今回は、構造と表現での分類
前回で、分類線を「物語の構造」と言う切り口にする事で、構造的なカテゴライズをしてみました。
前回は、例を提示するだけになってしまいましたので、ここで補足を。
「構造」で分けるには、どうすれば良いか?
物語の「世界・登場人物・行動」に関わっていて変えると、「物語の流れが変化する要素」に注目して分類すれば、「構造」による分類が出来ます。
今回の「表現」で分けるには、その逆の考えが必要になります。
つまり、変えても「物語の流れが変化しない要素」に注目して分類する事になります。
これは、ヒッチコックが提唱した「マクガフィン」に近い考え方です。
例えば、サスペンス物でタイムリミットを設定したい場合、納得感があれば「時限爆弾」でも「解毒にタイムリミットのある毒薬」でも、表現は何でもいい、と言うのが「マクガフィン」と言う概念です。
「表現」とは、「構造」の上に乗っていて、変えても構造の持つ流れに影響を与えないけど、見る者の「印象」に影響を与える要素と言う訳です。
あとで補足します。
これだけじゃ分からないですよね。
と、前置きがまた長くなりましたが、今回は構造と表現での分類、それと表題にある「マップ」について説明したいと思います。
いや、やっぱりマップから説明した方がいいかな?
分類=マッピング?
この感覚は、結構大事だと思っています。
分類=地図作り。
「は?」って感じる人もいると思いますが、この二つって、かなり似ています。
一度、考えてみて欲しいです。
例えばgoogleは、検索エンジンって言うウェブサイトの分類装置を作りました。
みんなも毎日使ってますよね?
そのgoogleが地図の作成に手を出した当初、きっと大半の人は「意味が分からない」と感じたと思います。
ですが、今となっては地図をgoogleが作ろうとしたのは、必然だったと分かります。
文字による検索は、文字のパターンに込められた意味から必要な物を探します。
一方で、地図による検索は、場所の座標によって必要な物を探し出すと言う事です。
ちなみに、時間と言う座標によって必要な物を探す物もあります。
それは年表です。
それをサービスにした物も、世の中には既にあります。
そう、ソーシャルネットワーキングサービスです。
SNSですね。
SNSとは、個人と言う切り口で、一人一人が年表を作り、公開する物でもあります。
コミュニケーションツールとして見られていますが、コミュニケーションと言う行動の履歴を年表にしている訳です。
ちなみにちなみに、サービスは終了しましたが、googleはgoogle+と言うSNSサービスを運用していました。
世界中の情報を整理する事を目標にしているgoogleは、分類について日夜努力する会社でもある訳です。
分類=地図作り、なんとなく分かりましたか?
今回は物語表現の分類から
上で、表現の分類とは「変更しても構造が変わらない要素」と言いました。
それって何でしょうか?
例えば、世界観で言えば、時間軸と空間軸は、どこに変化させても物語には表現の変化しか生まれません。
日本を舞台にしても、アメリカを舞台にしても、ロシアや中国を舞台にしても、恋愛映画は恋愛映画ですし、アクション映画はアクション映画です。
キャラクターも、見た目の変化だけでは、表現の変化しか生まれないです。
パーソナル、メンタル、フィジカル、キャリアの4要素の中で言う、フィジカル情報ですね。
髪の色が金でも黒でも、目の色が青でも茶でも、背が高くても低くても、恋愛映画は恋愛映画、アクション映画はアクション映画です。
キャリア情報も、合う合わないはあっても、何でも良いモノです。
探偵でも、刑事でも、弁護士でも、犯人を追う事に設定上困りません。
パーソナルも、そうです。
名前が太郎でもジョンでも、物語は変わらない。
メンタルも、そうです。
短気でも、呑気でも、女々しくても、男勝りでも、物語は変わらない。
これらは、全て「表現」に関わってくる要素です。
つまり、これら「分かりやすい要素」での分類は、表現の分類になり、そこから分かるのは「表現によるストックキャラクター(一種のステレオタイプ)」の分析になります。
と言う事は、物語構造の分類は?
