パラダイムで見る昔話「赤ずきん」「オオカミと七ひきの子ヤギ」

昔話を分析・解説

今回のテーマは「赤ずきん」「オオカミと七ひきの子ヤギ」。

赤ずきん

引用:青空文庫

https://www.aozora.gr.jp/#main

著者:グリム兄弟

翻訳:矢崎源九郎

プロローグ

 むかしむかし、あるところにちっちゃな、かわいい女の子がおりました。

日常の時

 その子は、ちょっと見ただけで、どんな人でもかわいくなってしまうような子でしたが、だれよりもいちばんかわいがっていたのは、この子のおばあさんでした。

 おばあさんは、この子の顔を見ると、なんでもやりたくなってしまって、いったいなにをやったらいいのか、わからなくなってしまうほどでした。

切欠の時

 あるとき、おばあさんはこの子に、赤いビロードでかわいいずきんをこしらえてやりました。

 すると、それがまたこの子にとってもよくにあいましたので、それからは、もうほかのものはちっともかぶらなくなってしまいました。

 それで、この子は、みんなに「赤ずきんちゃん」「赤ずきんちゃん」とよばれるようになりました。

切欠の時、悩みの時

 ある日、おかあさんが赤ずきんちゃんをよんで、いいました。
「赤ずきんちゃん、ちょっとおいで。ここにおかしがひとつと、ブドウがひとびんあるでしょう。これをね、おばあさんのところへもっていってちょうだい。おばあさんは病気で、よわっていらっしゃるけれど、こういうものをあがると、きっと元気になるのよ。じゃ、くならないうちに、いってらっしゃい。それからね、そとへでたら、おぎょうぎよく歩いていくのよ。横道へかけだしていったりするんじゃありませんよ。そんなことをすれば、ころんで、びんをこわしてしまって、おばあさんにあげるものが、なんにもなくなってしまうからね。それから、おばあさんのおへやにはいったら、いちばんさきに、おはようございますって、あいさつするのをわすれちゃだめよ。そうして、はいるといっしょに、そこらじゅうをきょろきょろ見まわしたりするんじゃありませんよ。」

決意の時

「だいじょうぶよ。」
と、赤ずきんちゃんはおかあさんにいって、約束のしるしに指きりをしました。

試練の時

 ところで、おばあさんのうちは、歩いて、村から半時間もかかる森のなかにありました。

切欠の時

 赤ずきんちゃんが森のなかへはいりますと、オオカミがひょっこりでてきました。

 でも、赤ずきんちゃんは、オオカミがわるいけだものだということをちっとも知りませんでした。

 ですから、べつにこわいとも思いませんでした。
「こんにちは、赤ずきんちゃん。」
と、オオカミがいいました。
「こんにちは、オオカミさん。」
「こんなにはやくから、どこへいくの。」
「おばあさんのとこよ。」
「まえかけの下にもっているのは、なあに。」
「おかしとブドウ酒。きのう、おうちでいたのよ。おばあさんが病気で、よわっているでしょう。これをあがると、からだに力がつくからよ。」
「おばあさんのおうちはどこなの、赤ずきんちゃん。」
「もっともっと森のおくで、まだ十五分ぐらいかかるわ。大きなカシの木が三本立っているその下に、おばあさんのおうちがあるのよ。まわりには、クルミのがあるわ。あなた、知っているでしょう。」
と、赤ずきんちゃんはいいました。

悩みの時

 オオカミはのなかで考えました。
(わかいやわらかそうな小むすめめ、こいつはあぶらがのってて、うまそうだ。ばあさんよりゃうまかろう。よし、なんとかくふうをして、両方ともごちそうになってやれ。)
 そこで、オオカミは、しばらくのあいだ赤ずきんちゃんとならんで歩いていきましたが、やがて、

