今、どれぐらい改善してきているのだろうか?
かつては日本人が誇らしく思っていたジャパニメーション。
今だって、京アニとかユーフォーテーブルとかIGとかサンライズとか、良い会社は沢山あり、最高のアニメは日夜増え続けている。
でも、業界の中身って今は、どうなっているのか?
一握りの企業と、大勢のクリエイターやアーティスト達によって支えられていますが、環境の過酷さを自浄する事は難しいと多くの人が考えていると言って良い部分も多い。
少し前(2015年前後)だが、アニメ業界の職種別の平均年収は、およそ……
- 動画/アニメーター:100万円
- 原画:300万円
- 制作進行:300万円
- 演出:350万円
- 作画監督:400万円
- 総作画監督:550万円
- 監督:650万円
- プロデューサー:750万円
程度と言われていました。
更に辛い所は、アニメーターの年収である「およそ100万円」の中には、アニメ以外のアルバイト収入が含まれていた事。
平均がこれでは、初任給が10万円を切る事は決して珍しくない事も、同時に分かってくる。
アニメーターの平均作業時間は月250時間を超える事もあり、時給に換算すると新人は300円~400円しか稼げない事が平均値とされる。
これが平均と言う事は、もっと低い人が大勢いて、酷いと時給50円や、中には払われていない何て事も普通にあります。
いくら、日本の政治が30~40年ばかり迷走していても、その結果として国自体に経済成長が殆ど無かったとしても、この時給は安過ぎる。
ちなみに、同じ時期の日本の同世代は、平均でおよそ年収250万円稼いでいると言われている。
平均年収が250万円と言うのも、決して高い額ではなく、月給で20万程度ですが、これが現在の日本の現実であり、その中にあってアニメーションの業界が、どれほど過酷な環境かが分かる。
- 1989年に3%の消費税が導入され、以降は
- 1997年に5%
- 2014年に8%
- 2019年に10%
と、段階的に上げています。
ですが、消費税を導入してから日本の経済成長、消費者物価指数、更には、税収に至るまで30年間、実は、横ばいです。
本来なら、どこかで経済成長をして、国民の収入と共に物価も上がるぐらいが自然なのに、日本は、本当に30年間止まってます。
ですが、消費税は10%上がり、他にも様々な「見えない税金」の額が上がっている為、実際の体感は横ばいではなく、国民が自分に使える額は目に見えて減っていってます。
多くの日本人は、ただでさえ貧乏になりつつあり、その中でもアニメーターは、特にひどいって事です。
日本人の、ルールを守らない国民性
同調圧力的なマナーは、この国では守らざるを得ない。
だが、ルールを作るのが好きな癖に、日本人は、とにかくルールを守らない。
アニメーション業界の前に、少しだけ別の話を挟まてもらう。
日本と賭博とルール
日本では、賭博が違法であり、禁止されている。
表向きは。
日本には、競馬、競艇、競輪、そしてパチンコと言う賭博が、公然と行われている。
言い方や表現はあれど、そうである事に間違いはない。
法律上禁止の筈の賭博が、どういう経緯と、何の言い訳を使って営業しているかよりも、賭博禁止令と言う西暦689年に発令された物を、西暦1900年代以降も禁止を継続しつつ、第二次世界大戦後に、一部を認可したという。
そもそも、この日本人気質の方に、文化的な問題がある。
ちなみに、西暦689年以降も賭博は裏で表で行われていたが、取り締まり機関が取り締まろうと思えばいつでも取り締まれるが、基本は放置という状況のまま、ずるずると来ている。
この事は、多くの日本人がおかしいと感じているが、その違和感を正す事は日本人には出来ない。
そこに、既得権があり、一般人は順守する必要があるが、偉い人は守らなくても良い法律を、偉い人達自身が必死に維持している。
それが、日本だ。
ルールを作るのは好きだが、日本人は、ルールを守らない。
偉い人達が、こうやって誰も守れないルールを、維持し続けるからだ。
日本と著作権
これには、受け取り方や立場によっては良い側面もある。
コミケや同人誌と言った文化は、時に著作権を侵害する。
だが、ファン活動として暗黙の了解で放置する事で、長い間育まれ、現代まで通じる独特の文化形成に至った。
ルールを守らない国民性が、コミケを大きく育てた側面があると言えるだろう。
