フレーバーテキスト解説
今回は、フレーバーテキストについて説明する。
フレーバーテキストと聞くと、どんなイメージがあるだろうか?
フレーバーテキストは、作品を支え、物語を構築する重要な要素である。
上手に使えば、メインストーリーでは多くを語らす、フレーバーテキストによってディティールを補完する事も可能なほど、フレーバーテキストは物語の一部と言える。
基本の説明だが、参考になれば幸いだ。
フレーバーテキストとは
アイテムやカード等の説明文を、主にフレーバーテキストと言う。
定義的には、使う媒体や業界によって多少ブレがあるが、メインとなる物語以外で物語世界や作品の設定を補完する説明文と考えれば問題ない。
フレーバーテキストの役割
ゲーム等のアイテムやカードには、機能の情報と、その物の情報が存在する。
機能とは、
HPを10回復する
の様な物で、その物の情報は、
イラスト:緑色の液体が入った小瓶 名称:回復薬 説明:薬草から抽出したエキスから作られた苦い飲み薬。
みたいな物だ。
この説明文が、いわゆるフレーバーテキストとなる。
フレーバーテキストが無くても、機能が分かっていればゲーム的には遊ぶ事は出来る。
では、フレーバーテキストは何のためにあるのかと言うと、「その物の情報」が開示される事で、作品世界観に深みと広がりを持たせつつ、プレイヤーを始めとした読む人をその世界に没入させる手助けを行う為にある。
フレーバーテキストのTPOと一貫性
フレーバーテキストは、様々な所に登場する。
これが、仕掛けが少ない物なら、カードやアイテムに添えられた一文で事足りる事もある。
だが、ゲーム内でレア度・レベル毎・場面毎・時間毎、等で解放されたり、一定確率毎に数種類が登場する様な場合は、フレーバーテキストは一貫性を持って複数必要になる。
一つのアイテムやカード、一人のキャラクターであるなら、その中でTPO(時と場所と場合)と一貫性を持って掘り下げられるフレーバーテキストが求めれる。
それらは、一つの作品として一貫性を持ちつつ、各個ではTPOを保つと言う入子構造である必要がある。
TPOと一貫性の法則が崩れると、そのフレーバーテキストは作品内で浮いた存在となる。
フレーバーテキストのフォーマット
実際に書く際は、上記した作品内のTPOと一貫性が分かった上で、一定のフォーマットに従ってフレーバーテキストは考えられる。
カードゲームなら、シリーズで統一されたフレーバーテキストのフォーマットの中で、様々な表現がされると言う事だ。
TPOと一貫性を保ちつつ、一定のフォーマットで量産する事が求められるので、エクセルやスプレッドシート等の表を作成するソフトを使用して、比較・俯瞰して作成する事が多い。
フォーマットは、当然ですが作品によって異なりますし、媒体によっても大きく違います。
カードでもアイテムでも、一画面、一吹き出し、等に入れられる制限文字数や、文の折り返し、使用文字のルール等を意識し、制限と言うフォーマットにおさまる様に構築する事が求められます。
フレーバーテキストの基本的な考え方
フレーバーテキストを実際に考えるには、いくつかの基本的な流れがあります。
対象のコンセプト
フレーバーテキストをのせる事になる対象のコンセプトを理解するのは、何よりも重要になります。
コンセプトとは「概念」であり「対象が表すもの」であり、作品の中に登場する「対象を通して、何を伝えるか」と言う事になります。
何を、どう伝えるか
フレーバーテキストは、その世界に没入させる手助けを行う為に存在するので、どういう説明が世界を深め、広げるのに効果的かを考える必要がある。
作品世界人の言葉
フレーバーテキストで良くあるのが、その世界の住人による感想、評価、伝聞、言い伝えだ。
ある種、一人称のフレーバーテキストと言える。
現在を生きる個人の感想ほど主観的で、断言的で、浅い印象を与える。
逆に、過去から残る伝説等になるほど、曖昧だが、深い印象を与える。
例えば、
イラスト:りんご 名称:綺麗なりんご 説明:あかくって、あまくって、しゃきっとして、おいしい。
と言う様なフレーバーテキストは、個人の感想であり、事実かもしれないが、非常に軽い。
一方で、
イラスト:りんご 名称:綺麗なりんご 説明:神から盗んだその実を食べた事で人は楽園を永遠に追放されたらしい。
みたいなフレーバーテキストになると、伝説や言い伝えとなり、曖昧で間違いが含まれているかもしれないが、事実であるならロマンに溢れ、説明文に重みが増す事になる。
作品世界人の言葉は、フレーバーテキストの基本中の基本だ。
そして、言葉が新しければ軽く、古ければ重くなる傾向がある。
もちろん、誰が言うか、口語か否か、敬語の有無、口調や方言、実に様々な要素でフレーバーテキストから受ける印象は色を変える。
なので、対象のコンセプトにマッチした言葉を探す事は、非常に重要だ。
作品世界人以外の、客観的な感想
作品世界人以外の口でフレーバーテキストを考えると、切り口はガラリと変わる。
これは、3人称のフレーバーテキストと言えるだろう。
メタな客観性を入れられる為、神の視点で、作品世界人が知りえない情報でも、やろうと思えば伝える事が出来る。
イラスト:りんご 名称:綺麗なりんご 説明:市場では手に入らない上質なりんご。りんごが好きな人に渡すと?
