「管理システムに抗う物語」とは?
ここでは「社会を効率的に回す為の管理システムに抗わざるを得なくなった人」をテーマにした物語を解説します。
管理システムと聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?
ディストピアを思い浮かべたのでしたら、かなり分かっています。
ここで扱う管理システムとは、大多数が安定して暮らす為に、一部の少数を切り捨ててでも効率化を図り、個の幸せを考えずに全体での利益を優先して管理をしていくシステムです。
本来は困っている人を助けてくれたり、人の為に動くはずのシステムが、一定以上の弱者や、システムが決めた「切り捨てても構わない人達」を勝手に決めてきたら?
どうしようもなく「切り捨てられる側」に立ってしまった人は、いったいどうすれば良いのでしょうか?
この形式の物語は、構造カテゴリーで別の言い方をするならば「組織の問題に向き合って、禁忌を破る物語」となります。
解説
管理システムって?
まず「管理システム」とは、どの様なシステムを指すのか?
上でも触れましたが、この記事では「公的で、力があり、本来は人の為にある筈なのに、大多数が安定して暮らす為に、一部の少数を切り捨ててでも効率化を図り、個の幸せを考えずに全体での利益を優先して管理をしていくシステム」として解説していきます。
やたら行動力のある主人公
このタイプの物語の主人公は、行動力があり精神的に自立しています。
自己中心的な場合も多いです。
ですので、法律を破ったりする事に対して、一般人よりも耐性があり、それが自分の為になり、正しいと信じていれば、世の中のどんな禁忌だろうと破る勇気があります。
きっかけとなる出来事
ある日、主人公には転機が訪れます。
転機自体は様々ですが、共通する事があります。
それは、今まで気付きもしなかった管理システムの問題に気付くと同時に、戦いを挑む事が出来る立場に立たされる事です。
映画「カッコーの巣の上で」では、主人公は刑務所に入らない為に精神異常者を装い、計画が上手く行く事で精神病院に入る事になります。ところが、精神病院では、残酷な看護婦長によって患者達は管理され、人間扱いをされていない異常な環境でした。その事に耐えらえない主人公は、患者達を巻き込んで病院側に対して抵抗を試みようと決意します。
アニメ映画「ソーセージパーティー」では、スーパーマーケットの食材達が人に買わて楽園に行けると言う教えを信じて過ごしている所に、返品されてきたハニーマスタードが、その教えが間違っている事を伝えて自殺し、主人公のソーセージが真実を探す冒険に出る事から物語が始まります。
アニメ「デカダンス」では、主人であるサイボーグ達が、僅かに生き残った人間を飼い、ゲームのNPCの様に管理して、実際の世界でアバターを使ってスコアを競い合うデカダンスと言うゲームに興じている、と言う変わった世界観です。そこで主人公のサイボーグ、カブラギはトップランカーからバグに転落して自暴自棄な生き方をしていましたが、人間のナツメと出会い、彼女が管理外のバグである事に気付き、精神を救われる事で、デカダンスと言う管理システムに戦いを挑む決意をします。
この形式で出てくる管理システムは、システムが決めた「社会不適合」や「一方的に消費出来る弱者」に、そうと認識させず、当たり前の様に管理している強固な環境を予め持っています。
強固で公的な管理システムが、罪は無いがシステムが必要としない被害者を生み出している図式があって、初めて主人公の戦いが始まります。
最初は自分の為に
この形式の物語の主人公は、持ち前の行動力で管理システムの妨害をかわし、管理システムによって被害を受けている大勢の人を、結果的に助ける事になります。
ですが、その行動の始まりは、自分の為です。
自分の為に始めた事が、周囲の為になっていく事で、多くの仲間を得ます。
小さな成果
主人公は管理システムへの抵抗が上手く行き、仲間達と共に仮初の勝利を手にします。
管理システムが用意した「既定路線」から大きく逸脱した行動をとる事で、仲間達に本来の人の在り方を教える事に成功します。
管理システムからの反撃
主人公の活動が目障りになった管理システムは、管理ルールに従って攻撃してきます。
