時代の空気が作品の共感を高める。「逃避」「革命」「理想」で時代を表現せよ!

時代に合っているか否か

その時代だからこそ大きくヒットする作品と言う物が、少なからずある。

その際、モチーフテーマだけでなく、ストーリーテーマがそこには大きく関わってくる。

いつの時代でも、人々は社会に不満を抱えている。

その不満を解消するストーリーテーマが、大きなブームを起こすのだ。

今回は、時代にマッチした作品を創る為の基本形3つを紹介する。

※この記事は、一部の例で有名作品のネタバレを含むのでご注意ください。

逃避系作品

なろう系作品は、現代に流れる「閉塞感」と言う空気からの「逃避」と言う側面があるとよく言われる。

だが、これは実は、なろう系以前の大昔から存在している。

有名な物では「ナルニア国物語」がある。

1950年に発表されたこの作品は、戦乱を避けて疎開した家庭の子供達4人が異世界ナルニアへと転移して、冒険する物語である。

つまり、戦争と言う時代の空気からの「逃避」と言える。

この様な、現実の社会が抱えた解決が難しい問題から離れ、自由に生きたいと言う願望は大昔から存在している。

これが社会問題からの「逃避系物語」だ。

これは、旅先で成長するタイプの旅立ち系物語の一種であり、「家出系」とも言えるだろう。

中には、旅から帰らない物語も多く存在し、これらは現実社会に対して一種の絶望や諦めを持っている場合がある。

革命系作品

逃避する以外にも、社会への不満を解消する方法が存在する。

それは、問題を解決する事である。

ただし、解消すべき問題は、社会の抱える問題であり、このテーマは、多くの場合「敵」として「既得権益」との争いとなる。

これは、何を意味するのか?

「既得権益」を守ろうとする者達との争いとは、すなわち「前世代」や「大人」である。

つまり「社会問題」と化した「前世代」や「大人」と、「次世代」や「子供」が争う物語となる。

記事執筆時、先日アニメが最終回を迎えた「彼方のアストラ(2016)」では、主人公達は「子供」であり、敵は「親」と言う構図でストーリーが構築されていた。

この構図は、普遍的であり、社会に適応して見る事が出来る。

現代は、まさに「既得権益」を享受する「老人」と、それを「支える為の犠牲」を強いられる「若者」と言う対立構造が社会に出来上がっている。

教育問題、毒親問題、少子高齢化、年金問題、失われた20年、政治不信、マスコミ不信、子を親の夢を叶える道具にする事への是非、そのどれもが「前世代」が作った負の遺産を「次世代」が清算する事を強いられる構図になっているのは、少し考えれば分かるだろう。

「彼方のアストラ」は、「親」によって犠牲を強いられてきた「子供」が、「親」の不正を暴露する事で罪を償わせ、「子供」自身の人生を手に入れる物語だ。

「コードギアス(2006)」は、身体が不自由な妹の生きる自由の為に、兄が世界をリセットする物語だった。

これが「前世代への革命物語」である。

この先に、個人の選択によって世界の命運が決まってしまう世界系の物語が存在し、世界系の物語とは、世界を変えるか維持するかを主人公が選ぶ権利を得て、最後に選択をする物語だ。

世界を変える選択とは、前時代への破壊を意味する。

「新世紀エヴァンゲリオン(1995)」では、主人公の選択によって世界は悲惨な形ではあるが維持されて、衝撃的な終幕を迎えた。

「最終兵器彼女(1999)」では、主人公の選択によって世界は滅んでしまった。

これらは、前世代の罪や業を踏まえ、主人公が革命をするかしないかを選んだ結果の結末である。

一応補足すると、エヴァの場合は、人類補完計画と言う革命を前世代が目論んでいた為、それをひっくり返したと言う意味で、前世代を否定した形で物語が終わっている。

「天気の子(2019)」では、ヒロインと世界のどちらかを主人公が選ぶ事になり、その結果主人公は世界では無くヒロインを選んだ。

これも、エヴァと同じく、前世代が次世代に負債や責任を背負わせる形を、拒否する事で元の状態に戻り、前世代に負債をそっくり返した形での終幕となっている。

革命系の物語は、高確率で前世代によって苦しめられた主人公やヒロインが、何らかの方法で前世代に罪を償わせたり、希望を打ち砕く形で物語が終わる。

社会は、いつの時代も常に問題を抱えている。

つまり、いつの時代でも「逃避」と「革命」の物語は、何らかの形で作る事が出来る。

社会と言う前世代の既得権益を享受する老人に対して、期待が無く、絶望しているからこそ「逃避」と「革命」の物語は生まれ続けるのだ。

敵が革命家パターン

この記事では余談となるが、この系統の物語の対極には、現行社会を守る物語が存在する。

「パトレイバー2(1993)」や「東のエデン(2009)」で語られる「戦後に戻す」と言うのも「既得権益」や「社会状況」のリセット願望による物だ。

「パトレイバー2」は、丁度バブル崩壊後だし、「東のエデン」はリーマンショックの翌年で、どちらも驚くほど時代にマッチしている。

見た人は、敵の計画に共感した人も多い筈だ。

これらの願望は、大昔から変わらず、この先も人々は持ち続ける事になるだろう。

理想系作品

社会問題を一切排除した理想郷を形成し、その上で個人レベルの問題に対処する物語がある。

「優しい世界系」とも呼ぶ事も出来るこの系統の作品は、問題を抱えているのは個人であり、社会システムは驚くほど上手くまわっている前提で話が進む。

上手くまわっていると言う事は、事件が起こらず、日常を維持するシステムとして完璧に機能し、その上にいる人々は社会の事を気にする事が無く、社会描写の必要も無い。

優しい世界系とは、理想系の社会を舞台とする事で、社会問題が無い理想の世界を描きだす。

これは、逃避系の物語が他所に求める物を、実社会に投影する手法だ。

例えば「きらら作品」は、基本的に優しい世界で、このカテゴリーの作品が殆んどである。

前世代の負債は存在しないか、あっても前世代がしっかりと清算や返済をしている世界が舞台となり、どこまでも優しい。

この系統の物語は、一種の社会チートとでも呼べる状態にある。

社会が高いレベルで理想的に近く、余裕がある為、そこに住むキャラクターは個人の事に集中出来るのだ。

終わりに

「逃避」「革命」「理想」と言う3つの基本形を紹介しました。

「前世代」が残した問題を「次世代」が「逃げる」か「責任を負わせる」か「問題が無い」かと言う3種類で、かなりの物語がカバーできます。

この基本形3つのいずれかを、作者が感じている社会問題に照らし合わせて考えれば、時代にマッチした物語の構築に役立たせる事が出来ます。

なろう系で「引きこもり」や「社畜」が異世界に行くのには、それなりの理由があり、若者が大人に反抗して「大人立てた計画」をぶち壊すのにも、理由があります。

美少女や美少年が仲良くしたり、夢を追いかける物語が多く作られるのにも、ちゃんとした理由があるわけです。

この記事が、時代観に合った物語を創る一助にでもなれば幸いです。

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