コンサル事例「キャラクターの魅力を引き出せ!」
- クライアント:中堅ソーシャルゲーム制作会社プロジェクトリーダーA氏
- 依頼内容:主力サービスとして、主に男性向け美少女キャラクターを中心としたガチャゲームを提供している。だが、他社の同系統ゲーム程の人気キャラクターが中々生まれず、困っているので助けて欲しい。
- やり取り:ビデオチャットとメールのみ(かなり遠隔地だった為)
- 成果物:問題点・改善案の提示
はじめに
メールでプロジェクトリーダーA氏から依頼を受け、詳細な依頼内容を擦り合わせた後に依頼を受ける。
コンサルを担当するゲームを早速アプリストアでダウンロードし、プレイしてみる。
宣伝にもお金をかけている作品でタイトル自体は広告で知っていたが、それまでプレイした事は無かった。
ゲームの内容は、ファンタジー世界を舞台に神話やおとぎ話をモチーフにしたキャラクターが活躍するタイプの物語。
システムは、キャラガチャを引き、ストーリーモードのステージをクリアしつつ、イベントをプレイしてレアアイテムや限定キャラクターを得ると言う、非常にスタンダードな作品である。
戦闘は数ステージ進めるとオートが解放され、スタミナがレベルアップで途切れないので、オートで行ける所まで物語を進めた。
最初の感想としては、キャラクターのイラストは美麗だし、キャラクターの声優は名前を知っているか、名前を知らなくても聞いた事がある声優さんばかりで、表現面においては非常にリッチな印象を受けた。
A氏とメールでやり取りをし、現在の状況と目指している目標との差が少し見えて来る。
準備を整えて
A氏とのビデオチャットでの打ち合わせ。
資料としてA氏に
- キャラクターの相関図
- キャラクターの一覧
を用意して貰う。
制作用ではなく、公式サイト等にある物だが、それで構わない。
A氏としては、あまりにも見慣れた物だ。
だが、相関図は、ちゃんと使えば非常に役に立つツールである。
初期状態の相関図には「主人公→【信頼】→ヒロイン」や「敵→【邪魔】→主人公」等みたいな情報が簡潔に書かれていた。
そこに、私は人気を出したいキャラクターを、A氏の認識で書き足す様にお願いした。
ガチャ主体のソーシャルゲームで、キャラを毎月追加する様な状態で、キャラクター相関図のどこに組み込むか深く考えずにキャラクターを量産しているのは明らかだ。
人気キャラ候補は、キャラクター相関図に入れられこそしたが、シックリ来なかった。
次に、キャラクター同士の関係性の矢印では無く、囲む「グループ分け」を相関図の上でやって貰う。
すぐに主人公グループ、モチーフとなっている神話やおとぎ話毎のグループ、等が相関図の上に現れる。
グループ分けを行うと、先程よりも人気キャラ候補の立ち位置がハッキリする。
次に、相関図にグループとキャラの両方で、主要な「目的・動機」を書いて貰った。
これをすると、他にも何人か動機が曖昧なキャラが出て来る。
更に、キャラクターの「願望」を書いて貰うと、かなりのキャラクターが特に願望を持っていない事が分かった。
重ねて、キャラクター同士で「特別な関係」が設定されているキャラクターが少ない事も分かって来た。
同じグループにいても、相関関係があっても「仲間」と言う「同級生」や「同僚」ぐらいの関係のキャラクターがかなりいて、しかも劇中でキャラクター同士の絡みは殆ど無かった。
見た目や設定は美麗で魅力的だし、キャラクターの性能も高い者も多く、弩のキャラクターもゲームとしては魅力的に見えた。
しかし、物語と言う観点では、多くのキャラクターが肝心のキャラが立っていなかったのが判明した訳だ。
方向性の擦り合わせ
問題点の提示は出来た。
A氏が理解しきれていない個所は、A氏が目標にしていた別サービスのゲームや、その点で優秀なゲームを題材にして説明した。
それから、こちらで簡単な資料を作り、今後の方向性を擦り合わせた。
修正案の提示
ゲームのシステムや物語の設定も踏まえつつ、キャラクターがどうすれば魅力的になるかを話し合った。
具体的には、それまでは美麗なキャラクターの陳列棚だったのを「濃密な関係性を持たせる」事で、その魅力が相乗効果的に発揮出来る様に、疑問に答えたりアイディアを提示したり、A氏に並走しながら基本設定からの改善を行った。
その中でも、特に気をつけたのは、お約束と言うか、基本なのだが「葛藤」を入れ込む設定の構築を出来るだけ行う事だ。
「葛藤」は、面白くする上で、やはり重要な要素なのだ。
例えば、キャラクターAとキャラクターBがいるとする。
ここで「二人は両想い」にすると、設定としては簡単だが、面白みに欠ける。
「片思い」にして、片思いの理由や設定を考えれば、そこでキャラクターに深みと関係性が生まれる。
「死んだ好きだった人の面影を重ねて大事にしているが、代わりにはしたくない」となれば、二人は良い関係なのだが、正と負の両方の力が働く事で、そこにはドラマが生まれる。
このキャラ間の「葛藤」で発生するミニドラマが本編のストーリーに絡めば良いし、直接絡まないのならサブストーリーとしてどうすれば組み込めるのかをA氏やチームの要望を聞きながら擦り合わせて行った。
結果
並走して大量のキャラクターの「濃密なキャラクターの関係性」を構築する事で、大幅なテコ入れが出来た。
だが、システム面にまで手を出すのは労力とコストの面から今回は見送られる結果となった。
物語と言う観点で確実に良くなっても、ゲームと言う観点で複雑だったり、面倒になっては本末転倒と言う判断であった。
しかし、次回作を作る際、コンセプトやストーリー、キャラクターの監修で手を貸して欲しいとA氏に告げられ、クライアントには納得して貰える形で、コンサルタントは当初決めた期日中に終了した。
まとめ
キャラクターの魅力を引き出すには、
- 関係性(社会性)を作り込む
- 目的、目標、動機、願望、等の設定を作り込む(出来ればマイナスの要素も同じだけ)
- キャラクター同士に葛藤のある関係を作り込む
と言う作業によって、作品の大幅な改善が出来た案件でした。