紀元前500年~西暦0年の世界
地球の全人口が1億人の世界。
西暦到達までに、発明で人々の生活はどう変わっていくのか?
紀元前500年:鎌戦車(インド~)
武装が施されたチャリオット。
「バーフバリ」に登場したチャリオットのノーマルな奴をイメージしよう。
紀元前500年:鐙(インド~)

鐙(あぶみ)とは、鞍の両側からさげて、馬に乗るときに足をかける道具。
乗馬の安定感が増すと同時に、乗馬技術の発達にも繋がる。
紀元前500年:白内障手術(インド~)
白内障の治療が行われていた凄さ。
紀元前500年:形成外科(インド~)
鼻形成術が当時存在した衝撃よ。
紀元前500年:仏教(インド~)

仏陀が始めて、後に入滅して、弟子達が教えをまとめて広がり始めた。
この頃の仏教は、今では原始仏教と呼ばれる。
紀元前500年:ダマスカス鋼(インド~)
るつぼ鋼であるウーツ鋼の別称。
独特の模様が美しい金属で、紀元前600年頃に開発され一般化していった。
現在、当時のダマスカス鋼の完全再現は難しく、最近作られた物は異種金属を混ぜる事で模様を作り出した別物が殆どだと言う。
紀元前500年:パントマイム(ギリシア~)
演劇の一演目で、仮面舞踏に近い物だったらしい。
大事なのは、役者(アクター)が生まれたのが、この前にあるだろうと言う事だ。
身体の動きで「真似る」事を極めようとする動きの原点が、ここにあるのかもしれない。
紀元前500年:パルテノン神殿

最古の西洋風建築と言う説がある。
紀元前438年に建設された当時最先端の建物。
紀元前500年:歯科ブリッジ(エルトリア~)
少数歯の欠損に対して用いる、部分入れ歯みたいな物。
架工義歯、冠橋義歯とも言う。
紀元前500年:凧(中国~)
人為的に「煙」以外で空に物をあげる事に成功。
軍事目的での発明だった。
紀元前500年:鉄製プラウ(中国~)
家畜に引かせて畑を耕すトラクターの先祖も、鉄製の物が登場し、作業効率が上昇した筈だ。
紀元前400、300年:アレクサンドリア大灯台

灯台の登場は、海難事故を減らすのに役立った。
紀元前400、300年:アレクサンドリア図書館、植物園

紀元前285年、当時最大にして最新の施設だった。
書物は、巻物が40万~70万巻程度あったと推測されているが、正確には分かっていない。
ちなみに、世界初の図書館は紀元前700年頃、メソポタミア地方の「アッシュールバニパル宮廷図書館」と言われている。
そちらの書物は、粘土板で31,000点弱程度あったらしい。
紀元前400、300年:ローマ街道、ローマ水道橋
どちらも別の地域では既に発明されているが、有名なローマの物が作られたのはこの時期。
紀元前400、300年:日本水稲作
水田での稲作が日本に入ってきた時期。
紀元前400、300年:水車(インド~)
水汲み水車が登場し、遂に人類は「動力」を手に入れた事になる。
水力を利用して、労働を肩代わりさせる事に成功したのだ。
紀元前200年頃に動力として初めて使われた説もある。
紀元前400、300年:言語学(インド~)
言語を研究する人が現れる。
紀元前400、300年:牽引式投石機(中国~)

カタパルトに車輪を付けただけなのだが、この発想の差は大きい。
攻撃の威力が同じなら、トーチカと戦車では、どちらが便利だろうか?
紀元前400、300年:弩(中国~)

クロスボウの原型が登場し、弓兵がより強力になった。
装填に時間がかかる代わりに、威力が上がり、扱いが簡単になった。
当時最先端の武器なので、使える人はエリートだし、腕の良い弩職人は高給取りだった。
紀元前600年には原型となる武器が登場していた説がある。
「ボウガン」は商標なので注意。
紀元前400、300年:キューポラ(中国~)


「コークス」の燃焼熱を利用して鉄を溶かし鋳物の溶湯を得るための「シャフト型溶解炉」に分類される溶解炉。
要するに、この発明によって鉄を溶かして利用出来るようになった。
これにより、炭素を取り込んだ「銑鉄」を作れる様になった。
銑鉄は、鉄より硬いが割れやすい性質がある。
ちなみに画像は、上が「コークス」で下が「銑鉄」。
紀元前400、300年:クロムメッキ(中国~)

始皇帝の兵馬俑で見つかった武具にクロムメッキが施された物があるらしい。
他の説では、1797年にフランスのルイ=ニコラ・ヴォークランによってシベリア産の紅鉛鉱から発見されたクロムが、人類が一般的に利用し始めるクロムの始まりかもしれないとの事。
紀元前400、300年:吊り橋(中国~)

少なくとも、この時期には、しっかりとした吊り橋が作られていたらしい。
橋を架けるではなく、吊ると言う発想の転換が見えて面白い。
紀元前400、300年:方位磁針(中国~)
磁石が一定の方向を指し示している事に、人類が気付いた。
方位磁針の発見は、ランドマークが乏しい場所での移動が安全になり、砂漠や海で活躍し始める事になる。
紀元前400、300年:天球儀(中国~)

