モチーフテーマは座標で探せ!
創作するにはテーマが要る。
その見た目を決定するモチーフのテーマは、この世に存在する物の模倣である事が基本だ。
つまり、モチーフを探すには時間と空間の座標を決めれば良い。
問題は、どの世界・グループの座標を選ぶかと言う話である。
座標のピンを刺す地図を決める必要があると言う事だ。
この考え方が分かれば、座標をずらす事で、作ろうとしている構造物に対して親和性の高いモチーフを見つける事が出来る。
地図と年表
座標を探すのに役立つ概念に、地図と年表がある。
地図は二次元、あるいは三次元の空間座標を決めるのに役立ち、年表は時間座標を決めるのに役立つ。
つまり、この時空間の座標を決めてしまえば、モチーフの座標を一気に定める事が出来る。
モチーフを探す時に見るべきは、地図と年表だ。
だが、ここで言う地図は、何も世界地図等に限られる物では無い。
あくまでも、見取り図としてのマップでしかなく、俯瞰して一望したい範囲の概念を表していれば、現実の空間座標に限らず、概念的な位置関係でも良い。
地図を見つける
まずは、何も決まっていない場合は、地図を見つける事から始めよう。
地図と言う事は、空間で判明している範囲で限界がある事が分かる。
つまり、最大範囲は下記右下の様な「観測可能な宇宙」が最も広い範囲となり、その外側は想像で補う必要がある。

しかし、外側や、あるいは並行世界を想像するとしても、普通の人の想像力には限界があり、この範囲内で観測された物をベースに計算や推測、想像する以外に無い。
なので、モチーフを地図から探す場合は、必ずこの「観測可能な宇宙(もちろん、最新の)」範囲の中から探す事になる。
しかし、この広大な範囲からモチーフを探す事は「SF」のジャンルでない限りは効率が悪い。
せめて図の左上、「地球」を範囲の基準にして考え始めるのが良いだろう。

地球を俯瞰して座標で見る時、大抵は平面の地図で見る事になる。
下記図の様なメルカトル図法で描かれた、球面を長方形に引き延ばした地図が一般的だ。

モチーフを探す際、まず見た方が良いのは、自分の座標を確認する事だ。
例えば、私は日本で暮らしている。
日本にピンを刺せば、自分の基準が見えてくる。
観測者の座標を中心に、モチーフが見えてくる訳だ。
居場所が一ヵ所にとどまらなくたって、モチーフを探している「あなたの基準」がどこかにある筈だ。
それから描きたい世界の基準となる範囲を、どんどん定めて見よう。
例えば、日本が舞台ならモチーフの範囲で世界地図を見るよりも、日本地図を見た方が良いし、アメリカが舞台ならモチーフの範囲はアメリカの地図の方が良い。
メインの舞台となる範囲の外にも世界が広がっている場合、その外側も意識出来た方が良いが、必ず範囲は決まっている。
例えば、スターウォーズは全宇宙を舞台にしているが、実際はいくつかの星がメインの舞台となっていて、舞台となっている星には、それぞれ地球の地域や文明のモチーフが設定されていたりする。
ここまでは、実際の場所を表す座標でモチーフを決めたパターンだ。
これを、概念的な見取り図でモチーフを決めるには、どう言うグループで見れば良いか?
グループを見つける
場所でないモチーフの座標を決めるには、概念的な範囲を決めて、それをグループとして認識する必要がある。
例えば「スポーツ」だ。
サッカー、バスケ、ベースボール、バレーボールと球技もあれば、スケート、スノボー、サーフィン等のボード系、スキューバ、スカイダイビングみたいな陸地以外で行う物と、切り口次第で種類が分けられる。

一定の切り口で、それを物理的な地図に見る「島」にする事で、スポーツだって地図として可視化が出来るわけだ。
で、この座標としてモチーフを認識する利点は、上の方でも書いたが座標をずらす事で、親和性の高いモチーフのテーマを探したり、全く新しい組み合わせを探すのに役立つ所にある。
伝説でグループ化すれば「Fate」、戦艦なら「艦これ」「アズレン」、銃器なら「ドルフロ」と、色々見えてくる。
モチーフの座標ずらし
まず、前提としてモチーフは組み合わせる事で新しい物になる。
「○○×○○」と言う、モチーフの組み合わせによって、出来ていると考えると、例えば、部活モノと言う括りで既存の作品を見てみる。
- 部活×サッカー
で、学校のサッカー部の作品が、座標が定まってピンポイントに決まってくる。
これは、サッカーにはクラブやプロ、お遊びと言ったサッカーをするグループがあって、その中で部活と言う島を選んでいる事と、
部活には様々な物がある中で、サッカーと言う島を選んでいる事が言える。
座標をずらすとは、部活をプロに変えたり、サッカーをバスケやバレーに変える事を意味する。
それだけで、既存の有名な作品を避ければ、十分に新しい物が生まれるわけだ。
言われると当り前に思えるかもしれないが、これが出来なかったり、コンセプト段階で発想出来ずに、既存作品の焼き直しを作ってしまう事例は、非常に多い。
「なろう系」は、この座標ずらしを「持っているチート」ぐらいしかせずに、ほぼ焼き直してしまう事で、失敗する事も多かったりする。
例えば、
- 異世界転生×中世ヨーロッパ風ゲーム世界風ファンタジー
なんていう「なろう系」のお約束設定は、座標をずらせば同じ構造で全く別物に見える作品がいくらでも作れる。
もちろん、創作者が変えたくない座標を変えるのは、創作のモチベーション的に問題があるが、こだわりが無い部分や焼き直しになってしまう部分に関しては、絶対的に「座標をずらすべき」なのだ。
例えば、ヨーロッパ風設定を、中東、北欧、アフリカ、南米、アジア等にずらすだけで見た目に全く別の世界観になる事は想像に難くない。
ずらした座標をピンポイントに定めていけば、特定の国や町にフォーカスした全く別物の作品になる。
サッカーをバスケに変えるぐらい、同じ球技でも別物となる訳だ。
年表を見つける

