最強クラスの台風接近
数日前から天気予報で触れ始め、徐々にテレビやSNSでの警戒意識が高まり始めた。
つい先月、千葉では台風15号によって停電や屋根の破損によって大きな被害が出たばかりなのに、15号よりも強烈な台風が関東に直撃すると言う。
私の居住地は、東京だ。
1200人を超える犠牲者を出した狩野川台風に匹敵すると言う情報も、不安と警戒感を煽る助けになり、いつもは雨戸のシャッターを閉じるぐらいしか対策をしないのだが、今回はしっかりとした対策を考え始めた。
比較対象の提供は、良い判断だと思った。
こういった警告が無ければ、恐らく今回もいつも通りだろうと思っていた事だろう。
台風への準備
台風が来る前にテレビやインターネットの情報を鵜呑みにして、非常食や必要そうな物を買い集めようと考える。
同じ事をみんなが考えたのだろう。
窓ガラス飛散防止フィルムの代替品として養生テープを買いに行ったが、私が買いに行った段階では既に売り切れていた。
だが、養生テープ以外は、意外と普通に買えた。
噂では、メルカリなどで転売をしている人がいて品薄らしい。
一部だと思うが、迷惑が過ぎる。
テレビを見ると、地域や店によっては食べ物やランタン、発電機が売り切れていると報道していた。
帰宅し、雨戸の無い窓にテープや段ボールを設置し、とりあえず少しだけ安心する。
と言うか、住む地域でそこまで準備をしている人は、あまりいない様だった。
だが、準備して役立たないのと、準備をしないで悲惨な目に遭うのであれば、備えた方がマシなのは明らかだ。
それから、万が一浸水した時の為に、低い位置にある物を高い位置に移動したり、出来そうな事から準備を進めた。
PCのデータも、クラウドにあげられる物は同期した。
これで、最悪PCが水没しても全てを失う事は無い。
台風当日、午前
寝坊した。
午前9時に目が覚めると、千葉を中心に9000戸近くで停電が発生し、竜巻が発生している地域もあった。
台風は、まだ関東に到達していないのにである。
交通網は台風の影響を受ける物は、一通り計画運休や欠航が前もって決まっていて、大きな混乱がある様には見えなかった。
事前に周知されていれば、それに合わせて行動出来るのだろう。
外から聞こえる雨音は、まだ普通の雨に感じる。
外を見ても道路が冠水している様な事も、今はまだない。
だが、テレビやSNSを確認すると、NHKでは台風情報一色で、SNSもトレンドは台風と言う状態だった。
コーヒーを飲みながらニュースを見ていると、スマートフォンから聞きなれないアラームが。
10時前後、避難準備・高齢者等避難開始を知らせる物だった。
不安になり、自治体のホームページを見に行くが、全くアクセスできない。
仕方が無くテレビのデータ放送で避難情報を確認すると、私の住む地域は範囲に入っていなかったが、かなり近い地域は避難準備地域に指定されていた。
このまま何事も無く過ぎてくれる事を願いたいが、台風の直撃は夜の予定だ。
全く安心できない。
充電バッテリーやスマートフォンをフル充電し、有事の際に少しでも備えようとする。
機内モードとか、画面の光量を下げたり、どこまで意味があるか分からない所まで消費電力を抑える。
静岡の駿河では、朝5時の段階で冠水し、車のタイヤの半分ぐらいの高さまで水位が上がってきている映像がニュースで繰り返し流れる。
24時間雨量が伊豆諸島あたりでは600㎜を超える事が予想されるとの報道もあり、5段階の警戒レベルで4レベルの地域が結構出ていた。
淡々とニュース映像が流れているが、内容はどれも数千から数万人の避難勧告になっている。
19号が接近しただけなのに、レベル4で、直ちに避難と言う状態では、今夜直撃したら、関東はどうなってしまうのか、かなり不安になった。
ちなみに、避難する時は避難道具や食べ物を持って出た方が良い。
それらは事前に持ち出せる様に準備しなければ、咄嗟に持ち出せない。
