「記憶を取り戻す旅物語」とは?
ここでは「記憶を取り戻す旅」をテーマにした物語を解説します。
主人公が記憶喪失で、物語を通して自分が何者かを思い出したり、改めて知っていく物語となります。
この形式の物語は、構造カテゴリーで別の言い方をするならば「成長の旅の中で、謎を解く物語」となります。
目次
- 解説
- 必須要素
- 該当作品
解説
記憶を取り戻す旅?
まず「記憶を取り戻す旅物語」とは、どの様な物語を指すのか?
この記事では「記憶喪失の主人公が事件に巻き込まれ、謎を解く中で自分の出自等を知り、本当の自分を取り戻して事件を解決する物語」として解説していきます。
主人公は記憶喪失
この形式の物語の主人公は、何らかの形で記憶が欠落しています。
記憶喪失状態で、平凡に日常を生きている事が、最も多いです。
なので一見すると普通の人物に見えます。
ですが、その中身には何らかの才能が隠れています。
しかし、その才能を生活する日常の中では活かしきれず、記憶が無い為に自分でも自身の事を普通だと思って生きています。
ゲーム「バイオショック」では、飛行機事故に遭った不幸な遭難者の一人が主人公です。
ゲーム「ゼノギアス」では、記憶喪失の主人公が、村長の家で世話になりながら長閑で平凡な生活を営んでいます。
アニメ「ケムリクサ」では、汲み上げた水を入れる水槽の中に突然主人公が現れ、状況が理解出来ないまま後に仲間となるキャラクター達によって縛り上げられてしまいます。
シチュエーションが特殊ですが、この時点で視聴者は主人公の事を出ている中で最も普通のキャラクターと認識する筈です。
映画「バーフバリ」では、冒頭のパートが終わると、主人公が赤子の頃に村長に拾われ育てられ、やがて村の青年として成長していく過程が描かれていきます。
バーフバリの場合は、視聴者から主人公の出自に秘密がある事はバレバレなのですが、それでも何者かは明かされていません。
主人公を旅へと誘う事件
物語が始まって少しすると、事件が起きます。
主人公は、事件に巻き込まれ、旅に出ざるを得ない状況に追い込まれます。
ゲーム「バイオショック」では、飛行機事故で海に投げ出され、灯台に辿り着きます。
灯台の中には潜水球があり、それは海底都市へと続く物なのですが、主人公には海底都市に行く以外の道が物理的にありません。
ゲーム「ゼノギアス」では、主人公が住む村に隣国の軍事ロボットが謎の勢力と戦闘しながら墜落してきてしまい、村は火の海に包まれます。
主人公はパイロットが死んでいるロボットに乗りこみ、村を救おうと奮戦しますが、主人公が乗っていたロボットの暴走によって村は壊滅してしまいます。
映画「バーフバリ」では、超大な滝の上から女性の仮面が落ちて来た事をきっかけに、主人公が女性に会いたい一心で滝を登りきり、兵士に追われている仮面の持ち主である女性と出会う事になります。
旅先で出会った仲間の為に行動する
主人公は、運命の悪戯から記憶があった頃に所縁のある人と旅先で出会います。
ですが記憶が無いので、主人公は気付けませんし、相手も主人公に対して知っているとは言いません。
主人公に言わないのには、大きく2パターンあります。
- 主人公と友好的な人と会うが、相手も主人公の事を覚えてないか、知らないパターン。
- 主人公を利用しようと考える人と会うが、相手は主人公の事を知っているけど、利用する気なので言わないパターン。
と言う理由です。
なので、主人公の記憶が戻る事は、この時点でありません。
ゲーム「バイオショック」では、主人公は『恐縮だが』が口癖の男と、海底都市からの脱出をしようと、協力関係になります。
ゲーム「ゼノギアス」では、主人公が森で出会う女性も、村で医者をしていた先生も、もっと言えば砂漠の海賊までも、みんな主人公に所縁がある人物です。
ゲーム「うたわれるもの」では、主人公の記憶がある時の知り合いとそっくりの少女と出会い、共に暮らす事になります。
アニメ「ケムリクサ」では、主人公を縛り上げた後の仲間達は、全員が主人公に所縁がありましたが、面識がありませんでした。
そうして、実は裏では縁で繋がっている仲間を得て、主人公は仲間がやろうとしている事を手伝う形で旅を続けます。
つまり、主人公は何らかの理由から旅に出ますが、縁のある仲間の旅に同行する事で、自分の過去に接近していく訳です。
仲間の目標と目的
主人公は、仲間の掲げる目標を次々と達成していき、やがて目的達成まであと少しと言う所まで迫ります。
ゲーム「バイオショック」では、主人公は海底都市の支配者を追い詰める事に成功します。
ゲーム「ゼノギアス」では、敵の本拠地である空中都市に行き、目的を果たして脱出を目指します。
仲間が掲げた大きな目的の達成が近づくと、いよいよ主人公の秘密が明かされます。
