バトルを深く理解する
前回に引き続き、バトルモノの描き方を解説していく。
闘う事になる敵と、味方の「規格」
バトルを描く上で、この「一定規格」を考える事は、重要な要素となる。
これは、モチーフテーマによってもたらされる「表現の統一」にも繋がる。
例えば「ウルトラマン」の規格は、
- 宇宙人(ウルトラマン)VS怪獣(レッドキング、等)
- 宇宙人(ウルトラマン)VS宇宙人(バルタン星人、等)
- 科学特捜隊VS怪獣
- 科学特捜隊VS宇宙人
で、統一されている。
だからこそ、ウルトラマンのバリエーションと、怪獣のバリエーションと、敵宇宙人のバリエーションを考えれば、物語を無限に作る事が出来る。
「仮面ライダー」なら、
- 改造人間(ライダー)VS改造人間(怪人)
が、昭和ライダーの基本だった。
「鬼滅の刃」なら、
- 呼吸と日輪刀の使い手(鬼殺隊)VS鬼
で、基本的に統一されている。
「ジョジョの奇妙な冒険」なら、
- 波紋使いVS吸血鬼
- 波紋使いVS柱の男
- スタンド使いVSスタンド使い
と言うパターンで、大半は規格が統一されている。
この、規格の統一だが、基本的には、まず敵のモチーフを選択し、その対抗策を統一規格で考えれば良い。
その際、敵は魅力的で強大にして、味方の方は、敵に対抗する為に工夫をした存在として魅力的に構築する必要がある。
味方の能力だったり、ヒーローから考えたくなるだろうし、それもアリだ。
その場合は、敵と同系統の能力で考えると考えやすい。
だけど、中には、オリジナルの能力が登場する作品がある。
上記した「呼吸」や「波紋」等だ。
そう言うバトルの大半は「敵ありき」であって、「敵ありき」の戦いは、敵に対抗する為に手段が設計や構成される事で、よりバランスが取れる。
例えば「怪獣8号」では、日本防衛隊は、対怪獣を考えて特殊な装備や能力の設計がされている。
- 怪獣8号VS怪獣
- 日本防衛隊VS怪獣
つまり、敵が決まっていて、その対抗策として特別な力を設計する事で、オリジナルの力は、自然な形で構築出来る。
なので、
- 敵と同能力の場合は、どうやって同能力を得るか
- 敵と異能力の場合は、どうやって対抗策として練り上げられたか
この観点を持って設定を練る事が望ましい。
切欠・動機・葛藤・決意
主人公は、どうしてバトルをする羽目に陥ったのだろうか?
これが無いと、物語が始まらない。
依頼があったのか、襲われたのか、それとも戦う理由があったのか?
つまり、同時に動機も必要になってくる。
依頼があっても断る事が出来るし、襲われても戦う以外の選択肢だってあるかもしれない。
どうして、無理に戦う事を選んだのか?
ここで、思い出して貰いたいのが、バトルは基本的に、主人公が不利な戦いから始まる物だ。
主人公有利で始まる戦いは、バトルを魅力的に描く作品では、圧倒的少数派だ。
途中で強力な味方に助けられるとしても、主人公はピンチから始まる。
圧倒的な力を持って始まる場合は、主人公以外にピンチになる仲間を設定してでも、ピンチから始まらないとコメディか茶番となってしまう。
一度、ピンチになる。
最後に勝つと分かっていても、主人公が強いと分かっていても。
だから、勝利した時にカタルシスが発生する。
では、不利な状態で戦いに身を置いて、戦いたくない状況に置かれているのに、どうして戦う決意を固められたのだろうか?
こういった主人公が戦場に立つ為の基本設定は、丁寧に構築した方が良い。
これから物語と言う構造物を建てていくのに、整地せずに穴だらけの砂場に何となく建造する訳には、普通の感覚を持っていればいかないだろう。
どう、戦う力を成長させていくか?
敵は徐々に強くなっていく。
遭遇する敵は、常に味方よりも何かしらの優れた力を持っていて、毎回手ごわい。
主人公や味方は、どうやって対抗していけば良いか?
