連載漫画1話目比較「ドラゴンボール」「ハンター×ハンター」「ワンパンマン」

構造で見る漫画のテクニック

映画脚本では、ハリウッド流のパラダイムに沿って作れば大きな間違いは起きないかもしれない。

だが、脚本と小説が別物であるように、漫画と言う表現形態もまた、別物である。

しかし、メディアが違っても、同じ物語を描く媒体である事に変わりはなく、漫画には漫画独自のパラダイムが存在している。

今回は「ドラゴンボール」「ハンター×ハンター」「ワンパンマン」と言う3作の有名作品を、パラダイムで比較し、その中で使われているテクニックを紹介していく。

各作品のAmazonリンクを設置しておくので、単行本が手元にない人はサンプルを利用して実物を見ながら見ると、より分かりやすくなるはずだ。

もちろん、手元に単行本がある人は、それを見るのが手っ取り早いだろう。

ドラゴンボール(1984)

世界中で愛される代表的な漫画である「ドラゴンボール」の一話は、パラダイムとして見ると、かなり一般的だ。

ページ 起承転結 三幕構成 パラダイム ページ開き コマ数 内容
1 1幕 プロローグ、これからどうなる 1 むかしむかし
2        
3     日常の時 6 薪割り
4     日常の時 4 ハラへったな(特技)
5     日常の時 5 じいちゃん、エサとってくる
6     日常の時 6 このあたりのハズ(ヘラルドの前振り)
7     日常の時 4 魚でもとろう
8     日常の時 6 チャポン
9     日常の時 5 大量大量(特技)
10     切欠の時 6 何の音だ(ヘラルドとの出会い)
11     切欠の時 5 おのれ怪物め(如意棒、防弾、前振り)
12     切欠の時 8 ちょっとまった
13     切欠の時 7 おんな!?
14     切欠の時 7 しっぽもない(尻尾、前振り)
15     切欠の時 7 へんなやつ
16     切欠の時 7 ドラゴンボールだ
17     切欠の時 6 これはさぁ、ドラゴンボールっていうのよね
18     切欠の時 4 どんな願いでもひとつだけ(プロットポイント)
19     悩みの時 8 だめだめ
20     決意の時 6 オラが持ってる
21     決意の時 8 ブルマか
22     決意の時 5 やっぱり妖術使いだろ
23     決意の時 4 すげーなこれ
24 2幕 試練の時 6 20分後
25     試練の時 7 ぶったまげた(契機の時、伏線)
26 2幕 危機の時 5 びえええ(敵と接触)
27     絶望の時 5 たすけてよ
28     契機の時 7 やった動いたぞ
29 3幕 解決の時 4 そりゃいっけ
30     解決の時 4 棒よ伸びろ(1話、クライマックス)
31     エピローグ 5 よかったよかった
          計166、平均5.3  

物語の真ん中にあるミッドポイントの部分でプロットポイントの盛り上がりを置き、クライマックスでもバトルでもう一盛り上がりし、物語としてコンパクトにまとまっている。

ただ、起承転結の配分は1話単体では決して良くなく、あくまでも連載作の1話と言う立ち位置にある。

ハンター×ハンター(1998)

ハンターハンターのパラダイムは、上記ドラゴンボールに比べると、回想を使ったり、構成的な卓越した技術が、これでもかと詰まった物になっている。

ページ 起承転結 三幕構成 パラダイム ページ開き コマ数 内容
1 1幕 プロローグ、これからどうなる 4 未知と言う言葉が放つ魔力
2     プロローグ  

人は彼らをハンターと呼ぶ、見開き

3     プロローグ   見開き
4     日常の時 3 クジラ島
5     日常の時 3 釣り(特技)
6 (2幕) 試練の時 8 きたきたきた
7     試練の時 1 きたー
8 1幕  切欠の時 5 今度はミトさんが約束を守る番だ
9     切欠の時 9 言葉には責任持たなきゃね
10     切欠の時 6 うんありがとう
11     悩みの時 4 ごめんねミトさん
12     悩みの時 6 ピュイ
13     悩みの時 8 ザッポーン
14 (3幕) 絶望の時 5 3年前(回想)
15     契機の時 3 ギイン(プロットポイント2)
16     解決の時 6 処分する決まりだ
17 1幕  切欠の時 3 馬鹿野郎
18     悩みの時 8 お前の親父はそんな事も教えてくれなかったのか
19     悩みの時 6 処分する
20     決意の時 8 俺が育てる
21     決意の時 7 全く驚きだな
22     決意の時 7 ジンさんは死んじゃいないよ(回想終了)(プロットポイント)
23 1幕  決意の時 5 オレはハンターになるからね
24     決意の時 7 わかるだろ
25     決意の時 3 バイバイ元気でな
26 1幕  切欠の時 8 いつ出発するの
27     悩みの時 6 ハンターってそれだけすごい
28     悩みの時 8 ミトさんごめんなさい
29     決意の時 4 親父に会いに行くよ
30     決意の時 10 ウソだって気付いてた
31     決意の時 8 元気でね
32 2幕 試練の時 6 こうして
          計175、平均5.8  

1話目は、旅立ちまでを描く事で、劇中のアクションとして大きく動く事はない。

だが、効果的な回想シーンによってアクションを入れつつ、冒頭の「主釣り」と言う試練の為の「切欠」を描くと言う時系列シャッフルが行われ、更に、回想中と現代での「決意」のシーンを重ねる事によって、主人公に重みのある決意をさせる事に成功している。

