【第2回】物語を魅力的にするセリフを作る方法【基礎】

セリフの考え方

今回も良いセリフを考える為の、基本を引き続き説明していく。

パート単位で、一定の意味があるか

物語は、パート毎にパラダイムで分けられる。

パートは、シークエンスやシーンで分ける事が出来、分割したパート単位で、その中にもパラダイムが存在する。

つまり「入れ子構造」となっていて、例えばストーリー全体の「起承転結」の「起」の中に、シークエンスとしての「起承転結」があって、その「起」の中には更にシーンとしての「起承転結」が存在する。

この様な前提なので、セリフを考える際も、パート単位で意味があるのかと言う視点があると、物語の中でセリフの意味が掴みやすくなる。

例えば「決意の時」と言うアクト(1幕、2幕、3幕)やシークエンス(パラダイムのパート単位)に該当するシーン群を描く際、セリフとして「私、やります!」と決意を固める表現があったとする。

「私、やります!」と言うのは、シーンであり、ここを見て読者・視聴者は登場人物の決意を感じ取り、作品として印象に残る。

だが、シーン単体では、意味が分からない。

これだけでは、シーンとしては意味があるが、アクトやシークエンスとしては、意味が足りない事が分かる。

そうなると、アクトやシークエンス単位でも意味が通じない事には、物語として何かが足りていない事が分かってくる。

「決意の時」で主人公が「私、やります!」と決意を固めるとしたら、その直前では、「切欠の時」や「悩みの時」と言った、様々なシークエンスで、アクトの中に起承転結を満たさないと意味が通じなくなってしまう。

これは逆に、セリフの良し悪しを判断する際にも使える考え方で、沢山あるセリフの中で、どれが本当に物語に必要かを見ていくには、パート単位での意味がある役割を担い、意味がある言葉の詳細を深め、ディティールをアップさせて、より魅力的にさせているか否かのチェックにも使える。

非常に分かりにくい説明になってしまったかもしれないので、別の言い方もしておくと、

物語としての「アクト(起承転結)」と、

アクトの中の「シークエンス(起承転結)」と、

シークエンスの中の「シーン(起承転結)」と、以下が、

どれも成り立つ状態と言うのが、パート単位の意味がある状態と言う事だ。

地の文やト書きと、セリフが、パート単位で意味が分からない場合、役割を果たせていない事があり、そうなると読者、視聴者は物語に没入しきれなくなる。

パート単位で、何が達成されるか

構造上の意味、役割と言う見方意外に、物語としてテーマに沿って何が達成されるのかと言う視点も重要になる。

例えば「切欠の時」は、大抵の場合はチャンスやトラブルと遭遇するパートだが、これは主に、主人公を始めとした登場人物が、問題にぶち当たるシークエンスとして決まっている。

そのシークエンスの中で、あるいは、その更に中のシーン中に、行動とセリフによって物語が前に進む中で何が達成されるのかが明確でないと、物語がどこに向かうのかが曖昧になる。

連載漫画1話目比較「武装錬金」「僕のヒーローアカデミア」「鬼滅の刃」「呪術廻戦」が参考になるかもしれないが、

「鬼滅の刃」では、帰宅をすると家族が殺され、唯一生き残った妹も虫の息と言う現場に遭遇するまでが「切欠の時」で、主人公は以降の物語では一貫して妹を救う事を目的にして物語が前に進み続ける。

鬼退治は、妹を助ける為に必要なだけで、中心にあるのは妹を救う事だ。

切欠の時は、妹を救わなければならないと言う問題に遭遇するパートで、主人公は明確に行動とセリフを持って、問題に気付いている。

シークエンス単位の意味がしっかりあり、アクト単位で見ても「切欠の時」以外の「悩みの時」では家族の死に戸惑い「決意の時」では、妹を救う為に町を目指し、それらを成り立たせる最も冒頭のシークエンス「日常の時」では、事件に巻き込まれる主人公一家や、主人公の事が描かれる事で、シークエンス単位の意味はあり、だからこそアクト単位での意味も明確だ。

シークエンスの中にあるシーン単位でも、意味があるからこそ、シークエンス単位でも意味が分かる。

各パート単位で、物語の前進に必要な「達成される事」があるからこそ、物語は前に進み続ける。

当たり前の事に思えるが、達成される事を自然と描けない事は、まあまあ起きる。

一見すると、主人公が行動したり会話をしていて物語の場面が変化している様であっても、主人公が抱えた問題にも、その解決にも関わらない場面描写、行動やセリフを延々と続けては、物語は停滞したままと言えるわけだ。