決意の時

「赤ずきんちゃん。まあ、そこらじゅうにさいているきれいな花を見てごらんよ。きみは、なんだって、まわりをながめてみないんだい。ほら、小鳥があんなにかわいい声で歌をうたっているんだぜ。だけど、それもきみの耳にはまるではいらないみたいじゃないか。きみは、学校へでもいくように、まっすぐまえばかりむいて歩いているね。森のなかは、こんなにたのしいってのになあ。」
と、いいました。

切欠の時、悩みの時

 いわれて、赤ずきんちゃんは目をあげてみました。

 すると、お日さまの光が木と木のあいだからもれてきて、あっちでもこっちでもダンスをしています。

決意の時

 それから、あたりいちめんきれいなお花がいっぱいです。

 それを見て、赤ずきんちゃんは、
(おばあさんに、つんだばかりの花で花たばをこしらえて、もってってあげたら、きっとおよろこびになるわ。まだこんなにはやいんだから、だいじょうぶ、時間までにはいかれるわ。)
と、思いました。
 そして、横道にそれて、いろんな花をさがしながら、森のおくへはいっていきました。

 そうして、花をひとつおるたびに、もっとさきへいったら、もっときれいな花があるような気がするのでした。
 こうして、花から花をさがして歩いているうちに、だんだん森のおくへおくへとはいりこみました。

危機の時

 ところが、オオカミのほうは、そのあいだに、まっすぐおばあさんの家へかけていって、トントンと戸をたたきました。
「どなたですかね。」
「赤ずきんよ。おかしとブドウをもってきたの。あけてちょうだい。」
をおしておくれ。」
と、おばあさんが大きな声でいいました。
「おばあちゃんはね、からだがよわっていて、おきられないんだよ。」
 オオカミが取っ手をおしますと、戸がいきおいよくあきました。

 オオカミはなんにもいわずに、いきなりおばあさんの寝床のところへいって、おばあさんをひと口にのみこんでしまいました。
 それから、おばあさんの着物をきて、おばあさんのずきんをかぶって、おばあさんの寝床に横になって、寝床のまわりにあるカーテンをひいておきました。

 いっぽう、赤ずきんちゃんは、あいかわらず花をさがして、かけまわっていました。

 そして、あつめるだけあつめて、これいじょうもう一本ももてなくなったとき、やっとおばあさんのことを思いだしました。

 そこで、いそいでおばあさんのところへいくことにしました。
 赤ずきんちゃんが家のまえまできてみますと、おばあさんの家の戸があいています。

 それで、赤ずきんちゃんはへんだと思いながら、おへやにはいりました。

 すると、なんとなく、なかのようすがいつもとちがっているような気がします。

 赤ずきんちゃんは、
(あら、どうしたんでしょう。きょうは、なんだかきみがわるいわ。いつもなら、おばあさんのおうちへくれば、とってもたのしいのに。)
と、思いました。
 それから、大きな声で、
「おはようございます。」
と、よんでみましたが、なんのへんじもありません。
 そこで、寝床のところへいって、カーテンをあけてみました。

 すると、そこにはおばあさんが横になっていましたが、ずきんをすっぽりと顔までかぶっていて、いつもとちがった、へんなかっこうをしています。
「ああら、おばあさん、おばあさんのお耳は大きいのねえ。」
「おまえのいうことが、よくきこえるようにさ。」
「ああら、おばあさん、おばあさんのお目めは大きいのねえ。」
「おまえがよく見えるようにさ。」
「ああら、おばあさん、おばあさんのお手ては大きいのねえ。」
「おまえがよくつかめるようにさ。」
「でも、おばあさん、おばあさんのお口はこわいほど大きいのねえ。」
「おまえがよく食べられるようにさ。」

絶望の時

 オオカミはこういいおわるかおわらないうちに、いきなり寝床からとびだして、かわいそうな赤ずきんちゃんを、ぱっくりとひとのみにしてしまいました。
 オオカミは、おなかがいっぱいになりますと、また寝床にもぐりこんで、ねむってしまいました。