そこで、話を戻そう。
アニメ製作費の歴史
日本のアニメーション界は、鉄腕アトムやジャングル大帝で有名な、漫画の神様と日本では呼ばれている巨匠、手塚治虫が、自身のアニメーション会社で、西暦1963年に鉄腕アトムをアニメーションにしたのが始まりと言われている。
それから、いくつものアニメーション会社が生まれ、潰れ、分裂、合併を繰り返し、今のアニメーション業界が、ゆっくりと出来ていった。
最初に手塚治虫がアニメーションを作る際、連続テレビアニメーションの30分を、55万円で売り込んだ。
この値段は、当時の実写テレビ番組の制作費が50万円程度だった事に由来する。
30分の作品で、2000枚描けば、最低限のアニメになるので、アニメーター5人が、1人1日66枚を仕上げる事がノルマとなる。
これは、週6日毎日66枚を5人が描き続けると言う計算だ。
当時の、今に比べれば単純なアニメーションとは言え、1日8時間労働なら1時間9枚、18時間労働で1時間4枚描かなければならない。
当然だが、音響や撮影もあるので、アニメーターに入ってくる額は一部であり、更には枚数による歩合制である。
今のシステム化された製作費の比率がそのまま当てはまる物ではないにしても(動画制作費はアニメーション全体の10%程度)、アニメーターの仕事が高給取りではない事は、誰にでも分かる。
当時の物価は、2020年現在の半分程度なので、現在の価値換算で100万円で30分のアニメーション制作を請け負った事になる。
最初は、手塚治虫の私財も投じてアニメーション制作が行われたが、半年もするとアニメーションが商売になると周囲が気付きスポンサーは、100万円を出してくれたという。
だが、現在の価値換算で、200万円で30分アニメを作る事を考えると、最初からどれほど過酷な環境だったかは想像に難くない。
1970年代になると、アニメーション業界は混沌としていったが、1980年代にもなると、同規模の製作費は、下限で500万円ぐらいには上がったと言う。
当時すでに、物価は、今とそこまで大きな差は無い(少なくとも1960年よりはかなり小さい)。
そうやって2000年代では、1000万円は当たり前となっていった。
しかし、前に述べた通り、日本自体が、政治の舵取りの失敗で、経済成長を止めている為、2020年の現在も下限で1000万円のまま、高くて3000万円使えれば良い方だ。
物価は変わっておらず、だが、税金は増え続けている。
当然の様に、アニメーションの製作費は、表向きは長らく変化していない。
だが、日本のアニメーションのクオリティは、年々上昇している。
つまり、劣悪な環境の中でも、志のあるクリエイター達が実直に作り、工夫を重ねてきたのだ。
なのだが、現場が、限られた製作費で作る事に、慣れてしまった。
こうなると、賭博法と同じで、日本人はルールを守らない。
まず、最低賃金だが、日本人はルールを守らないので、時給900円を超えていると世間的には言っているが、先にも書いたように、アニメーターの時給は300円前後である。
これは、先にも書いた歩合制のルールを、ルールを守らせる側の既得権の人々が、新人アニメーターに守らせ続けた結果起きている。
変わったものがあるのに、変わらないもの
例えば、1980年に、30分の製作費500万のアニメーションとしよう。
仮に、50万円が動画製作費だとする。
単純に、2000枚必要と言う事は、1枚描けば250円になる(実際は、150円~200円程度だったらしい)。
1日10枚描けば2500円になるとしよう。
いきなり物凄い数を書ける訳がない。
1週間で15000円、月で6~7万5千円稼げる事が分かる。
で、当時は、段々慣れて、沢山描けば、それだけ給料が増えた事が分かる。
問題は、そのやり方を変えずに、やる事が変わっていった事だ。
現代のアニメーションは、描く線も多く、絵も整っていて、当時のアニメーションに比べて労力面での製作コストが上がっている。
モノクロ時代の鉄腕アトムと、ドラゴンボールと、鬼滅の刃を見比べてみれば、一目瞭然だ。
コンピュータの進歩などによるハイテクな道具の恩恵があるにしろ、コストとして見ると増えている。
コストが明らかに上がっているのに、ほとんどのアニメーション会社は製作費をあげられず、そのシワ寄せは、最も立場弱いアニメーターへと向かう。
これは、当然の事と言って良い。