察しの良い人は気づいてると思いますが、物語の構造での分類は「行動」にかかってくる要素が主です。
「行動」は、世界と人物に必ず関係します。
世界と言う環境に、意思のある人物が置かれて、初めて「行動」が決まります。
世界と人のどちらかにしか影響を与えない要素を変えても、「行動」は大きく変わりません。
だから、恋愛映画なら「好きな人がいる環境、好きな人がいる人」と言う状況があって、初めて「恋愛行動」に結びつく訳です。
冒険だって、正義の味方だって「それが何か」を考えてみれば、分かる事があります。
冒険は「危険な環境、危険な環境に行かないとならない人」がいて、初めて「行動」に繋がります。
正義の味方は「悪者のいる環境、悪者に対処するべき人」がいて、初めて「行動」に繋がる訳です。
つまり、恋愛や冒険やヒーローは、一言で「世界と人と行動」を決める事が出来る意味を含んでいます。
だから、こう言った要素で分類をすると、自然と構造での分類になります。
反対に、行動をデザインしうる「世界」や「人物」の要素で分類を重ねれば、表現面から構造カテゴリーを限定する事が出来ます。
「悪者のいる環境」と「悪者のいない環境」で分ければ、行動に影響を与える世界観から構造を限定出来ると言う訳です。
マップの利用法例
構造と表現で広域なカテゴライズを重ねると、どちらにも分類した同じ物語が出てきます。
つまり、それは、二つの側面から物語の地図を見ている事になります。
その際、近い領域の物語と言う物が大量に見つかります。
それは、いわゆる人気ジャンルと言う物です。
構造にも、表現にも、人気ジャンルがあります。
ここで大事なポイントは、構造と表現のどちらでも人気なのに、構造と表現で結びついた事のないジャンルが、構造と表現に必ずあると言う事です。
それに気づいたら、調べてみましょう。
その構造と表現の交差点が、もし、まだ空白だったら?
そこには、巨大な金鉱脈が眠っている可能性があります。
これが、マップの有益な利用法の一つです。
個別の分類は大変って話
あ、この連載は、もう終わりです。
これはオマケ。
分類する時に、細部から分けようとする人っていますよね?
例えば、10種類の果物がテーブルにあって、それを10種類に始めから分けるタイプ。
少ない種類ならそれでも良いけど、多くなればなるほど、効率が悪くなります。
例えば、大きさで二分割、色で二分割ぐらいにした方が、効率が段違いに変わってきます。
これは、物語にも言えます。
例えば、全体を分けようとしているのに、ロボット系の作品でリアルロボット、スーパーロボット、アンドロイドみたいな分け方を延々とするのは、ロボットと言うジャンルに分けた後ならともかく、最初から完璧な分類をすると、分類線の引き方が間違っていたら目も当てられないし、分類し切る前に大半の人は心が折れます。
まずは全体から必要な領域を決める。
分類線を決めて、順に大別して、徐々に細かくしていく。
カメラの被写体を探すときに、カメラを覗き込みながら周囲を見るよりも、裸眼でキョロキョロしてから、カメラを覗き込み、ピントを合わせて欲しい画を探すのと一緒ですね。
まとめ
4回に渡って独自分類する方法を紹介しました。
多少、話が前後したりで散らかりましたが、独自カテゴライズや、分類表のマップとしての利用が、創作ツールとして、なんとなく役立つ事と言うのは分かってもらえたら嬉しいです。
まあ、見るからに面倒ですが、実際、面倒な作業です。
ですので、面倒と感じる内は、無理にカテゴライズしないでください。
これは、言うなれば「ポケモン」です。
欲しい独自のカテゴライズがあって、それを集め、整理していく事が「ポケモン」の収集並みに楽しいと思える時が、来たら始めれば良いです。
何事にも遅すぎる事はありません。
必要や楽しさを感じない時にやっても、苦行ですので。
ですから、必要を感じた時に、この記事を思い出してもらえればと思います。