トラブルメーカーは面白い
トラブル。
実際に起きれば嫌な物。
しかし、物語の中では必要な存在。
トラブルを起こす人をトラブルメーカーと呼ぶが、トラブルメーカーと言うキャラクターを誰にするかによって、物語は大きく様変わりする。
今回は、トラブルメーカーと言うキャラクター属性について解説する。
トラブルとは?
トラブルとは「工程において事故が起きる事」を指す。
社会的な事故、いざこざ、もめ事、悶着、面倒、問題、紛争、障害、等とWikipediaでは説明されるが、これ等は要するに「通常・平常の工程から逸脱した状態」と言える。
つまり、通常と言う「凪」の状態から、トラブルと言う「波」の状態に移行する事を、トラブルが起きると表現すると言う事だ。
物語とは、問題を解決する工程の描写をする物だ。
必ず、解決するべき問題が必要である。
そう考えると、問題を起こすトラブルメーカーの重要性は分かると思う。
トラブルメーカーが物語を面白くすると言っても言い過ぎではないのだ。
トラブルメーカーの種類
物語に見るトラブルメーカーには、いくつか種類がある。
- 不運型
- 空気読めない型
- 計画型
等がある。
順に見ていこう。
不運型
不運型トラブルメーカーは、運に見放されている。
まず、大きな不運に見舞われ、それを受け入れずに損した分を取り戻そうと行動するのが特徴となっている。
病気になる、事件に遭遇する、事故に遭う、とにかく破滅寸前の不運にぶち当たり、それを跳ね除ける為にトラブルメーカーと化す。
ある意味、被害者なのだが、被害者のまま終わる事は無く、ヒーローになる事もあれば加害者側に転じる事もある。
例えば、
ドラマ「ブレイキング・バッド」の主人公ウォルターは、癌の告知を期に、家族に金を残す為にと覚醒剤の密造に手を染め、大きなトラブルを起こす事になる。
映画「ダイ・ハード」の主人公マクレーン刑事は、テロリストのビルジャックに遭遇し、別居中の妻を助ける為に、テロリストにとってのトラブルとなる。
ウォルターは徐々に加害者に堕ちて行き、マクレーン刑事はヒーローへと昇華する。
空気読めない型
空気読めない型トラブルメーカーは、変わり者ばかりだ。
「空気を読んで」「今までなら」「常識なら」「普通なら」と言った当り前の状況に異を唱え、良い事でも悪い事でもトラブルを巻き起こす。
映画「フォレスト・ガンプ」の主人公フォレストは、知能指数が低く、とにかく空気が読めないが、純真な心と行いによって成功を収めて行く物語だ。
映画「キューティ・ブロンド」の主人公エルも、空気が読めない。
ファッションにしか興味が無かったのに、好きな男を追って住む世界の違うハーバード大学のロー・スクールに通い始め、トラブルを巻き起こしてしまう。
漫画「よつばと!」の主人公よつばも、幼さゆえに空気が読めない。
子供特有の拙さと鋭さによってトラブルを起こし、それを周囲のキャラクターがツッコミを入れる構成は、非常に微笑ましくも面白い。
計算型
多くのミステリーやサスペンスの犯人に当てはまるのが、計算型トラブルメーカーだ。
綿密な計画を立て、自分の目的の為にトラブルを起こすのが特徴である。
だが、敵側だけの特権ではなく、主人公もこのタイプのトラブルメーカーにしっかりとなれる。
アニメ「コードギアス」の主人公ルルーシュは、計画型のトラブルメーカーである。
足と目が不自由な愛妹が幸せに暮らせる世界を作る為と、父王が支配するブリタニア帝国に対して反旗を翻し、テロ、レジスタンス、クーデターと巨大なトラブルを起こしまくる。
漫画「デスノート」の主人公ライトも、計画型トラブルメーカーだ。
世の中の凶悪犯をデスノートによって大虐殺し、やがて邪魔をする人間をも手にかけるようになっていく。
計算型トラブルメーカーを主人公とする場合、解決側との攻防も見どころの一つとなる。
コードギアスなら、ジェレミアやコーネリアがルルーシュに迫るからこそ、物語が盛り上がる。
デスノートなら、Lや警視庁の捜査の手がライトに迫るからこそ、スリリングな展開に手に汗握るのだ。