天文学や占星術で星を読むのに使われる道具で、暦の計算などに使う。
紀元前400、300年:星表(ギリシア、中国~)

星の配置や、種類をまとめ始めた。
「天文学」や「占星術」が着実に発展している上で、体系化によって進歩が加速した事が推測できる。
紀元前400、300年:地動説

紀元前280年、アリスタルコスと言うギリシアの天文学者が、既に地動説に到達していた。
にも関わらず、地動説と共に、むしろ優勢で天動説が信じられ続け、アリスタルコスの天文学レベルに人類が追いつくのは、西暦1800年代までかかってしまう。
これは、当時の宗教と天動説の相性であったり、天動説を信じてる所で後発の説を素直に理解出来る人が極端に少なかったり、様々な理由が考えられる。
ちなみに、西暦1600年代、有名なガリレオ・ガリレイの地動説裁判があるが、ガリレオを裁判にかけた当時の人々が皆、天動説を信じていた訳ではなく「学者の間では地動説は割と知られていた」と言う。
なのに、かつて異端審問所だったローマ教皇庁検邪聖省に不当な裁判を、目障りだったぐらいの理由で狙い撃ちで仕掛けられたガリレオは、かわいそうだったと言わざるを得ない。
後に、1992年、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世は、ガリレオ裁判が誤りであったことを認め、ガリレオに謝罪したが、350年後で当事者不在の中「公式が謝罪」しただけであって、歴史の授業を受けた大半の人達は「うん、知ってた」って感じなのも、何とも言えない結末である。
紀元前400、300年:百科事典(ギリシア~)

当時判明している様々な事柄が記された「事典」が作られている。
当時存在した大量の書物をまとめ直した物だったらしい。
紀元前400、300年:アルキメディアン・スクリュー(ギリシア~)

これもアルキメデスの発明。
この時代は、アルキメデスのおかげで、発明や発見でギリシアが世界最先端となっている印象。
ねじ構造を初めて機械に使用した例として知られている物で、水や物の運搬に使える。
アルキメデスの功績から「ねじは中国で独自に生み出されなかった、唯一の重要な機械装置である」とも言われるとか。
紀元前400、300年:ネジ(ギリシア~)

物の固定に接着剤や釘に加え、この時期によやく「螺子」が登場する。
これも、かなり大きな発明だった。
螺旋状のドリルが登場するのも、この後の時代だろうか?
紀元前400、300年:オドメーター(ギリシア~)
走行距離計の事。
アルキメデスが発明。
紀元前400、300年:滑車(ギリシア~)
これもアルキメデスが発明。
帆船、コロシアムのエレベーター、建築現場、あらゆる場所で使われる事になる。
紀元前400、300年:てこ(ギリシア~)
「てこの原理」も当然のようにアルキメデスの発見。
アルキメデスが、超一流の数学者、物理学者、技術者、発明家、天文学者と言う、今風に直せばいくつもの肩書がある超天才なので、他にも発明や発見がたくさんある為、有名な物だけ掲載している事を断っておく。
紀元前400、300年:余談だが……
このぐらいの時期は、日本は弥生時代に突入している頃だ。
アレクサンドロス大王こと「イスカンダル(紀元前356年7月20日~紀元前323年6月10日)」が活躍していたのも、この時期だ。
旧約聖書がギリシア語翻訳されたり、アルキメデス(紀元前287年頃~紀元前212年)以外に、アリストテレス、ソクラテス、プラトン等が活躍していた。
宗教関係や、支配者以外の偉人の名前が登場し始めるのも、この時期からと言う印象が強い。
人類史的には、文明的大飛躍をした第一期と言った感じだろう。
地球の全人口は、160,000,000人を超えた頃でもある。
紀元前200年:ダイヤモンド(インド~)

宝石としてダイヤモンドが使われ始めた。
つまり、加工する技術を発明した事が分かる。
天然で最も硬いモース硬度が10ある(ひっかき硬度が高く、丈夫な訳ではない。傷つかないが、簡単に砕ける)ダイヤモンドは、加工が難しかったが、同じ素材同士でなら難無く加工できる特性の気付きによって加工可能となった。
ダイヤモンドの粉末を用いて研磨する事になるが、現在ではレーザーやイオンビーム等、加工方法にも選択肢が増えた。
ちなみに、ダイヤモンドより硬い物質に「ロンズデーライト」と言う、隕石の衝突で出来る希少な「六方晶ダイヤモンド」とも呼ばれる素材が存在する。
また、カーボンナノチューブはダイヤモンドと同程度の硬さだったりする。
紀元前200年:カシミヤ(インド~)

インドの北部高山地帯のカシミール地方のカシミヤ山羊の毛を利用した製品。
通称「繊維の宝石」とも。
紀元前200年:卒塔婆、仏塔(インド~)

