スクリプトドクターって、多分こうでしょ? いいえ違います!
スクリプトドクターをもっと身近な存在にしたいし、もっと増やしたいし、もっと色んな人に気軽に利用して貰いたい。
世間に存在する誤解を解いて、様々なハードルをどうにか下げる一助になれば。
1:全部ワンパターンな物語にされちゃうんでしょ?
日本の漫画は「世界的なポリコレの流れ」に配慮すべきかhttps://logmi.jp/business/articles/323891
の中で、ポリコレや海外の創作現場の事情に触れた折、
赤松:なんだけど、ハリウッド映画がスクリプトドクター、シナリオドクターによって、だいたいの盛り上がりは決まっていると。これからポリコレ意識して黒人、白人、いろいろ出してみたいなかたちで。『アベンジャーズ』みたいなのが、どれ見ても同じかもしれないですよ。しれないけど、やっぱりヒットすると。
https://logmi.jp/business/articles/323891引用
と、数々の名作を世に送り出してきた大物漫画家である赤松健先生がスクリプトドクターについて触れていた。
引用部分のみでは全体の言いたい事は分からないと思うので、詳しくは元記事を読んで貰いたい。
ここで赤松先生の言葉を引用したのは、「スクリプトドクター、シナリオドクターによって、だいたいの盛り上がりは決まっている……どれ見ても同じかもしれない」と言う部分が、恐らく多くの人が警戒しているスクリプトドクターに対する誤解を代弁しているからである。
まず、結論から言うと、赤松先生の持つイメージは理解出来るが、これには勘違いが含まれていると言わざるを得ない。
と言うのも、例えば映画を見て、どれを見ても同じ様に盛り上がり、似ているのは、それがフォーマット上の最も効率的な構成を目指して作られた物だからである。
フォーマットと言う制限がある前提を無視して、どれも同じと言われても、困ってしまう。
制限がある状態で、様々な効率(感情の上下、退屈の排除、カタルシス、分かりやすさ、等)を改善すると、自然と構成は似て来てしまうのは、分かるだろうか?
まず、映画で説明しよう。
前提として、多くの映画が90分から120分程度の尺で作られている。
このフォーマットの中に、物語を構成する様々な要素をパズルの様に詰め込んで、多くの人が楽しめるエンターテインメント作品にしようとする。
すると、どうしたってフォーマットの関係上、似てしまう部分がある。
これは、ジェットコースターの構造や構成と比べられる事も多いが、正に的確な比較と言える。
多くのジェットコースターは、最高地点にまで登って、そこから急降下した勢いを利用して最後まで進んで行き、元の乗り場に戻ってくる。
途中に宙返りやループがあったり、コースターの乗り方が吊り下げ式とか後ろ向きとかの工夫があっても、大抵は似た構成をしている。
それでも、面白いし、何度も乗りたくなるし、別の物も試したくなる。
だが、新しい工夫はしても、ジェットコースターである事をやめる様な構成にする人は製作者にいないし、ジェットコースターの構成に文句を言う人もいない。
ドドンパとか、ビルの上に設置した物とか、ショッピングモール内とか、そういう変わり種でも、基本の構成はみんな同じだ。
そういうフォーマットの中でやっていて、それが一般的なジェットコースターと言うわけである。
そこで物語の場合、起承転結や三幕構成等のパラダイムと言う規範とされるパターンが、良く取りざたされるが、これらを制限のあるフォーマットに合わせるから、結果的にジェットコースターと同じ様に似ているだけなのだ。
そういう意味で、問題のある脚本をスクリプトドクターに見せると、紋切り型に思える様になってしまう直しの提案をされる事は、実際、けっこうあるだろう。
その点で、赤松先生のスクリプトドクターに対して持つイメージは、間違っていないとも言える。
だが、それは、ジェットコースターで言うと、平坦で退屈な区間や、最初の勢いで辿り着けない様な無理な構成を、限られたスペースを最大限利用する為に、「こうした方が良いですよ」と提案する様な物なのだ。
なので、制限のあるフォーマットが決まった状態から解放されたり、あえて実験的な事を行うのであれば、スクリプトドクターからの提案も自ずとそのフォーマットに合わせた物に変わると言える。
例えば、短編漫画と連載漫画では使えるフォーマットに差があるし、1本90分の映画と、7部作630分の映画でも出来る事には大きな差があるのは、イメージしやすいだろう。
結果的に紋切り型を提案する様な時があるとすれば、それは紋切り型に直したと言うよりは、単純に構成上の問題を直した方が良いと言いたいだけだったりする。
「この制限のあるフォーマットに対して、やろうとしている事に無理があります」と言う提案に対して、作者が構成と関係なくやりたい事と出来る事がマッチしていない時に「紋切り型の王道な物語に寄せようとしてきて、不愉快だな」と感じるわけだ。
2:自分の作品じゃなくなっちゃうんでしょ?
「相談する事で完全に一人で作った作品ではなくなってしまう」そう感じる気持ちは、理解出来る。
だが、それは誤解だ。
スクリプトドクターは、あなたの作品に対して、頭ごなしに、とやかく言わない。
あなたが聞いた事に対してしか、応えないので、あなたの作品が他人のアイディアで汚染される事は無い。
3:アイディアは出してくれないんでしょ?
