黒幕の条件
物語のクライマックス、満を持して判明する「黒幕」と言う役割の登場人物。
物語全体や一つの事件を、裏から操っている存在。
それは、非常に魅力的な役柄でもある。
黒幕次第で物語の評価が大きく変化する事まであるぐらい、超重要なポジションだ。
この記事では、そんな重要キャラクターである魅力的な黒幕について説明していく。
なお、黒幕と言う役柄を例を出して説明する為、重要なネタバレが多々含まれる事となる。
ネタバレを覚悟するか、後で読む事を推奨したい。
繰り返します。
今回の記事は、隠されていたラスボスや、大どんでん返しに関わるネタバレを含むので、注意して欲しいです。
読むなら自己責任と言う事で、お願いする次第です。
黒幕の最低条件
黒幕とは、頭が良くなければ務まらない。
頭が悪い黒幕ほど興を削がれる存在も無い。
表から見ている誰にも正体を悟られずに、一つの目的の為に、秘密裏に計画を遂行するのだ。
頭が悪くては務まる筈も無い。
黒幕は、かなり頭が良い。
これが、最低条件である。
黒幕例
では、既存の作品から魅力的な黒幕を紹介する。
有名作品から、少しマイナーな作品まで様々だが、ネタバレを含むので嫌な人は注意して欲しい。
黒幕は、大きく分けて次の6パターンがある。
1:最初は隠れて暗躍系
- うしおととら:白面
- 銃夢:ディスティ・ノヴァ博士
- グレンラガン:アンチスパイラル
- クロノクルセイド:アイオーン
- サザンアイズ:シヴァ
- スクライド:無常
- ストライクウィッチーズ:トレヴァー・マロニー
- ゼノサーガ:ヴィルヘルム
- ZOE:ノーマン大佐
- 翠星のガルガンティア:ストライカー
- トライガン:ナイブズ
- ノワール:アルテナ
- フェイトステイナイト:ギルガメッシュ
- ベターマン:カンケル
- ヘルシング:少佐
- 封神演義:女媧
- ラストエグザイル:デルフィーネ
2:敵として活動しつつ裏で暗躍系
- アラジン:ジャファー
- エウレカセブン:デューイ・ノヴァク中佐
- バットマンダークナイト:ジョーカー
- メイドインアビス:ボンドルド卿
- モンスター:ヨハン
3:味方のフリして裏で暗躍系
- アイアンマン:オバディア・ステイン
- アロー:マルコム・マーリン
- ヴァルキリープロファイル:ロキ
- からくりサーカス:フェイスレス
- 殺し屋1:ジジイ
- シドニアの騎士:落合
- テイルズオブジアビス:ヴァン・グランツ
- テイルズオブシンフォニア:ミトス
- ナデシコ:アカツキ・ナガレ
- フラッシュ:イオバード・ソーン
- フェイトアポクリファ:天草四郎時貞&セミラミス
- フリクリ:ハルハ・ラハル
- ベルセルク:グリフィス
- ポータル:グラドス
- 舞HIME:神崎黎人
- まどマギ:キュゥべえ
- 未来日記:ムルムル
- ラーゼフォン:バーベム卿
- ワイルドアームズ2:アーヴィング&アルテイシア
4:他人の計画乗っ取り系
- エヴァンゲリオン:ゼーレ→ゲンドウ
- ゼノギアス:天帝カイン→カレルレン
- ZOEドロレス:ナフス・プレミンジャー→ラダム
- ファイナルファンタジー7:ホウジョウ博士→セフィロス
- ファイナルファンタジー9:ガーランド→クジャ
- フェイトゼロ:遠坂時臣→ギルガメッシュ
5:正体を隠して実は味方系
- アルジェントソーマ:デビット・ロレンス
- 異世界の聖機師物語:ユライト&ネイザイ
- 宇宙のステルヴィア:カール・ヒュッター
- ガールズアンドパンツァー:角谷杏会長
- 巌窟王:エドモン・ダンテス
- 攻殻機動隊SAC:笑い男
- ハリーポッター:スネイプ先生
- ぼくらの:コエムシ
- メタルギアソリッドシリーズ:リボルバー・オセロット
6:主人公が黒幕系
- コードギアス:ルルーシュ・ランベルージ
- デスノート:夜神ライト
- ブレイキングバッド:ウォルター・ホワイト
魅力的な黒幕になる為に
黒幕の最低条件は頭が良い事と書いた。
その頭を使って、黒幕は何をすれば良いのだろうか?