日本と言う国の、社会の縮図の様な物だ。
そして、誰もコレが正常な状態とは思っていなくても、賭博と同じく、著作権法と同じく、すぐに変える事が出来ない。
誰かにとって、都合が良いのだ。
例えば、スポンサーは、出来るだけ安くアニメーションを作ってほしいだろう。
そう言う所がある限り、変える事は本当に難しい。
外圧に弱い日本人
近年、この環境を変えそうな動きがある事で、大きな話題となっていた。
ネットフリックスに始まる、日本から見た海外も視野に入れた作品のアニメーション制作が大々的に始まった事だ。
例えば、ネットフリックスでは、オリジナル作品の製作費に、一般的な日本のアニメ価格の「数十倍」を払う事もあると言われている。
これは、アニメーション制作費が順当に上がっていった海外では、アニメーションの種類にもよるが普通の事だ。
例えば、劇場作品では、1937年のディズニー長編アニメ映画1作目「白雪姫」が4年の時間と148万ドル~170万ドルを程度を費やしたと言われている。
当時、世界大恐慌で、労働者の時給が25セント(100セントで1ドル。現代の最低賃金はアメリカは7ドルぐらい。30倍ぐらいの差っつう事)程度の時代にだ。
仮に、製作費が4年で170万ドルだとして、1年で425,000ドル。
1カ月で約35500ドル、約83分の作品の作品だが、白雪姫は技法上1秒24枚必要としており、1分で1440枚、83分を単純計算すると119,520枚の絵が必要だと分かる。
これを月枚数に単純分割すると、2490枚はアニメーターによって毎月描かれないと、4年で白雪姫は作れない。
で、だ。
当時の時給25セント時代に、彼らは1日15~6時間程度働いたと言う。
当時は、アナログで描くしかない。
なので、塗って絵の具などの画材が乾くまでに8時間かかると言う事まで考え、更には背景とキャラクターの複数枚が1カットに必要と考えると、かかる時間コストは増えつつ、描かなきゃいけない枚数は倍増する。
約月5000枚を、約35000ドルの費用で描くとなると、1枚のコストは、およそ7ドルになる。
だが、その7ドルは、アニメーターに全振りできる物ではなく、他にも製作費は沢山かかる。
仮に10%である70セントがアニメーターに入るとすると、1枚完成するのに8時間以上かかるセル画を描く時点で、時給換算は悲惨な事になるのが分かるだろう。
過酷がすぎる。
時代は移り、1960年代、日本でもアニメ映画が作り始めた時期、コストは1億円程度だった。
今の物価で、2億円ぐらいの感覚だ。
アメリカのディズニーでは、眠れる森の美女や、わんわん物語が作られていた時期で、それぞれ600万ドルと400万ドルがかかっている。
数倍ぐらいの差に見えるかもしれないが、ほんの数十年前まで時給25セントの時代だったのだ。
1960年代のドルの価値は、現代の10分の1ぐらいである。
つまり、600万ドルは、現代の価値で6000万ドル近い感覚で、日本円で直すと60億円近くかけているのが分かる。
日本の2億対アメリカの60億で、どれだけかけられる製作費に差があるのか、スタートでこんなに差がある事が分かるが、日本のアニメーション市場が成熟すれば、この差が埋まれば問題が無かった。
一度、現代に話を移そう。
様々な連続作品の殆どが1クールか2クール(12話~24話程度)なのは、話数分だけ製作費がかかる為、最初から長大な枠と製作費を投入するのには、大きなリスクがある事も理由の1つだ。
1話1000万円の30分番組が1クール12話だとしたら、それだけで1億2千万円がかかる事になる。
毎週放送で3か月のコンテンツに、製作費だけで1億2千万以上かかるとなれば、元が取れない事には予算は増やしづらい。
この商売っ気が弱いのも、日本のクリエイターの大きな弱点だ。
稼げるかは分からないが、アニメーションを作りたいのが、大半なのだ。
だが、先に書いた様に、アメリカは予算が増え続けるが、日本の増えは少ない。
極端に失敗を恐れる国民性や、教育もあるだろう。
アメリカは1990年代には3000万ドル、2000年代には1億ドルを制作費に使うようになっていったが、日本では、ジブリや一部のアニメ会社が20億円使う事があっても、大半は10億円以下に抑えて制作している。
だって、経済が停滞しているから、日本市場に向けた作品に使える予算は、増えようが無いんだもの、と。
アニメの価値が下がる時代?
