構造的な世界観の分類
これまでストーリー、キャラクターと、構造的、表現的に分けて来た(どれも途中だが)。
今回は、世界観だ。
そのうち、行動でも分けるが、今回は世界観。
鍵となるのは、全体を統一するルールによって、二分する事だ。
さあ、はじめよう。
ユートピア? ディストピア?
この分け方は、個人的に気に入っている。
その世界観、キャラクターが置かれたコミュニティが、「ユートピア的」か「ディストピア的」かによって、物語構造の選択肢が一気に限定されるからだ。
- ユートピアは、個人の幸せを追求する事で、全体が幸福になる社会
- ディストピアは、全体の幸せを追求する事で、個人も幸福になる社会
と言う風に、それぞれ定義出来る。
この「ユートピア」「ディストピア」を、私は更にシステムとして「機能している」か「崩壊している」かで分ける。
- 機能したユートピアは、個人の幸せを追求する事で、全体が幸福になる社会
- 崩壊したユートピアは、行き過ぎた個人主義によって、幸福に格差が生まれた社会
- 機能したディストピアは、全体の幸せを追求する事で、個人も幸福になる社会
- 崩壊したディストピアは、行き過ぎた全体主義によって、社会の維持が目的になり、個人が蔑ろにされる社会
と言う風に分けると、世界観に置かれた登場人物が、何を求めて行動するのかが更に限定できる。
日本は、どれだろう?
また、自分が置かれている環境は、どれが近いだろう?
そんな事を考えるのも一興だ。
その世界観には、それぞれ合った登場人物の行動が存在する。
例えば、
- 機能したユートピアでは、外敵から世界を守る為に行動する。勇者が世界を救う為に旅に出るのは、守りたい世界があるからだ。
- 崩壊したユートピアでは、犯罪を働いたり、他人を利用したり、出し抜いたりと言った行動をとる。個人主義は自己中心的な行動に傾き、周囲に迷惑をかけてでも自分の幸せを求める様になる。
- 機能したディストピアでは、内部で起きた事件の解決を目指して行動する事になる。探偵、刑事、弁護士、医者と言った治安や安全を管理する人々を主役にしやすい。
- 崩壊したディストピアでは、社会の転覆を目論んだり、管理社会と争ったり、脱出を目指して行動する事になる。腐敗した社会システムと争う物語を描くなら、これだろう。
この様に、置かれる環境によって、登場人物の行動にパターンが出来るのだ。
つまり、物語の構造的に、世界観と構造をマッチさせる事が、容易くなる訳だ。
ちなみに、登場人物がどう感じているか、どんな環境に置かれているかによって、物語構造は似た設定の世界観でも違ってくる。
主人公には崩壊したユートピア的に感じられても、別の登場人物には機能したディストピアに感じられている事もある。
だが、大事なのは、主人公の行動なので、主人公がどう感じる世界観か、が重要になる事を覚えておいて貰いたい。
同じだが別の言い方で、見つけやすくする
ユートピアとディストピアは、他にも様々な言い方で分ける事が出来る。
ユートピア | ディストピア |
自由社会 | 管理社会 |
個人主義 | 全体主義 |
資本主義 | 共産主義 |
民主主義 | 社会主義 |
母性的社会 | 父性的社会 |
と言った風に、分ける事も出来て、言い方の印象によってイメージが変わると思う。
こうして見る事で、それぞれの世界観が抱える利点と欠点が見え易くなり、物語を構築する上でも、それが非常に役立つ。
中でも、重要な要素は欠点の方だ。
世界観が抱える欠点、つまり問題点や、そこで起きる問題に、登場人物が立ち向かう事で物語が成立するからである。
ユートピア的社会を舞台にして、全てが満たされた社会を描いては、物語は欠片も前に進まないし、それはディストピア的社会を舞台にしても、同じ事だ。
このサイトでは、何度も書いている事だが、物語の基本は「主人公の一貫した問題解決行動の描写」である。
つまり、問題を抱えていない理想郷は、物語の中では邪魔でしかない訳だ。
仮に、理想郷を出したい場合は、崩壊の危機や破滅の危機に追いやるか、全てが解決したクライマックス後にのみ存在が許されると言っても良い。
綺麗な理想郷の様な世界は、実際にあれば、誰でも住みたいだろう。
だが、物語創作の場合は、問題を解決しない限り理想郷を登場人物に与えては、いけないのである。
おわりに
今回は一例でこそあったが、世界観での分け方の解説でした。
同じモチーフテーマで構築した物語でも、世界観の構造的選択によって全く違う世界観が作れる事が、イメージ出来たのであれば、嬉しい。
また、各々の「独自の世界を見る目」を持つ為のヒントにでもなれば幸いである。