禁忌を破るのって、悪い事?
今回は、タブーを扱った物語について簡単に説明するよ。
とりあえず、タブーを扱うには「タブーがある環境」と「タブーを破らざるを得ない主人公」の二つが必要なんだ。
じゃあ、サクサク進むよ。
タブーがある環境
これは、分かるよね。
「この社会では、それはダメ」ってルールがあれば、それでOK。
例えば、
- 暴力
- 窃盗
- 殺人
- 詐欺
みたいな分かりやすい「犯罪」は典型的なタブーだ。
ルール、法律、憲法、規則、校則、何でもいい。
他にも、
- 宗教にまつわる物
- 化学にまつわる物
- 性にまつわる物
- 風習にまつわる物
とか、色々あるけど、要するに「その社会の道徳観や価値観」に反する行為は、基本的に全部タブー。
で、このタブーを扱う物語を作るには「タブー破りを、働く主人公」が必須な訳だ。
タブーを破る主人公
主人公は誰でも、どんな設定でも良い。
大事なのは「タブーだと知っていて、タブーを破らないといけない状況に置かれている」事。
そこに葛藤が生まれるからね。
- 正当防衛や不可抗力で、誰かを傷つけたり殺してしまったり
- 遭難して、共食いしないと生き残れない状況に追い込まれたり
- 同性での恋愛をタブー視する社会で、理想の同性と出会っちゃったり
もう、タブーを破らないと破滅したり、後悔する状況なので、どうしようもない。
これがタブーを扱う物語では、かなり重要。
2種類の結末
世界観と人、そして破るタブーは決まった?
タブー破りの物語は、大きく分けて2つの結末があるんだ。
一つは、タブーをタブー視してきた社会が間違っていた、と言う結末。
例えば、
- 同性での恋愛物語なら、社会はタブーだと反対や攻撃をし続けた結果、その愛が真実の愛だと証明されてしまう。
みたいな結末。
ああ、別にハッピーエンドとは限らないから。
タブーを破った結果、殺されたり、どうしようもなくなって自殺をしてでも、真実の愛を証明するなんて物語は、よくあるよね。
ロミオとジュリエット、とか。
もう一つの結末は、タブーを破ると、こんな悪い事が起きるから、意味のあるタブーなんだと言う事の提示をする結末。
こちらは例えば、
- 犯罪の結果、何だかんだあって罪を償う事になる。
みたいな物語。
つまり、タブーを破ってでも、やるべき事や目指すべき目標を提示する物語と、タブーの本当の意味を提示する物語があるって事だ。
モチーフテーマとしてのタブー
上で紹介したのは、ストーリーテーマでのタブーを扱った物語。
ここから紹介するのは、モチーフテーマとしてタブーを扱う物語の方。
つまり、劇中でタブーを描写するのに、ストーリーテーマは別のテーマにある物語、と言う物。
これは、使い方によっては不思議な物語になるし、場合によっては物議を醸しだす物語にも出来る。
例えば「おっさんずラブ」ってドラマが大ヒットした。
この作品は、男性同士の恋愛をモチーフにした物語だ。
この手のモチーフは、一昔前だと当然の様にストーリーテーマもタブーを扱った物語になった。
だが「おっさんずラブ」は、ストーリーテーマとしてタブーを扱っていない。
あくまでも、二人の男の間で揺れ動く主人公を描く、典型的な恋愛劇になっている。
それは、社会や周囲の環境が、同性の恋愛を当たり前と認識しているからだ。
なので、タブーを扱う物語の様な、環境から与えられる圧力や、秘密がバレるのでは無いかと言うハラハラが無く、幅広い層に見やすい作りになっている。
要は、モチーフテーマに拒否感が無ければ、誰にでも恋愛ドラマとして楽しめる作りなのだ。
これは、同性愛=タブーを扱ったジャンルと言う固定観念を乗り越えた意味で、意味のあるドラマだったと思う。
面白かったしね。
同性愛=社会的タブーでは無い、と言う時代に合わせて作られた、時代の波に乗った(世界的に見れば、少々遅れて追いつこうとした)ドラマだった訳だ。
これが、仮に主人公が二人の男性に求愛され揺れ動くのとプラスして、性癖を周囲に隠そうとし(まあ、劇中、自分は同性愛者ではないと主人公は最初、一応は抗っているが)、同性愛である事が周囲の人間にバレたら、破滅が待っている様な、それまでのセオリー通りの物語構造だったら、ここまでの大ヒットにはならなかった、かもしれない。
タブーを扱うと、社会的に重くなりがちだし、少し古い感覚の「禁断の愛」を扱ったドラマには、少なくともなっていたはずだ。
これは、モチーフテーマとして「のみ」に「タブーだった物」を扱った作品の、良い成功例だ。
ここから分かるのは、ストーリーテーマとモチーフテーマとしてのタブーを、必ずしも一致させる必要はない、と言う事だ。
他にも、禁酒法と言う「酒がタブー」と言う時代を扱ったり、それを捻って「チョコがタブー」とか、ディストピア世界にして「芸術がタブー」なんて設定の物語も作る事が出来るし、同性愛どころか「種族を超えた愛」を描く物語も、タブーをモチーフにした物語の中では人気がある。
探すと、あれもタブーを扱った物語だみたいな事も、良くあるよ。
終わりに
どのタブーを扱うか、あるいは、何をタブーにするか。
タブーをタブーとして扱うか、あるいは、タブーを普通の事の様に扱うか。
どんな禁忌を物語の中で扱うにしても、一つ言える事がある。
それは、人は「絶対にやっちゃいけない」事を「やっちゃった」先に見える世界に、物凄い興味があると言う事だ。
たまには、こういう視点の物語を作るのも、良いのではないだろうか?
この記事が、ストーリーテリングの助けになれば、幸いである。
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