黒幕には、必要最適な条件がいくつも存在する。
1:譲れないこだわりを持て
魅力的な黒幕の最初の条件は「こだわり」である。
「こだわり」の無い黒幕はダメだ。
この譲れない「こだわり」が、そのまま動機や計画へとリンクする。
権力や力への憧れ、信じる正義の遂行、大事な人への献身、黒幕は「こだわり」を持った存在を持たなければ輝かない。
例えば、コードギアスのルルーシュが妹のナナリーと言う決して譲れないこだわりを持たないキャラだったら、ここまで魅力的なキャラクターには決してなり得なかっただろう。
2:譲れない物を守ったり、手に入れる為には、手段を選ばない
黒幕には、時に周囲を騙し、操り、自分の手を汚してでも、手段を選ばずに「守ったり」「手に入れたい」程の「こだわり」の対象が必要不可欠である。
ちょっとこだわってる程度では話にならず、譲れないこだわりは「本当に譲る事が出来ない」そんな「こだわり」でなければならない。
例えば、コードギアスのルルーシュにとって、ナナリーの幸せは全てに勝って優先される事柄として描写される。
父親から政治の道具にされない普通の幸せをナナリーが得る為には、ルルーシュは邪魔者を全て殺し、その罪を全て背負う覚悟を持っている。
愛する妹の幸せに為にルルーシュは、手段を選ばない。
3:行動するしかない状況に置かれる
手段を選ばない、あるいは選ぶ事が出来ない、そんな状況に追い込まれ、黒幕は「こだわり」を譲らない為に行動を起こさざるを得ない事になる。
逆に言えば、状況が切羽詰まったり、整っていない場合、黒幕は行動を起こす事が出来ないとも言える。
猶予や余裕があったら、それが譲れないこだわりであっても急ぐ必要が無くなってしまう。
動機があっても、葛藤を乗り越えるだけの状況設定が整っていないと、人は動く事が出来ないと言う原則は、黒幕にだって例外なく当てはまる。
コードギアスでは、実現出来る力を得る事から行動が始まる。
ブレイキングバッドでは、余命宣告と言うタイムリミットを突き付けられる事で行動せざるを得ない状況に追い込まれる事で、ようやく行動に至る。
「1」こだわりがあり、その為に「2」手段を選ばず、「3」手段を使う必要がある。
この3要素によって、黒幕は最初の行動を起こす切欠を得る事が出来る。
4:計画を立てる
黒幕は、行き当たりばったりに行動したりしない。
譲れない「こだわり」を守る為に、目的達成に向けた入念な計画を立てる。
計画を立てる頭が無いキャラクターは、黒幕にはなり得ない。
例えば、コードギアスでルルーシュは、日本人レジスタンスを駒として敵国ブリタニアと戦える軍隊を手に入れようと画策する。
ブレイキングバッドでは、ウォルターは家族が不便なく暮らせる遺産を計算し、必要な金額を稼ぐ為に様々な計画を実行していく。
5:計画遂行と言う一点で、表に出ない
黒幕は、自身が進める計画と自分の繋がりを、極力表に出さない。
極端になると、表の世界に全く出てこない場合もあるし、大胆であれば邪魔をする勢力の中に紛れ込んで姿を隠す。
黒幕は、正体を隠す事の利点を知っていて、正体がバレるリスクを恐れる傾向にある。
正体や狙いを知られたくない人が周囲にいるのだが、それでも計画を実行しなければならない事情がある。
つまり、表に出て計画がバレている様な黒幕がいれば、それは黒幕失格と言う事だ。
黒幕は、文字表記通りに黒い幕の裏で暗躍するからこそ、キャラクターとしての輝きを放つ存在なのだ。
コードギアスでは、ルルーシュがゼロと言うテロリストの仮面で素顔を隠し、謎の人物として優位に立ち回ろうとする。
ブレイキングバッドでは、ウォルターはハイゼンベルグと言う偽名を使って、麻薬取締局から隠れながら裏社会で生きる事になる。
6:敵に正体を悟られずに、目的を前に進めようとする
黒幕にとって二重生活は日常だ。
必要な計画を進めつつ、表の活動も滞りなくしなくてはならない。
コードギアスでは、学園生活とレジスタンス活動の両立をルルーシュは実現しようと右往左往する。
ブレイキングバッドでは、一般人としての顔と麻薬製造の二足の草鞋を履きこなそうと苦労する。
この際、黒幕が敵であれば完璧に近い二重生活を実現するが、主人公が黒幕である場合は、二重生活の両立が物語の見所の一つとなる。
更に、主人公が黒幕の場合は、近しい所に主人公最大の敵がうろつく事で、よりスリリングな物語となる。
コードギアスのスザク、ブレイキングバッドのハンク、デスノートのL、正体がバレた時点で主人公が破滅するクラスのライバルが周囲をうろつき、二重生活の表の生活では親友や理解者でさえあると言う葛藤を呼ぶ状況こそ、黒幕の暗躍には必要なのだ。