 そうして、ものすごいいびきをかきだしました。

契機の時

 ちょうどそのとき、狩人が家のまえをとおりかかりました。

 そして、
(ばあさんが、おっそろしいいびきをかいてるが、どうしたのかな。見てやらにゃなるまい。)
と、思いました。
 そこで、狩人は、へやのなかへはいりました。

 そして、寝床のまえまでいってみますと、そこにはオオカミがねているではありませんか。
「この野郎、とうとう見つけたぞ。よくも長いあいださわがせやがったな。」
と、狩人はいいました。
 そして、すぐさま鉄砲をむけようとしましたが、そのときふと狩人は、オオカミがばあさんをのんでいるかもしれない、そして、もしかしたら、ばあさんのはまだたすかるかもしれないぞ、と、思いつきました。

解決の時

 それで鉄砲をうつのはやめにして、そのかわり、はさみをだして、ねむっているオオカミのおなかを、ジョキジョキ切りはじめました。
 ふたはさみばかり切りますと、赤いかわいいずきんが、ちらと見えてきました。

 もうふたはさみばかり切りますと、女の子がピョンととびだしてきました。

 そして、
「ああ、びっくりしたわ。オオカミのおなかのなかって、まっくらねえ。」
と、大きな声でいいました。
 それから、おばあさんもまだ生きていて、オオカミのおなかのなかからでてきました。

 でも、おばあさんはよわりきって、やっとをしていました。
 赤ずきんちゃんは、すばやく大きな石をたくさんもってきて、それをオオカミのおなかのなかにつめこみました。
 やがて、オオカミは目をさまして、とびだそうとしましたが、石があんまりおもたいので、たちまちそのにへたばって、んでしまいました。
 これを見て、三人は大よろこびです。

エピローグ

 狩人は、オオカミの毛皮をはいで、それをうちへもってかえりました。
 おばあさんは、赤ずきんちゃんのもってきてくれたおかしを食べ、ブドウをのみました。

 それで、またすっかり元気になりました。
 でも、赤ずきんちゃんは、
(これからもう二度と、ひとりっきりで、森のなかの横道にはいっていくようなことはよそうっと。おかあさんがいけないとおっしゃったんですもの。)
と、考えました。

解説

グリム童話と言う古い物語として飲み込むと気にならないが、かなりツッコミどころが多い。

なお、グリム童話だが、グリム兄弟は昔話を収集したのであってゼロから創作した訳では無いので、グリム兄弟はそう言う意味では悪く無い。

ちなみに、グリム童話を作ったメインは次男のヴィルヘルムだ。

話を戻そう。

物語のテーマとしては、幼い子供にお母さんとの約束の大事さを解く内容、なのだけど、明らかに横道に入った事では無く、オオカミに対しての無警戒がトラブルの原因となっているし、更に言えばオオカミがいる森に幼い少女をお使いに出す母親の判断から誤っている可能性すらある。

オオカミの行動自体も、赤ずきんを一度、花摘みに泳がせる理由が無くて、自然な行動をするなら赤ずきんをその場で食べてから、赤ずきんに変装した上でおばあさんも食べるのが正解だろう。

