もう発明速度の加速は止まらない
紀元前260万年から紀元前1万年までの間で、人類の発明史は飛躍的に進んだ。
道具を作り、服を着て、楽器を奏で、狩猟や農耕をしながら、酒を造るまでになった。
紀元前1万年から紀元前4千年までの間で、人類は都市を作り、インフラを整え、動物を飼い、遠い場所まで交易の為に旅をした。
紀元前3千年世界。
新石器時代が終わっていき、世界の全人口は14,000,000人ぐらいの時代。
1000年で、これからどうなるのか?
紀元前3千年:冶金、鋳造、鞴

シュメールの方で冶金(やきん)技術の開発が進み、様々な金属を扱えるようになった。
インベストメント鋳造の発明によって、耐熱温度の高い「石膏」や「砂」等で作られた「鋳型」に溶かした金属を流し込む事で、思い通りの形にする事が可能となった。
その際、原型の材料には蜜蝋等を使う手法があった。
蜜蝋の耐熱温度は低く、造形も容易な為、原型にして鋳型を作れば、溶かして取り出せるから非常に便利だった。
同時期に「鞴(ふいご)」の発明で、炉に風を送って温度を高める事が出来るようになり、青銅器時代は全盛となる。
ちなみに「鉄」は、紀元前700年頃に中国で発明されるまでは、お預けだし、貨幣の登場はもう少し先になる。
紀元前3千年:ベル
青銅器等を作る事で、それを叩くと大きな良い音が出る事に気付くと、人は音を出す為の「器」を作った。
それが、器を吊るし、叩いて長く反響させる「ベル」の始まりだ。
特別な時に鳴らす「警鐘」や、儀式、楽器、様々な使い方が考案されるのは、もっと先の話だろう。
紀元前3千年:ショーテル(シュメール~)

ガンダムサンドロックの武器、と言うと思い浮かべやすい人もいるかも。
半月状の刃を持つ剣で、歴史の古い武器である。
紀元前3千年:表音文字(シュメール~)
これは、文字と音が一致する文字が作られたと言う事。
実は、かなり凄い発明。
紀元前3千年:蝋燭
接着剤や、鋳型の原型に使われていた蜜蝋や、獣脂、植物のロウを原料に蝋燭が作られた。
溶かして流し込み固めるという、鋳造と似たプロセスで大量生産出来るのも魅力だ。
蝋燭の登場で「便利な光」を人類は手に入れた事を意味する。
それ以前の火は、焚火や窯、炉の中にある「大きくて、燃焼が短い、火」であり、コスパが悪く管理が大変な面があった。
しかし、蝋燭なら「小さくて、燃焼が長い、火」で、管理は楽であり、面倒なのは溶けた蝋の掃除ぐらいで、光源としてのコスパは最高ある。
ちなみに、画像はLEDキャンドル。
紀元前3千年:スキー板、ソリ(スカンジナビア~)
北欧の方で徐々に使われ始めたという話だが、設置面積を増やして沈まず、雪上を滑る装具は画期的だったに違いない。
「ソリ」の足を靴につけたのか、スキー板を馬車につけて「ソリ」にしたのか、どっちが先だろうか?
画像は、一応ソリ。
紀元前3千年:ダム(エジプト~)

エジプトの方で、川をせき止めてダムを作った記録がある。
水路、貯水池、運河ときて、遂にダムを手に入れ、古代エジプトでは水を操って繁栄を築いていた事が分かる。
紀元前3千年:セメント、ピラミッド、スフィンクス(エジプト~)

セメントの発明で、それまで以上に丈夫な建物を作る事が出来るようになった。
エジプトのピラミッドには「モルタル」が使われている物がある。
ちなみに使用用途は、接着剤である。
モルタルで石材を固定できたから、ギザの階段ピラミッド等も作れたのだろう。
紀元前2700年にはスフィンクスを建造している。
紀元前3千年:占星術、カレンダー(エジプト~)
当時の世界最先端である「占星術」や「天文学」が成立、発展していたエジプトで、遂にカレンダーが発明される。
カレンダーは、天体の動きから季節や一年の周期を割り出した「予言書」である。
カレンダーの通りに世界は動き、それを読み解けるのは「占星術」や「天文学」を習得している一部の者だけ。
一般人からすると「雨季」等の到来を言い当てられる彼らは、魔法使いであり、彼らを束ねる王は神権を持つ存在そのものだった。
画像は、万年カレンダー。
紀元前3千年:ロバ、ラクダ(エジプト~)

