テーマの仕組みを理解しよう
これまで、色々な「テーマ」をテーマとした記事を書いて来た。
- テーマって決めないといけないの?
- テーマって、どうやって決めれば良いの?
- 物語に必要な2つのテーマについて
- 物語創作におけるテーマの種類を解説。モチーフテーマとストーリーテーマは全然別物!
- 物語を構造から3次元で考えるテクニック
- テーマを深く理解する①
- テーマを深く理解する②
- 物語のテーマが機能しない5つのパターン
- 物語のテーマを選ぶ時に気を付けるべき事とは?
しかし、だ。
だがしかし、である。
「テーマ」と言う概念に、規則性やルールがあるにも関わらず、多くの人は、未だに曖昧な物としてテーマを、悪い意味で適当に扱っている。
多くの人が分かったつもりでも、まだ「何となく」で扱い続けている。
何をするにしても「テーマ」は、自然発生する。
何からでもテーマは見つかるし、テーマは感じ取れる。
テーマとは「一貫性」だ。
だから、作品の中にある「共通点」を並べてみれば、そこにテーマが見えてきて、当たり前だ。
それで良い場合も、もちろんある。
だが、それじゃあダメだろと言うパターンも、沢山ある。
今回は、そんな「テーマ」を、懲りずに解説していく。
1:テーマは、基本的に絞る物
テーマの決定は中心座標と範囲の決定だ。
「一貫性」や「共通点」と上で表現したが、これがテーマの基本だ。
作品の要素に一貫性を持たせる為に、テーマは必須となる。
一貫性と言う事は、テーマは絞った方が良い。
複数のテーマが同居すれば、それだけ一貫性が減っていく。
2:テーマは、優先度をつける物
最優先要素を決めないと、テーマがブレる人がいる。
どのテーマを実現するために、他の要素が使われるのかを、前提として考える必要がある。
これは、もしかしたら、マトリョーシカで考えると分かりやすいかもしれない。
一番外側が、最優先要素だ。
内部に何が入っていても、最優先要素より大きくなる事は無いし、はみ出しもしない。
内部に入る物は、出来るだけキッチリ入っている方が気持ちが良い。
大きくはみ出す場合は、テーマの優先度を守れていないかもしれない。
大テーマは、マトリョーシカの最も外側の様に、作品全てを包み、どの場面にも存在する。
大テーマは、ハンバーガーやサンドイッチの「パン」の様に、あらゆる要素を最初と最後で挟み込み、一貫した概念に落とし込む力がある。
映画「君の名は」が、「入れ替わり喜劇」部分が主題では無く、あくまでも「タイムリープ部分」が主題なのは、監督が、しっかり明確にメインテーマと言う大テーマを定めて作品を作り、サブ要素を大テーマで挟み込んでいるからだ。
テーマを同列で並行してしまう人は、似たようなテーマで作り始めても、気が付くと「タイムリープ」から離れて「入れ替わり喜劇」として話が脱線していく事になったりする、そんな事もありえる。
「ヒーロー」をテーマにしているのなら、同列で別のテーマを立てたら、どちらが主題なのか分からなくなる。
「機関車の様に力強い男」なのか、「男の様な機関車」なのかで、作品のテーマは驚くほど変わる事がある。
どちらをメインにするかは、本当に大事なのだ。
3:テーマは、絞り過ぎてもいけない物
バラバラよりは、絞ってまとまっている方がマシだ。
それは、間違いない。
だが、あまりにも絞り過ぎて、具体的過ぎても人を選ぶ作品になる。
適度にまとまり、適度に抽象的なのがベストと言う事だ。
「アイドル」と言うテーマならアイドル好きは興味を持つが、「AKB48」と言うテーマになるとAKB48以外のアイドルに興味がある層の興味を引きにくい。
4:テーマは、抽象度や具体度のレベルを理解して掛け合わせる物
抽象度と具体度のレベルが違う事を認識しないで掛け合わせると、テーマは失敗する。
これは、テーマを決めようと考えないでも発生するので、テーマに対して無計画で創作をしていると陥りやすい失敗でもある。
また、テーマを決めて考え始めても、この原則を理解しないで選んでいると、失敗する事がある。
大前提として、テーマが見る人の「興味を引く範囲」と「刺さる深さ」は、抽象度と具体度の関係で反比例する。
例えば、
- 具体的な物が「1興味(1万人に1人が興味ある)」だとして、
- 抽象的な物が「10興味(1万人に10人が興味ある)」だと、
- 具体的な物同士を掛け合わせると「1」のままだが、
- 抽象的な物同士を掛け合わせると「100興味」になる。
同時に、
- 具体的な物が「10刺さる(1万人に10人に突き刺さる)」だとして、
- 抽象的な物が「1刺さる(1万人に1人に突き刺さる)」だと、
- 具体的な物同士を掛け合わせると「100刺さる」が、
- 抽象的な物同士を掛け合わせると「1刺さる」になる。
抽象的で興味を引く範囲が広いほど刺さりにくく、具体的で興味を引く範囲が狭いほど、刺さりやすい。
これが分かっていないと、具体的過ぎる事で興味を持つ範囲が狭かったり、抽象的過ぎる事で誰にも刺さらない等の事になる。
ここで、誰もが思う事が「100人が興味を持って、100人に刺さるテーマは無いのか?」と言う事だ。
要素は、必ず反比例する。
だが、テーマの要素の内容によって数字は異なる。
つまり、テーマの要素の掛け合わせと、具体度と抽象度のレベル調整によって可能と言う事だ。
テーマによっては、10興味を引けて、1000刺さる物があるだろう。