物語を解決に導く狩人の登場も、自然な形にするなら冒頭で、事前に出しておきたい所だ。

赤ずきんから学べるポイントとしては、オオカミと言う悪役視点でのホラー描写だろう。

主人公を狙う悪役の計画に、主人公が絡めとられていく様は、幼い子供ならドキドキできるものだ。

特に、赤ずきんがオオカミの正体に近づいていくシーンの、階段状の盛り上がりは非常に良く出来た物だ。

続けて今回は、もう一本。

「オオカミと七ひきの子ヤギ」を合わせて紹介する。

オオカミと七ひきの子ヤギ

引用:青空文庫

https://www.aozora.gr.jp/#main

著者:グリム兄弟

翻訳:矢崎源九郎

プロローグ

 むかしむかし、あるところに、おかあさんのヤギがいました。

 このおかあさんヤギには、かわいい子ヤギが七ひきありました。

日常の時

 おかあさんヤギは、ちょうど人間のおかあさんがその子どもをかわいがるのとおなじように、七ひきの子ヤギたちをかわいがっていました。

切欠の時、悩みの時

 ある日、おかあさんヤギは、森へいって、食べものをとってこようと思いました。

 それで、七ひきの子ヤギたちをよびあつめて、こういいきかせました。
「いいかい、みんな、おかあさんは森にいってくるからね、そのあいだ、オオカミによく気をつけているんだよ。あいつがうちのなかへはいってきたら、おまえたちはまるごと食べられてしまうからね。あのわるものは、ちょいちょいすがたをかえてくるけれども、声はしゃがれているし、足はまっ黒だから、おまえたちだってすぐにわかるよ。」
 すると、子ヤギたちは、
「おかあさん、だいじょうぶだよ。みんなで気をつけるから、心配しないでいっておいでよ。」
と、いいました。

決意の時

 そこで、おかあさんヤギは、メエ、メエないて、安心してでかけました。

試練の時

 それからまもなく、おもての戸をトントンとたたくものがありました。

 そして、
「ぼうやたち、あけておくれ。おかあさんだよ。みんなに、いいものをもってきてやったよ。」
という声がしました。
 けれども、その声がしゃがれていましたので、子ヤギたちには、すぐオオカミだということがわかりました。
「あけてなんかやらないよ。」
と、子ヤギたちはさけびました。
「おまえはおかあさんじゃないもの。おかあさんはきれいな、いい声をしているけど、おまえの声はしゃがれている。おまえはオオカミだい。」
 すると、オオカミは、雑貨屋さんのへいって、大きなチョークを一本買ってきました。

 そして、それを食べて、声をよくしました。

 それから、またもどってきて、戸をトントンとたたいて、大きな声で、
「ぼうやたち、あけておくれ。おかあさんだよ。みんなに、いいものをもってきてやったよ。」
と、よびかけました。
 けれども、オオカミはまっ黒な前足をのところにかけていました。

 それを子ヤギたちが見つけて、
「あけてなんかやらないよ。おかあさんはおまえみたいな、まっ黒な足をしちゃいないもの。おまえはオオカミだい。」
と、さけびました。
 そこで、オオカミは、パンさんのにかけていって、
「つまずいて、足をいたくしたから、ねりをこすりつけてくれ。」
と、いいました。
 パン屋さんがオオカミの前足にねり粉をこすりつけてやりますと、オオカミは、こんどは、粉屋さんのところへ走っていって、
「おれの前足に白い粉をふりかけてくれ。」
と、いいました。
 粉屋さんは、オオカミのやつめ、また、だれかをだますつもりだな、と、考えましたので、それをことわりました。
 すると、オオカミは、
「さっさとやらねえと、てめえをくっちまうぞ。」
と、おどかしました。
 それで、粉屋さんはこわくなって、前足を白くぬってやりました。

 じっさい、人間なんてのはこんなものですね。

危機の時

 それから、このわるものは、またまた、ヤギのうちへいって、トントンと戸をたたきました。そして、
「ぼうやたち、あけておくれ。おかあさんがかえってきたんだよ。みんなに、森からいいものをもってきてやったよ。」
と、いいました。
 すると、子ヤギたちはいっせいにさけびました。
「さきに足を見せてごらん、そうすりゃ、ぼくたちのおかあさんかどうか、わかるから。」
 そこで、オオカミはのところに前足をかけました。

 子ヤギたちは、その足が白いのを見て、いまいったのはみんなほんとうのことにちがいない、と思いこみました。

 そして、戸をあけました。

 ところが、たいへん、はいってきたのは、オオカミです。

 みんなはびっくりして、あわててかくれようとしました。
 一ぴきはの下に、二ひきめは寝床のなかに、三ばんめは暖炉のなかに、四ばんめは台所に、五ばんめは戸だなのなかに、六ばんめはせんたくだらいのなかに、七ばんめは柱時計のなかにとびこみました。

