【千と千尋の神隠しにルンペルシュチルツヒェンがなるまで】昔話を利用した物語創作・その4【設定の好都合化】

昔話の構造利用

パラダイムで見る昔話「 ルンペルシュチルツヒェン」等【名前当て勝負】の記事で、軽く触れた遠く離れた同構造の物語。

「ルンペルシュチルツヒェン」を「千と千尋の神隠し」にになるまで設定を変えていく流れを実験的にやってみる。

一応だが断っておくと、「千と千尋の神隠し」が本当にこうやって作られたなんて事は、まず無いだろう。

あくまでも、昔話をヒントにして、どうやって全く別の作品を形成してくのか、その考え方を見て行きつつ、そのゴールに「千と千尋の神隠し」を持ってきただけと考えて貰いたい。

前回、設定のディティールアップで変わった物

【千と千尋の神隠しにルンペルシュチルツヒェンがなるまで】昔話を利用した物語創作・その2【設定逆転】に続き、【千と千尋の神隠しにルンペルシュチルツヒェンがなるまで】昔話を利用した物語創作・その3【設定のディティールアップ】で、大きく物語が様変わりした。

現代日本を舞台に、ある日、主人公である娘は、親の罰当たりな行動から八百万の神々が暮らす国に連れ去られてしまった。
親の罪を償わないと、一緒に誘拐された親を連れて日本に戻れない。
しかし、長い時間神の国にいると、人は生きていけない。
右も左も分からない状態で、主人公は途方に暮れる。
そんな時に、一人の妖怪が目の前に現れ、主人公に語り掛けてくる。
今の状況から助けて欲しいなら、自分の事も助けて欲しい。
もし私の名前を思い出させてくれれば、その時は、元の世界に帰してあげると言う。
でも、もしお前が私の名前を思い出させる事が出来なければ、その時は、それまでだ。
主人公は、迫るタイムリミットの中、妖怪の名前を思い出す手伝いをする事になってしまう。

みたいな感じになった。

詳しくは、過去関連記事を見て欲しい。

今回の例では、当然だが「千と千尋の神隠し」と言う正解に向かっているので、あっさりと設定を寄せて行っている。

しかし、本来は、どんな設定を「スライド」や「逆転」させれば面白くなりそうかどうか、それを試しては練り直す必要がある。

なので、自分の作品を、昔話を利用して作ろうと思っている人は、この設定変更の試行錯誤を楽しみ、原作よりも面白くなりそうだったり、想像によって世界観が膨らむ物を探すと良いだろう。

この補足、毎回はクドイ?

まあ、そんなこんなで今回のテクニックに行こう。

設定の好都合化

設定は、思いついたまま使えば良いと言う物では無い。

目指す作品に対して、最適になる様にデザインを整える必要がある。

この、デザインを整えるとは、あらゆる意味での好都合化を考えると言う事だ。

  • 見る者に与える印象、イメージ
  • 物語の都合
  • 類似作との差別化、パロディ化

あたりが基本となり、あらゆる要素に対して好都合化と言うデザインを整える作業が必要となる。

例えば、ベースとした「ルンペルシュチルツヒェン」では、小人が主人公を助けてくれる代わりに、法外な要求をしてくる。

設定のスライドで小人を日本風に妖怪にし、設定の逆転で助ける事で自分も助かる風にしてきた。

この、妖怪と言う設定は、イメージは人それぞれだと思うが、絵にしても字面にしても、印象と言う物がある。

それが、このままで良いのか、好都合化の余地があるのか、それを考える事で、作品を見る人が受ける印象をガラリと変える事が出来る。

これは、中心的なモチーフでは特に大事な事だ。

例えば、漫画「ドラえもん」では、タヌキに間違えられるが、あくまでも猫型ロボットと言う設定である。

仮に、これがゴキブリに間違えられるカブトムシ型ロボットだったら?

大分、印象は変わって来る筈だ。

ゴキブリと言うモチーフが絡むだけで、全く同じ物語の内容だとしても、見る前から無理とか拒否感を持つ人も多いと思う。

これは、悪い印象を持たせたい場合にも当然使える。

例えば、漫画「テラフォーマーズ」では、テラフォーミング用に遺伝子操作したゴキブリが突然変異によって人型に進化して人類を襲ってくる。

これは、ゴキブリの持つ悪いイメージの利用であり、作品として好都合なモチーフとなっている。

仮に、テラフォーミングで送り込んだ遺伝子操作した苔が突然変異して人を襲う内容だったら、全く別の印象を受ける筈だ。

で、話を戻すと、 「ルンペルシュチルツヒェン」 をベースにしている事で「主人公を追い詰める傲慢な王様」「主人公を助けてくれる小人」の二人は、最重要なアイキャッチとなる登場人物なのは、ほぼ確定していると言って良い。

まず、それらのモチーフをイメージして欲しい。

地味か、あるいは、派手だろうか?

良い印象を持つか、あるいは、悪い印象を持つだろうか?