これにより、なぜ、この異常な状況が維持されているのかがハッキリと分かります。
管理システム側からすれば、主人公の抵抗は「ルール内のルール違反」であり、処理するプロセスが既に用意されている意味で、まだ既定路線なのです。
管理システムを壊すには、この「処理するプロセスが用意されていない」状況を作る必要が分かってきます。
追い詰められるが、しかし
管理システムによって、主人公は行動の自由を封じ込められます。
ですが、まだ終わりではありません。
主人公は、転落した事で腹が決まり、この管理システムから完全に抜け出したり、壊す事を目標に、次の行動に出ます。
同じ立場の仲間達と共に、管理システムから解き放たれる為の、最後のミッションです。
管理システムとの正面衝突
主人公は、管理システムから解放される方法を、ついに見つけ、実行します。
ですが、計画は、思いもよらぬ方向に進みます。
長年管理されてきた者が、システムによる管理を望んでいたり、管理から逃れられない事で、計画に大幅な変更が起きるからです。
映画「カッコーの巣の上で」では、カナダへの逃亡を考えますが、仲間の一人ビリーが強固すぎるシステムの管理から逃れられず、結果的に自殺してしまいます。
アニメ映画「ソーセージパーティー」では、料理本と薬中毒の青年によって、世界の真実を知った主人公達でしたが、主人公に復讐を誓った壊れた膣洗浄機の魔の手が迫ります。
アニメ「デカダンス」では、ガドルと言うモンスターの生産工場破壊と自死プログラムの発動でゲームを終わらせられる筈でしたが、仲間の一人ターキーの裏切りによって計画が大幅に狂い、更に管理システムから解き放たれたバグガドルの暴走、空間ごと消滅させる安全装置の起動によって、事態は悪くなり続ける。
同じ立場の、仲間である筈の者が管理システムに毒されている事で、主人公達は窮地に陥る訳です。
そしてフィナーレへ
主人公は、大勢の仲間に支えられ、管理システムと正面衝突した結果、何らかの形で勝利をおさめます。
強固なシステムからの解放には、それだけ強烈なインパクトが必要となります。
個人が、それだけのインパクトを起こすには、時には命を懸け、死ぬ事さえあります。
ですが、主人公の行動によって、結果的に管理システムは部分的に穴が開き、壊れました。
それにより、主人公が助けたかった仲間達が管理システムから解放され、物語は感動的なフィナーレを迎えます。
管理システムを完全に破壊しつくす事は出来ませんが、管理システムからの脱出に成功したり、管理システムを変える切欠となるわけです。
まとめ
以上、管理システムに抗う物語とは、社会を効率的に運営する為に、一部の人を蔑ろにしている社会に対して、蔑ろにされている人々が反撃し、最後には解放される物語と言う事でした。
管理システムのやっている効率的な管理が「一見正しそう」なのに、悲惨な状況を作り出している状況に気付いてから、どうすれば、管理システムが不要とする(あるいは、消耗品として必要とする)人々を解放出来るかに、いかにして気付くかがポイントです。
管理システムの中にいると、そこが全世界で、従うべきルールに見えます。
ですが、その『外側に出たり、管理の前提を崩す』事で、管理システムに抵抗出来る事に気付く事は、実は容易ではありません。
例えば、問題を抱える家庭、ブラック企業、腐敗国家、そう言った物の管理下に置かれた人でも、外に逃げたり、実際にレジスタンス活動出来る人は、相当限られます。
この記事が好きな作品探しや、この形式の物語を作る時の参考になればと思います。
必須要素
組織を変える
- 変えるべき慣習やルールのある環境
- 慣習やルールの異常性に気付ける主人公
- 慣習やルールに抵抗する主人公
タブー破り
- その社会での禁忌
- 禁忌を破らないと満足出来ない主人公と仲間
- 禁忌を破った代償
「管理システムに抗う物語」該当作品
※地道に追加、修正予定。
※他の形式の物語も知りたい場合は、物語カテゴリーをご覧ください。
※アイキャッチはヒューマンピクトグラム2.0様より使わせて頂いています。
“シナリオの書き方「管理システムに抗う物語」の脚本構造を紹介!愛の無い効率化は人を殺す” への1件の返信