発明速度は加速する
紀元前260万年から紀元前1万年までの間で、人類の発明史は飛躍的に進んだ。
道具を作り、服を着て、楽器を奏で、狩猟や農耕をしながら、酒を造るまでになった。
これからどうなるのか?
紀元前1万年:日本列島分断・氷河期終結、新石器時代突入
もう少し正確には、紀元前1万2千年ぐらい前の事らしい。
世界の人口は、全部で4,000,000人程度。
それぐらいの時代に、何が発明されたのか見ていこう。
ちなみに、縄文時代真っ最中である日本の中で「日本式の弓矢」が使われていたのは、このぐらいかららしい。
また、「与那国島遺跡」の作られた年代も、このぐらいだと言う話がある。
紀元前1万年:農業

アルビン・トフラーの言う農業革命の時期で、狩猟採集から農業へ「仕事」がシフトし始めた時期である。
農業がメインの仕事になると、麦などの植物を世話する事が仕事になり、生活様式が大きく変化する。
危険を冒して獲物を狩るのではなく、何でも育てて増やす方が効率的だと気付いたわけだ。
そして、農業を行うのだから、「農具」を考案する者も現れ始める。
それまでは骨や石器でナイフや槍や斧を作っていたのを「鎌(カマ)」や「鍬(クワ)」等の農作業が便利になる道具に改良し始めた時期でもある。
紀元前1万年:籠

紀元前3万年前に織物によって布を手に入れた人類。
「立体的に編む」と言う発想によって、籠を発明した。
水は保存出来ないが、土器の様に落として割れる事が無く、軽く、丈夫な「器」の登場は、画期的だ。
例えば、籠を背負えば、畑の収穫や、植物の採集等で運搬量が大きく違ってくる。
これは土器には無い利点である。
紀元前1万年:レンガ
土器で家を作ったら丈夫では無いか?
当時の人は、きっと思った事だろう。
「アドベ」と呼ばれる日干しレンガに似た建材が登場するのも、この時期だ。
泥や土を混ぜ、成型し、乾燥させ、建材にする事で、テントや木の小屋の様な住居から、簡易なレンガ造りの建物をも作れるようになった。
これは、農業によって定住するからこそ移動を必要とせず、丈夫な家が欲しいと思えたからこその発明かもしれない。
また、レンガの原型が登場する事で、石造り以外にも「窯」を作れる様になった筈だ。
ちなみに、前の記事で書き忘れたが窯で焼く食べ物「パン」の歴史は古く、紀元前13000年よりも前、農業を始めるよりも早い時期から、食べられていたと考えられている。
パンの化石が存在するらしい。
紀元前9千年:3階建て建築 ※追加
エリコの町にあるエリコの塔と呼ばれる石造建築物。
紀元前9千年:金属加工(メソポタミア~)

当時の最先端、遂に人は金属を手に入れた。
最初に炉で作られた金属は「銅」だったらしい。
銅製品が作られ金属加工技術が一般化すると、石器等は、その性能差から長い時間をかけて使用率を減らしただろう。
紀元前8800年頃の銅製の小玉がイラクで発見されている。
世界最古の銅製食器や銅製調理用具としては、紀元前4000年頃のパレスチナの遺跡で発見されているとか。
紀元前9千年:水田稲作、動物の乳(牛乳等)


米作りで水田を用いたのは、このぐらいかららしい。
また、農業発展には一定以上の大きさの家畜が必要で、大型で大人しい哺乳類「馬」「牛」や「羊」「山羊」等がいた地域の方が、集落が大きく発展していった。
そして、農作業用に家畜として捕まえる事で、肉を食べずに世話をする事が当たり前になった為に、人は「人の母乳以外の乳」を地上的に飲む様になっていった。
当然、革袋や土器に乳を保存すると言った事も起き「ヨーグルト」「チーズ」と言った乳製品も、このぐらいの時期から登場するだろう。
紀元前8千年:畜産、野菜等の栽培

オリエント文化圏で、農業を手伝わせるだけでなく、食肉として家畜を育てるという発想に気付いた人々がいた。
それまでは家畜が死ねば食べるし、いなくなれば捕まえてくるという村もあっただろうが、畜産業の確立によって家畜は麦と同じように管理される存在になっていった。
また、麦や米だけでなく、様々な植物を栽培する成功例が増え、その方法が確立していった時期でもある。
畜産の発明で、肉が狩猟よりも安定供給出来るようになった。
この発想に至っているので「魚の養殖」等を思いつく人もいたかもしれない。
紀元前7千年:犬のペット化

