【知らなきゃ損】物語の「簡潔さ」と「複雑さ」とは?

シンプルイズベスト!

物語創作のハウツー本は、好き?

誰か先生に、師事した事ってある?

教室や学校、ワークショップに行った事は?

もし、一つでも当てはまるなら、こんな経験は無いだろうか?

「ふむ、で、君のその物語は、一言で言うと?」

「君の物語の、テーマは? コンセプトは?」

「その物語のプレミスは? ログラインは? 3行で説明して、はい」

素直に説明を試みる人もいれば、「は?」と思う人もいると思う。

どちらにしても「なんで最初の方で、そんな事を?」と思う人は、結構いるだろう。

結論から言えば、このお約束とも言える質問は、「良い物語」……いや「まとまりのある物語」を作る上で、かなり効率的なアプローチだからである。

このお約束には、ちゃんと意味がある。

今回は、その事について説明しよう。

読むのがダルイ人は、最後の一覧だけでも目を通して欲しい。

基本にして、最初の落とし穴

この創作教室でお約束の「その物語を簡潔に表すと?」とは「ストーリーテーマ」を聞いている。

ストーリーテーマとは、物語を通して伝えたい「メッセージ」に繋がる、道徳観を持った表現だ。

「どんな物語?」

「え~と、ファンタジーの世界に飛ばされて、冒険をするんですけど、仲間が増えたり、国を救ったり、魔王を倒したり、お姫様と結ばれたり」

「それって、一言で表すと?」

「え、え~と、異世界に飛ばされて勇者になって、魔王を倒す物語、かな?」

何となく描きたい物語の行動が見えていればラッキーだ。

だが、ここで「モチーフテーマ」を混ぜて考えてしまい、話がこんがらがる事がある。

「どんな物語?」

「はい、中世ヨーロッパ風の異世界が舞台の話です」

「ふ~ん、そこで何をするの?」

「え? 冒険の予定ですけど」

「何が目的で?」

「目的? え~と……」

と、世界観の設定やキャラクター個々の設定は練っていた筈なのに、それらを使って何を物語として構築するかが疎かになっている事がある。

聞かれた方は、簡潔に物語を(モチーフテーマで)表した気になっていたのに「答えたつもりなのに何か違ったらしい」となり、出来てない事、と言うよりは「用意するべきもの(ストーリーテーマ)」を用意できないままだ。

悪いと次のステップに、そのまま進まされる事になる。

一方、聞いた方は聞いた方で、自覚の有無を問わず、大抵はストーリーテーマを聞いた気になっているので「まだ、何も決まっていないのか」と思う。

だが、「モチーフテーマで無く、ストーリーテーマを決めて欲しいんだ。主人公が、何を目的に、どう言う行動をするのかを決めて欲しい」なんて事は言わず「じゃあ、どんな物語にするか、もう少し考えておいてね」と言う事が殆んどだ。

これによって、教室やらハウツー学習の場で、多くの人が第一ステップを完了しないまま「難しい」と思いながらステップを進んだり、挫折する事になる。

なんで最初にストーリーテーマ?

