【千と千尋の神隠しにルンペルシュチルツヒェンがなるまで】昔話を利用した物語創作・その5【設定の重厚化】

昔話の構造利用

パラダイムで見る昔話「 ルンペルシュチルツヒェン」等【名前当て勝負】の記事で、軽く触れた遠く離れた同構造の物語。

「ルンペルシュチルツヒェン」を「千と千尋の神隠し」にになるまで設定を変えていく流れを実験的にやってみる。

一応だが断っておくと、「千と千尋の神隠し」が本当にこうやって作られたなんて事は、まず無いだろう。

あくまでも、昔話をヒントにして、どうやって全く別の作品を形成してくのか、その考え方を見て行きつつ、そのゴールに「千と千尋の神隠し」を持ってきただけと考えて貰いたい。

前回、設定の好都合化で変わった物

現代日本を舞台に、ある日、主人公である娘は、親の罰当たりな行動から八百万の神々が暮らす国に連れ去られてしまった。
親の罪を償わないと、一緒に誘拐された親を連れて日本に戻れない。
しかし、長い時間神の国にいると、人は生きていけない。
右も左も分からない状態で、主人公は途方に暮れる。
そんな時に、一人の妖怪が目の前に現れ、主人公に語り掛けてくる。
今の状況から助けて欲しいなら、自分の事も助けて欲しい。
もし私の名前を思い出させてくれれば、その時は、元の世界に帰してあげると言う。
でも、もしお前が私の名前を思い出させる事が出来なければ、その時は、それまでだ。
主人公は、迫るタイムリミットの中、妖怪の名前を思い出す手伝いをする事になってしまう。

と言った状態の設定が、好都合化によって

現代日本を舞台に、ある日、主人公である娘は、親の罰当たりな行動から八百万の神々が暮らす国に連れ去られてしまった。
魔女に対して親の罪を償わないと、一緒に誘拐された親を連れて日本に戻れない。
魔女は、働いて罪を償うように言う。
長い時間神の国にいると、人は生きていけないので言いなりになるしかない。
右も左も分からない状態で、主人公は途方に暮れる。
そんな時に、一人の美しい少年が目の前に現れ、主人公に語り掛けてくる。
今の状況から助けて欲しいなら、自分の事も助けて欲しい。
もし私の名前を思い出させてくれれば、その時は、元の世界に帰してあげると言う。
でも、もしお前が私の名前を思い出させる事が出来なければ、その時は、それまでだ。
主人公は、迫るタイムリミットの中、少年の名前を思い出す手伝いをする事になってしまう。

と言う設定に変更された。

敵と味方を分かりやすくし、特に味方の設定を主人公にも読者・視聴者に対しても好都合な存在に変えた。

これによって、見る人は感情移入し、安心して愛し、応援する事が出来る。

今回は、更に設定を練って行く。

設定の重厚化

設定の重厚化とは、字のままに設定を重く、厚くする作業だ。

これによって、その場しのぎのペラッペラな設定は、作品内から淘汰される事になる。

その効能は、作品に奥行きを持たせ、何よりも「過去の重み」の付与によって、物語開始以前にも世界はあったと言う圧倒的なリアリティの獲得に貢献する。

設定の重厚化をする際のポイントは、

  1. 主人公が遭遇する主要設定が全て、その世界では過去にもあった事
  2. 主人公以外にも人生があり、動機がある事
  3. 主人公以外も劇中で、常に行動し続けている事

等がある。

これらを意識して設定する事で、

  1. 主人公の先人が存在する事で、失敗や成功を提示できる
  2. 主人公以外も魅力的になる
  3. 状況が変化し続ける

等の効果が得られる事になる。

それでは、今回の設定の場合は、どうすればいいだろうか?

