物語のテーマを選ぶ時に気を付けるべき事とは?

ストーリーテーマとモチーフテーマの性質

テーマ選びは、重要だ。

ストーリーテーマによって、どの様なメッセージを持つ物語になるか限定され、モチーフテーマによって、どの様な印象の物語かが決まってしまう。

この記事では、そんな重要なファクターである「テーマ」の持つ性質を踏まえ、気を付けるべき事を解説していく。

ストーリーテーマ選びは、原始的である方が良い?

上記の表は、このサイト内で何度か目にした事があるかもしれない。

これは、マズローの欲求階層をベースにした『欲求表』で、下に行くほど原始的(かつ物理的)であり、上に行くほど文明的(かつ精神的)となる。

つまり、下がある程度満たされた状態(すべて満たされていなくても構わない)なら、人は一段上の欲求に目を向ける事が出来る。

例えば「食」は、この表の場合では「個人がプラスの物を受け入れる欲求」と考えられている。

小難しい様に見えるが、単純な話だ。

「食」によって、肉体を維持する条件が満たされて、初めて人は「味」を求める。

考えてみれば、食べ物が無い状態で、美味い不味いなんて文句は言っていられない。

「性」も、子孫を残す対象が、大勢いて選択出来る状況だからこそ、「恋」をする余裕が生まれる。

この世に、男一人女一人なら、相手を好きか嫌いかなんて子孫を残す上では、言っていられない。

「排泄」も、正常に排泄、この場合、排尿排便に限らず、新陳代謝による老廃物を肉体外に処理出来る状況が満たされていないと、そもそも「清潔」さ、つまり衛生的な事に関心を向ける余裕はない。

「睡眠」は、肉体と精神の疲労回復の為に、必要だ。

だが、安全に眠れる前提が無ければ、「家」つまり、建物と言う意味だけでなく、テリトリーや、安全地帯と言った物に対して意識を向ける事が出来ない。

これらの様に、より表下で、より表左に寄った概念程、原始的かつ個人的な欲求となる。

何となく、わかっただろうか?

原始的な欲求であればあるほど、広い範囲の人々に対して、共感を得られる。

表上や表右に行けば行くほど、より文明的な条件を満たした人にしか、テーマとして響かなくなる訳だ。

例えば、人々を「導く」(表最右上)と言うストーリーテーマの要素をメインにした物語を創ろうとしたとしよう。

下や左にある下位欲求も幾つも満たしているキャラクターが活躍する為、複合的で複雑な物語にする事も出来る。

だが、メインには常に「周囲の人々を、どの様に正しい方に導くべきか?」の様な葛藤が有り、劇中、それが延々と描かれ続ける。

そんな物語と、「食」や「恋、友情」を扱った物語と、どちらが万人にウケそうか?

つまり、そういう事だ。

表の途中の要素で試しても、より左下にある原始的欲求には、万人受けと言う観点では勝ちようが無い。

対象年齢による注意点

以前の記事

でも触れたが、幼い子供には、欲求階層がそのまま当てはまらない。

それは、3歳前後で自我が芽生え、成長と共に「自分と他者」を認識し、社会性をまず獲得し、10歳前後から徐々に第二次性徴が起きて、大人へと肉体が変化し、ここでようやく「性」や「恋」の概念を理解できる土壌が出来始める。

なので、幼い子供の場合、「性」や「恋」の前に「友情」等の「親や仲間への愛情」が最も原始的と言う期間がある。

なので「恋愛」を理解する以前の子供に恋愛物を見せても、反応が芳しくない事も多々ある訳だ。

それは、当然の事だ。

表下部がある程度満たされていないと、表上へと登って行くのが難しいのに、生理的理由で、下がシッカリとは、まだ出来ていないのだから。

また、R指定作品や、過激な表現に対する規制は、この表下部が十分に満たされたり、しっかりとした形成がされていない人に対して、コンテンツ提供者側の配慮によって保護する必要があると言う、そんな意味合いが大きい。

例えば、文化的正解(暴力は悪い、等)に繋がる下地が出来る前に、ある種の正解(人を殺しちゃいけない等)を知っていて、それとは違うと言う差をコンテンツとして楽しむ類の物語(復讐の為なら暴力は許される?等)を大量に摂取したとする。

すると、ベースとなる下地が出来る前に、原体験として物語に与えられた衝撃が残り、そちらが下地になってしまう可能性が出てくる(科学的根拠は無いが、多くの人が影響を心配している)。

なので、「性」や「暴力」に対する、下地の認識が固まり切っていない人は、R指定で守ろう、と言う事になる訳だ。

モチーフテーマ選びは、身近な方が良い?

ストーリーテーマは原始的な方が、幅広い人に受け入れられる事が分かった。

では、モチーフテーマは、どういう観点で選ぶべきか?