反対に、1000興味を引けるが、1しか刺さらない様な物もある。
これは、入れる要素の時代・文化的イメージによる所が大きい。
例えば「日本の学校×恋愛」と「アメリカの学校×恋愛」では、同じ恋愛と言うストーリーテーマでも、掛け合わせるモチーフテーマの差で、日本では前者がテーマとして強いが、アメリカでは後者の方がテーマとして強くなる。
5:テーマは、構成要素との相性がある物
テーマを表現する要素には、相性がある。
相性が悪い要素でテーマを表現するのは、大抵は、物凄く骨が折れる。
例えば、ストーリーテーマは、主人公の行動で決まる。
主人公の行動がマッチしないシーンを入れるのは、テーマと親和性が低い事になる。
テーマとシーン自体は親和性が高くても、複数のシーンになると、各シーンに適したテーマがあって、シーン同士が喧嘩する事もある。
決まったテーマを描く為に作った作品の設定と、後で追加しようとしている設定で、両立が難しかったり、時には不可能な場合もある。
例えば、あなたが、仕事でスポーツカーを作っていたとしよう。
あ、いや。
本物のスポーツカーだ。
仕事でだ。
そうすると、幾ら性能が良くても、車に飛行機用のジェットエンジンを積むのは、何か違うと、専門家で無くとも分かると思う。
面白そうでは、ある。
だが、仕事で求められている物かと言うと、そう言う前提が無いなら、かなり危ういだろう。
他にも、想像して欲しい。
既にエンジンが積んであるが、もう一個積みたいエンジンがあって、どちらか決められないから両方積むのは良い事か、みたいな事も起きる。
大型のジェット機なら複数のエンジンを積む形式も出来るかもしれないが、自動車に積むべきかは、積んだ本人以外は理解出来ない物が出来る可能性の方が高い。
この問題は、物語の場合、途端に分かりにくくなって、創作者を混乱させたり、困らせる事になる。
要素を置いておいたり、捨てる事を怖がってはいけない。
こだわっている要素こそ、実は完成を妨げている事も、良くある。
マクガフィンを見極めよう。
あなたが両方のエンジンを開発して思い入れがあったとしても、乗せるべきはより良いエンジンだけだ。
余談:ジャンル掛け算の勘違い
ストーリーテーマとモチーフテーマを同列で考える人は、以前よりは減った気がする。
だが、様々なジャンルがある事で、別の問題がある事に気付いた。
別ジャンルのテーマは、混ぜて考えてはいけない。
これは、分かりにくいので、もう少し詳しく書く。
別の切り口で分けたジャンル同士では、混ぜて考えたらダメなジャンルが存在する。
例えば、長さと重さを比較出来ないし、メートルとインチも単位を揃えないと混ぜて考えられない、その様な物だ。
「感情の起伏」と言う切り口をテーマとしたジャンル分けと、「主人公の行動」をテーマとしたストーリーテーマによるジャンル分けは、重なる部分はあっても切り口が違うので混ぜてはいけない。
これは、長さと重さの関係だ。
一方で、「悲劇向けの感情起伏をテーマとしたジャンル」に「喜劇的行動テーマのジャンル」を掛け合わせても喧嘩をする。
同じ物語をジャンルと言う線で分けた物だとしても、切り口が違えば別の物だ。
物語を「人」と考えて、「問題解決行動(ストーリーテーマ)」と「見た目(モチーフテーマ)」は、表裏一体だが、別物なのは分かるだろう。
そう言う見た目の人が、そう言う問題を解決するための行動を取る事は、両立しているが、切り口が全然違うテーマだ。
その人の、身長と体重は、別ベクトルだが両立する概念だ。
しかし「どういう気持ちで人生を過ごすか(感情の起伏)」も、そこに組み込まれて成り立つが、これはパラダイムのパターンに依存する物で、ストーリーテーマの別の切り口だ。
つまり、「ストーリーテーマ」と「感情の起伏」は、表裏一体で同一の物を別の切り口で分けた物だ。
こっちは、メートルとインチの関係だ。
グラムとポンドでも良い。
これらは、扱い方を注意する必要がある。
メートルとインチを混ぜて使うのは、かなり危険だ。
こういう失敗を減らすには、カテゴリー分けが、どういう基準を切り口に行われているかで見る必要がある。
終わりに
良い物語はテーマが絞られている。
だが、内包する要素が理解していないと、複雑に見えるかもしれない。
参考までに、テーマと内包要素の例を示してこの記事を〆たい。
映像研には手を出すな!
メインテーマ(ハンバーガーで言えばパン)
メインストーリーテーマ(主人公の行動)(何を表現するか)(抽象的)
要素1:何の為に(例:組織/組織の問題に向き合い)
×
要素2:何をする(例:特別な力/特別力を得る)
メインモチーフテーマ(世界の見た目)(何で表現するか)(抽象的)
要素1:普遍性(例:部活)
×
要素2:新規性(要素1を変にする要素。例:アニメ)
サブテーマ(ハンバーガーで言えば具)
サブストーリーテーマ(問題を解決する行動の為に何が必要か)(何を表現するか)(具体的)
要素1:メインストーリーテーマの為に(例:組織の問題に向き合い、特別力を得る)
×
要素2:サブストーリーテーマをする(例:課題解決する)
サブモチーフテーマ(世界の見た目)(何で表現するか)(具体的)
要素1:メインモチーフテーマに関係する(例:部活×アニメ)
×
要素2:サブモチーフテーマ(例:授業、部活、行事、等々)

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