犬好きには朗報だろう。
それまでも、犬や狼と絆を築く人はいた筈だ。
だが、畜産によって大量の家畜を管理する必要が出てきた事で、狩りのパートナー以外の形として、紀元前4300年ぐらいには「牧羊犬」の有用性が示されていた。
そうなると、犬の存在は以前よりもグッと身近になる。
また、定住しているからこそ必要になるのは、家を守る「番犬」としての役割だ。
ちなみに、シェパード・ドッグやシープ・ドッグは、どちらも「牧羊犬」と言う意味になる。
ジャーマン・シェパード・ドッグは、ドイツの牧羊犬って事で、シェパード単体では「羊飼い」、または「牧師」と言う意味だったりする。
紀元前7千年:牛の畜産動物化

畜産業が一般的になると、牛も畜産動物の仲間入りをする。
肉の為に牛を殺す事が多くなれば、同時に増えるのが「牛革」製品だ。
ちなみに「馬」が畜産動物としてメジャー入りを逃れたのは、牛よりも遥かに古い人との付き合いと「移動手段」と言うポジション等があるのかもしれない。
頭が良いイメージもあるしね。
紀元前7千年:金

今でも不景気には強いと言われる「金」は、このぐらいの時代から人と密接な関係にあった。
金属加工技術を手に入れて2千年ぐらい、銅以外にも様々な金属の利用にチャレンジし、ようやく手に入れた「黄金」の輝き。
紀元前7千年:ドリル(インダス~)

驚くかもしれないが、人類は、この時期に一種のドリルを手に入れていたらしい。
インダス文明のあった地域で見つかったのは、歯科用と思われるドリルである。
キリの様な物かもしれないが、十分金属加工技術の高さは凄いと思うし、「虫歯の治療」を試みる発想にも驚きを隠せない。
紀元前7千年:地図(現在のトルコ付近~)
当時、バビロニアの人々が世界地図を作っていた。
引用画像が、まさにそれだ。
材質は石板や粘土板等が、主に使われていたらしい。
「どうやって世界地図なんて?」と思うが、地図が必要と言う事は「交易」が行われていた可能性がある。
他の地方の人から話を聞けば、そこに島や大陸がある事が分かる。
それを長い期間繰り返して情報を集積すれば世界地図が積みあがっていく、と言うのが現実的だろうか。
紀元前7千年:文字

後の紀元前3500年前ぐらいに登場した「ウルク楔形文字」が古い文字で有名だが、この頃には文字の原型があった説がある。
最初期の文字は、シンボルと呼ぶ方が適切なもので、今ほど情報伝達能力が高くない代物だったらしい。
ヨーロッパでも紀元前では、音声の補助的な立場が強かったり、近年の日本の様に喋り言葉と書き言葉が一致していない時期が長かったり、文字文化は非常に複雑だ。
紀元前3300年前ぐらいに「ピクトグラム」が開発されたが、この流れにあるのだろう。
ちなみに、紀元前3200年前の「ヒエログリフ」が残っている最古のモノと思われている。
紀元前7千年:漆器(日本~)※追加
副葬品に漆器加工の形跡がみられる。
紀元前6千年:都市、神殿(メソポタミア~)

建築技術の向上、宗教の確立、儀式の重要化。
文明以前の時代に、都市が出来、神殿の建造が行われていた。
宗教が確立し、共通認識となると「像」として「偶像(アイドル)」が作られる。
視覚化された「神」や「怪物」の登場によって、人々の共通認識は強化されていく。
強化された共通認識は、長い時間をかけて「神話」になり、語り継がれていく。
伝言ゲームは世代を超えて極端になったり、真実として語られる事で、更に神話のイメージは強化される。
宗教が確立すると、儀式にも変化が起きて「副葬品」を埋葬するようになった。
紀元前6千年:灌漑、農業効率化(メソポタミア~)

都市化するほどの発展には、高い食料自給率が必要だ。
それを支えたのが、「水路」の整備や「貯水池」を作る潅漑(かんがい)や、高い金属加工技術に支えられた農具の発展にある。
「斧」が金属化する事で、木の伐採が以前より容易になる。

