本は読み比べると、自然と学べると言う話【本の読み方】

本を、どう読んでますか?

一冊をしゃぶりつくす?

それは、とても良い読書経験だろう。

はたまた、スナック菓子の様に次々と軽く読んでいくのも悪くないと思う。

大好きな同じ本を何度も読み返すのも、非常に楽しい。

小説なら登場人物に共感して読むのが、楽しみ方として王道だ。

実用書なら、実践して初めて意味がある。

実に色々な本の読み方があるけど、やっている人が意外と少ない方法で、超有用な手法がある。

それが、今回紹介する『本を読み比べる』と言う読書法だ。

この読書法をマスターする利点は「自然と考えながら読む」事にある。

1冊目は他の本と同じだが、比較する2冊目の読書体験が別物になるのだ。

読み比べのススメ

読み比べは、どんな本にでも使える。

だが、比べるからには、条件がある。

条件とは、

  • そもそも、あなたが興味を持っている
  • ジャンルが近い
  • テーマの切り口が近い

と言う、簡単な物だ。

興味の有無は大前提だ。

ジャンルやテーマが近い程に、比べるのが容易になる。

例えば、自己啓発本だ。

比較が容易な本

大抵の自己啓発本の中身に書いてある内容は「似た様な物」である事は、複数冊読んだ事がある人なら肌感として分かるだろう。

この「似た様な物」と感じるのは、本のジャンルとテーマが似通っている為に、内容に重複が起きる為である。

よく自己啓発本の感想で聞くのが「新しい得るべき事が無い、焼き直し」と言う酷評がある。

これは、内容が他の同ジャンル同テーマの本と重複しているからこそ起きる酷評だ。

では、自己啓発本が何度も焼き直されるのは、なぜなのか?

自己啓発本とは、言ってしまえば「成功者の有難い教え」によって「成功者になりたい」人が読む物だ。

多くの場合、人は「何を言われるか」よりも、「誰に言われるか」を気にする傾向がある。

『内容が同じなら、どちらも正しい』筈なのにである。

だが、思い込みで「お前が言うな」とか「お前が言うなら一理ある」と考える。

それが、大半の人って物である。

つまり、論理と同時に、判断に感情が伴うのだ。

そう考えてしまう人の為に、自己啓発本は様々な「成功者」によって書かれるのである。

読者が「誰から言葉を貰いたいか」を感情で選ぶ為に、似た内容の本が、時代に合った成功者毎に出されるわけである。

だからこそ、自己啓発本は本の中でも特に比較が容易になる。

成功する為の論理的「大前提」を丁寧に書くと、どうしたって同じ内容が重複してしまい、違いは細部や個別のエピソードにしか含まれなくなるからだ。

で、比較の何が重要なの?

読み比べの効能は、2冊目以降に現れる。

重要なのは、

  • 重複部分=同ジャンル、同テーマの重要点
  • 非重複部分=本の独自性

と言う、視点の獲得だ。

重複=超重要

重複部分は、実は非常に重要である。

ジャンルとテーマが一致した本であれば、重複個所を持つ比較本が多い程に、そこがどれだけ重要なのかが浮き上がってくる。

『ポイント』を言語化・視覚化した個所が、重複部分である。

当り前の事が書いてある事が殆んどだと思うが、当たり前だからこそ強固な普遍性を持ち、場合によっては難しくもある。

例えば「人を助けるべき」と複数冊の本に書いてあるとしても、それが正しいのは分かっても実践は意外と難しい何て事もある。

脚本術の本では「主人公は目的があり、人物的に魅力的だが弱点を持ち……」と重要なポイントを重複して説明されるのが常であるが、それを作品に生かして再現するのは、非常に骨が折れる。