計算型トラブルメーカーが敵の場合は、主人公は犯人像や動機、計画の全貌を徐々に解き明かす事が醍醐味となる。
犯人が謎ならミステリーに、明かされていればサスペンスとなる。
ミステリーはクライマックスで真実が暴露され、サスペンスの場合は犯人との駆け引きが描写される。
そういう意味で、コードギアスやデスノートは、探偵と犯人の立場が逆転したサスペンスだ。
トラブルを起こす側か、解決する側か
物語は、トラブルを起こして目的を完遂する自己実現型の物語と、トラブルを解決して平和を取り戻す自己犠牲型の物語の表裏一体で構成されている。
ミステリー物の様な探偵と犯人がいる物語、ヒーロー物のヒーローとヴィランがいる物語と、物語の基本は、トラブルを起こす側と解決する側で構成される。
だが、表裏一体とは言え、単純な構成ばかりではない。
そこは、組み合わせや捻りによって、物語はいくらでも面白く出来る余地がある。
映画「ジョン・ウィック」では、
マフィアのバカ息子が空気が読めない型トラブルメーカーとして、主人公ジョンの車を盗み、亡き妻が贈った愛犬を殺してしまう事で物語が一気に動く。
ジョンは実は伝説の殺し屋で、不運型トラブルメーカーとして、マフィアの息子を殺す為に組織自体を潰しにかかる。
この物語で面白いのは、マフィアのボスがトラブル解決の為に奔走する立場に置かれる点だ。
バカ息子と伝説の殺し屋と言うトラブルメーカーの板挟みになり、苦しむ訳だ。
「盾の勇者の成り上がり」が物足りない理由
「盾の勇者の成り上がり」と言う作品をご存じだろうか?
2019年1月から6月にかけてアニメ化も果たした、なろう系小説原作の作品だ。
この物語、とにかく「勿体無い」。
作画は良いし、好き嫌いは置いておいて設定も悪くない。
ただ、トラブルメーカーの使い方が、絶望的に下手くそなのだ。
この物語は、いわゆる主人公追放物と言われる、なろう系ジャンルの走りだ。
勇者として異世界に召喚された主人公が冤罪をかけられて、王国を追放される所から物語が動き始めると言うテンプレである。
主人公以外に3人の召喚された勇者が登場するのだが、3人が3人とも悪い意味で空気読めない型トラブルメーカーで、カッコ良さげな描写はあっても、魅力がまるで無い。
それだけでも「かなり勿体無い」のだが、国王と姫が実は冤罪事件を起こした実行犯でした、と言う構成なのに、計画型トラブルメーカーの正体が最初から判明している。
いや、判明しているまでなら、良い。
スリリングな駆け引きがあれば、サスペンスとして幾らでも処理が出来るからだ。
しかし、国王と姫、犯人二人は、絶望的に頭が悪い描写が続き、スリリングな駆け引き等存在しないまま、二人がメイン悪役の物語は幕を閉じる。
計画型トラブルメーカーに、計画らしい計画が無いのだ。
これは、致命的なミスだ。
計画型トラブルメーカーである必要があるポジションなのに、二人とも勇者3人と似た様な悪い意味で空気読めない型トラブルメーカーなのだ。
空気読めない型トラブルメーカーは、はっきり言えば一人で良い。
それが5人もいて、全員敵なのだから、ジョン・ウィックで言えばマフィアのバカ息子ばかりが5人も湧いて出た様な状態なのだ。
せめて、国王か姫が計画型トラブルメーカーとして機能していれば、この物足りなさは幾分か解消される筈である。
勿体無い。
終わりに
以上、トラブルメーカーは物語に必要と言う解説でした。
注意としては、自己中心的な理由でトラブルを起こすキャラクターは嫌われ、必要に迫られたり誰かの為にトラブルを起こす事をいとわないキャラクターは愛されると言う原則があります。
つまり、主人公だとしても、自己都合でトラブルを起こすキャラクターは嫌われるし、敵だとしても誰かの為にトラブルを起こしていた事が判明すれば愛されます。
この記事がトラブルとトラブルメーカーを使いこなして、面白い物語を作るのに役立てば嬉しい限りです。

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