目的達成に至るまでの旅の間にも、主人公の記憶を刺激するイベントは幾度となく起こりますが、目的達成目前となるまでは記憶が戻る事はありません。
判明する主人公の正体
それまでの主人公は、どこかまだ、事件に巻き込まれた被害者に見えていました。
ですが、主人公の正体が判明した時、その認識は反転します。
大どんでん返しが起きるのです。
ゲーム「バイオショック」では、海底都市の支配者を殺す為に送り込まれた刺客が主人公の正体であり、ずっと仲間だと思っていた男が主人公を操って海底都市を手に入れようと目論む真の悪だと言う事が判明します。
映画「バーフバリ」では、主人公こそが正統な王位継承者であり、英雄王の実の息子だと言う事が判明します。
アニメ「ケムリクサ」では、主人公が今でこそ廃墟となっている巨大な船の管理者であり、ある種の創造主だった事が判明し、仲間達の正体も一緒に判明します。
主人公は、凡人から超人・神・超越者・王、等と言った真反対の存在だと分かり、周囲を取り巻く環境への見方も変わります。
全てが主人公を利用しようとする者の計画や、運命としか呼びようの無い大きな力によって形作られ、主人公は自身が果たすべき使命に向かって導かれていた事に気付くのです。
記憶喪失にこそ重要な意味があった
主人公の記憶が戻ったり、記憶喪失以前の事が分かりました。
そこで初めて、主人公がするべき本当の使命が分かります。
ここまで主人公は記憶喪失だからこそ、凡人として仲間達と接する事が出来ていました。
つまり、記憶があるままの主人公では、使命への向き合い方が大きく変わった筈なのです。
主人公は超越者でありながらも記憶が無いからこそ、旅の中で出会いと別れ経験し、記憶を失わなければ得られなかった仲間を持ち、良い人間性を獲得しました。
敵に利用されていたとしても、運命の導きだったとしても、記憶が無い状態で旅をしたからこそ「今の主人公」と言う物が形成され、それが最も重要な事だったわけです。
重要な人物だったからこそ「何者でもない状態=記憶喪失」となって、自分が果たすべき使命を、仲間との触れあいを通してどういう形で果たすのが良いのかを判断出来る人格者に成長する必要があったのです。
ゲーム「バイオショック」では、旅の中で正義に目覚めている主人公は、自分を操っていた黒幕を倒して、海底都市を救う事を決意します。
映画「バーフバリ」では、主人公が自身の出自を知り、圧政を敷く現王を倒す使命が自分にあり、自分にしか出来ない事を確信します。
より良い形で使命を果たす
自分が何者かを思い出し、真の力を解放した主人公は、最後の戦いに挑みます。
ゲーム「バイオショック」では、黒幕を倒す為の準備を整え、お互い全力の正面衝突によって白黒をつけようとします。
バイオショックでは、ラスボスを最後に倒すのは主人公では無く、旅の間に出会った仲間によって報いを与えられます。
ゲーム「ゼノギアス」では、世界の大半が崩壊してしまいますが、因果律を操る存在を苦労の末に止め、主人公とヒロインを閉じ込める因果の輪から抜け出します。
アニメ「ケムリクサ」では、船の暴走を仲間達との協力によって止め、主人公達は船の外へと出る事が出来ます。
こうして、この形式の物語は、本当の自分を取り戻した主人公が使命を果たす事で、世界がより良くなってフィナーレを迎えます。
まとめ
以上、記憶を取り戻す旅の物語とは、運命的な使命を帯びた主人公が、記憶喪失だからこそ経験できる数々のイベントを通して成長し仲間を得てから、記憶を取り戻す事で、記憶があるままよりも良い判断で使命を果たす物語と言う事でした。
この形式の物語のポイントは、記憶が無い事で主人公が先入観を持つ事も、偏見に晒される事も無い状態で、旅の途中で様々な人と出会い、成長する事にあります。
仮に、記憶があれば主人公は嫌でも身分・実力・あらゆるレベルの差を相手に感じ、当然ながら相手も感じる事になります。
すると、そこには上下関係が生まれてしまい、対等な関係や平等な考え方への妨げになります。
主人公は、出会う仲間とは、あくまでも目的を同じくした対等な仲間として最初は接する必要があります。
だからこそ、仲間の事を考えた上で、最後には運命を受け入れ使命を果たせるのです。
この記事が好きな作品探しや、この形式の物語を作る時の参考になればと思います。
必須要素
成長の旅
- 旅の目的、夢や目標
- 目的を同じくする仲間の存在
- 大事なのは成長の過程で、真の報酬は仲間
ミステリー
- 謎を追う動機がある主人公
- 探求の為に破るルール
- 企てる必要があった犯人
- 謎の暴露によって変化する世界
「記憶を取り戻す旅物語」該当作品
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