力の成長には、いくつか種類がある。
力の入り口
修行型(会得)
まずは、戦う力を身に着ける必要がある。
修行は、最も基本的かつ現実的な方法だ。
徹底的に体を鍛えたり、格闘技や武術の型を身体にしみこませたり。
「ドラゴンボール」では亀仙人の、「鬼滅の刃」では、鱗滝さんの修行があった。
「ワンパンマン」では、かなり冒頭にアッサリと修行を済ませ、最強状態から物語が始まる。
このパターンは、下記する奥義伝授型と特に相性が良い。
能力付与型(拾い物)
魔法や科学を使って、特別な力を与えられるパターンがある。
なろう系で多い「チート」と呼ばれる能力や、生まれ変わったら素質があったみたいな時も、このパターンだ。
「うしおととら」の獣の槍は、このタイプの呪いのアイテムだった。
「呪術廻戦」の宿儺の指も、このタイプ。
パートナー型
すっごい相棒や友達、仲間が出来るパターン。
主人公が凡人でも、力を借りて闘いに身を投じられる。
「フェイトステイナイト」のセイバー、「うしおととら」のとら、「ヒックとドラゴン」のトゥース等。
力の階段
覚醒型(身体能力ブースト)
ここぞと言う場面でしか使えないが、主人公の中で歯車が噛み合ったり、何かが一線を越える事で表出させられなかった力が爆発する事で、主人公が覚醒状態になる展開がある。
「ドラゴンボール」のスーパーサイヤ人が、世界で一番有名かもしれない。
「るろうに剣心」の人斬りモードも、これだ。
「コードギアス」のギアスの使い過ぎによる暴走も、これに当たるだろう。
「ガンダム」のニュータイプも、この範疇だ。
ちなみに覚醒は、基本的に全く新しい事が出来る様になるのではなく、前から出来ていた事を高いレベルで出来る様になると言う展開が基本だ。
これは、身を犠牲にして行う場合は「リミッター解除」となる。
異系統能力の敵と戦う際に使われるリミッター解除は、敵を倒す為に編み出された決死の攻撃手段だったりして、非常に熱い傾向があったりもする。
新兵器開発型(アイテムブースト)
多くのロボット作品では、機体乗り換えや、新兵器への換装と言った展開によって力の成長を表している。
大抵は、成長した主人公の能力や技術に対応できる新型、的な展開だ。
「ベルセルク」の狂戦士の鎧や「ガンダムUC」のNT-Dは、上記の覚醒型とのハイブリッドだ。
余談だが、ホビー系作品は、基本的に、この新兵器開発型の展開で新商品が投入されたりする。
新技開発型(モチーフから技連想)
能力のモチーフから連想するパターンが、これだ。
例えば、アメコミの「フラッシュ」では、主人公のパワーは「速さ」がモチーフだ。
最初は早く走れるだけだったのが、やがて壁や水面を走れるようになる。
それから、加速装置や時間停止でよく見られる、自分だけが動ける加速世界で自由に行動出来るようになり、更に加速する事でタイムスリップや並行宇宙への次元移動まで可能となる。
高速回転で竜巻を起こしたり、超高速の振動で手刀をブレードに変えたり、静電気を起こす要領で電撃を発生させて飛び道具にしたり。
たった一つ「速さ」と言うモチーフから、こじつけであっても良いから、一定の納得感がある技や能力を連想する事で、新しい力を開発や発見して成長していくわけだ。
「ジョジョの奇妙な冒険」のスタープラチナは、素早い動きの行きつく先で、ザ・ワールドと同じ時間停止まで能力を成長させた。
「鬼滅の刃」なら、対鬼の切り札となる「陽」から、陽の呼吸、月の呼吸、火の呼吸、水の呼吸と世代を重ねて分化したと言う設定がある。
「スパイダーマン」なら、蜘蛛と言うモチーフから連想出来る能力は、大抵使える様になる。
「アイアンマン」の様な、自作する事でアップデートしていく、上記の新兵器開発型とのハイブリット型もいる。
奥義伝授型(技伝授)
「鬼滅の刃」では、各呼吸の流派によって技が更に派生していて、基本的には新技の開発よりも、各流派の技や奥義を会得したり、技を徹底的に極める事で能力が成長していく。
「るろうに剣心」も、剣術の流派に様々な技があり、主人公の成長は奥義会得が基本だった。
「ドラゴンボール」では、主人公は様々な師匠から色々な技を教わる事で、より強くなる。
このタイプは、技を既に使っている人や、流派が存在していると、しっかりと機能する。
別の誰かが実用性を証明してくれているから、受け継いだ時にありがたいわけだ。
これは「カッコいいアニキ」が、主人公に技を伝授するパターンでもある。
「スクライド」のシェルブリット、「天元突破グレンラガン」のギガドリルブレイク、「フェイトステイナイト」のアンリミテッドブレイドワークス、探せば他にも色々出てくる筈だ。
作戦立案型(あり物で勝ち筋を探る)
戦うために使う特殊な能力や技術だけではなく、もとからある頭も使いようがある。
敵を知り、己を知り、勝ち筋を模索する事も、戦いでは重要になるわけだ。
(むしろ、現実的に考えると最も重要かもしれないし、クライマックスでは必ずと言って良いほど必要になる要素だ)
特に、手段が限られている状況では、手持ちの駒でやりくりする事を強いられる事が多い。
- 味方を助ける作戦:援助、援護、救出
- 味方と連携する作戦:一斉行動、中央突破、集合・分散、時間稼ぎ、合図
- 敵を追い詰める作戦:奇襲攻撃、遠距離攻撃、焼き討ち、水攻め、兵糧攻め、毒
- 敵を誘い込む作戦:挟み撃ち、分断、包囲、陽動、交渉
等々と作戦自体は、まるで無限にありそうに思えるかもしれない。
だが、実は、ある程度パターンは決まっていたりする。
大事なのは、どうすれば勝利条件を満たせるか、それさえ理解出来ていれば、手持ちのリソースからやりくり出来る打ち手は、割と限られる。
自分達が勝たずとも、敵に勝たせなければい良い場合もある。
終わりに
今回は、この辺で。
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“「バトル」をテーマにした、魅力的な作品の描き方【深堀編】” への1件の返信