だが、間違いなく重要部分であり、正しく、目指すべきであるからこそ「重複」する。

非重複=独自性

次に、問題となる非重複部分だ。

同ジャンル、同テーマであっても、内容が完全に重複する事はあり得ない。

必ず「違い」が存在する。

その非重複部分こそが、本の持つ個性となる。

そう言う意味で、非重複部分もまた、非常に重要な物だ。

だが、それが読者にとって重要かどうかは、また別の話になる。

1:重複部分を支える非重複部分

これは、読者にとってしてみると、光り輝いて見える部分だ。

重複部分が超重要故に、ジャンルやテーマが同じ事で重複するのに対し、それらを下支える非重複の記述は、ジャンルとテーマに沿っている事で、非常に役立つ。

小説ならば面白さや魅力に寄与するし、実用書であればその本にしか掲載されていないコツやポイントの記載に他ならない。

先に例を挙げた自己啓発本や実用書であれば、筆者の体験談や、独自の考え方の披露などが当てはまる事が多い。

これは、筆者によっては、再現性が薄かったり、主観的過ぎたり、間違った方法を書いている場合もあるので、非常に注意が必要な部分でもある。

2:重複部分の先にある部分

重複部分は、言ってしまえば基本だ。

その「先にある部分」とは、「応用や実践」そして誰も見た事が無い「先の話」になる。

これは、本の著者が本当に有能かつ、想像、経験、研究の言語化が上手くないと書けない事だ。

これが書かれている本は、著者の実力が本当にある場合が多い。

その反面、ハードルが高くなる事も多い。

多くの「論文」や「挑戦的な作品」が、誰も見た事が無い先を提示している。

3:重複部分に別の切り口を与えて、深くする部分

重複部分は、基本故に、分かり易いが実践が難しかったり、単純だが曖昧だったりする事が多い。

それを「より具体的にする」為に、新しいテーマを定めたり、分解して単純化を進める事で、実用性が増していく。

ただし、具体性を上げれば、それだけ網羅的に書く事は難しくなり、具体例が適応される物は、急激に限られる事になる。

例えば、筋トレの本で、特定の筋肉の鍛え方について詳しく記述を深めて行くと、その記述は特定の筋肉には通用するが、それ以外の筋肉には徐々に当てはまらなくなってしまう。

そうなると、他の筋肉を同じ深度で記述する必要が出てきて、結果的に膨大なボリュームとなる。

これを徹底すると、専門書や辞典の様な網羅的な記述スタイルになっていく。

「セーブザキャット」は物語を10種に分け、「サピエンス全史」は幸せと言う切り口で人類史を表し、これ等は、新しい切り口がある名著だ。

4:重複部分の前提を整える部分

これは、特に実用書に多い。

重複部分は超重要だが、それを実践するのは大抵難しい。

その重要なポイントを実現する為の、前提条件を整える事は、さらに難しくも非常に重要な事だ。

「ストーリー」はストーリーテリングの、「セムラーイズム」は経営の、これ等の本は、この前提を整える方法を、どうにか伝えようとしている名著だ。

読んだだけで実践できるかどうかは別の話だが、正解に続く道標を見た事があるのと無いのとでは、認識に大きな差が生まれる。

正しい方に進んで、実践しようとしている筈なのに、なぜか出来ない。

そんな時に、前提の記述がある本を読むと、突破口が見つかる事もある。

読み比べる本を選ぼう

ここまで説明したように、重複と非重複を感じ取る事で、自然と分析的に本を楽しみ、学べる事が『読み比べ読書法』の大きな利点だ。

脚本術の本なら、シド・フィールド、クリストファー・ボグラー、キム・ハドソン、ブレイク・スナイダー、あたりを読み比べれば、大部分の重複と、いくつかのキラキラと輝く非重複部分に気付いて読む事が出来る筈だ。

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上にも書いたが、重複部分がジャンルやテーマと言う点で超重要であり、非重複部分は著者の個性があって、そこにこそ本独自の価値がある。

この視点は、文芸作品、ラノベ、なろう系作品、漫画、映画、ドラマ、どれにでも適応出来る。

ジャンルかテーマ、あるいは、その両方が似た作品を、意識して比べて見よう。

分析的な視点は、一冊単体の読書とは違う理解を得られる筈だ。

もちろん、初回はじっくり読むのも良いし、同時並行で乱読しても良い。

読み進めるスタイルは、自分に合った物を選ぼう。

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