ガルパンは良いぞ!
2012年の初回放送から長い間ファンを楽しませ続けている、アニメーション作品ガールズ&パンツァーの最終章第二話の劇場上映が、先日始った。
テレビシリーズ、コミカライズ、ノベライズ、ゲーム化、劇場版、劇場シリーズと着実に世界を広げ続けている作品だが、何が他の作品と違うのだろうか?
今回も引き続き、ガールズ&パンツァーを題材に、成功する物語の条件について考察していきたい。
強豪に素人集団が挑んで勝利する事の納得性
ガールズ&パンツァーは、戦車を使ったスポーツアニメである。
スポーツなので、対等な条件のルールに沿って対戦する事になる。
そうなれば、当然ながらスポーツ経験者の方が圧倒的に有利となる。
普通に考えれば、初出場で優勝なんで不可能だ。
しかし、ガルパンはスポーツ物として戦車道と真摯に向き合い、勝利を重ねていくリアリティ、納得感を作品に持たせる事に成功している。
今回は、メインストーリーを通して描かれた試合における、納得感について考察する。
スポーツ上達に必要な物は?
ガルパンの主人公チーム初期状態は、主人公を除く全員が完全な素人と言う状態からスタートする。
視聴者から見ても、優勝なんて不可能と言うメンバーな上、使用戦車の種類はバラバラ、状態はボロボロだ。
ムリゲーにしか思えない。
だが、主人公が所属するチーム大洗は、それらを補う物がある事で優勝を現実の物とする。
チーム大洗の持つ最大の強みは、角谷生徒会長の計画性と圧倒的な行動力の速さだ。
つまり、目的を持った強いリーダーに引っ張られる事で、チームは急成長する事になる。
スポーツの上達条件1:有能な指導者を探す
会長が最初に行った計画の実行は、主人公「西住ミホ」の勧誘であった。
西住ミホは、優勝常連の強豪校、黒森峰から転校して来た上に、戦車道の家元の家柄かつ、黒森峰時代には副隊長だったと言う会長からすれば完璧な人材であった。
トラウマを抱えていた事は誤算ではあったが、トラウマによって黒森峰や戦車道から逃げて大洗に流れ着いた事自体は会長にとって運の良い巡り合わせである。
この経験者かつ指導者の獲得は、スポーツの上達には欠かせない第一の要素としてスポーツ物では繰り返し描かれている。
実話をベースにした、名作映画「クールランニング」や、アイススケートをモチーフにしたアニメ「ユーリ・オン・アイス」等では、最初に指導者を得る事で、無謀だった計画に現実味が帯びる。
スポーツを上達させるには、最高の指導者が必要であり、訳アリの奴らに手を貸してくれるのは、いつだってちょっと訳アリの指導者だ。
ガルパンは、戦車をモチーフにしながらも、スポーツ物として王道の流れを持っている。
だからこそ、ガルパンは万人に受け入れられる強烈な魅力を物語性として持っているとも言えるのだ。
スポーツ上達の条件2:環境を整える
実際にプレイする為の環境を整えなければ、話にならない。
クールランニングではソリが、ユーリオンアイスではスケートリンクが必要となった。
ガルパンでは戦車が必要となる。
過去に戦車道をしていた学校と言う事で、使われなくなっていた戦車を探し出し、それを整備して使う事で環境が整う。
スポーツ上達の条件3:プレイする
実際に身体を動かさなければ上達は無い。
ガルパンでは初乗車のパートで、会長が西住ミホを勧誘できなくとも指導者として蝶野教官に話を付けていた事が分かり、さり気無く有能さを見せているのも面白い。
物語としては、さっさと教官指導のもと練習試合によって乗りながら操縦を学んでいく。
これが、最速で上達する為の正解でもある。
もっとも、現実では安全性の確保やルールの把握を先に行うのが普通だ。
しかし、退屈な座学やシミュレーターよりも、実際にプレイする事で実感を身体に覚えさせる方が習得は早まるし、その方がプレイヤーは楽しい。
楽しさを知ってから、より楽しむ為に技術を習得すると言う順番も理にかなっている。
スポーツ上達の条件4:基礎訓練
実戦で楽しさを知り、その上達の為に基礎を習得していく。
短い時間しか描写されないが、ダイジェストで流れていく基礎練習は重要なパートだ。
スポーツ物でなくとも、準備の描写は納得性を高める為には有効かつ重要である。
スポーツ上達の条件5:練習試合
本番の前に、本番と同じルールで試合を経験する事は大切だ。
これは、仲間内では無く他チームと争う事で、自分達の程度を知る事が出来ると言う意味もある。
基礎練習で磨いた実力が通用するか、長所が活きるか、気付かなかった弱点に気付けるか、本番さながらの練習試合は重要なイベントだ。
ここでも、会長が聖グロリアーナとの試合を取り付けつつ、主人公の西住ミホを活かす為に隊長に就任させるという有能さを見せる。
練習試合ではメンバーの大半がまだ素人同然ながらも様々な工夫によって戦い、それぞれの武器と弱点が綺麗に露呈する。
試合は惜しい所で敗北するが、直すべき欠点を皆が認識する。
敗北の責任として罰ゲームを行うが、会長は連帯責任と言って自身も罰ゲームを行う事で責任者としての立場を示す。
各キャラのサブプロットが動き始め、ここまででアニメは4話を使い、プロローグの「どうしてこうなった」と言う描写は練習試合の途中で回収され、一つの区切りを迎える。
本戦の抽選会後、負けたら破滅する事を匂わせ、4話の時点で大半の準備が済み、以降は負ける事が許されない本番へと舞台を移す。
テンポ良く上達の過程を見せられて、視聴者は「もしかたら大会で良い成績を残せるのかもしれない」と期待を持って見守る事が出来る。
スポーツ物の導入として、本当に丁寧に作られている事が分かるだろう。
丁寧かつテンポの良い王道ストーリーを軸に、戦車と言う新しいモチーフによる表現が行われて、ここまで面白くなる要素しか無いのだ。
終わりに
今回は、スポーツ物として考察をしました。
この調子ですが、引き続き考察していきたいと思います。