その豊富な資材を使い、新しい農具が開発、量産されていく。
「鋤(すき)(初期のシャベルみたいなの)」で耕したり、「プラウ」と呼ばれる土を耕す器具(トラクターの原型)を馬や牛に引かせ始める事で、人の負担も減っていっただろう。

紀元前6千年:ビール(シュメール)

果物、乳に飽き足らず「麦を使った酒」が造られ始めたのも、こういった時期だ。
引用画像は、ビールを受け取った旨を記した粘土板で、紀元前2050年のシュメールの物。
紀元前6千年:轆轤、陶器(メソポタミア~)

文化の著しい発展で、金属の鋳造が出来る様な窯を手に入れ、焼く火力が上がった。
更に「轆轤(ろくろ)」を開発したことによって美しく整った形状になり、メソポタミア陶器が登場する。
紀元前6千年:宝飾品、象牙

石器も骨角器も廃れ始めていたが、実用品から装飾品へと立場をゆっくりとシフトしていった。
石の加工は「宝石」や「金」を用いた宝飾品がメインへと移り始め、骨角器は象牙製品や彫り物等の高級品へと移っていった。
当時すでに絶滅していたマンモスの牙を彫った物も、中にはあるらしい。
人類史最古の宝石は「ラピスラズリ(瑠璃)」と言われていて、紀元前7千年ぐらいからビーズに加工されてインダスから他の地方に輸出されていたという。
ちなみに、モース硬度は5で、ラピスはラテン語で「石」の意で、ラズリは地名。
紀元前6千年:シュメール・キュビット ※追加
長さの単位で「517.2㎜」の銅棒が見つかっている。
メソポタミアの発明。
紀元前5千年:玉蜀黍

麦、米に続き、玉蜀黍(トウモロコシ)も栽培作物のラインナップに加わった。
紀元前5千年:歯磨き粉

蹄、牡蠣の殻、卵の殻、軽石、等を砕いて「研磨剤」として利用していた。
「歯科用ドリルの前に、その発想には至らなかったのだろうか?」なんて言うのは野暮だし、口の中を血だらけにした末にたどり着いた答えだった気もする。
紀元前5千年:合金、ヒ素
13世紀にアルベルトゥス・マグヌスが発見して一般的になるが、それ以前にも「青銅加工」に手を出してヒ素鉱石に悩まされていた人がいたとか。
ヒ素を利用しようって悪い人がいたりとか、したかも?
それよりも、正体不明の中毒に悩んだ人の方が多そうな気も。
また、青銅は錫(スズ)と銅の合金なので、青銅器が本格的に作り始められる紀元前4000年~紀元前3600年ぐらいまでは、そこまで一般的にはならなかったのかもしれない。
紀元前5千年:火起こし用の弓錐(インダス~)
無人島やらサバイバルで火をおこすときに使うやつ。
ユミギリ式発火法とか言うらしい。
横棒を上下すれば縦棒が回転する機構って、最初に考えたやつ頭良すぎるだろ。
紀元前5千年:円筒印章(シュメール~)

最初期のハンコ。
「模様に意味を込める」と言う意味で「レリーフ」や「文字」が開発され、それを手軽に使うためにスタンプ化した物。
後に、個人や団体の印の価値が重くなっていく。
紀元前5千年:伝書鳩(シュメール~)

鳩の習性に気付いて連絡用に使い始めた時期。
鳩に積める物は限られるので、最初期の伝達情報量は相当少なかった筈だ。
だって、まだ紙も無ければ、便利な文字も無い時代だしね。
紀元前5千年:スケート靴(スカンジナビア~)
スケート靴の歴史って、そんなに古いのっていう時代に発明されている。
もちろん当時は、完全な実用品だっただろう。
紀元前5千年:オール、セイル(帆)(メソポタミア~)


むしろ「ここ以前の船はどうやって進んでいた?」って感じだが、長い棒で底を押してたのだろうか?
ここでようやく「水の上を自由に移動出来る」ようになったわけだ。
紀元前4千年:車輪、接着剤(メソポタミア~)