絶望の時

 ところが、オオカミは、あっさりみんなを見つけだして、大きな口をぱっくりあけると、かたっぱしからのみこんでしまいました。

契機の時

 ただ、時計ののなかにかくれていたいちばん小さい子ヤギだけは、見つからずにすみました。
 オオカミは食べたいだけ食べてしまうと、おもてへとびだしました。

 そして、とある木の下の、青あおとした草原にねころがると、そのまま、ぐうぐうねこんでしまいました。

絶望の時

 それからまもなくして、おかあさんヤギが森からかえってきました。

 ところが、うちについたとき、おかあさんヤギは、いったいなにを見たでしょうか。

 入り口の戸はあけっぱなしになっているではありませんか。

 なかへはいってみれば、も、いすも、こしかけも、ひっくりかえっています。

 せんたくだらいはめちゃめちゃにこわれていますし、かけぶとんもまくらも、寝台からずりおちています。
 おかあさんヤギは、子どもたちをさがしてみましたが、どこにもすがたが見えません。

 ひとりひとりの名を、つぎつぎによんでみましたが、それでもへんじをするものがありません。

 おしまいに、いちばん下の子の名をよんだとき、かすかな声がしました。
「かあちゃん、ぼく、時計んなかにかくれているようっ。」
 おかあさんヤギは、いそいでこの子をだしてやりました。

 そしてこの子から、オオカミがやってきて、ほかの子どもたちをみんな食べてしまった話をききました。

 このとき、おかあさんヤギが、かわいそうな子ヤギたちのことを思って、きかなしんだようすは、みなさんにも思いうかべることができましょう。
 とうとう、おかあさんヤギは、いちばん下の子ヤギをつれて、泣くなく、そとへでていきました。

契機の時

 草原まできますと、あのオオカミが木のそばにねころんで、それこそ木のもふるわすくらいの、大いびきをかいてねていました。
 おかあさんヤギが、オオカミのようすを四方八方からながめてみますと、ふくれあがったおなかのなかで、なにかがぴくぴくうごいています。
(おやまあ。あいつは、うちのかわいそうな子どもたちを、ごはんにのみこんだけど、あの子たちは、まだおなかのなかで生きているのかしら。)
と、おかあさんヤギは考えました。

解決の時

 子ヤギはおかあさんにいいつかって、うちへかけていき、はさみと、と、よりとをもってきました。
 そこで、おかあさんヤギは、このばけものの、どてっを切りはじめました。

 ところが、おかあさんが、ひとはさみ切ったかと思うと、もうそこには、子ヤギが一ぴき頭をつきだしました。

 それから、おかあさんがずんずん切っていきますと、子ヤギたちが、あとからあとからとびだして、六ぴきとものこらずでてきました。
 まだみんな生きていたのです。

 しかも、けがひとつしていませんでした。

 なぜって、このばけものときたら、あんまりがつがつしていたものですから、子ヤギたちを、まるのまんま、のみこんでしまっていたのです。
 みんなは、どんなによろこんだかしれません。

 子ヤギたちはおかあさんのにだきついて、まるで、およめさんをもらうときの仕立屋さんみたいに、うれしがって、ピョンピョンはねまわりました。

 でも、おかあさんは、
「さあ、さあ、みんなで石っころをさがしておいで。このばちあたりのけだものが、ねているあいだに、こいつのおなかんなかへつめてやるんだから。」
と、いいました。
 こういわれて、七ひきの子ヤギたちは、おおいそぎで、石っころをたくさんひきずってきました。