年表とは、一つの基準に対して、それの変容を時系列で見て行く物だ。
時間座標の目安になる物で、これはあらゆる物に存在する。
つまり、年表をいきなり見てもいいし、地図を見て座標を決めてから、その年表に着目しても良い。
年表を見ると、過去が分かると同時に、今から先、未来がある事も想像しやすくなる。
すると、地図で見た座標のモチーフには、過去と未来がある事が分かる。
この、時間軸による座標の定義と、それがある事で出来る座標のずらしによって、モチーフの幅は限界まで広がる事になる。
- 部活×サッカー
なんてモチーフの作品は、かなりの数が作られている。
だが、時間軸でずらして見ると、途端に見た事が無い作品が想像出来る筈だ。
サッカーが全てとなった未来を舞台にしたり、サッカーが無くなってしまった未来を舞台に部活モノを構築したら、現代の部活サッカー作品とは一味違う事になるのは想像出来るのでは無いだろうか?

また、過去のサッカーがマイナースポーツだった時代を舞台に、部活でサッカーをする作品を作ったら?
好きな作品で「大正野球娘」では、大正時代に野球をする少女達の青春が描かれた作品がある。
大正と言う時代設定によって、現代とは一味違う訳だ。
サッカーを大正にずらせば「大正野球娘」のサッカー版が出来ると言う事だ。
なろう系なら、中世ヨーロッパを古代や近代にずらすだけで世界観が大きく変化する。
大きく座標をずらす
地図と年表を見て、座標をずらすのは、近い属性の物を探すのに役立った。
だが、近い座標で類似の作品を作ると、どうしても共通点が多くなる。

例えば、サッカーからバスケに変えても、球技と言う括りで近く見える。
なので今度は、地図と年表を見ながらモチーフを大きくずらす事で、全く別物に変えて行くアプローチも視野に入れたい。
- 部活×サッカー(キャプテン翼)
を球技でずらすと
- 部活×バスケ(スラダン)、ベースボール(タッチ)、バレーボール(ハイキュー)、テニス(テニプリ)……
と出来る事は分かった。
なので次は、球技の島の範囲より広い地域を見て、スポーツ全般にすると、
- 部活×バドミントン(はねバド)、駅伝(風が強く吹いている)……+球技
と出来る。
更に範囲を広げて、運動以外に文化活動を含むと、
- 部活×文化+運動
と、部活との組み合わせを出来る候補の島が爆発的に増えた事が分かると思う。
こうしてから座標を決めて、大きくずらせば、見た事が無い部活モノが描けると言うわけだ。
更に、既存の部活以外に、想像の部活も設定できる事を考えると、ずらせる範囲はさらに広がる。
- 部活×アイドル(ラブライブ)、戦車(ガルパン、選択授業設定だけど)、尻相撲(競女)+現実的部活
また、この座標をずらす事で、全くの別物にする事も出来る。
例えば、
- 部活×アニメ制作(映像研には手を出すな!)
と言う作品から、モチーフの座標をずらして
- 仕事×アニメ制作(SHIROBAKO)
と言うモチーフの発想に至る事も不可能では無い。
※映像研は2016年、白箱は2014年なので、時系列は逆。あくまでも仮定の話。
グループの中で座標をずらす
サッカーで部活モノは天下の「キャプテン翼」がある。
では、もうサッカー部活モノを作っても焼き直しになってしまうのか?
いやいや。
そんな事は無いので安心して欲しい。
勿論、焼き直しになってしまう事は、あり得る。
だが、焼き直しを避ける事は、必ず出来る。
そこで提案したいのが、グループの中で座標をずらす手法だ。
つまり、サッカーと言うグループの中で、更に細かく見て、モチーフの座標をずらすのだ。

既存の作品で主人公がフォワードなら、ディフェンスやキーパーにしても良いし、監督やマネージャーにしても良い。
既存作品の舞台が北海道なら、沖縄にしたら変わる物がある筈だ。
既存作品が男子サッカーなら、女子サッカーにしてみよう。
フットサルやブラインドサッカーに変えても良い。
何かをずらせば、必ず連動して他の要素も大きく変わる。
それを複数ずらせば、全くの別物に出来ると言う訳だ。
終わりに
これで、モチーフを地図と年表から探す事が、もう出来る様になった筈だ。
後は、誰も踏み入れた事が無い場所に行く勇気を出すだけである。
実は、これが一番重要かもしれない。
誰も行った事が無い場所と言うのは、不安に感じる人も多い筈だ。
それが創作のモチーフであっても、座標をずらした先を、みんなが受け入れてくれるか不安になる事がある。
だから、どうしても焼き直して受け入れられる事がある程度は、保証されている物を作りたくなる。
だが、焼き直しは、焼き直し以上には成らない。
思い切ってずらして、新しい物を生み出す勇気こそ、創作には不可欠なのだ。