「悪人を騙す/悪人が騙される物語」とは?
ここでは「悪人を騙す/悪人が騙される物語」をテーマにした物語を解説します。
主人公が悪人を罠にハメて騙す、その裏には、敵に罠にハメられて騙される悪党主人公がいる。
そんな、表裏一体な面がある、面白い形式の物語です。
この形式の物語は、構造カテゴリーで別の言い方をするならば「使命を果たす為、禁忌を破る物語」が、悪人を騙す物語で、「人生の岐路に立って、謎を解く物語」が悪人が騙される物語となります。
解説
悪人を騙す? 悪人が騙される?
まず「悪人を騙す/悪人が騙される物語」とは、どの様な物語を指すのか?
この記事では、どちらも「裁かれる事の無い悪者に対して、詐欺を仕掛けて懲らしめる物語」として解説していきます。
主役は詐欺師
この形式の物語の主役は、大抵の場合は「詐欺師」です。
詐欺師でない場合でも、詐欺を行う動機を持っていて、それを実行するだけの準備も、技能もあります。
主役は有能ですが、一人では大きな計画を実行する事はできません。
特別な能力を持っていたり、凄い特技を持った味方がいて、これが主役にとって最大の武器となります。
もう一つ、語るべき事は、この形式の物語では、主人公を主役とは別に立てて被害者として描くパターンがあります。
つまり、詐欺師と被害者、どちらかの視点で描かれると言う事です。
被害者は、大抵の場合は悪党で、詐欺に遭っても見ている人からすると罰が下ったと思える様なキャラクターになります。
切欠となる事件の始まり
物語が始まると、事件が起きます。
この時、詐欺師目線の物語だと事件を起こす事にはる切欠の出来事となります。
つまり、後に被害者となるターゲットの悪党と遭遇し、復讐するだけの動機を得る事件に遭遇します。
映画「スティング」では、マフィアによって仲間が殺される事で、復讐の動機となります。
詐欺を仕掛けた結果、報復で殺されているので自業自得な所もありますが、マフィアから金を奪った報復に仲間を殺された事で、主人公はマフィアを破滅させようと考えるわけです。
もう一方で、被害者目線の物語の場合は、詐欺師との遭遇が事件の始まりになります。
昔話「子供に化けた狐」では、子供に化けた狐と遭遇する事で、騙されまいとする主人公の狐とのやり取りから物語が始まります。
つまり、詐欺の加害者と被害者で表裏一体の物語ですが、物語としての始まりの時間は、表と裏でズレがあると言う事です。
どちらも、騙し合いの対戦相手との遭遇から描かれますが、被害者の場合は遭遇していた事に気付くのがどうしても加害者よりも遅くなります。
詐欺師は、騙す相手を先に認識する為、どうしても始まりが早いわけです。
詐欺師の試練:どうやって騙すか
主人公が詐欺師の場合、詐欺を行う事は決まっていますが、一筋縄ではいきません。
騙そうとしている相手は、ずる賢い悪党です。
なので、まずは計画です。
入念で、洗練された、頭の良い計画が必要になります。
どうやって嘘を本当に見せかけ、悪党を嘘で絡め取り、詐欺師の目的を達成するか。
攻略するには、相応の下準備が必須です。
映画「グランドイリュージョン」の場合は、詐欺師の主犯が仲間集めをする所から物語が始まります。
つまり、詐欺の加害者目線で進むのですが、同時に被害者目線と同じく、真犯人が誰か分からない様に構成されている点で、非常に優れた脚本の作品と言えます。
アニメ「グレートプリテンダー」では、主人公が詐欺計画に加わり、巻き込まれながらも計画の一員として行動していく事で物語りが前に進みます。
被害者の試練:既に計画の中
主人公が被害者の場合、詐欺師の計画は既に動き始めています。
ですが、読者・視聴者と言った見ている人も、被害者である主人公も、そんな事とは露ほども知りません。
なので、詐欺師の思い通りにならない様に、自分の目的を達成しようと自然に動きます。
それも含め、詐欺師の計画に含まれているとも知らずにです。
この被害者の目的とは、簡単に言えば詐欺師の思い通りにならない様に、自分の任務を遂行する事です。
映画「アフタースクール」では、探偵である主人公が、依頼のあった調査を進めていきます。
