特権階級が作り出す歪んだ環境
「人には生まれ持った役割と、役割に相応しい特権がある」等の様な考えを前提に、役割に恵まれた人達が作った結果、歪んでいったのが「貴族」等を家や血で決める特権階級社会だ。
先祖の功績、引き継ぐ立場、財産、権力、教育、実に様々な要素によって社会的立場を維持し続け、特権階級にある人々は、自分が持つ既得権益を守ろうとする。
それ自体は自然な事だが、問題は「社会が求める役割を果たせているか」にあり、社会が歪んでいくと「特権だけが残り、役割を果たせなくなってくる」事が往々にある。
それが貴族社会の崩壊に繋がる一つの境界線だ。
例えば、政治力があって、それを発揮出来ていれば政治家に文句を言う人は少なくなる。
それは、政治家としての役割を果たしているからであり、社会が認める特権を享受する事に値するからだ。
もっとも、これは特権階級に限らず、社会の基本構造の話でもある。
仕事(役割)をサボれば、給料が払われずにクビになったりするのは当たり前で、社会は役割を果たす事を常に求める。
特権階級の歪みは、「役割を果たせるか」で人を選ばず、血や家柄で「役割を果たすべき立場に無理やり押し込む」事で、貴族を作ったり、あるいは「役割を果たす能力は無いが、特権だけは享受する」と言う腐敗した既得権益享受者を生んでしまう事で生まれていく。
現代では、この役割は生まれだけで無く能力で決まる事も多い為、昔ながらの貴族社会のシステムがバグ無く機能する事の方が稀だ。
また、得をする者がいれば、損をする者も当然出てくる事で、社会は余計に歪んでいく。
基本的に、貴族が享受する既得権とは、貴族のルールで貴族になれない人達から集めた物だ。
そこで、貴族になれないが役割を果たす能力を持つ非貴族民は、不満を持つ。
なので、先祖から家柄や遺産を引き継いだだけで役割を果たせない世代が続けば、貴族は大きな反発を受け、在り方を変えなければ、力を奪われるか滅ぼされる事になる。
現実だと、今でも続く頭の痛い問題でもあるが、これがフィクションだと非常に面白く、ロマンさえある。
役割に相応しくあろうとする人、立場を超えて役割を果たそうとする人、役割を無視してやりたい事をやろうとする人、与えた役割を果たす事を求める社会と戦う人と、歪んだ環境は物語に葛藤を生み出すからだ。
この記事では、そんな「貴族社会」をモチーフとした作品を紹介していく。
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