卒塔婆とは、そもそも仏舎利(仏の遺体)を安置する仏教建築の塔(画像参照)の事。
後に、仏塔を模した、今も寺や墓場でよく見る卒塔婆(板塔婆とも言う)が登場するが、それはもっとずっと後の話。
「そとば」とはサンスクリット語の「ストゥーパ」の音訳である。
ちなみに、浄土真宗系は板塔婆を建てないらしい。
紀元前200年:バグダッド電池

イラクで見つかった土器の壺で、電池ではないかと言う説がある物だが、電気を使う製品が無い当時なので、実験道具でなければ、パピルスや羊皮紙の保存に使われていた説もある。
肝心の電池の一般的な発明時期は、西暦1791年にイタリアの ルイージ・ガルヴァーニがガルバニ電池を発見したのが最初とされている。
紀元前200年:脱進機(ギリシア~)

機械式時計等に見られる、機構で、エスケープメントとも言う。
高級時計の代名詞で聞く「トゥールビヨン」は、トゥールビヨン脱進機が使われた時計の事。
紀元前200年:アストロラーベ(ギリシア~)


天体観測用器具。
六分儀が発明される西暦1800年代までは、航海で使われる重要な測定機器だった。
見た目が美しく、コレクターが存在するらしい。
ちなみに、アンティキティラ島の機械(歯車)は、これに関係する様な計算機の類と推測されている。
紀元前200年:閘門(中国~)

閘門(こうもん)とは、放水の調節が出来る水門。
運河に水門を作る事で、ダムの様に水位をあげて運河を登っていく事が出来る。
紀元前200年:蹄鉄(ローマ~)

馬の蹄を保護する事で、航続距離が伸びたりする事が考えられるが、それよりも家畜化によって野生よりも大きく弱った蹄の保護を役割とした部分が大きかったと考えられる。
後に、魔よけや、遊戯用の道具としても使われるようになるが、だいぶ後の話。
紀元前100年:日本青銅器
伝来したのが、このぐらいの時期。
だいたい大和王権時代。
紀元前100年:吹きガラス(エジプト~)

古代エジプトで、フェニキア人が発明した技法で、後にローマに広がっていった。
それまでのガラスは溶かすのに高温が必要で、工房を移動しながら森の木を伐採し、燃料にし尽すという現代では考えられない手法で行われていたが、手法に改良が加えられて燃料の必要量が減り、石油と石炭の利用が始まった事で工房が定住し、透明で安価なガラスが多く登場する事となる。
この「吹きガラス」と言う技法は、今も使用されているガラス加工の基本技法の一つとなっている。
紀元前100年:転がり軸受(ローマ~)

ボールベアリング等の「ベアリング」類の原型が登場。
ローマの技術力凄くない?
紀元前100年:ハサミ(ローマ~)

鋏が発明される。
ナイフ等に比べると、かなり歴史が浅い道具だと言う事が分かる。
紀元前100年:手術専用の針(ローマ~)
医療器具が発展し、専門性がアップしていく。
紀元前100年:クスコ(ローマ~)

膣鏡の一種で、医療用の診察器具。
管状膣鏡と溝状膣鏡の2種類に分けられる。
最古の物が見つかったのは、火山噴火で有名なポンペイ。
紀元前100年:羊皮紙(トルコ~)

羊皮紙とは、動物の皮を加工して作った紙の事。
日本語では羊皮紙と言うが、羊だけを材料にしているわけではなく、大型哺乳類の家畜であれば、牛や山羊はもちろん、多様な動物から作る事が出来る。
羊皮紙は表現上適切ではないと「犢皮紙(とくひし)」と呼ぶ事もある。
羊皮紙はパピルスに比べて湿気の多い地方での保存に適しているだけでなく、状態が良ければ保存期間は1000年以上もつという丈夫さもあり、以降は長らく紙と言えば羊皮紙と言う時代が続くことになる。
羊皮紙は、高級品であり、中世ヨーロッパ等では羊皮紙の製造はギルドが仕切り、秘密を守っていたという。
そのせいで、当時の製造法は技術が失われた物も多いらしい。
紀元前100年:手押し車、木牛(中国~)

工事現場とかでよく見る、アレの原型。
要は、運搬用の台車なのだが、これが登場するまでは手で持ったり、頭に乗っけたり、担いだりと大変だったろうし、あまりにも重い物は一人での運搬が難しかった筈だ。
紀元前100年:杵(中国~)
杵(きね)は、臼と共に使い、おもに穀物の脱穀や籾すりなどに用いる道具。
ちなみに、相棒とも言える「臼」は、発明時期が不明なぐらい古く、少なくともパンの登場や農業による定住が始まった時期には使われていた可能性が高い。
紀元前100年:開閉傘(中国~)

それまで開閉不可だった傘をアップグレードした。
この開閉機構を最初に考え付いた人って、すごいよね。
終わりに

ようやく世界の全人口が2億人に達した。
この辺までで、ケルト神話が広がり始め、ケツァルコアトルが神として崇められ始めている時期でもある。
そして、キリストが生まれ、ここから先は、いよいよ西暦に突入する。
ここまで人類200万年の進歩を見てきて、どうだったろうか?
毎度の事ながら、この記事は「こういう説がある」と言う程度の参考までに楽しんで貰いたい。
では、また。