テレビ放送は、アニメーション提供の形態としては、時代遅れとなりつつある。
その影響が見て取れる部分として、日本の映像ソフトは年々値下がりしている。
日本では大ヒット作と言われている「涼宮ハルヒの憂鬱」は、1巻7000円で1~3話収録で、平均40000本の全8巻だ。
すっごい単純計算で22億4千万、DVDソフトだけで売り上げている。
話数が変則的な14話構成だとしても、1話3千万円だとしても1話ごとに1億3千万円の黒字が確定している(正確な数字では無いが、イメージで)。
後にブルーレイ、新アニメ追加版、BOXと再販売を重ねつつ、安定した売り上げを出している事を考えると、かなり優秀なコンテンツだった事が分かるだろう。
ところが、2020年現在のアニメーションは、同形態の売り方をしている作品は、徐々に減りつつあり、4話収録ボックス13000円で全3巻のワンクールとか、6話収録ボックス18000円で上下巻ワンクールと言った売り方が増えている。
これは、1巻7千円で2話=1話3500円時代から価値が下がり、1巻13000円で4話=1話3250円、1巻18000円で6話=1話3000円となっているにもかかわらず、売り上げ枚数自体が多くても10000枚、少ないと4桁、3桁、悪ければ2桁となる作品さえある。
逆に、2桁の人しか持っていない映像ソフトを持っている人が、作品のイベント以外で出会うのは奇跡と言って良いレベルである。
ちなみに、私の好きな作品で「メイドインアビス」は、上下巻で全12話のBD売り上げが5000枚ずつ程度、合計で10000枚強。
つまり、およそ2億円は映像ソフトで稼いでいる計算になる。
だが、商売を考えると、それだけでは中々に辛い。
テレビ放映による内容の無料提供からの、ソフトを買ってもらうビジネスモデルでは、十分に稼ぐことが難しい。
さらに、ネットフリックスに始まる、ビデオオンデマンドサービスの一般化により、定額を払えば見放題が当たり前になり、レンタルに関しても配信100円で見られる作品も多い。
つまり、アニメーションの価値は、日本アニメ界の従来のやり方では、下がり続ける一方だ。
だが、有料のネット配信では、その価値は下げ止まるどころか、古くて見向きもされなかったコンテンツまでもが価値の再発掘によって利益をもたらしている。
パラダイムシフトは起きたのだが、日本の市場は、変化を嫌がる。
しかし、日本人が変化を受け入れざるを得ないのは、いつだって外圧だ。
鎖国と言う国境閉鎖をしていたのを辞めたのも、アメリカから圧力をかけられたからだし、戦後50年の国の舵取りも、アメリカからの圧力に翻弄され続けている。
多くの日本人は、外国からの圧力を、変化を嫌がるが、変わるには、外圧を利用しないと、大半の日本人は変われないのも、また事実だ。
今回、新型コロナウィルスによる環境の変化も、日本人は翻弄され、どうにか変わるまいと足掻いている人もいるが、どう考えたって環境に適応しなければ生き残れない事は、大半の人は分かっている。
終わりに
日本国内で言えば、まあ、ぶっちゃけて、そんなに改善していないと予想している。
年収111万円とかのデータが2015年で、それから大規模な業界改革があったなんて話は聞かない。
だが、ネットフリックス等の外国からもたらされる製作費は、日本が30年成長していれば得られた正当な額に近い筈だ。
今回も、おそらく日本は、コロナや外国の圧力で変わっていく事が予想される。
ネットフリックスが日本の製作費の「数十倍」を出す事で、日本人は驚いている。
だが、外国からすると、30年間物価を変動させないで自分の首を絞め続けている様な経済状況の方が、むしろ驚きだろう。
日本で制作費がかかって有名な作品は、ジブリの「かぐや姫の物語」で51億5千万円ほどかけて驚かせた。(25億の興行収入だったが、意味と価値のあるチャレンジだったと言えるだろう)
一方で、アメリカでは、ディズニーやピクサーが2億ドル程度を製作費として使って、次々と結果を出している。(参考までに、トイストーリー3は世界で10億ドルを超える興行収入があった)
日本は、かぐや姫の物語の51億がアニメ制作費として高いと感じるだろうが、30年間経済成長が無い日本を基準にしても、どうしようもない。
アニメーターは、日本が外国と同じように経済成長していれば、10倍から100倍近く稼げる職業だった!
かもしれない。
時給300円ではなく、時給3000円や30000円貰っても普通ぐらいな、クリエイティブかつ夢のある職業だった可能性があるのだ。
今現在、アニメーターをしている人、志している人は、それだけの価値がある仕事である事を、是非知って貰いたい。
時給300円で好きだから描いている、描かせて貰っていると言う、大半の業界環境が、異常だと。
主に言いたかったのは、太字、最後の部分だ。
ああ、それと、記事内のデータは、キリが良い様に端数を四捨五入したりしてるから、そのまま信用しない様に。
散文、乱文だったが、長文をここまで読んでくれてありがとう。
後で、整理するよ。
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