考えてみると、きっともっと都合が良いモチーフがある事が想像できる。

それらをスライドさせた設定も、小人からスライドさせた妖怪は、きっと小鬼のような姿で、何となくだが、人の感性から見ると可愛いか、醜い様なイメージを持って想像してしまうと思う。

王をスライドした神も、元の王の設定が傲慢で狂った部分があるので、良い物では無い筈だ。

好都合なモチーフを探す

妖怪と言うモチーフを、どうすれば好都合に出来るだろう。

まず、妖怪を設定逆転によって味方に変えた事で、好都合化するには、見る人が好きになったり、好印象を持つ方が良い。

例えば、妖怪と言う概念の周辺領域を連想ゲームの様にイメージしていき、様々なモチーフを探していく方法がある。

  • 座敷童

等々、前のモチーフよりもイメージの良い、あるいは良いイメージをし易いモチーフがいくつも見つかるはずだ。

もう分かっていると思うが「千と千尋の神隠し」では、「 ルンペルシュチルツヒェン」での小人のポジションは、龍である。

更に、名前を忘れた存在として、その正体を隠す為に人間の形態で現れ、それがイケメンだ。

もう分かっただろう。

主人公にとっても、視聴者にとっても、これ以上ないまでに好都合化された存在かつ、絵的にも滅茶苦茶栄えて、華があるモチーフが選ばれている。

もう一方の、「ルンペルシュチルツヒェン」での王のポジションは?

八百万の神々の国にいる存在で、主人公を追い詰める権力者だ。

同じ様に探していくと、

  • ぬらりひょん等の妖怪
  • 八百万の何らかの神
  • 閻魔大王
  • 九尾の狐

等が、すぐに思いつく。

日本のモチーフで考えると、和風にしたくなる。

それが普通だ。

ところが「千と千尋の神隠し」では、暴君のポジションにいるのは、魔女と西洋的だ。

深く設定と向き合う姿勢

「ルンペルシュチルツヒェン」の同系統物語の「アントニウス・ホーレクニッペル」では、小人や小鬼の代わりに魔女が登場した。

これは「人魚姫」とも共通するモチーフで、西洋の昔話では、お約束のストックキャラクターと言って良い。

小人ポジションを味方にする設定逆転を行うと言う事は、それに伴って関連する設定を逆転する必要も出てくる。

それが、敵として登場しつつも「ルンペルシュチルツヒェン」では、伴侶という一応の味方になる暴君を、敵のポジションに逆転させる事だ。

そうしないと、小人が味方になる理由がおかしくなるし、主人公と小人を追い詰める敵が不在となってしまう。

小人を味方にするなら、王を敵に。

王が味方になるなら、小人を敵に。

この物語の基本構造上、葛藤を発生させる登場人物の役割を、しっかりとメインキャラクター達に持たせるわけだ。

と言う事は、王のポジションに魔女のモチーフを入れる事は、非常にシックリとあてはまる。

だが、それとは別ルートからも、モチーフを魔女にする方法がある。

それが、設定からの連想だ。

そもそも、現代日本を舞台にしている。

この設定を覚えているなら、日本が西洋化している事も、資本主義に傾倒している事も理解出来るだろう。

つまり「千と千尋の神隠し」の魔女と言う設定は、そのままストックキャラクター的な魔女では無いルートからでも考えつく事が出来る。

日本は近代化によって、西洋化と資本主義化が進んだ。

この流れが、神の世界にも来ていたら?

そう考えれば、日本の呪術師や神霊的な存在が、影響を受けて西洋かぶれから魔女になったと言う設定は、十分思い至るのが分かる。

これは、基本設定が作品世界の隅々まで行き渡り、作者が、それに従っていないと出来ない芸当だ。

設定に従っているからこそ、八百万の神々の世界で影響力を持っている存在が、日本を舞台としているのに魔女で問題が無いのだ。

また、資本主義と言う設定は、魔女に「 ルンペルシュチルツヒェン 」の守銭奴な王の属性をそのまま維持させる事が出来て、物語構造上も都合が良い。

そんな感じで、設定に好都合化を加えていくと、

現代日本を舞台に、ある日、主人公である娘は、親の罰当たりな行動から八百万の神々が暮らす国に連れ去られてしまった。
魔女に対して親の罪を償わないと、一緒に誘拐された親を連れて日本に戻れない。
魔女は、働いて罪を償うように言う。
長い時間神の国にいると、人は生きていけないので言いなりになるしかない。
右も左も分からない状態で、主人公は途方に暮れる。
そんな時に、一人の美しい少年が目の前に現れ、主人公に語り掛けてくる。
今の状況から助けて欲しいなら、自分の事も助けて欲しい。
もし私の名前を思い出させてくれれば、その時は、元の世界に帰してあげると言う。
でも、もしお前が私の名前を思い出させる事が出来なければ、その時は、それまでだ。
主人公は、迫るタイムリミットの中、少年の名前を思い出す手伝いをする事になってしまう。

まだまだ「千と千尋の神隠し」には遠いが、それでも「 ルンペルシュチルツヒェン 」から着実に近づいて行っているのが分かると思う。

終わりに

今回は、この辺で。

こんな感じで、ワンステップずつ近づけていくので、その変化を体験してもらえたら、と思う。

今後も紹介していくプロセス群を別の物語に対して独自に実行すれば、オリジナル作品を生み出す方法を一つ手に入れた事になる、かもね。

個別でも、テクニックは役立つ筈。

設定の好都合化は、誰でも無意識に出来るテクニックだけど、これを意識して深く使う事で設定やモチーフから受けるイメージを自在に操る事が出来る様になる。

自分は良いと思っても、見る人が受ける印象や、役割的に都合が悪くなっている設定は、必ずあるはずだ。

集中すればするほど、創作者の視界は狭くなる。

一旦、距離を置いて離れて考える事は、作品に客観性を与え、クオリティ向上の大きな助けになる。

自分の描きたい物、描く為に使う型との相性、見る人に持って貰いたい印象、そう言った物が出来るだけ多く満たされる設定を探す事は、とても大事だ。

じゃあ、またね。

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