ニュースの避難指示のライブ感が、どんどん不安を煽ってくる。
まだ住んでいる地域では避難勧告は無いが、いつくるかと構えているのも疲れる物だ。
雨足は強まって感じる。
状況悪化前に避難とあるので、ニュースと窓の外へ向ける意識が途切れる事は無い。
確かに、風速45m瞬間風速60mなんて中、避難出来る気がしない。
SNSでワルプルギスとか、まどマギネタがトレンドになっていたが、笑い事じゃない感が強くなっている。
明日になれば東京は一旦晴れるっぽいが、夜が怖い。
午後
……
台風上陸前なのに、既に怪我人や、突風による車横転での死者までニュースで知らせが来た。
だが、外の雨音は少し大人しい。
嵐の前の静けさ、だろうか。
15:30
集中できない中で相模川上流の緊急放流、大雨特別警報、警戒レベル5へのアップが報道され、本日二回目のスマートフォンの警報アラームが鳴る。
だが、住居の周囲は窓から見ても特筆して変化がある様には見えない。
それでも、緊張感が高まる。
17時が迫っても、ニュースの中では川の水位上昇や氾濫の映像が流れるが、身近さ、実感が完全にはリンクしていない。
雨音は強まっていくが、暗くなる前に最寄りの避難所に避難する必要が、本当にあるのかどうかの踏ん切りがつかない。
避難準備は万全だが、このまま家にいても川は遠いし、建物上階なので乗り切れるのでは無いかと言う考えと、さっさと避難所で場所取りした方が良いのでは、と言う葛藤がある。
リプトンの紅茶を飲みながら、テレビを横目にパソコンに向かって仕事をしている。
19:00
3回目の警戒アラームがスマートフォンから鳴り響いた。
19:30から徐々に強くなった風と雨にビビっていると、20:00には4回目の警報が。
どんどん警戒レベルが上がるが、今更出来る事は殆んど無い。
21:00には、明らかに台風の物と分かる轟音がが、家をガタガタ、ゴーゴー、ザザザザ、と振動させ始める。
風がシャッターを揺らし、雨が波打つように不規則に窓やシャッターを打ち付ける。
風切り音ばかりが耳につき、テレビでは本日何度目かの気象庁の発表。
川の氾濫情報がTwitterで騒がれ始めるが、誤情報と言う情報も流れるせいで混沌としている。
長野では川が確実に氾濫したらしい。
ダムの緊急放流が一時中止され、タイミングを見て行うと言う情報が流れている。
緊急放流の1時間前に知らせが来るらしいが、放流が行われれば川の下流は水害に見舞われる可能性があるらしく、ギリギリの決断を迫られているのが伝わってくる。
死者2人、行方不明3人、怪我26人の被害が既に出ている。
12都県に特別警報が出ているが、一日中警戒しているせいか、変な慣れを感じ始める。
23:00
あれから夕食に味噌汁と肉じゃがを食べ、ニュースがCMに入ると一区切りにと風呂に入り、寝る支度をした。
相変わらずニュースは台風一色。
多摩川の世田谷区方面が氾濫したと速報が聞こえてきたりするが、台風の目に入っているのか、台風の勢いが少し衰えて感じる。
雨音も風音も殆んど聞こえず、まあまあ静かな夜だ。
あと2時間ほどで、東京が台風の危険圏内から出るらしい。
山梨で警戒が解除された速報が流れる。
外では、遠くで消防車らしきサイレンが聞こえる。
あと2時間、何も起きなければ、台風を乗り切ったと言う事になるだろう。
だが、関東が一山超えても、今度は東北が暴風圏内に入る為、油断は出来ない。
台風19号の直径は、1000㎞近くあり、中心が関東にある時に、端は仙台に余裕で届く程に巨大なのだ。
23:55
アニメFGOを見てる間に関東の大雨特別警報が解除された。
とりあえず、関東は台風の山を乗り越えたらしい。
よかった。
マジで、よかった。
と思ったら、多摩川、ジワジワ氾濫して来てる。
アニメSAO見つつも、ニュースから目が離せない。
気が休まらない。
13日、朝
関東からは台風は過ぎ去ったが、東北が暴風圏内のままだった。