これも、説明だけでは分かりにくいかもしれないが、重要な視点だ。

要は、達成されるとは「変化」であり、登場人物で言えば「成長」とも言える。

描くシーンより後のシーンでは、登場人物は何かを「変化」しなければならない。

知らない事を知る、大事な物を失う、大事な人と出会う、そういう「変化」が起きれば、最低限「達成」の目安となるだろう。

直接か、間接か

魅力的な人には、必ず弱い部分がある。

肉体的や精神的に弱い部分が無ければ、そこに人間味は薄くなり、共感も応援もし辛くなる。

なので、人はセリフを言って会話をする時、間接的な事を日常的に使う。

つまり、自然なセリフには、いつもでは無いが、必ず「間接表現」が必要となる。

前回と同じ例えだが、扉の前に悪者がいて、その扉を通らないと目的の場所に行けないとする。

「ジャマだ、どけ!」とか「悪いが通してくれ」とか、その表現は、直接的であり、強かったり、頭が悪くないと使えない。

間接的表現になると、一つは「嘘」を使って、穏便に物事を前に進ませようと人は試みる事になる。

「むこうで美人があんたの事を呼んでたけど知り合いか?」とか「中の奴に呼ばれたんだ」とか、要するに目的や目標を、穏便に達成さえ出来れば何でも良い。

もう一つは「別の理由を作って情報を引き出す」事で、間接的に目的を達成しようとする。

例えば、恋愛モノなら「好きな人っているの?」とか「付き合ってる人っている?」と言うセリフは「相手が誰とも付き合っていないか」を聞きたい以上に「自分にはチャンスがあるか」を知りたいと言う意味で間接的な会話である。

直接行ける強さがあるなら「付き合ってよ」と聞くのが、最も早い。

もっと言うと「付き合う」さえも、ジャンルによっては間接表現になる事がある。

愛か、恋か、この違いは実は大きく、自己犠牲的か自己中心的かの分かれ目でもあるからだ。

愛の「付き合いたい」と言うのは、相手に与え合いたい事であり、恋の「付き合いたい」は、相手が欲しい事である。

この欲しいとは、登場人物の性格によっては美女美男と言うステータスや、悪ければ肉体に向けられた欲望だ。

つまり「付き合いたい」と言う告白等の直接的な表現も、登場人物の目的次第では、間接表現として機能するわけだ。

これはつまり、セリフには、目的達成や欲望を満たす目的があるのだが、登場人物のキャラクターや強さによって直接か間接かの、表現をTPOで変える事が、かなり大事だと言う事である。

あまりにも当たり前だが、いざ物語のセリフとして描こうとすると、やたらと直接か、やたらと間接かと、偏って表現したり、登場人物が言いそうもない事を言わせると言う事が良く起きる。

会話にはサブテキストが重要だが、それだけと言うのも極端なので、バランスが大事だ。

目的達成に向けた計画があるか

セリフで、直接でも間接でも会話をしていくと言う事は、問題解決に向けて達成したい事があると言う事だ。

つまり、達成したい目標があると言う事は、一定の計画が必要になる。

扉の前に悪者がいて、その扉を通らないと目的の場所に行けないとする。

「ジャマだ、どけ!」と言うセリフは、計画としてこれで通れる場合以外は、言わせてはダメだ。

コメディや、バカなキャラ描写なら良いが、真面目なシーンでこんな事を言って通れなかったのでは白け切ってしまう。

「むこうで美人があんたの事を呼んでたけど知り合いか?」とか「中の奴に呼ばれたんだ」とかの発想は、登場人物が扉を通る為の計画があって出てくるセリフとなる。

恋愛モノの「好きな人っているの?」とか「付き合ってる人っている?」と言うセリフは「相手が誰とも付き合っていないか」を確認して、告白をしても問題が無いか計画を練って地固めをする為のセリフであり、これを聞き出す事は登場人物にとっては計画の前進と言える。

この様に、問題を解決する為のセリフには、どうやって問題を解決しようとしているかの、計画が必要となる。

ギブとテイクが成立しているか

登場人物が、計画を進めようとする。

だが、いつも相手が思い通りに動くわけではない。

主人公は、会話で計画を進める際は、相手に対して目的達成に必要な情報を得る為に「ギブ」をし続ける為に、相手の「テイク」に答え続ける必要がある。

扉の前に悪者がいて、その扉を通らないと目的の場所に行けないとする。

「むこうで美人があんたの事を呼んでたけど知り合いか?」とか「中の奴に呼ばれたんだ」とかは、相手が得をするかもしれない事情を相手に先に与えたり、通さない方が損をする様な状況に会話で導こうとしている。

強そうな仲間を連れていれば「どいてくれ」と言っても、相手は、強そうな仲間と戦うよりも退いた方が得だから退いてくれる可能性が出てくる。

通行料を渡して、相手が扉を通した方が得な状態を作るのと基本は同じだ。

扉を通りたいのが悪者で、守っているのが善人なら「退かないと刺す」様な、痛みや危険を与えると言うマイナスを交渉材料にして扉を通る事も出来る。

交渉とは、相手が得をする状態にしないと成立しない。

例えば、売買交渉でも、あなたが1000円の物を買うのは、1000円以上の価値があると思っているから1000円を納得して出せる。

ギブアンドテイクの原理を理解していないと、交渉は出来ないし、交渉を描けなければスリリングな会話も難しくなる。

終わりに

今回も、基本の基本に触れたぐらい。

こんな感じで次回もセリフについて説明していく予定です。

実践編も考えてます。

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