ロバの家畜化は、紀元前3300年前後から、ラクダは、紀元前2600年前後かららしい。
ロバの方が少しだけ人との付き合いの歴史が古い。
紀元前3千年:パピルス(エジプト~)

ペーパーの語源で、植物由来の紙の原型でもあるが、厳密には紙ではないが、まあ、紙みたいな物。
紀元前3千年:縫合、軟膏(エジプト~)
「手術」等の医療行為や、薬による治療と言う概念が登場し始める。
火傷にはアロエとか、あったよね。
紀元前3千年:コンドーム(エジプト~)※追加
当初は避妊具ではなく、虫等から大事な部位を守る防護服だったとか。
その後、避妊具として使われる様に。
材料は豚や山羊の盲腸や膀胱を使用していたと言う。
現在の様なゴム製の物が登場するのは、西暦1844年に人類のゴム加工技術が発達してからである。
紀元前3千年:シェケル(メソポタミア~)

「重さ」と「通貨」の単位の概念。
「1シェケル=8.33グラム」との事。
紀元前3千年:チャリオッツ、戦車騎兵(メソポタミア~)

馬に引かせるタイプの、最初期の戦車。
分かり易い「戦争の為の発明」がいよいよ始まる。
紀元前3千年:ドラゴン(メソポタミア、ペルシア~)

昔話、異国の話、神話等でドラゴンの存在が登場し始める時期でもある。
オリエントドラゴン、リヴァイアサンやムシュフシュ、ティアマト等だ。
ちなみに、ギルガメッシュのモデルとなるウルクの王は、紀元前2700年前後の人だったとか。
ギルガメス叙事詩の執筆時期は、紀元前2200年ぐらいだと言う話だ。
神話と地続きの世界は、それだけで面白い。
画像は、イシュタルの門の聖獣、ムシュフシュの絵。
紀元前3千年:櫛(ペルシア~)
髪をとかすアレ。
良い「櫛(くし)」の制作には、専用の道具と高い技術が必要だ。
紀元前3千年:石鹸(バビロニア~)
固形石鹸が登場したのは、およそ紀元前2800年ぐらいの事らしい。
液状石鹸の登場は西暦1980年で、それまでのおよそ5000年弱の間「石鹸と言えば固体」だったのは、興味深い。
紀元前3千年:10進法(バビロニア~)
ここで発明されてなかったら2進法や20進法が世界の常識だってあり得た。
紀元前3千年:琴(中国~)
弓から進化し続けた弦楽器は、弦を沢山張った琴の発明にまでたどり着いた。
紀元前3千年:麺(中国~)
この時代から、中国の人は粉を水で練って細く切り、麺状にして食べていたという。
紀元前3千年:茶(中国~)
茶葉等を加工して、水で成分を出す飲み物を発明した。
「茹で出し茶」は紀元前2100年ぐらいから登場する。
紀元前3千年:墨(中国~)
メソポタミアやエジプト等の世界では、粘土版にスタンプで形をつけて文字を書いたり、石板に彫り込んでいた。
同じ時代に、中国では墨を開発し、木の板等に文字や絵を書いていたという事になる。
紀元前3千年:ハミ(カザフスタン~)
「轡(くつわ)」の事で、馬具の一種。
馬とかが口に咥えさせられているアレ。
紀元前3500年ぐらいから使われ始め「馬の家畜化」の推定指標にもされているアイテム。
馬の家畜化自体が本格的に進んだのは、紀元前4500年ぐらいからとも言われている。
紀元前3千年:炉、オーブン(インダス~)
シュメールで冶金や鋳造が進んだ様に、インダスでも高温に耐えられる「炉」の開発、高性能化が進み、その流れで料理用の「オーブン」も発明された。
「焚火」から始まった「調理場」は、レンガ家屋で作った専用の施設になり、パンに始まる様々な物を作るのに役立った。
ちなみに、画像はアマゾンで売っていたガスコンロでピザを焼ける石窯。
紀元前3千年:配管(インダス~)
下水道を早々に設置したインダス文明の水回り発展は、本当に凄い。
紀元前3千年:公衆浴場、風呂(インダス~)
かなり古い物で、モヘンジョダロに公衆浴場が見つかっているらしい。
画像は、一人用の折り畳みバスタブ。
アマゾンって変わった商品あるよね。
紀元前3千年:トイレ(インダス~)
この概念が発明されていなかったらと考えると恐ろしい。
衛生面が向上し、農業の肥料確保も効率的に行えて一石二鳥だったのかも。
紀元前3千年:ボタン(インダス~)
最初は、ビーズの変化形の装飾品に過ぎなかったが、服につけ、穴に通す事で簡便な「留め具」として機能するようになる。
最先端オシャレアイテムでもあった。
紀元前3千年:サイコロ(インダス~)
様々なゲームに使われる物で、ランダム生成機。
と言う事は「ギャンブル、賭博」も、この前後で確立していったのだろうか?
同時にルールがある「ゲーム」と言う概念も、この付近かもしれない。
紀元前3千年:アルファベット(フェニキア~)
このぐらいの時代に作られた説があるアルファベット。
実は、かなり古い文字なのだ。
ちなみにフェニキアは、シリアの一角だ。
紀元前2500年:法典(メソポタミア~)