映画「9人の翻訳家」では、世界的ベストセラーを翻訳する事が、翻訳家と出版会社の社長の任務です。
詐欺師の危機:絶対に、全てが計画通りには行かない
詐欺師は綿密な計画を立て、実行に移し、悪党は罠にハマります。
ですが、計画はレールから外れ、思わぬ方向に計画が転がり始めます。
警察に追われたり、殺し屋に狙われたり、被害者が思わぬ行動を取ったり、そう言った厄介な出来事が起きます。
それらには、もちろん対応しないといけません。
被害者の危機:わけが分からない状況
被害者は、詐欺師の計画によって訳が分からない状況に置かれ、酷く混乱します。
何かが起きている事は分かりますが、何が起きているのか、それの目的が何なのか、皆目見当がつかず、読者・視聴者と共に主人公は必死に考えながらも、答えにはたどり着けません。
昔話「子供に化けた狐」では、沼で溺れて三途の川に行き、鬼に追い掛け回されたりします。
詐欺師の絶望:計画外の損失
悪党を騙し追い詰める事で、悪党は本性を現し、その牙を向けてきます。
その中で、予想もしなかった被害を受け、取り返しのつかない物を失います。
仲間が傷つけられたり、時には殺されそうになる事もあります。
映画「9人の翻訳家」では、9人の翻訳家の誰かが泥棒だと確信した社長が、9人を監禁してしまい、監禁生活の中で悲劇が起きます。
被害者の絶望:破滅的状況
詐欺師の仕掛けた計画によって、被害者はどうしようもない状況に置かれます。
必死に抗っても、もはや無意味な状況です。
命の危機や、キャリアの崩壊、大事な物の消失が確実な物となります。
昔話「子供に化けた狐」では、鬼に捕まり、投げ飛ばされます。
詐欺師の契機:計画最終段階
ようやく計画が最終段階に突入し、悪党を逃げられない状況に追い込みます。
映画「スティング」では、マフィアのボスに八百長賭博を持ちかけ、儲け話に上手に乗せると、大負けをさせてしまい、そこで銃撃事件が起きてしまいます。
もちろん、大負けさせるのも、銃撃事件も計画通りです。
被害者の契機:詐欺師判明
破滅が殆ど確定した状況ですが、詐欺師の存在が判明し、主人公は報復のチャンスを得ます。
ですが、ネタバラシをされた時には、もうすべてが終わっています。
暴かれる真実
クライマックスで、詐欺師と被害者、どちらも真実が暴露されます。
どちらにしても、王道では詐欺師が勝利を収め、被害者は悪党として相応の報いを受ける事は揺らぎません。
ただし、詐欺師目線の場合は、読者・視聴者にも明かしていなかった本当の計画を明かす事で物語りはどんでん返り、被害者目線の場合は、詐欺師から計画の顛末を全て明かされ完全敗北を認める事になって、どちらでも大どんでん返しが起きます。
こうして、詐欺師が悪党を成敗し、物語は小気味良く幕を閉じます。
まとめ
以上、悪人を騙す物語と、悪人が騙される物語とは、詐欺師が悪党を騙して成敗する形式の物語と言う事でした。
この形式の物語のポイントは、読者・視聴者をも騙す仕掛けがある、高度な計画にあります。
詐欺師目線の場合は、最後の大詰めを明かさない事でどんでん返しにして、被害者目線の場合は、実は物語が始まる前から詐欺計画の上にいたと言うどんでん返しにする事で、どちらも最後に訪れる衝撃と伏線回収の気持ち良さは素晴らしい物です。
物語を楽しむ人が「これは一本取られた」と感じるような計画で無ければ、この形式の物語は機能しません。
この記事が好きな作品探しや、この形式の物語を作る時の参考になればと思います。
「悪人を騙す物語(正義の盗賊物語)」必須要素
スーパーヒーロー
- 弱点や制限
- ヒーローとしての名前
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- 倒すべき相手、解決すべき問題
タブー破り
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- 禁忌を破った代償
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