また、敵が黒幕だが主人公が正体に気付いていないサスペンス形式の物語の場合、主人公は黒幕の正体に近付くが、あと少しでたどり着けないと言う展開が何度も訪れて見る者をハラハラさせる。
フラッシュでは、ソーンと言う黒幕の正体は視聴者には分かっているが、主人公のバリーにはバレていない。
その状態で、バリーがソーンの正体にニアミスを繰り返す事で、主人公目線では危険とニアミスになり、黒幕目線では正体がバレる事の回避となる。
7:独自の正論、美学を持っている
黒幕は、手段を選ばず「こだわり」を守り抜く為に計画を遂行する。
その際、人を利用し、騙し、反社会的な行いをする事もある。
だが、黒幕はその事を敵対者に例えバレて責められたり、理由を聞かれたとしても「○○だからやったんだ! 正しいだろ?」と言ってのける必要がある。
バットマンのジョーカーは「人の本性を暴いて証明する為」と人々を試す。
攻殻機動隊SACの笑い男は「薬害問題を表に出す為」と自分の正義を疑わない。
黒幕は、自分の行いに間違っている部分がどんなにあろうとも、トータルでは正しいと胸を張って本心から言える必要がある。
コードギアスのルルーシュが「ナナリーの為とは言え、敵を殺すのはやり過ぎだった」と弱音を吐いてはダメなのだ。
「ナナリーの幸せの邪魔になる奴は全員殺す」と言う姿勢であり、それが曲論と分かっていても視聴者がルルーシュを応援出来る程度に正しく思える。
そうでなければ、黒幕はダメダメなのだ。
メイドインアビスのボンドルドが非人道的な実験を繰り返しても人気なのは、ボンドルドには彼なりの美学と正論があり、例え極論であっても正しい側面もあり、譲れないこだわりを実現する為に行動しているのが誰の目から見ても明らかだからである。
8:あくまでも計画の為
黒幕は、権力や金に興味が無い。
金や権力が目的であるパターンもあるが、その黒幕の魅力は「金や権力の亡者」止まりである。
魅力的な黒幕の目的は、あくまでも「こだわり」にあり、計画の実現の為である。
金や権力が計画に必要なら求めるが、そうでないなら計画を実現する為の手段としか思わない。
行動がストイックに計画実現に直結する事に集中する為、黒幕は独特な行動様式となり、そのストイックさが黒幕の正論や美学をそのまま表す事となる。
メイドインアビスのボンドルドは、アビスの研究にとりつかれた狂人だが、研究姿勢は狂ってこそいるが非常に平等で、自分自身さえも実験台の一つでしかない。
ハリーポッターのスネイプ先生は、実は愛する人の子供を助ける事に人生全てを捧げていて、計画の為なら自身が愛されたい者に嫌われたり、命を落とす事さえいとわない。
敵であっても味方であっても、計画遂行に全てを注ぐ姿は、格好良い物なのだ。
まとめ
黒幕には、大きく分けて
- 最初は隠れて暗躍系(THE黒幕タイプ)
- 敵として活動しつつ裏で暗躍系(野望タイプ)
- 味方のフリして裏で暗躍系(裏切り者タイプ)
- 他人の計画乗っ取り系(黒幕出し抜きタイプ)
- 正体を隠して実は味方系(メンタータイプ)
- 主人公が黒幕系(主人公タイプ)
の6パターンがあり、それぞれ立ち回り方と敵味方のポジションで変化する。
その全てに共通する条件が、
- 「頭が良い」
- 譲れない「こだわり」を持っている
- 譲れない物を守ったり、手に入れる為には「手段を選ばない」
- 「行動するしかない状況」に置かれる
- 「計画」を立てる
- 計画遂行と言う一点で「表に出ない」
- 敵に正体を「悟られずに、目的を前に」進めようとする
- 独自の「正論、美学」を持っている
- あくまでも「計画の為」
があり、これ等を満たした状態で、裏で計画を遂行する事で魅力的な黒幕となり得ます。
計画遂行の末、黒幕が勝つか負けるか、報われるか報いを受けるか等は物語次第ですが、言えるのは正論や美学を捨てたり失った黒幕は、勝利する事が出来無いと言う事です。
それは逆に、正論や美学を守り抜いた場合、黒幕は敗北を喫しても何らかの形で計画が報われる結果になると言う事でもあります。
正しい事、美しい事を含んだ計画は、他の全てが間違っていたとしても、正・美点を否定される物では無いのです。
この記事が魅力的な黒幕が増える助けになれば、嬉しい限りです。

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