく「好きなキャラクター」を選ぶ人の方が、多いと思います。
それは、既に「好き」と言う事もありますが、「既知」である事によって「情報の具体度」が違ってくる事で、より選びやすくなるからです。
ここまでの要素から分かる事
つまり、抽象的なモチーフは、幅広い層に理解されるが、愛されにくい。
反対に、具体的なモチーフは、狭い層にしか理解されないが、愛されやすい。
その際、重要になるのは、より一般的なモチーフの方が、広い層に選ばれやすい。
と言う事になります。
表現には適切なモチーフ選びが大事な事が、分かって頂けたと思います。
ですが、創作を、特に物語の創作に関しては、まだ足りません。
知らないと損をする最後の要素、それは……
その3:エピソード(歴史・逸話)
モチーフテーマに「歴史」や「逸話」がある物を、ちゃんと選んでいますか?
それを、設定として利用していますか?
「一般度」「抽象度」と来て、最後の要素は「エピソード」です。
具体的な「エピソード」、つまり、モチーフテーマに「歴史」や「逸話」がある物を選ぶことは、非常に重要なポイントです。
特に、具体化したモチーフの個々にエピソードがある物は、モチーフとして強力です。
好例をいくつか
このサイトでは、例として何度も取り上げていますが「刀剣乱舞」と「艦これ」は、非常に優れたコンテンツです。
モチーフテーマに「歴史ある業物の名刀」と「大戦時の具体的な記録が残っている戦艦」を選び、擬人化したコンテンツなのですが、ここまで説明すれば、もうわかると思います。
本編中に全てのキャラクターにスポットライトを当てずとも、モチーフテーマに既に「エピソード」がある事で、強烈なキャラ付けの下地がある状態での展開が出来る訳です。
そして、もう一例、やはりこのサイトで何度も取り上げた事のある作品「Fate」シリーズです。
「歴史や神話の英霊」をモチーフテーマにし、サーヴァントと言うシステムによって一並びのキャラクターにしている「Fate」は、当然、モチーフテーマの「エピソード」と言う点で言えば、他の追随を許さない強さを持っています。
これ等の作品は強烈な「エピソード」を内包したモチーフテーマをキャラクター化した事で、爆発的な人気を獲得しているのです。
おわりに
「エピソード」のあるモチーフテーマを選んだ方が良いか?
速さが必要なら、その方が良いでしょう。
「一般的」で「具体的」で「エピソード」があるモチーフテーマは、滅茶苦茶強いです。
認知されるまでの速さが違います。
ですが、必ず必要と言う訳でもないし、既知の歴史や逸話である必要もありません。
「一般度」も「具体度」も「エピソード」でさえ、時間をかければ必ず作る事が出来る要素だからです。
「スーパーマン」や「スパイダーマン」は、それ自体の歴史を重ねる中で「一般度」も「具体度」も「エピソード」も獲得してきました。
モチーフテーマには、「一定の一般度と具体度」があれば良く、物語であれば「エピソード」は劇中で描けば良いのです。
逆に「エピソード」を自ら獲得した作品は、それ自体がオリジナルになれるため、認知される速さが遅くとも、とても強力なコンテンツになります。
好きなモチーフテーマを、選んで良い。
でも、モチーフの「一般度」と「抽象度」と「エピソード」を、何も考えないで選ぶと、思わぬ遠回りの可能性がある事だけは、知っておいて欲しい。
今回は、そんな話でした。