物語の基本は「わらしべ長者」と言う話

狙って価値を交換していけば話が前に進む

わらしべ長者と言う物語をご存じだろうか?

ザックリ言えば、観音様から予言を授かった男が、次々と物を交換して成功していく話だ。

 

藁しべから交換をスタートし、

  • 藁しべ→虫のアブを結び付けた藁しべを作成→蜜柑と交換→反物と交換→病気の馬と交換→馬を介抱して元気な馬に→屋敷の留守番と交換→屋敷をゲット

と言うのが、およそスタンダードな物で、主人公は物々交換によってより良い物を手に入れる。

バリエーションで

  • わら→蓮の葉と交換→三年味噌と交換→名刀と交換→千両と交換

等があるが、これらに共通するのは、相手の欲しい物を用意して(わらしべ長者の場合は、偶然持っていて)相手にとっては同じぐらいの価値だが、主人公にとっては、より大きな価値がある物と交換していく事だ。

この価値の交換は、全ての物語の基本原理を含む物である。

藁しべでなくとも、全ての物語が何らかの形で価値ある物を交換する事で、やがて目的に到達する構造なのだ。

価値交換の基本「対等なコミュニケーション」

物語の基本は、主人公と別の何かとの、対等なコミュニケーションにある。

例えば、主人公が他の誰かに話しかけたとする。

話しかける際に、主人公には、必ず求めている物がある。

天気を知りたいなら「今日の天気は?」と聞くだろうし、相手の機嫌が知りたいなら「調子はどう?」なんて聞くかもしれない。

主人公は、他人とコミュニケーションを取る際、必ず何かを求めていて、それを引き出す為に、相手が求めている言葉を選ぶと言う訳だ。

 

言葉でなくても、例えば相手が驚く姿を求めていれば、相手の脇をくすぐったり、膝カックンでも仕掛けるかもしれない。

求めている物が手に入るかどうかは、やってみなければ分からない。

相手が主人公によって与えられた物が、返すものとマッチしていると感じなければ、求めた物は帰ってこない。

 

驚かせたいのに、怒らせる事もある。

 

それは、会話でも同じ事だ。

相手の喜ぶ顔が見たくて「可愛いね」と言ったら、冷めた顔で「セクハラですよ」と返されるキャラクターだって世の中にはいるのだ。

 

コミュニケーションは、何も対人だけの話では無い。

 

主人公が無人島で腹をすかせたとしよう。

主人公が魚を取ろうとしたり、ヤシの実を探す事は、自然とのコミュニケーションに他ならない。

主人公が正しい選択をしない限り、自然は求めに応える事は無い。

 

そして、藁しべ長者の様な物々交換や、売買契約もコミュニケーションだ。

相手と交渉して、双方納得しての価値交換と言う意味で、かなり効率化されたコミュニケーションと言える。

 

紹介して来た例の様に、価値交換の基本は対等なコミュニケーションにある。

 

不当な価値交換こそ、面白い

コミュニケーションが物語を前に進める事は分かった。

 

だが、価値交換をすれば物語が面白くなると言う訳でも無い。

 

劇中で、1000円の物を1000円で買ったり、天気を聞いて天気を聞き出せても、何も面白くないです。

 

面白くなるのは、一見した不当な価値交換にある。

 

例えば、

  • 1,000円の物を1,000,000円で買わなければならない状況に追い込まれ、1,000,000円の価値が無い事は分かっているが、どうしても必要。
  • 片想い相手に好きな人がいるか聞いて、抽象的なデティールは掴めるが具体的には確定しない事しか聞き出せないもどかしい状況。

こういう、相手の欲しい物は無理をして渡すのだが、自分が欲しい物は中々手に入らなかったり、むしろ損をしたり遠ざかっているのでは無いかと心配になる状況こそ、物語を面白くする。

 

ここで気を付けて欲しいのは、不当な価値交換は、強奪される事や困らされる事ではなく、主人公が最後には自分を納得させて交換に応じる価値交換と言う事だ。

 

いきなり理不尽に奪われたり、壊されると言った負債を背負わされる事は、不当な価値交換ではなく、理不尽である。

 

理不尽からの価値交換

 

不当な価値交換は面白いが、理不尽は、その物ではクスリとも笑えない。

 

例えば、ファンタジーで盗賊と会話するシーンがあるとしよう。

 

「呪われた洞窟に行きたいだと? なら、その腰の高そうな剣をくれれば考えてやってもいい」

と、道案内を頼む代わりに金目の物をせびられれば、目的地にどうしても行きたいのであれば要求を呑むなり、交渉するしかない。

しかし、双方にプラスの価値交換が行われる前提がある為、金に汚いと思っても不愉快度は高くない。

 

これが理不尽となると、

「金目の物を全部置いていけば、命だけは助けてやる」

と言うお決まりのセリフになったりする。

すると、金目の物は自分の物で、命も自分の物と、価値交換ではなく理不尽な、ただの脅迫となる。

 

上記なら、不当に感じても価値交換なので、主人公は持っている物と必要な物を交換して、より必要な物に近付く事が出来る。

物語が前に進むのだ。

 

下記なら、諦めて全財産を失うか、命がけで逃げるか戦うかの選択を迫られる事になり、価値交換にならない。

この場合は、主人公はより負債が少なそうな選択をする事になり、イベント単体ではマイナスの効果しか生まない。

 

つまり、価値交換とする為には、別の物でコミュニケーションに変えてやる必要がある。

理不尽をコミュニケーションに発展させる為には、マイナスをプラスに転じさせる理由を付け加える必要がある。

 

例えば、盗賊に襲われる事で、通りすがりの旅人や騎士に助けられ、そこから人間関係が発展する何てイベントセットは、非常にスタンダードだ。

盗賊に襲われるマイナスを、助けてもらう、あるいは別の出会いのきっかけとしてプラスを得る為の対価に変える訳だ。

他に、盗賊を懲らしめて仲間にしたり、とにかくマイナスをプラスに変えるイベントをセットする事で、シーンの中に価値交換を構築出来る。

 

終わりに

物語は、価値交換で前に進む事が分かったと思う。

  • 対等な価値交換
  • 不当な価値交換
  • 理不尽からの価値交換

これらのバリエーションを使い分け、主人公が求める物に最後にはたどり着く価値交換を狙って配置できれば、物語は紆余曲折したとしてもエンディングに辿り着く事が出来る。

物語の主人公が狙っていなくとも、クリエイターは狙わなければ、物語と言う旅路は、いつまでたっても目的地に到着しない。

この基本を心にとめ、藁から屋敷や千両を手にする様に、思いもよらぬ価値交換を経て主人公の目的を達成しよう。

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