重厚化したい設定は、重厚になっていない新規性のある設定

重厚化するべき設定は、作品オリジナルの設定が第一候補だ。

例えば、日本を舞台としている場合、既に日本と言う設定には重厚化が行われていると考えていい。

読者・視聴者の共通認識で、歴史・文化等が日本と言うモチーフに既に備わっているからだ。

作品オリジナルの設定とは、今回の場合は、

  • 神の国
  • 魔女
  • 名前を無くした龍の少年

等の設定になる。

これらは、見る側にとって共通認識が、まだ存在していない。

つまり、軽薄な設定と言える。

これらに対して、詳細な過去を練ってやる必要がある。

その際、共通認識的なお約束やパターンをモチーフから持ってくると、設定への理解が手っ取り早くなる。

ここで独自設定で掘り下げると、そこには独創性が生まれるが、見る側からすると新しく学ぶ必要がある知識が一気に増える。

例えば、八百万の神々が暮らす国と言う設定なら

  • 人の世界と繋がっている門が世界中に存在する(あの世への入り口)
  • 時々人が迷い込み、迷い込むと神隠しにあった事にされる(神隠し)
  • 神の世界の食べ物を口にしてはならない(神話)
  • 帰る時は後ろを振り返ってはいけない(神話)
  • 電車に乗ったら途中で降りてはいけない(都市伝説)
  • 神を怒らせてはいけない、怒らせると祟られる(神話)

みたいなレベルから、設定を重厚化していき、それらに沿って物語を構築していけば良い。

それが、モチーフに付属する連想やイメージのパターンから引き出されたものであるほど、受け入れるのがたやすくなる。

他に、魔女の設定なら

  • 神の国に暮らす魔女(独自設定)
  • 日本の妖怪だが、西洋かぶれている(独自設定)
  • 資本主義に染まっていて、守銭奴な性格(独自設定)
  • 息子と双子の姉妹がいる(独自設定)
  • 呪術が使えて、名前を使って相手を操れる(昔話、神話)
  • 神相手に商売をしている(独自設定)

龍の設定なら

  • 名前を奪われた龍神(独自設定)
  • 力を封じられて人の姿をしている(独自設定)

みたいな設定が考えつき、それらの設定の繋がりを考える事でも設定は深まっていく。

  • 龍の名前を奪ったのは魔女(独自設定)
  • 魔女は、名前を奪った相手を操って商売をしている(独自設定)
  • 主人公や両親も魔女に名前を奪われて龍と似た境遇で働かされる(独自設定)

こうやって設定を練って行くと、曖昧な設定の空白が気になる。

そこを埋めていくと、世界観がどんどん具体的になる。

例えば、神や魔女が主人公に求める物が何かは、今のところぼんやりしている

  • 魔法を売っていて、材料集め?
  • 娼館を経営して、働かせたい?

等が思いついたとする。

すると、どんな商売が良いか考えると、神を相手に負債を返す意味では、花街がイメージ的には近いかもしれない。

だが、そう言う設定にするとターゲット層が限られる。

そうなると、娼館や売春的な商売は、選択肢から外れる事になる。

しかし、何も持たない主人公が、名前を奪われた龍神の少年と共に魔女に負債を返済するには、何をすれば一目を置かれるだろうか?

ここで、現代日本人の少女と言うモチーフと、金を稼ぐと言う設定の点を繋いで、周辺の範囲で設定を連想して見よう。

そうする事で、思わぬ発想に至る事がある。

少女が出来る仕事は、何がある?

  • 家事の手伝い、皿洗い、料理、風呂掃除
  • 田畑の手伝い
  • 子供の世話
  • 肩たたき、肩もみ
  • 風呂での背中流し

等の仕事は、無理なく出来そうだ。

だが、これらはお手伝いの範疇かもしれない。

そこで、無理をしてでも金を稼がせたい敵側の発想も同時にすると、

  • 新聞、牛乳、料理、手紙等の配達
  • 代筆、簡単な計算
  • キャバクラ、ガールズバー
  • 売春、援助交際、パパ活
  • 殺し、暗殺

等のスキルで、社会で稼げるとしよう。

当然、さっきと同じでターゲット層を変に絞りたくないので、キャバクラや売春や殺し等の問題がある行為で稼がせる事は表現上、やりにくい。(大人向けの作品なら、そう言う選択肢もあるが)

