物語の葛藤は、たった2種類という話

危機と幸運の話

登場人物の持つ動機が行動へと導き、行動が物語を動かす。

しかし、それだけで物語は面白くならない。

 

例えば、

主人公が愛する人の為に世界を救いたいと言う動機を持っていたとしよう。

主人公は動機によって、世界を救う為の行動をする筈だ。

その際、

 

  1. 主人公には世界を救う力があり、簡単に世界を救う事が出来る。
  2. 主人公には世界を救う力など無いが、どうにか世界を救わなければならない。

 

どちらの物語が面白そうだろうか?

大抵の人は、「2」の物語の方が面白くなりそうだと感じる。

出来ない事をやり遂げなければならないと言う状況に、ドラマティックさを感じるからだ。

つまり、葛藤があるから、後者の方が面白くなりそうなのだ。

この記事では、その葛藤が2種類に分けられると言う、少し掘った話をする。

 

葛藤とは?

人・概念・その他様々な物の間で起きる『対立』であり、何か一つしか選べない状況で『相反し甲乙つけ難い選択』を迫られ、迷う状態を指す。

 

様々な定義が可能だが、事物語に関しては、そんな認識で問題無い筈だ。

 

上記例なら、世界を救う力が「無い」のに、世界を「救わないと」愛する人を「守れない」と言うジレンマに陥った状況だからこそ、ドラマが生まれ、面白くなりそうに感じる。

 

この葛藤と言う物は、タイトルの通り大別すれば2種類に分けられる。

 

  • 一つ目は、危機的状況を前にして、出来ない事を出来る様にならないといけない葛藤
  • 二つ目は、チャンスを前にして、どちらを選ぶかで悩む葛藤

 

危機的状況

危機的状況での葛藤は、自己犠牲的な側面がある。

主人公が直接でも間接でも危機的状況に追い込まれれば、その解決を目指さないと何かを失う事になる。

その際、主人公は大切な物を失わない為に、問題解決に自ら乗り出す必要が出てくる。

 

つまり、自己を犠牲にしてでも問題を解決に導く事で、大切な物を守ろうとする。

大切な物は「動機」に繋がり、葛藤は「問題」に対して様々な形で繋がっていく。

 

敵対する相手がいる場合は、主人公と敵は対立という葛藤の関係になり、当然敵を負かす事が難しい程に葛藤は大きくなって物語は魅力を増す。

 

人対人でなくても、主人公がやらなければならない事に対して、やりたくない要素が備わっていれば、それだけで大きな葛藤が生まれる。

 

法律や禁忌を破る行為、羞恥心をくすぐる行為、人がしたくない事としなければならない事がセットになれば、自然と葛藤が生まれる。

例えば、遭難して食べ物が尽きた時に仲間を減らせるか・食べられるかと言うのは究極の選択の一つだ。

他にも「ソフィーの選択」と呼ばれる有名な例がある。

愛する二人の子供、どちらかしか生かせず、意思を持って片方を選ぶ必要に迫られたらどうするか、と言う物だ。

(詳しくはソフィーの選択で検索して欲しい)

 

大切な物を守る為に、失わない為に、自己犠牲的な葛藤が発生し、それが物語を輝かせる。

 

チャンス

チャンスでの葛藤は、自己実現的な側面がある。

主人公にチャンスが舞い込み、現状維持に甘んじるか、イチかバチかチャンスに飛び込むかを主人公が選ぶ時に発生する葛藤だ。

 

チャンスとは、欲しい物が手に入ったり、夢を叶える様なチャンスの事だ。

つまり、欲しい物や夢が「動機」に繋がり、葛藤はあらゆる「不足」に対して様々な形で繋がっていく。

 

チャンスでも、人と人の対立が発生する事で葛藤が生まれる。

全員がチャンスを掴めない以上、そこには椅子不足から椅子取りゲームが発生するわけだ。

 

他に、変化を嫌うあらゆる力が葛藤を生み出す。

周囲の環境は、主人公が成功しようとする事に対して、変化を嫌うあまりに対立するだろうし、主人公自身も新しい事への挑戦には葛藤を感じる。

出来ない事が出来るようになるには、葛藤を乗り越えて行動し続けなければならない。

 

そして、時にはチャンスを掴むために究極の二択を迫られる事もある。

夢の様なオファーと共に歩んできた仲間のどちらを選ぶか、なんてシチュエーションは良くあるが、あれはチャンスによる葛藤の代表的な例である。

 

まとめ

以上、簡単に言ってしまえば、

  • マイナスな出来事への葛藤は、自己犠牲的で、それには危機的状況が必要
  • プラスな出来事への葛藤は、自己実現的で、それにはチャンスが必要
  • それらは、それぞれ登場人物が簡単に実現出来ない事

これ等の条件が揃えば、葛藤が作りやすいだろう。

 

  • 戦争が起きて、戦わないといけない

これは自己犠牲的な葛藤だろう

  • スポーツの大会があって、優勝したい

これは自己実現的だ。

  • 殺人事件が起きて、犯人を捕まえたい

自己犠牲的だと直感で分かる筈だ。

そんな要領で、好きな物語の葛藤がどちらの傾向にあるのか把握すれば、クリエイターは自分の作品にもそれらを活かしやすくなる。

 

例えば、デスノートでは、主人公はチャンスを得て自己実現的な葛藤の中でチャンスを掴み取ろうとする。

ベルセルクでは、主人公は危機的状況の中で自己犠牲的な葛藤を抱えながら旅をする。

水戸黄門は自己犠牲的だし、シャーロック・ホームズも自己犠牲的だ。

一方でルパン三世やドラえもんは、自己実現的な傾向が強い。

 

この記事が、ストーリーテラーの葛藤への理解に何か少しでも貢献出来たのなら嬉しい限りだ。

この記事は、どうでしたか?

View Results

Loading ... Loading ...
スポンサーリンク

“物語の葛藤は、たった2種類という話” への2件の返信

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

%d