「大ヒット作品」の必須要素を考察してみた【第二回】

ヒットする理由、しない理由

前回の記事では、試しに「新世紀エヴァンゲリオン」を軸にして、トップクラスのヒット作品と要素を比較してみた。

今回は「大ヒット作品」の必須要素を考察してみた【第一回】の続きだ。

これまでで少し見えてきた事は、少なくとも日本のアニメーション業界では、

  • ロボットモノでは、主人公が専用機のロボットに乗った方が良い=描く作品ジャンルには一定のルールがある。
  • 世界系設定はヒットの妨げにはならない
  • 日本では日本が舞台か、実在しない異世界が舞台の方が受け入れられやすい
  • 見た目に見苦しくない少年少女が主人公である方が受け入れられやすい
  • バトル要素がある場合、誰や何と戦ってドラマが起きるかが重要

等の条件が分かってきた。

条件を満たしてもヒットしていない作品が星の数ほどある事も理解しているので、今回は、更に条件を洗い出して行く。

前回の補足

一度ヒットの要素を削る事で、ヒットの組み合わせの作り方見つける方法を前回の記事では軽く紹介した。

これは、作品の新規性獲得と言うアップデートを、アップデート前に戻す事で何が改善されたのかを見ていく手法となる。

「新世紀エヴァンゲリオン」の場合は、その前身は「ウルトラマン」だ。

  • 怪獣から地球を守る巨人
  • 巨人と一心同体の主人公
  • 巨人の戦いを助ける人間の組織

これだけで、共通点が見えて来たのではないだろうか?

今回の検証要素は「キャラクター」

今回はヒット作の登場人物に備わる属性を見ていき、そこからヒットの条件を探していく。

見ていく作品は、前回と同じ

  • 新世紀エヴァンゲリオン
  • ラブライブ!サンシャイン!!
  • おそ松さん
  • 進撃の巨人
  • 化物語
  • 魔法少女まどか☆マギカ
  • ユーリ!!! on ICE
  • 機動戦士ガンダム SEED シリーズ
  • マクロスF
  • コードギアス 反逆のルルーシュ シリーズ
  • 機動戦士ガンダムUC
  • けいおん!
  • Fate/Zero

等を中心とする。

イメージしやすい特徴

まず、ヒット作品をイメージして見て欲しい。

次に、キャラクターを想像して見て欲しい。

恐らく、作品と言う括りでキャラクターを想像すると、人それぞれ違いこそあるが、一定のパターン内でイメージが浮かぶはずだ。

  • 主人公、主役
  • +メインとなる基本の仲間達
  • 個人的に推しているキャラ

等が、大半になると思う。

そこで、登場人物がグループでイメージ出来る事に気付くと思う。

イメージは、きっと味方や何かしらの括りを持ったライバルだ。

タイトル メイングループ 味方・レギュラーグループ 敵・ライバルグループ
新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ、綾波レイ

ネルフ

エヴァパイロット(惣流・アスカ・ラングレー)

使徒

渚カヲル

ラブライブ!サンシャイン!! 2年生(高海 千歌、桜内 梨子、渡辺 曜)

Aqours

1年生(津島 善子、国木田 花丸、黒澤 ルビィ)

3年生(松浦 果南、黒澤 ダイヤ、小原 鞠莉)

Saint Snow

(鹿角 聖良、鹿角 理亞)

おそ松さん 六つ子(おそ松、カラ松、チョロ松、一松、十四松、トド松) トト子 イヤミ
進撃の巨人 幼馴染(エレン・イェーガー、ミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルト)

調査兵団

第104期訓練兵団(ライナー・ブラウン、ベルトルト・フーバー、アニ・レオンハート、ジャン・キルシュタイン、マルコ・ボット、コニー・スプリンガー、サシャ・ブラウス、クリスタ・レンズ、ユミル)

巨人
化物語 阿良々木 暦、戦場ヶ原 ひたぎ

忍野メメ

ヒロインズ(忍野 忍、羽川 翼、八九寺 真宵、神原 駿河、千石 撫子、阿良々木 火憐、阿良々木 月火、等)