だが、ここでわざわざアングラな事まで含め、発想を一度するのは、それを使わないと設定上決める事と同時に、それから連想出来る設定が使える場合があるからだ。

思いも寄らぬ材料が、新しい物を生み出す事がある。

例えば、主人公自身は売春を行わず、魔女が後にそうさせようと考えている様な設定の場合、そう言った行為は直接登場させる必要は無いが、その場所で働く見習いと言う役割で描く事が出来る。

主人公に、そう言った文化的な知識が無い場合、主人公の視点で世界を伝えると、そこは別の見え方をする。

それは、言ってしまえば全年齢向けに改変された大人の世界とも言える。

  • 温泉宿を舞台に、神を相手に湯女(三助の女性版)をする

と言う設定は、健全だ。

上記した、家の手伝いレベルの延長線上に仕事があり、主人公が現代日本人の少女でも頑張れば出来そうな部分もある。

同時に「湯女」と言うモチーフは、歴史的に見ると吉原遊郭(江戸幕府公認遊郭)に繋がる設定が含まれ、売春を連想させる。

「千と千尋の神隠し」の場合は「油屋」と言う神々の湯治場が舞台として登場するのは、見た人なら分かっているだろう。

そこは、豪華な温泉宿にも見えるが、歓楽街的な豪華さと下品さも併せ持っていた。

つまり、設定の重厚化と共に、好都合化を行う事で、華やかで健全な世界を構築している事を伺い知る事が出来るわけだ。

こうして、設定を重厚化すると、

現代日本を舞台に、ある日、主人公である娘は、親の罰当たりな行動から八百万の神々が暮らす国に連れ去られてしまった。
魔女に対して親の罪を償わないと、一緒に誘拐された親を連れて日本に戻れない。
全員が名前を奪われ、逆らえない。
魔女は、経営する温泉宿で、湯女として働いて罪を償うように言う。
名前を取り戻さないと逆らう事が出来ないので、言いなりになるしかない。
右も左も分からない状態で、主人公は途方に暮れる。
そんな時に、一人の美しい少年が目の前に現れ、主人公に語り掛けてくる。
今の状況から助けて欲しいなら、自分の事も助けて欲しい。
私も魔女に名前を奪われた。
もし名前を思い出させてくれれば、その時は、君の名前を取り戻す助けをすると言う。
主人公は、自分と親の名前を取り戻す為に、少年の名前を思い出す手伝いをする事になってしまう。

と、少しだけまた「千と千尋の神隠し」に近づける事が出来た。

設定の重厚化によって、魔女が大勢の名前を奪って無理やり働かせている設定が生まれ、被害者仲間と言う共通点によって龍神の少年との自然な接点が出来た。

また、湯女をする事が決まったので、舞台や主人公の行動を一気に狭めて考えやすくなったのも利点と言えるだろう。

終わりに

今回は、この辺で。

こんな感じで、ワンステップずつ近づけていくので、その変化を体験してもらえたら、と思う。

今後も紹介していくプロセス群を別の物語に対して独自に実行すれば、オリジナル作品を生み出す方法を一つ手に入れた事になる、かもね。

個別でも、テクニックは役立つ筈。

設定の重厚化は、作品の設定に歴史を与え、物語に奥行きを与えてくれる。

他に、良い例で例えば、

「Fate」シリーズは、設定の重厚化が非常に上手く出来ているのが、見れば分かるだろう。

「聖杯戦争」と言う新規性のある設定は、最初の作品で「第5回」から始まった歴史ある設定だ。

この設定を、劇中でもしっかり活かしているのは、 Fate履修者ならイメージしやすいだろう。

この「第何回」と言うのは、手っ取り早い設定の重厚化手法の一つだ。

ふざけて「第1000回○○会議を始めます」と初回に言うのも、重厚化した設定をふざけて楽しむ一環と言える。

じゃあ、またね。

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