「嫌なイベント」だけでは「葛藤」は起きないと言う話

それは葛藤じゃ無い!

  • Aさん「この話、どうですか? どうすれば面白くなりそうですか?」
  • 管理人「まず、葛藤が足りませんね。例えば」
  • Aさん「待ってください! ちゃんとこのシーンでは葛藤してるし、ここでも、ほら!」
  • 管理人「確かに、ここで盗賊に襲われてるけど、全然葛藤出来てないね」
  • Aさん「全然? こんなに困ってるのに?」

 

私は、このやり取りをデジャヴュするぐらい経験してます。

それぐらい沢山の人が、葛藤の描写を上手く出来ていません。

プロアマ問わず「葛藤」を描くのが不得意なクリエイターは、沢山います。

今回は、葛藤描写が苦手な人向けの記事になります。

葛藤しそうなのに葛藤にならない

多いのが、劇中の主人公が一見困っているのに、葛藤にならないパターン。

 

  • 困難が寸止めで、主人公を避けて通る
  • 必要な物と足りない物が、一致していない

 

この2パターンが多いです。

 

1:主人公バリア

例えば、

主人公が旅をしていて、盗賊に襲われるとします。

盗賊とのやり取りで、葛藤を描く事が通常なら出来るシーンです。

ですが、葛藤下手な人の場合は用意していた解決策を慌てて使ってしまいます。

 

  1. 盗賊と遭遇。脅してきた。
  2. 見かねた通りすがりの正義の戦士が助けてくれた。

 

みたいに、ほぼ実害が出ない内に主人公を救ってしまうんです。

この場合、盗賊に襲われそうになったおかげで仲間と出会ったと言うプラスの要素しか残りません。

プラスなら良いと思うかもしれませんが、延々上り調子の物語は、追っていて感情変化の起伏に繋がりにくく、はっきり言えばツマラナイです。

このパターンをやってしまいがちな人の物語は、物凄い勢いで主人公が出世や大成をしますが、面白くありません。

困難を自身の選択の結果乗り越えるから面白く、その結果出世や大成するのであって、出世や大成の姿を眺めていても面白い筈が無いのです。

対処法として、主人公をギリギリで避けて通る困難から、主人公を守るバリアを外す必要があります。

 

2:人対蚊

もう一つのパターンは、

 

  1. 盗賊と遭遇。脅してきた。
  2. 盗賊が実力行使に出た。
  3. 主人公が実は強いので倒してしまった。

 

みたいに、力が弱いから、状況的に必要な物を持ってないからこそ葛藤になりうるシーンで、力で解決してしまう事があります。

主人公の力のお披露目やギャグシーンなら良いですが、主人公にとって少しでも嫌なイベントなら葛藤が発生すると勘違いしている人がいるのだと思います。

ですが、これらは葛藤が起きていません。

蚊が血を吸いに来たから叩き潰しても、そこに葛藤は起きないのです。

 

葛藤とは、選べない選択肢選び

葛藤とは、主人公に対して悪い事が起きて、悩む事ではありません。

葛藤には、まず主人公に選択肢が与えられます。

 

  • どちらも選びたくない
  • どちらも選びたい

 

と言う選択肢です。

それを前に葛藤が発生し、それを一度は選択する事で機能します。

盗賊の例なら、

 

  1. 盗賊と遭遇。脅してきた。
  2. 「金目の物を置いていくか、命も一緒に置いていくか」と問われた。
  3. 「金目の物も命も持って一目散に逃げるか、イチかバチか戦うか、金目の物を渡してみるか」で悩む。(これが、選べない選択肢)
  4. 主人公は自分で決断し、選択する。
  5. その結果、盗賊が行動で返事をする。

 

と言う感じまで行くと、ちゃんと葛藤します。

ここまでしないと、ちゃんとした葛藤にはなりません。

もし、その時に戦うなら楽勝にはならず、必ず代償を払います。

楽勝出来ないから、葛藤が起きるからです。

もし、助っ人が現れるなら、主人公が選択してから現れます。

葛藤の結果、選択に意味があったから助っ人と出会うわけです。

 

つまり、葛藤を描くなら主人公に苦しい選択と行動をさせる事が必須となる訳です。

 

嫌な思いをするだけじゃ、葛藤にならないのです。

 

チートや最強キャラは?

よく聞かれるのが、なろう系物語でよくあるチートや、ヒーロー物、極端な所だとワンパンマンの様な超強キャラは、葛藤が難しいと言う話です。

まず、強かったり有能だと葛藤が難しいと言う思い込みが、前提として間違ってます。

上にも書きましたが「葛藤は苦しい選択」なので、力で解決出来ない問題が起きれば、いくらでも葛藤させる事が出来ます。

チート系の物語で葛藤が弱い物が多いのは、チートで簡単に解決出来る問題ばかりが起きるからです。

面白い物語は、チートや最強キャラの有無に関係無く、登場人物に葛藤があります。

 

例に出したワンパンマンでは、主役のサイタマが抱える葛藤が普段は弱い代わりに、周囲の登場人物にスポットが当たります。

サイタマは主役でありながら物語のメインストリームの外にいる事が多いです。

他のヒーローが葛藤している姿が作品としてのメインコンテンツであり、サイタマ自身は葛藤が正しかった事を証明する為の「裁定者」と言う立ち位置です。

だから、力及ばず怪人に負けそうになるが立ち向かい続ける真のヒーローの前に現れ、その選択が正しかった事を証明して去っていく為、読者はスカッとします。

その際、サイタマの圧倒的な力も見所ですが、スポットが当たっていたキャラクターの選択が正しかった事が証明される事で読者は感動します。

 

一方で、なろう系物語のチートを持った主人公達は、下手な作品になればなるほど葛藤せずに出世したり影響力を持っていきます。

チートと問題解決が少ない行程で直結してしまうのが、多くの場合、その原因です。

 

料理で言えば、ひたすら砂糖か塩のどちらかを足す様な物で、分かり易い反面、味に複雑さが足りない単純な味になります。

葛藤は、程よい苦みや辛みなのです。

 

主人公をチートにしつつ、裁定者では無く主人公のまま活躍させたいのであれば、能力と問題解決を直結するのは得策ではありません。

また、どんなに強くても問題設定が正しければ葛藤は起きます。

 

コードギアスやデスノートと言った作品では、主人公が天才かつ超能力を持っていて、かなりの強キャラです。

ですが、能力にはリスクがあったり、弱点があったり、叶えたい野望が大きすぎてしまい、天才的頭脳と超能力を持ってしても困難な上に、主人公以上に頭の良い敵が現れます。

チートでも最強でも、そう言った工夫によって面白い物語を作る事は出来るわけです。

 

ポイントは、どんな主人公だとしても、その主人公が簡単に解決出来ない問題や、到達困難な夢を抱えさせる事にあります。

 

終わりに

苦手な人が多い「葛藤」についての解説記事でした。

葛藤への思い込みが減って、良い葛藤描写のある面白く魅力的な物語が増えれば嬉しい限りです。

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