川の氾濫や吹き戻し現象の危険が、と早朝の4時ぐらいまで気になったが、寝落ちしてしまった。
10:00が迫る頃、起きてニュースを見る。
死者9人、行方不明者22人、怪我人108人と言う情報が流れてくる。
テレビは、L字の台風情報を表示し続けていた。
ダムの放流、決壊した堤防、浸水した新幹線基地、地球温暖化、昨日まで台風一色だったニュースは、台風関連のバラバラなニュースに枝分かれし、テレビは各局で特色を出そうとしているのが見て取れた。
長野の千曲川の堤防決壊によって、一面が茶色の水で覆われた国道18号の映像が流れている。
東京の外も、まだ風がかなり強い。
私の家は、幸い被害らしい被害は無かった。
水嚢で水道管からの汚水の逆流まで警戒していたが、徒労に終わってよかった。
だが、テレビでは停電情報や冠水情報が地域別に延々と流れてくる。
一地方ごとに10万戸近くが影響を受けているらしい。
交通網も、飛行機の欠航や電車の運休情報が引っ切り無しだ。
台風の中心は東北地方の東の海にまで抜け、もうすぐ脅威は過ぎ去りそうだ。
しかし、台風が残した爪痕は、余りにも大きかった。
13日、夜
関東は、徐々に交通網が回復し、日常が戻っていた。
だが、ニュースを見ると、事態の深刻さには場所ごとの差がある事が伝わった。
判明している死者数は11県で26人にまで増え、行方不明者は21人もいる。
21の河川で24ヵ所の堤防決壊が起き、その影響範囲は広く、被災者の正確な人数は、すぐはかれる物では無い様な状態だった。
その中でも衝撃が大きかったのは、救助作業中に消防の大型救助ヘリコプター「はくちょう」による吊り上げ救出中、高度40mから77歳の女性が誤って落下した事故だろう。
自宅の50㎝浸水からの救助で、救助機材エバックハーネスのフックのかけ忘れと言う凡ミスで亡くなったと言う事故は、何とも言えない複雑な心境になった。
救助を夫と待っていたと言う事は、現場には女性の夫もいたのは間違いないだろう。
下からでも上からでも、家族が落下する姿を想像するだけで、気分が悪くなる。
また、消防隊員は純粋に救おうとしているのが分かるだけに、どこまでも救いのない事故だ。
14日
37人死亡、14人が依然行方不明と言うニュースを見ながら朝食をとる。
体育の日で休日の月曜日。
ニュースでは、徐々に被害の大きさが判明し、今朝は人的被害以外に建物や農作物の被害にまで報道の範囲が広がっていた。
イチゴや枝豆が泥をかぶり、収穫まで直ぐだったのに、もう売り物にならないと農家が嘆いていた。
15日
死者58人、行方不明者17人、被害が更に判明してくる。
数万戸と言う今も続く大規模な停電と断水、復興に向けた活動がテレビでは流れているが、東京にいるとそこまで大事と言う実感が湧かないのが逆に怖い。
東京を守る為に、長い時間とお金をかけて、どれだけの設備投資が行われていたのかが分かる気がする。
たった1回の台風襲来で国管理の22河川、都道府県管理の194河川で水が堤防を越えて浸水したと言うが、東京での被害は他に比べれば驚くほど少ない。
16日
死者74人、行方不明者11人、怪我人は224人にまで増えた。
12日から13日にかけて通過したのに、範囲が広すぎる為か、被害の詳細はまだっ分かり切っていない。
12日の夜では、死者数は一桁で、どこかの政治家が失言した様に被害はそこまで大きくない風に見えた瞬間もあった。
だが、被害が分かれば分かるほど、今回の台風の恐ろしさが時間差で浮き彫りになってくる。
この被害数を見て、狩野川や伊勢湾の台風被害と比べて軽微と考えるのは、違う。
文明が発展し、強固な都市を作り、ダムを作り、護岸工事をし、天気予報で事前に察知して準備して、尚起きた被害だ。
「自分だけは大丈夫」精神を捨てて尚、運が悪ければ、判断を誤れば、これだけの被害が現在でも起きうる事が証明された事は、今後の台風に対する認識を改めなけれないけないだろう。