みたいな、ちょっとしたヒントを入れたりも。
キャラクターのセリフ
描かれている本人や、そのアイテムが象徴する人物のセリフをフレーバーテキストにするのは、とても効果的だ。
作品世界人の言葉と違うのは、特定のキャラクターが言っている事で、そのキャラクターの掘り下げにも直接繋がる点だろう。
イラスト:剣士 名称:一般兵 説明:「前進! 前進! 止まるな! 切り込め!」
みたいなセリフがイラストと名称に加わると、一気にキャラクターの性格等が想像できる様になる。
これは、レア度が上がったり、名前があるキャラクター等になってくるなら、そのキャラクターが、その場面で言う独自性の高いセリフを構築する必要が出てくる。
イラスト:SR美少女剣士 名称:流浪の傭兵ソフィア 説明:「わたしを雇いたい? はぁ、安く見られたものね……あっ、ちょっと待ちなさいよ! 別に断ったわけじゃないんだから!」
とか、フレーバーテキストによって、イラストや名称、機能や性能だけでは分からないキャラクター性を表に打ち出せる。
見た目、機能を活かして考える
フレーバーテキストが何人称か、それと同時に重要になるのが、イラストや機能との親和性であり、それらが完璧に噛み合って、シナジーを生んでいる事が望ましい。
イラストに含まれる要素は、出来る限り有効活用するべきだ。
また、単体を描いたイラストか、シーンを切り取ったイラストかによっても、これは変わって来る。
そこに至り、流れているドラマを想起させる
シーンを切り取ったイラストには、対象以外の情報が豊富に含まれる。
そして、その場面に至るまでには、流れがあり、その場面は切り取られてこそいるが、劇的かつ象徴的なワンシーンである。
山場での武器の使用、キャラクターへの魅力の気付き、等々。
ターニングポイントやミッドポイント、ちょっとした事件や出来事が描かれているなら、それをフレーバーテキストで純然と表現するべきだ。
かけがえの無い日常のワンシーンなら、それが伝わるフレーバーテキストを描く必要がある。
嘘はつかない、勘違いも混乱も、不要な期待もさせない
フレーバーテキストは、その世界に没入させる手助けを行う為に存在する物で、没入を邪魔したり、結果的に不愉快になる情報は入れるべきではない。
なので、フレーバーテキスト内に嘘になる情報は入れてはいけない。
ポジティブな状態で終わるサプライズは喜ばれるが、ネガティブな状態で終わる嘘は誰も喜ばない。
横のつながり、縦の繋がり
テクニックの話になってくるが、対象同士に関係、関連性がある場合や、シリーズ的なグループとなるなら、フレーバーテキストはそれを意識して作る方がシナジーが生まれる。
例えば、コンビのキャラクターであれば、相棒のキャラクターと絡ませるフレーバーテキストがあれば、揃った時に意味が分かる様な仕掛けが作れる。
時間的な連続性があるシーンカードのフレーバーテキストであれば、物語としての連続性を持たせる事も可能だ。
終わりに
今回は、フレーバーテキストについて解説してみた。
創作の参考になれば幸いです。
※この記事は、修正・加筆するかもしれません。