削いで残った物の大事さ
創作とは、自己表現的側面を多分に持つ分野だ。
絵を描く、文章を書く、踊る、歌う、何でも良いが、必ず「自己を表現」する。
そこで、一度は考えておきたい事がある。
それは「表現したい物」と「自己表現の欲求」が、噛み合っているかである。
もっと言うと「自己表現」における、その時点での「自己実現」が、マッチしているかと言う事だ。
これは、パラダイムで見る昔話「人形つかい」で、「人形つかい」を読んでいて『もしかして記事として書いておいた方が良いのでは?』と思った事だ。
この事を認識する事は「人形つかい」と同じ様に「自分を縛っていた目標」から解放され、のびのびと創作する手助けになるかもしれない。
「こだわり」のメリット・デメリット
人は、必ず何かしらの「こだわり」を持っている。
自分流、好き、固執、執着、夢、目標、目的、どんな形でも、それは「こだわり」だ。
この「こだわり」は、非常に大切な物だ。
これがモチベーションに直結する事も少なくない。
つまり「こだわり」には、メリットがある。
だが、これがモチベーションになっていたとしても、同時に足枷になる事もある。
こだわる要素に縛られ、表現が限定され、結果的に上手く行かなくなる事が往々にして起こりうるわけだ。
マクガフィンに囚われるな
マクガフィンとは、映画監督アルフレッド・ヒッチコックによって普及した概念で「変えても構造に変化がない要素」で、スパイ映画における「スパイが狙う重要な物が書類でもダイヤでも大筋が変わらない」様な要素として度々説明される。
つまり、マクガフィンとは「こだわり」を持っても、構造的には大きな変化が起き辛い、別のものに置き換えても構わないようなものだ。
マクガフィンにモチーフを入れる事で、表現が固定されていく。
ここで、マクガフィンに入るモチーフに「強いこだわり」を持っているせいで、構造が疎かになったり、モチーフがマンネリで代わり映えしないと言う人が出てくる。
創作が上手く行っていない場合、このマクガフィン要素の「こだわり」を、捨てる事が自分につけた足枷から解放される事に繋がると言うのは、良くある話だ。
足枷の外し方
「こだわり」を捨てる事は、とても大きな抵抗が生まれる。
「夢」にまで育ったこだわりにもなると、簡単には捨てられない。
そこで、いくつかの方法を紹介する。
一度叶える
無理やりでも、一度「夢」を叶えてしまう事で「こだわり」は、容易に捨て去る事が出来る。
要は「こんなものか」と言う感覚を味わう事で、次の「こだわり」と言う目標を探す為のリセットを自分にかける事が出来る為だ。
これは「人形つかい」と同じだが、現実だと夢は自分で叶える必要がある。
なので、妥協してシンプルにするか、誰かに手伝って貰うか、無理やり強引にするか、いずれかの手法で完成にこぎつける必要がある。
一度置いておく
「こだわり」を叶えるのが難しそうなら、本番に取っておくとか、浮気をする事で、一度横に置いておくのが良い。
幸い、マクガフィンは浮気をされても嫉妬しない。
「こだわり」が無い事で肩の力が抜けると、リラックスして型を身に着ける事が出来る。
これは、武術やスポーツでも同じ事だろう。
自己流は、大抵は基礎の先にある物で、まずは我流を捨てて効率の良い型を覚えてしまう方が習得の早道になる。
思い切って捨てる
悪い意味で自分を縛る「こだわり」は、物は良いかもしれなくても、きっとあなたに合っていない。
そういう物は、縛られずに、いっそ手放してしまうのが良い。
叶えるよりも、置いておくよりも、遥かに早く自由になれる。
「こだわり」を削いだら、型が残る
自由になったら、マクガフィンを変えた状態で「同じような作品」を試しに作って見て欲しい。
同じ事は、大事だ。
なぜなら、全く別な事に行ってしまうと、そこに共通点を探すのが難しくなる。
「こだわり」のテーマやモチーフを削いで別物にした上で、それでも残った構造の認識こそが、重要となる。
それこそが、型だ。
その型が、マクガフィンに歪まされずに、どうあるべきかを理解する事。
型が残ったら、「こだわり」を拾ってみよう
一度は捨てた「こだわり」だが、型を身に着けた後なら、前の様に振り回される事は無い。
そうする事で、あなたは自分の一度捨てたマクガフィンとの向き合い方が変わった事に気付ける。
一度「こだわり」を捨てる事で、あなたは「こだわり」と正しく向き合う土台を手に入れる事が出来ると言うわけだ。
「こだわり」に対して「こんなものか」と感じる事もあるだろう。
一方で「これが正解だったのか、前に進める」と目が覚める思いをする事もある。
ここのジャッジで、それまで足枷だった「こだわり」が、ただの足枷か、譲れない目標だったのかが分かり、あなたはどちらにしても幸せになる。
良いマクガフィンは、徹底してこだわれ
ジョージ・ルーカスは、スターウォーズ内でマクガフィンにこだわり、観客はマクガフィンを追い求め、見に来ているとまで考えていた。
R2-D2等のドロイドや、ライトセーバー、宇宙船、ダースベイダーの甲冑、等々、スターウォーズで多くの人がイメージし、求めている要素は皆「マクガフィン」である。
つまり「こだわり」が良い方に働けば、この様な状態に持っていけるわけだ。
捨てるべきマクガフィンと、大事に育てるべきマクガフィンがある事を、しっかり認識しよう。
「こだわり」は、良い方向に働けばパワーになるが、悪い方向に働けば足枷になる。
- 自分がこだわり、周囲が求めるマクガフィンがベストだ。(ジョージ・ルーカス)
- 自分に思い入れが無く、周囲が求めるマクガフィンは邪魔をしない。(アルフレッド・ヒッチコック)
- 自分がこだわり、周囲が求めないマクガフィンは、人を選ぶ。
- 自分がこだわり、足を引っ張るマクガフィンは、どうにか呪縛から逃れよう。
ベストは1だが、常に4以外を選ぶ事を心掛けるだけで、創作は楽になる筈だ。