ファンタジーの世界観をどう構築するか?
ファンタジーと聞いて、どんな世界を想像するだろうか?
中世ヨーロッパ風、ドラゴン等のモンスターが実在し、人間以外にエルフやドワーフが住んでいて、魔法が実際に使える。
そんな世界を想像しがちでは無いだろうか?
恐らく、最も多いスタンダードなファンタジー世界が、こんな世界観だろう。
しかし、ファンタジーの世界は、それだけではない。
そこで、今回は、魅力的なファンタジー世界の作り方を説明する。
ちなみに、紹介する方法はSFにも転用出来ます。
世界観構築の基本
世界観を構築する基本は、ご存じだろうか?
それぞれ作り手の数だけ方法があるので、一手法として紹介する。
世界観を作る方法は、境界型とキャラクター型がある。
境界型
境界型とは、世界を線で囲んで構築する方法だ。
壁で囲んだり、外堀を埋めて、必要な世界の範囲を最初に決めてしまう。
物語に必要な世界その物を、範囲を決めてから構築していく訳だ。
地域の地図や、箱庭を想像すると分かりやすいかもしれない。
キャラクター型
キャラクター型は、物語に登場する登場人物から世界観を構築する方法だ。
キャラクターの設定を先に決め、そのキャラクターが存在出来る世界を周囲に広げていく。
境界型と違って、世界観の範囲が決まっていないので、地図として見ると斑模様となるが、キャラクターと関係が深い場所だけディティールが具体的となる。
境界型とキャラクター型は、「全体から広く薄く」作るか「一部から狭く濃く」作るか、対称的な手法となる。
当然、この両方の手法を並行して使って、バランスを見ながら世界観を構築する事も出来る。
世界観を決定づける要素の決め方
世界観構築の為の要素は、基本的に2つの軸で決める事になる。
普遍的要素と新規的要素だ。
普遍的要素
普遍的要素とは、ベースとなる部分である。
世界観を決める上で、ベースとなる普遍的要素とは、土台となるモチーフ文化を指す。
つまり「中世ヨーロッパ風ファンタジー」の「中世ヨーロッパ」の部分が、普遍性だ。
これは、地図上の空間座標と歴史上の時間座標の掛け合わせで決まる。
- 空間座標:ヨーロッパ
- 時間座標:中世
と言う事だ。
座標を変えると、それだけで世界観がガラリと変わる。
この時間座標を現代にすると、伝奇ファンタジー等になったりするし、空間座標をアジアにすればオリエンタルファンタジーとなる。
これは、実在する座標以外に、二次創作による座標の確定も出来る。
例えば、ドラゴンクエスト風の世界なら、
- 空間座標:ドラゴンクエスト
- 時間座標:何作目
みたいな感じだ。
多くの日本の中世ヨーロッパ風ファンタジーは、実は「中世ヨーロッパ」ではなく「RPGゲーム」をベースとして、2次、3次、4次と創作を重ねて構築されている部分がある。
なので、作品説明の世界観説明や設定の文言と、中身が一致しているかは怪しい作品も多い。
新規的要素
新規的要素とは、世界観を彩る特殊な部分を指す。
普遍性と同居する事で、目に付く部分だ。
「中世ヨーロッパ風ファンタジー」なら、まさしく「ファンタジー」の部分が新規性となる。
この新規性がファンタジーだから、ファンタジー世界観となる。
では、ファンタジーとは具体的には何だろうか?
ファンタジーとは、
- 実在が確認出来ていない、あるいは既に否定された「超自然的」な伝説や言い伝えが、もし実在したらどうなるか?
を、普遍性に掛け合わせる事で構築できる。
ちなみに、SFは、
- 実在が確認出来てない、あるいは既に不可能とされた「超科学的」な未来や技術が、もし実在したらどうなるか?
を、普遍性に掛け合わせる事で構築できる。
普遍性×新規性
- ベースとなる空間座標とベースとなる時間座標
- 掛け合わせたい超自然要素
この掛け合わせによって、ファンタジー世界観の方向性が決まってくる。
流用による問題点
馴染み深い「中世ヨーロッパ風ファンタジー」の世界は、こういった前提を踏まず、完成品の流用によって構築された物が多い。
すると、新規性が新規性として機能しない事が発生する。
こうなると、魅力的な世界観とは感じて貰えなくなってしまう。
どこかで見た事がある、焼き直しとなるからだ。
魅力的な世界観にする為に
魅力をアップさせるためには、新規性が不可欠となる。
流用するにしても、そこに新規性を足す姿勢が不可欠だ。
その際、普遍性の方の座標を、今まで誰も見た事が無い座標に変える事で新規性にする事も出来る。
更に世界観のレベルをアップさせる為に
魅力的な世界観の為に、何らかの新規性を足したとする。
見た事が無い世界に出来たのなら、かなり良い感じだろう。
もし、壮大な物語にする場合、その世界観をもっと魅力的にする方法がある。
それは、キャラクターや劇中で追って行く出来事と、新規性の要素を密接に関係性を持たせる事だ。
つまり、その世界観を独特な物にする要素と、主人公が密接にかかわる様にしてしまうのだ。
このテクニックを使いこなせると、ストーリーが進むにつれて世界の秘密や、壮大な世界の過去が明かされていく様な、まさに魅力的な世界観を構築する事が出来る。
例えば、「Re:ゼロから始める異世界生活」では、作品の世界観を特別な物にする新規性要素として「魔女の設定」が存在する。
魔女の設定が世界観を魅力的で特殊な物としている上で、主人公が関わる事件が魔女の設定と密接に関わるからこそ、主人公の行動の結果、世界の秘密が徐々に明かされるわけだ。
これは、世界観が魅力的な物語なら、例外なく当てはまる。
この記事が、魅力的な世界観を構築する一助になれば嬉しい限りだ。