怪異
魔法少女まどか☆マギカ 鹿目 まどか、暁美 ほむら 魔法少女(美樹 さやか、巴 マミ、佐倉 杏子) 魔女
ユーリ!!! on ICE

勝生勇利、ヴィクトル・ニキフォロフ

ユーリ・プリセツキー

長谷津町 スケート選手(南健次郎、オタベック・アルティン、季光虹、クリストフ・ジャコメッティ、ジャン・ジャック・ルロワ、ピチット・チュラノン、ミケーレ・クリスピーノイ・スンギル、レオ・デ・ラ・イグレシア、エミル・ネコラ、ギオルギー・ポポーヴィッチ)
機動戦士ガンダム SEED

キラ・ヤマト、カガリ・ユラ・アスハ

アスラン・ザラ、ラクス・クライン 

地球連合

アークエンジェル(マリュー・ラミアス、ムウ・ラ・フラガ、ナタル・バジルール、フレイ・アルスター、サイ・アーガイル、ミリアリア・ハウ)

 

プラント

ザフト(ラウ・ル・クルーゼ、イザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマン、ニコル・アマルフィ )

マクロスF 早乙女 アルト、ランカ・リー、シェリル・ノーム S.M.Sパイロット(ミハエル・ブラン、ルカ・アンジェローニ、オズマ・リー、クラン・クラン) バジュラ
コードギアス 反逆のルルーシュ

ルルーシュ・ランペルージ

枢木スザク

黒の騎士団

日本(C.C.、ナナリー、紅月カレン、シャーリー)

ブリタニア軍

ブリタニア(ユーフェミア)

機動戦士ガンダムUC

バナージ・リンクス

オードリー・バーン

ネェル・アーガマ

連邦パイロット(リディ・マーセナス)

 

袖付き

ネオ・ジオンパイロット(マリーダ・クルス、フル・フロンタル、アンジェロ・ザウパー)

けいおん! 放課後ティータイム(平沢 唯、秋山 澪、田井中 律、琴吹 紬、中野 梓)    
Fate/Zero セイバー陣営(衛宮切嗣、アイリスフィール・フォン・アインツベルン、セイバー)  

アーチャー陣営(遠坂時臣、アーチャー)

アサシン陣営(言峰綺礼、アサシン)

ライダー陣営(ウェイバー・ベルベット)

ランサー陣営(ケイネス・エルメロイ・アーチボルト、ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ、ランサー)

バーサーカー陣営(間桐雁夜、バーサーカー)

キャスター陣営(雨生龍之介、キャスター)

と言う風に、キャラクターをグループで分ける事が出来る。

ここで、まず注目して欲しいのがメイングループだ。

メイングループは、劇中でも特に重要度の高いグループで、このグループにいるキャラ達がチャンスやトラブルと向き合い、一つの目的に向かう事が物語の中心となる。

次に重要となるのが味方と敵のグループで、これらのグループは、一定の共通点や統一規格を持っているのが基本となる。

味方グループは、メイングループと目的や目標を共有出来て、敵グループは真っ向から対立する関係にある。

今話したいのは、これらの「一定の共通点」や「統一規格」の話だ。

特定の目的を持ったグループに所属する事で、そこにはチームカラーの様な統一感が生まれる。

この、統一感が、キャラクターを特徴づける大事な物となる。

一種の象徴となる恰好や見た目、もっと分かりやすくなると制服やスーツを着用する事で、そこには統一感が生まれる。

これが魅力的でないと、作品の魅力自体が目減りする事となる。

キャラクターの動機

チャンスとトラブル、主人公がどちらで動く方が好まれるのか?