「ウル・ナンム法典」と言うウル・ナンム王が編纂した世界最初の法律で、紀元前2100年ぐらいに作られた。
ちなみに、画像トップの石柱「ハムラビ法典」が作られたのが紀元前1750年。
紀元前2500年:アーチ(インダス~)
水回り系の発明が凄い事で定評があったインダス文明で、丈夫な橋を作るアーチが開発される。
これで、橋の上にだって水路を作れる!
紀元前2500年:指人形(インダス~)
サイコロに続き、遊戯用の道具。
人類に「遊び」専用の道具を作る流れが来ている。
紀元前2500年:造船所、ドック(インダス~)

船の需要が増えた事、大きな船を作る様になっていった事、様々な要因があって世界最初の造船所が登場する。
船の修理や整備を行う為のドックも作られた。
紀元前2500年:定規(インダス~)
アルファベット、表音文字、カレンダー、重さ単位、10進法、法典、様々な「ルール」や「共通の基準」が登場する中で、「長さ」にも基準が登場した。
「定規」の登場は他の「共通規格」と同じく、大発明だ。
武器のサイズ、船のサイズ、そういった人が作る物の基準が出来れば、部品の交換や修理をするのにも役立つし、土地を分けるのにも食べ物を分けるのにも便利になる。
追記:上の画像は「シュメール・キュビット」と言う銅棒で「517.2㎜」で紀元前1950年の物。
キュビット自体は、紀元前6000年にメソポタミアで生まれた物らしいので、過去記事を修正。
紀元前2500年:宅配便(エジプト~)

文明が発展する事で、物やメッセージを「送り届ける」事に価値が生まれた。
商人が担っていた「物流」とは別の物の流れが出来たと言えるだろう。
紀元前2500年:養蜂(エジプト~)
養蜂によって、それまでは巣を見つける事に手間がかかる上に、蜂に刺される危険も大きかったハチミツの入手が容易になった。
この頃のハチミツは「薬」でもあり、今以上に高価な物だった。
紀元前2500年:海軍(エジプト~)

海軍の成立は、当時の戦争の在り方や、専門性の細分化をうかがわせる出来事だ。
また、海上を制する事が文明にとってどれほど重要だったかも分かる。
終わりに

レシピのパスが複雑で、もう相関図に全部を繋げるのはお手上げ状態。
紀元前2000年代に至り、たった1000年で全世界の人口は27,000,000人にまで増えた。
消えたもの、変わったもの、残ったもの、様々な物が発明され、人々の暮らしは豊かになっていく。
西暦まで2000年、西暦から2000年と、現代に至るまで4000年もあるのを考えると気が遠くなる。
まあ、今回はここまでって事で。
楽しんで貰えたなら幸いだ。
例のごとく、年代はおおよそで、こんな説があるという参考程度に留めてほしい。