人によっては、ストーリーテーマなんて大事じゃない、と感じている事だろう。

私は、多くのプロアマ問わない創作者や、創作に携わる人が「テーマは添え物」と言っているのを、何度も聞き・見てきた。

アーティストもクリエイターも表現したいのであって、物語の全体像なんて最初はどうでもいい、走っている内に見えてくる、と言うタイプの人は、かなり多い。

それを頭ごなしに否定する気はないが、だからと言って「どんな物語?」と言う質問から逃れられる訳ではないと言う意見を変える気もない。

物語と言う形態をとる以上、その質問は延々とついて回る。

例えるなら

「旅の目的は何にしようか?」

と言う質問は、目的も目的地も決めずに旅に出ても、常について回るのと同じだ。

そう聞かれているのに、

「次は飛行機に乗りたい!」「おなかすいた」「綺麗な景色が見たい」

とだけ答えて、あっちこっち移動する旅も悪くないが、それに付き合わされる同行者がいつも楽しいとは限らないのも分かるだろう。

「最終的にしたい事」なんて『最初に分かる訳が無い』と思う人も、いるかもしれないが、そんな事は無い。

旅の例えなら、「富士山の頂上に行って日の出を見たい」でも「エベレスト登頂に挑戦したい」でも「南極の氷でかき氷を作ってオーロラの下で食べたい」でも、何でもいい。

要は、旅の目的地で「どんな事を実現したいか」や「何を成し遂げたいか」のイメージがあれば、それで良い。

ストーリーテーマを最初に決めるのは、物語創作に置いて「目的地を決める事」に繋がる。

そして、それを「一言で言うと、どんな物語?」で表現出来ると言う事は、ストーリーテーマの背骨がどれなのか明確に決まっている事に他ならない。

それが出来ていると、物語は簡潔な物にしやすい。

そして、簡潔であるほど、物語は力強くなる。

シンプルイズベストこそ、エンターテイメント系の物語であれば、正義なのだ。

つまり、あの「一言で言うと?」や「どんな物語?」と言った、創作者を困らせる質問は、創作者に対して、物語で描く要素をシンプルな形で自覚させる効果が本来あり、それは物語を簡潔な形へと導く道しるべになるものなのだ。

その自覚をもって作られた物語は、一言で説明が出来る。

それは「どこに旅に行くの?(どんな物語?)」と言う同行者(読者や視聴者)の質問に「海にスイカ割りに行くんだよ。どう?(魔王を倒す冒険ファンタジーだけど、好き?)」と創作者が明確に答えられ、内容も期待通りに創りやすい為、同行者も満足しやすいと言うメリットが得られる事に繋がる。

複雑な物語が作りたい?

いると思う。

シンプルなんて子供騙しだから、複雑な物語を作りたいって人。

まず、そういう人の大半は思い違いをしている。

シンプルはシンプルでも、「簡潔」と「単純」は似て非なる物だし、「複雑」と「散らかっている」も、全くの別物だ。

先に書いた「どんな物語?」を決める事で、一つの目的が決まる事で、物語は簡潔な物語にしやすくなる。

だが、「単純」な物語にするか、しないか、それはこれから先の話であって、今は関係無い。

物語の単純さや複雑さ、もっと言えば華やかさや面白さと言った魅力は、これから組み立てる物であって、この地点で爆発的な面白さを獲得するのは、至難の業と言って良い。

旅の地図の目的地に丸を付ける作業で、旅先の感動を味わえる訳がない。

話を戻そう。

また「どんな物語?」を決めないで書き始める事で「散らかった」物語を書き、それをまとめる事を「複雑」な物語と思っている人が多いが、それは大間違いだ。

「散らかっている」物語は、即興劇やアドリブの技術を求められ、制御も大変だし、大規模などんでん返しを仕込む事も難しくなる。

だが、整理された「簡潔」な物語は、「簡潔」なまま「奥行き」と言う概念で、「まとまった」まま「複雑」な物語に仕上げられる。

この、「散らかっている」事と「奥行きがある」事を、混同していると、一見、どちらも複雑な物語に見えるのに、「まとまり感」に大きな差が生まれる。

当然だが、より「まとまっている」物語の方が、ウケは良くなる。

なので、「単純」な物語にするでも「複雑」な物語にするでも、まずは「簡潔さ」を獲得する事で「散らからない様に、要点をまとめる」アプローチが、鉄板なのだ。

おわりに

今回は、「単純さ」「簡潔さ」「複雑さ」「散らかっている」「まとまっている」「奥行きがある」と言った要素を説明した。

どれも似ているが、似ているからと言って混同し、曖昧なままでいると、損をしかねない概念が多い事に、驚く人もいると思う。

「単純さ」と「複雑さ」について、ここまで書いてきたような理由から、勘違いしている人は、実際かなり多い。

あと、冒頭にも書いたが、ここまでの説明じゃ分からなかった人の為に、各要素を下記にまとめておく。

参考に、考えてみて欲しい。

  • 『簡潔』:要点を押さえる技術が必要な、たどり着くのが難しい単純。何事も簡潔に表現するのは、かなり難しい。これが「シンプルイズベスト」の指すシンプル。
  • 『単純』:単一であったり、省略(デフォルメ)されたり、奥行き(後述)も浅い様な意味合いが含まれる。普通のシンプル。多くの場合「シンプルイズベスト」のシンプルでは無い事が多い。
  • 『複雑』:要素が絡み合ったり、大量に存在する様。一見して全体像が分からない状態
  • 『散らかる』:複雑は複雑だが、混沌としている傾向がある。
  • 『まとまる』:特定のグループで、カテゴライズをされたバラバラの物。バラバラで、一見複雑に見えるが、それが何のグループかが分かると、途端に一貫性が見える単純さも併せ持つ。規則性のある状態。
  • 『奥行き』:ここでは、良い複雑さとして紹介。まとまっている物同士の関係と言う設定があれば、物語の設定に「奥行き」が増えていく。複数の要素では無く、要素間の関係を増やす事が、簡潔かつ複雑な「良い物語」を作る上で、重要な考えとなる。
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