タイトル 切欠 動機と決意 チャンスorトラブル
新世紀エヴァンゲリオン パイロット適性から選ばれ、いきなりロボットに乗る事を強要される ヒロインの為に乗る トラブル
ラブライブ!サンシャイン!! μ’sとの出会い 夢の為にグループ結成する チャンス
おそ松さん      
進撃の巨人 巨人に町を襲われ、母親を目の前で殺される 復讐の為に入団する トラブル→チャンス
化物語 困っているヒロインと遭遇する ヒロインの為に紹介する トラブル
魔法少女まどか☆マギカ 魔法少女の適正から選ばれ、勧誘されるが、乗らない様に釘を刺される 決断を保留しながら関わる トラブル
ユーリ!!! on ICE 動画を見て、コーチをしにヴィクトルが訪ねてきて、コーチをする条件を出す 再起の為に特訓を受ける チャンス
機動戦士ガンダム SEED 戦争に巻き込まれ、成り行きでガンダムに乗り、生き延びる為に操縦する事に 自分と仲間の為に乗る トラブル
マクロスF バジュラとの戦闘に巻き込まれる ヒロインの為に乗る トラブル
コードギアス 反逆のルルーシュ 軍とレジスタンスの戦闘に巻き込まれ、その中で特殊能力を与えられる 妹の為に計画を実行する トラブル→チャンス
機動戦士ガンダムUC 戦争に巻き込まれ、成り行きでガンダムに乗り、生き延びる為に操縦する事に 自分と仲間の為に乗る トラブル
けいおん! 廃部直前の軽音部を軽い気持ちで見学したら、演奏を聞かされて 楽しそうだから入部する チャンス
Fate/Zero 何でも願いが叶う聖杯を巡るバトルロイヤルに参加する 願いを叶える為に参加する チャンス

見て貰うと、何となくわかると思う。

トラブルの物語では、主人公は状況に振り回され、早くトラブルを解決したいと思いながら過ごす。

チャンスの物語では、主人公は夢を叶える為に、必死にチャンスに食らいつき、目的に向けたある種の前向きさがある。

こうしてみると、チャンスもトラブルも、どちらの物語も分け隔てなく愛されている事が分かるだろう。

そこで、別の視点で主人公の動機をもう一度見て欲しい。

それは、自己中か否かだ。

タイトル動機と決意チャンスorトラブル自己中か否か
新世紀エヴァンゲリオンヒロインの為に乗るトラブル自己犠牲
ラブライブ!サンシャイン!!夢の為にグループ結成するチャンス自己中
おそ松さん  自己中
進撃の巨人復讐の為に入団するトラブル→チャンス自己犠牲
化物語ヒロインの為に紹介するトラブル自己犠牲
魔法少女まどか☆マギカ決断を保留しながら関わるトラブル自己犠牲
ユーリ!!! on ICE再起の為に特訓を受けるチャンス自己中
機動戦士ガンダム SEED自分と仲間の為に乗るトラブル自己犠牲
マクロスFヒロインの為に乗るトラブル自己犠牲
コードギアス 反逆のルルーシュ妹の為に計画を実行するトラブル→チャンス自己中
機動戦士ガンダムUC自分と仲間の為に乗るトラブル自己犠牲
けいおん!楽しそうだから入部するチャンス自己中
Fate/Zero願いを叶える為に参加するチャンス自己中

と言う風に、主人公の動機が自己中か否かが分かれた。

ここで考えて欲しいのは、自己中心的である作品では、上記した「メイングループ」と「味方・レギュラーグループ」の登場人物にとっては、目的や目標を同じくしている部分がある点で、間接的に他者中心的でもあると言う事だ。

つまり、例えば

「ラブライブ!サンシャイン!!」では、主人公がμ’sに憧れてアイドルグループを結成し、周囲を巻き込んだ強引な行動を取っていったとしても、仲間達にとってみれば、共通の目標に向かった行動なので、自分達の為の行動にもなっている。

「コードギアス」でも、主人公は、あくまでも妹の為に計画を実行するので、自己中だが同時に仲間の為でもある訳だ。

この、間接的にでも「他者の為」と言う動機の有無は、かなり大事なヒット作の条件と言える。

不条理や下品なコメディに振り切っている「おそ松さん」では、あえて登場人物達が全員自己中に振り切れる回もあるが、だからこそオチで、しっかりと報いを受ける事になる。

自己犠牲的でも、自己中心的でも、どちらにしても「他者の事を考えて、他社の為になる行動をする」と言うマインドを主人公が持ち合わせていないと、その主人公は、成功を歓迎されない。

これは、かなり強力なヒットの条件の一つだろう。

終わりに

キャラクターに関する条件を少し掘り下げた。

次回も、あれば、まだキャラクターを掘っていこうと思う。

あと、条件がもう少し出揃ってきたら、まとめ記事を書きたい。

それでは、また。

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