また、一見動きが少ない1話目であるが、構造的には「切欠」「悩み」「決意」のセットが細かく複数あり、非常に丁寧ながらしっかりとした波のある話運びとなっていて読む者を飽きさせない工夫がされている。

起承転結や3幕構成のパラダイムを盲目的や型通りに使っていては作る事が難しい、そんなハイレベルな1話目だ。

ワンパンマン(2009)

一方で、ワンパンマンは、1話まるまるプロローグと言う手法の始まり方をしている。

プロローグの中身は「危機」「絶望」「契機」「解決」と、敵と戦う物語の「良いとこ取り」であり、作品のテイストと、最も盛り上がる瞬間を凝縮したお手本の様なプロローグとなっている。

ページ 起承転結 三幕構成 パラダイム サブパラダイム ページ開き コマ数 内容
1         1 一撃(扉)
2  転 2幕  プロローグ、これからどうなる 危機の時 2 チュンチュン
3     プロローグ 危機の時 1 グァ
4     プロローグ 危機の時 5 ズズン
5     プロローグ 危機の時 1 シュウウウ
6     プロローグ 危機の時 4 ブウウウン
7     プロローグ 危機の時 4 行くか
8     プロローグ 危機の時 1 正義執行
9     プロローグ 危機の時 3 えーん
10     プロローグ 絶望の時 3 メキメキ
11     プロローグ 契機の時 2 ブン
12     プロローグ 契機の時 3 少女を助ける主人公(プロットポイント2)
13     プロローグ 契機の時 2 何者だお前は
14     プロローグ 契機の時 1 趣味でヒーローをやっている者だ
15     プロローグ 契機の時 1 なんだその適当な設定は
16     プロローグ 契機の時 2 ワクチンマン
17     プロローグ 契機の時 2 地球の意志によって生み出されたのだ
18     プロローグ 契機の時 1 やはり人間
19     プロローグ 契機の時   見開き
20 3幕  プロローグ 解決の時 1 ぐっはああああ(クライマックス)
21     プロローグ 解決の時   見開き
22     プロローグ 解決の時 4 またワンパンで終わっちまった
            計44、平均2  

3作比較

ページ ドラゴンボール ハンターハンター ワンパンマン
1 プロローグ、これからどうなる プロローグ、これからどうなる  
2   見開き

プロローグ、これからどうなる

危機の時

3 日常の時 見開き 危機の時
4 日常の時 日常の時 危機の時
5 日常の時 日常の時 危機の時
6 日常の時 試練の時 危機の時
7 日常の時 試練の時 危機の時
8 日常の時 切欠の時 危機の時
9 日常の時 切欠の時 危機の時
10 切欠の時 切欠の時 絶望の時
11 切欠の時 悩みの時 契機の時
12 切欠の時 悩みの時 契機の時
13 切欠の時 悩みの時 契機の時
14 切欠の時 絶望の時 契機の時
15 切欠の時 契機の時 契機の時
16 切欠の時 解決の時 契機の時
17 切欠の時 切欠の時 契機の時
18 切欠の時 悩みの時 契機の時
19 悩みの時 悩みの時 契機の時
20 決意の時 決意の時 解決の時
21 決意の時 決意の時 解決の時
22 決意の時 決意の時 解決の時
23 決意の時 決意の時  
24 試練の時 決意の時  
25 試練の時 決意の時  
26 危機の時 切欠の時  
27 絶望の時 悩みの時  
28 契機の時 悩みの時  
29 解決の時 決意の時  
30 解決の時 決意の時  
31 エピローグ 決意の時  
32   試練の時  

こうして比較すると、一見パラダイムなんて無意味に感じるかもしれない。

しかし、実際は、

  • 起の「切欠」「悩み」「決意」セット
  • 承の「試練」
  • 転の「危機」「絶望」「契機」セット
  • 結の「解決」

を、「プロローグ」「日常の時」と「エピローグ」が挟んでいる言う、決まった構成だけで形が構築されている事が分かる。

セットが存在しない描写は、説明不足になり、下手に順番が違う描写は混乱の元となる。

つまり、一定のルールがあると言う事だ。

また、どの様な構成であっても、1話の中に2回以上は盛り上がるパートがあり「真ん中(プロットポイント1か、ミッドポイント)」と「後半(プロットポイント2かクライマックス)」の盛り上がりの存在によって、読者は物語に波の浮き沈みを感じ、それが強く印象に残るように設計されている。

どちらも基本中の基本だが、出来ているか否かで、作品のクオリティには雲泥の差が出るポイントでもある。

意識した事が無い人は、出来ているか意識するだけでも成長に繋がるだろう。

終わりに

今回は、20~30ページ程度の有名作品を見たが、次回から6回に渡って

  1. 全編プロローグ系
  2. パワーのある主人公が目的の為に旅をしている系
  3. パワーのある主人公が旅の途中で定住する系
  4. パワーはあるが弱い主人公が、自分のパワーに気付く系
  5. パワーのない主人公がパワーを与えられる系
  6. パワーのない主人公がパワーのある相棒と出会う系

を、今回と同じように有名作品の実例と共に紹介していく予定だ。

連載作品だからこそのテクニックもあるが、読み切り作品にも使えるテクニックも多分に含まれているので、参考になれば幸いだ。

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