 そして、みんなでそれを、オオカミのおなかのなかへ、つめられるだけつめこみました。

 それがすむと、こんどはそのおなかを、おかあさんヤギが、すばやくもとのようにぬいあわせました。

 それがあんまりはやかったものですから、オオカミはちっとも気がつかず、身動きひとつしませんでした。
 オオカミは、ねたいだけねてしまってから、やっと立ちあがりました。

 けれども、ぶくろのなかには石がいっぱいつまっていますので、のどがかわいてたまりません。

 それで、へいって、水をのもうとしました。

 ところが、歩きだして、からだをうごかしてみますと、おなかのなかで石っころがぶっつかりあって、ゴロゴロと音をたてました。

 で、オオカミはどなりました。

ゴロゴロ ガラガラ なにがなる
おれのはらんなかで なにがなる
子ヤギどもかと思ったが
こんなあんばいじゃ石ころだ

 それから、オオカミはのところまできました。

 そして、水の上にからだをかがめて、水をのもうとしましたが、そのとたんに、おなかのなかの石のおもみのために、水のなかへのめりこんでしまいました。
 こうして、オオカミは、あわれにも、おぼれてんでしまったのです。

 七ひきの子ヤギたちはこれを見て、そこへかけてきました。

 そして、
「オオカミが死んだ。オオカミが死んだ。」
と、大声でさけびながら、おかあさんヤギといっしょに、大よろこびで、のまわりをおどりまわりました。

解説

同じグリム童話の「 オオカミと七ひきの子ヤギ 」だが、先に触れた「赤ずきん」と共通点が多い事が分かると思う。

どちらもオオカミに恨みがあるとしか思えない物語で、それだけ昔はオオカミと言う存在が身近な脅威だった事が伺える。

赤ずきんと大きな違いは、こちらは主人公サイドがオオカミに抵抗していて、スリラーの度合いが強い事だろう。

オオカミが計画を立てて一方的に襲っていくホラーと、オオカミと子ヤギの攻防が描かれるスリラーの差は、読み心地を大きく変える。

ホラーの場合は、敵が一方的に悪意を持って騙し討ちや不意打ちを食らわせていく姿を楽しむ為、罠にかかって狩られていく被害者の末路を見る刺激的な展開になる。

一方で、スリラーになると悪者の存在を主人公が知っていて、敵と主人公による頭脳戦の攻防がハラハラを生み出す。

頭脳戦の攻防があるからこそ、幸運とは言え子ヤギが一匹だけ生き残り、おかあさんヤギに真相を伝える事で反撃の機会を得る展開は、昔話ながら熱い展開だ。

オオカミが報いを受ける流れも、子ヤギの代わりに詰めた石のせいで喉が渇き、石の重みで誤って泉に沈み、そのまま溺死すると言う、因果関係のピタゴラ装置がしっかり出来上がっていて面白くも小気味良い。

余談:チョークで声が良くなる?

前足を白くする為に粉を塗って使うのは分かる。

だが、チョークで声が良くなるのは、どういう事だろう?

チョークとは、黒板に書く時使う、あのチョークだ。

そもそも食べて大丈夫なのか?

と、思った人もいると思う。

と言うか、この物語を読んだ人の大半が思う疑問だ。

一部では「チョーク・スリーパー等の、別のチョークと間違えた誤訳」と言う説があるらしいが、それは間違いだ。

これは当時の、医療技術のレベルが関わってくる。

詳しくは専門書やWikipediaを参照して貰いたいが、

ホメオパシーとは、「その病気や症状を起こしうる薬(や物)を使って、その病気や症状を治すことができる」という原理のもと、1796年にザムエル・ハーネマンが提唱した治療法。

Wikipedia引用

にて、チョークの原料である石灰岩(炭酸カルシウム)や石膏(硫酸カルシウム)が喉の薬になると言う記述があり、それが元になっている。

つまり、古い民間療法で、チョークを薬として飲む事でガラガラ声が治療されると言う事だ。

なお、実際にチョークに喉の治療効果や声質改善効果は無いので、真似はしない様に。

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