車輪の原型は、紀元前5000年ぐらい前に発明された。
最初は陶器を作る為に考案された轆轤を横にする発想から生まれた車輪の登場で「荷車」が紀元前3500年ぐらいに生まれ、それを家畜に引かせる事で「馬車」となり、平地での運搬可能量が爆発的に増える事となる。
接着剤は紀元前3800年ぐらいの時期で、当時使われていたのは「蜜蝋」「樹液」「アスファルト」等だ。
ドリル、轆轤、弓ぎり、車輪、と「回転運動」をする機械が登場して、文明感が高まってきたところで、ここぐらいから「文明」って歴史の授業で習うようになる。
紀元前4千年:青銅器、合板、金細工
オリエント青銅器の登場で、本格的に青銅を使いつつ、それを器に加工する発想に至った事が分かる。
紀元前3500年前ぐらいには、エジプトで合板が発明され、素材を組み合わせる技術が向上しているのが実感できる。
紀元前3200年前には「金細工」が作られるようにまでなっていった。
紀元前4千年:運河(メソポタミア~)

農業用水路ではなく、船が行きかう「交易用水路」を作り始める。
紀元前4千年:時計(メソポタミア~)※追加
最初に発明されたのは「日時計」で、正確な起源は分かっていない。
紀元前3000年代になるとエジプトでも使われるようになり、機械時計が登場するまでは時計と言えば長らく日時計だった。
紀元前2000年代に入ると、エジプトで「水時計」も開発されている。
ちなみに「砂時計」は正確な期限が分かっておらず、原理はともかく材質として透明なガラスの精密な加工が可能になった年代よりも後である事が予想され、11世紀前後に作られた可能性があるらしい。
紀元前4千年:石畳、石造りの建物、歴史編纂
車輪の為に欲しくなっちゃうのが「舗装道路」。
石造りで建物を作れると言う事は、「石工」の技術が芽吹いた時期も、この辺だろう。
これは、運河で巨大な石を遠くまで運べるようになった事も大きく関係している。
「石工」は、今でこそ伝統技術的だが、当時は石を自在に割れる超専門職だ。
ちなみに「ストーンヘンジ」の建設が開始された時期は、紀元前3100年付近と言われている。
このぐらいの時期、紀元前3500年ぐらいに「歴史編纂」が徐々に始まる。
つまり、ここ以前の歴史の大半は、発掘された証拠品からの推理や、放射性炭素年代測定や、神話からの推測を通して組み上げられたもので、ここからは「人の目」を通した物が、ようやく含まれ始めると言う事だ。
紀元前4千年:下水道(インダス)

推定、紀元前3100年ぐらいには下水道が完備されていたらしい。
上で触れた運河や舗装道路もそうだけど、大規模な「インフラストラクチャー整備」が始まって、文明が文明らしくなってきた感がある。
紀元前4千年:シルク(古代中国~)

推定、紀元前2750年ぐらい(少なく見て1000年後)から「養蚕業」が始まるらしい。
それ以前の蚕の養殖を確立する前の「天然のシルク」は、どれぐらいの価値があったのだろうか?
紀元前4千年:筆記具

粘土版や、象牙等の動物の骨製の筆記用具がエジプトで見つかった。
推定時期は紀元前3300年ぐらいだけど、文字が出来て以降のどこかで作られてないと、文字書きにくいよね。
紀元前4千年:ガラス ※追加
メソポタミアでガラスビーズが作られたのが起源と言われている。
当時はエジプトが技術的に進んでいて、一部の植物灰や天然炭酸ソーダとともにシリカを熱すると融点が下がることを発見する等してガラス加工に必要になる燃料量を減らしたりと、技法の進歩に大きく貢献していた。
器などへの加工には、発見よりも時間がかかっていて、紀元前2000年代までには上記の方法で溶融での加工が可能になったが、「宙吹き」と呼ばれる製造法が発明されるのは紀元前100年の後半までかかる。
終わりに

文明が始まり、世界の人口は全部で7,000,000人にまで膨れ上がった。
これから更に文明は「発明」を起爆剤に発展していくが、ここまで見てみてどうだっただろうか?
ちなみに、余談も余談だが「旧約聖書」の天地創造時期を推定すると「紀元前4004年~紀元前3760年」あたりで神が世界を作ったことになるらしい。
「文明」を「世界」と考えると良い感じの時期だが、これはむしろ「歴史編纂」等の「記録が無い」時期は、世界が存在しなかったと考えての深い設定に見えなくもない、気も、したり、しなかったり。
まあ、数百年のズレを誤差にするのは乱暴すぎる気もするし、この記事で示されている「年」は、かなり大雑把なので、そういう考察には向かないのは分かっているけどね。
今回は、この辺で。
“発明で見る人類の歴史【連載2】” への2件の返信