目的が分かれば、やるべき事が分かる
物語には、主人公の目的が必要だ。
当り前の話に聞こえるが、これを考えるのが苦手な初心者は、かなりいる。
学校のテストで良い成績を取る、沢山のお金を得る、そういった「表面的な目標」は、しっかり見えていても「何の為に?」が考えから抜けてしまうのだ。
進学に有利だから、行きたい学校に行くには必要だから、親に褒められるから、周りに尊敬されるから、目的意識が苦手な人が軽く目的を答えようとすると、そんな答えになりがちだ。
だが、それらは目的では無い。
目的とは「なぜ?」と質問を重ねた先の「なぜ?」の終着点に待っている。
例えば、進学は目標に過ぎず、進学した先で何を学ぶかが、より深い目的である。
何の為に学ぶのかを考えれば、将来の夢や、憧れの実現と言った答えが出てくるだろう。
夢は、何を実現する為かを考えると、夢にこだわり、そこを目指す理由が見えてくる。
人を救う為、誰かを幸せにする為、自分が幸せになる為、そこは人それぞれだ。
目標の終着点「目的地」が見えていれば、物語が道を迷う事は無い。
この記事では「目的」の基本的な5パターンについて軽く説明したい。
1:目的地系(場所)
特定の場所に行かなければならない理由があるパターン
目的地に至るまでの道程に、様々な壁が立ちはだかるのが基本で、目的地に行く理由は何かを「取りに行く」「送り届ける」とあり、何かとは「人を」「物を」とバリエーションがある。
基本的に、目的の場所は動かず、目的地は変わらない。
目的地が複数ある場合もあるが、物よりも場所が重要な要素となる。
ロードオブザリング
魔王復活を阻止する為に、魔王復活の鍵である指輪を唯一壊せる火山に運ぶ物語。
狼と香辛料
ヒロインを故郷の北に帰す為に旅をする物語。
オズの魔法使い
家に帰る為に、帰り方を知っている魔法使いに会いに行く物語。
2:目的人系(人)
特定の人を探さなければならない理由があるパターン。
人に至るまでの行程に、様々な壁が立ちはだかる。
探す相手が「分かっていて探す」「分かっていなくて探す」等のバリエーションがあるが、相手は人なので動くのが基本。
動かない場合は、目的地系と実質同じ。
探す理由は、悪人の特定、悪人への復讐、大事な人との再会、特定の人の保護、特定の人に助けを求めて、等と多種多様。
探す人が複数人いる場合もある。
起きた事件を調べて犯人を特定し捕まえる物語。
ガンソード
恋人を殺した仇を見つけて、復讐する物語。
ベルセルク
夢の為に仲間を皆殺しにした親友に復讐する物語。
ダンジョン飯
ダンジョンに取り残された仲間を救いにダンジョンに潜る物語。
ダーカーザンブラック黒の契約者
行方不明になった妹を探す兄の物語。
ヴァイオレットエヴァーガーデン
代筆依頼者に会って手紙を書き、手紙を受取人に渡す物語。
3:目的物系(物)
特定の物を探さなければならない理由があるパターン。
物に至るまでの工程に、様々な壁が立ちはだかる。
物自体が直接、間接的に必要だったりとバリエーションがある。
探す物が複数ある場合もある。
置いてある場所や、持っている人と言った設定の場合、上の二つと実質同じになる。
ドラゴンボール
7つ集めればなんでも願いが叶うドラゴンボールを求めて旅をする物語。
宝島
宝の地図に記された宝物を求めて旅をする物語。
西遊記
天竺に三蔵法師を送り届ける物語。
4:目的概念系(肩書、立場、状態)
特定の状態にならなければならない理由があるパターン。
状態に至るまでの工程に、様々な壁が立ちはだかる。
ゲームやスポーツの優勝、勝利と言う状態その物が目指す目的となる等。
ピアノの森
ピアノコンクールで優勝し、望みを叶える為に努力する物語。
5:目標、使命、任務系
特定の「結果」や「成果」を得ないとならない理由があるパターン。
場所に行く、人を探して会う、物を探して得る等の上のパターンと基本は同じなのだが、それ自体は目的では無く、あくまでも目的を果たす為の目標。
冒頭で説明した、目的と目標を混同する原因となる、考え方。
目的を達成する為の下位概念。
狼と香辛料
旅をする路銀を稼ぐために商売をする物語。
ベルセルク
使徒と呼ばれる怪物を倒す旅をする物語。
ダーカーザンブラック黒の契約者
組織に与えられた様々な任務を遂行するエージェントの物語。
ドラゴンボール
ドラゴンボールを得る為に、狙う敵を倒していく物語。
終わりに
主人公にとって最も重要で遠い「場所」「人」「物」を「目的」に設定すると、物語が何の物語か分かりやすくなり、非常にシンプルに見えたと思います。
目的の認識は、物語作りにおいてかなり有用です。
ゴールが見えていればこそ、どちらに何を使って行くのが適切なのか計画を立てる事が出来るからです。
目的を達成する為に目標として何をしなければならないかが分かれば、それは3幕構成の第二幕、起承転結の承、序破急の破と言った、物語の真ん中を考えやすくします。
「目的」と言う結末や一区切り、目的に至る「目標」と言う必要な結果を得る為にしなければならない事を、考える事が苦手な人は、まず目的を、次に目標を考えて見ましょう。
自作で考えがまとまらない時は、自身の好きな作品の「目的」と「目標」を見つける練習をする事で、自作でも見つけられるようになると思います。
ちなみに、注意点として目的につながる「なぜ」を最後までやってしまうと「幸せの為」的な抽象的な答えいに行きつく事になるので、登場人物の外側にある「目的」まででブレーキをかけると丁度良くなる。
例えば、
良い大学に行きたい→医者になりたい→人を助けたい→人の喜ぶ姿を見たい→人の役に立つのが幸せだから
であれば「医者になって、人助けをしたい」ぐらいでブレーキをかければ、目的が外にある事になり、それを得る為に登場人物は行動する必要があり、物語を創りやすい。
この記事が、目的と目標を認識する助けになれば幸いです。