単純な話になるが、より身近、または既視感のある物であるほど、幅広い人に受け入れられやすい。

例えば、登場人物は、「より人間的」な方が受け入れられる。

猫や犬の擬人化より、人の方が身近だ。

文明や文化も、ターゲットにする人が身近に感じる物の方が、受け入れられやすい。

日本をメインターゲットにするなら、アメリカよりは日本だ。

身近なだけじゃ、つまらない

モチーフテーマ選びは、実は、圧倒的な新しさが必要になる。

新しさの切り口は、様々だが、圧倒的な新規性が無いと、モチーフテーマとしてはパワーが弱い。

身近な物を扱った方が、共感は得られる。

だが、身近なだけでは、それは普通で平凡で面白みのない、ありふれたモチーフだ。

モチーフテーマは、身近だが、新しい必要がある訳だ。

例えば、スポーツがある。

スポーツと言う切り口で、モチーフテーマとしてスポーツを扱うのは王道だ。

  • サッカー:キャプテン翼
  • バスケットボール:スラムダンク
  • テニス:テニスの王子様
  • アメフト:アイシールド21
  • バレーボール:ハイキュー

他にも、各スポーツ毎に名作は大量にある。

これらの作品は、扱うモチーフスポーツのメジャー度を、引き上げる事に大きな貢献をしてきた。

つまり、そのスポーツ自体は昔からあったが、物語を持ったコンテンツと言う形で取り上げられ、それまで興味の無かった人にまでモチーフとしたスポーツを届けた作品と言う事だ。

  • ストーリーテーマ×身近なモチーフテーマ「スポーツ」×新しいモチーフテーマ「一部の人に身近ではないスポーツ」

これは、一つの立派な新規性の獲得である。

だが、この手法だけだと、スポーツの種類が変わるだけになる。

しかし、同じスポーツの作品が世の中には大量にあり、そのどれもが、それぞれに違う面白さを持っている。

それは、新規性の獲得方法を、それぞれ変えている為だ。

例えば、「必殺技」や「得意技」がスポーツ漫画では登場し、それが同スポーツで同じだと、途端に似た作品に感じられる。

なので、スポーツ毎に特技が被らない様に差別化を図る。

  • ×必殺技or得意技

と言う細部の要素によって、作品は新規性を獲得出来る。

球技なら、パスが得意か、シュートが得意か、アシストが得意か、何が得意かによって主人公の見え方はだいぶ違ってくる。

  • ×主人公の立場

大人数でやるチームスポーツなら、受け持つ役割によって立場を変える事も可能だ。

とすれば、選手だけでなく、マネージャーか、監督か、他でも新規性は作る事が出来る。

更に、モチーフテーマが同じでも、ストーリーテーマが違えば、作品は全く別物となる。

だからこそ、同じモチーフテーマだとしても、全く別の作品が生まれ続ける訳だ。

今回の記事としては、繰り返しになり余談気味だが、

で、過去に触れたが、web小説にある大半の異世界ファンタジーは主に、

  • ストーリーテーマ数パターン×モチーフテーマ数パターン×新しい要素

の様な作られ方をしている為、ストーリーテーマとモチーフテーマのふり幅が極端に少なく、似た作品が大量に生まれる事となっている事も、一応記しておく。

まとめ

ストーリーテーマは、対象年齢やターゲット層を考え、出来るだけ欲求階層で言う原始的なテーマに沿った選択をした方が、共感してくれる人の数が多くなる。

簡単に言えば、より原始的なテーマの方が、誰にでも理解出来る物語になる。

モチーフテーマは、身近な要素が無いと、興味を持ってもらえない。

だが、その中に新規性が存在しないと、面白いと思ってもらえない。

  • 普遍的なストーリーテーマ×身近なモチーフテーマ×新規性のあるモチーフテーマ

これらに気を付けて決めれば、あり得ない大失敗は避けられる。

例えば、

  • 共感し辛いストーリーテーマ×身近ではないモチーフテーマ

こんな作品を、作った場合、まず人に理解して貰ったり、興味を持ってもらう事からハードルが上がってしまう。

斬新過ぎる物や新し過ぎる物は、大衆には理解されない。

しかし、

  • 一部の人に強烈に共感を得られるストーリーテーマ×身近なモチーフテーマ
  • 普遍的なストーリーテーマ×一部の人にとって身近なモチーフテーマ

の様な場合は、作品自体が珍しくなる為、多くの人にとっては新規性を感じられる。

その場合、身近さや共感を得辛く、最初は二ッチだったり、一部にカルト的な人気のある作品になりやすい。

狭いターゲットに熱心に愛される作品を創る事は、戦略としては決して悪くない。

今でこそメジャーになってしまったが、ボーイズラブ、百合、メカ少女、モンスター少女、ケモナー、クトゥルフ、等々の作品群も最初はマイナーモチーフだった時代があり(まだマイナーなモチーフもあるが)、徐々に一般化し、一般化によって身近なモチーフに変化した経緯がある。

そのマイナー時代にコンテンツ供給をはじめ、継続したクリエイターやアーティストは、先駆者となる。

新規ジャンル開拓は時間がかかるが、マイナージャンルのメジャー化が始まった時に得られる先駆者への恩恵の大きさは、計り知れない。

メジャーを目指すか、マイナーを目指すか、各創作者の得意不得意の分野次第な所があるが、自分に合った目指すべき作品の各テーマ選びの参考に、この記事がなれば幸いである。

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