助けを求められれば、アイディアを提案する事は、十分可能だ。
また、アイディアや改善案を出しても、それを取り入れるのはあくまでも最後は作者の裁量なので、気に入らなければ突っぱねてしまうのも良いし、その逆でアイディアをそのまま利用しても構わない。
スクリプトドクターが提案したアイディアを使っても、スクリプトドクターの名前を出す必要は無い。
あくまでも、アイディアを形にするのは作者であり、スクリプトドクターは、その手助けをするだけだ。
4:拙い作品を見せるとコテンパンに言うんでしょ?
拙くても、大丈夫。
怖がらないで。
スクリプトドクターが作者や作品を、おとしめたり馬鹿にする事は、まず無い。
むしろ、初心者歓迎。
あくまでもスクリプトドクターは、作者であるあなたが「こうしたい」と思っている所に、どうすれば行けるのかを、助言するだけだ。
ここを直した方が良いと言うのは、作品を良くする為であり、作者の人格を否定する意味は一切無い。
なので、お気に入りのキャラがスクリプトドクターに悪く言われたと不愉快になる事はあるかも知れないが、それは作品を良くする一案を提案したに過ぎないので、割り切って欲しい。
逆に、直して欲しいのに悪い所を指摘されるのは我慢出来ない場合は、こちらも困る。
医者に体調が悪いと受診して「肺に腫瘍があります。手術した方が良いよ」と言われたからって「タバコを吸っているのを責めてるのか」とキレられても、医者が困るのと一緒です。
「ここを直した方が作品が面白くなるよ」は「この作品を考えた奴は駄目だ」とイコールでは決して無い。
創作作品とは、そもそも一発で綺麗に清書出来る様な事は、相当の天才や名人でも無いと、あり得ない。
拙い所から徐々に良くして行き、次の創作では、スタート地点での良さが向上する事で慣れると最初から上手に出来る様に傍から見ると見えるわけだ。
拙いのは、悪い事ではない。
下手な姿は見せたくないだろうが、スクリプトドクターは効率的に上手になる助けをする役割がある。
スクリプトドクターに拙い作品を見せてでも改善する事で、結果的に本当に見て欲しい人に対して、上手な作品を早く見せる事が出来ると考えると、怖い物では無いと分かってもらえるだろうか。
5:でも、お高いんでしょ?
スクリプトドクターを雇うのは、勿論、報酬を払う必要がある。
これは、各スクリプトドクターや、国によっても違ってくるが、スクリプトドクターは特別な仕事では無いし、人によってリーズナブルな価格で仕事を受けて貰える。
リーズナブルな価格が、高いと言われたらどうしようもない所だが、参考までに。
私の場合、個人クリエイターの方からの依頼だと、
- 短編やプロット等で10,000字程度なら5,000円。
- 120,000字程度で、25,000円。
- 漫画の場合は、50ページ程度で5,000円。
- 200ページ程度で10,000円。
ぐらいの価格帯で、仕事を受けている。
企業からの依頼の場合は、関わる形態によるが、プロフェッショナルを雇うと考えれば決して高くは無い筈だ。
ちなみに、作品を見ないでのメールや電話での「こんな事で困ってるんだけど、どうすりゃいいの?」みたいな相談には、無料で答えている。
ブログに設置した質問掲示板は、一向に誰も書き込まないが(シャイだね)メールでは、結構な数の質問が日々やってくるので、作品を見せる程じゃないけど聞きたい事があれば、気楽に聞いてほしい。
その際、聞かれた質問のアンサーになるブログのページや書籍があれば教えたりもするし、なんならアンサーの記事を書く事もある。
少なくとも、困った時に相談して損する事は無いと思われる。
6:本当は効果無いんでしょ?
これも、何気に聞く事がある。
確実に効果を期待できる事は、断言出来る。
だが、それが素人がプロ級になるのかと言えば違うし、駄作が名作になるのかと言われれば保証は出来ない。
あくまでも、元の作品を改善したり、作者の抱える問題を解決するのが基本だ。
こればかりは、自分で自己申告しても説得力は弱いので、ココナラの方の評価欄でも見て欲しい。
少なくとも、私が自分で言うより説得力は、幾分かマシな筈だ。
あと、スクリプトドクターによって得意不得意があるであろう事も、考慮して頼んで欲しい。
例えば、私のブログを見ていて、「この記事、なんか鼻につく」とか感じるなら、別の人に頼んだ方が良いかもしれないし、別のスクリプトドクターに頼って嫌な思いをしたとしても、私なら解決出来る様なパターンもあり得る。
相性もあれば、実力差もある。
だって人間だもの。
あと、依頼された時点で、役立てるか、ちょっと無理そうかは分かるし、無理なら断るので、その点でも安心して欲しい。
7:じゃあ、絶対に問題解決出来るの?
医者が100%人命を救うのが不可能な様に、スクリプトドクターにも限界がある。
良くある上手く行かない、代表的なパターンをいくつか例で出すと、
- やりたい事とフォーマットに折り合いがつかない
- やりたい事が多すぎて優先順位が分からなくなり、選べない
この辺の状態に落ち込むと、作者様の方で選択が出来ないと、結局、作者様の考えていた元の案のまま、あるのが分かっている問題を修正せずに作品を無理やり完成させたり、完成自体しないで終わる事がある。
「捨てる勇気」や「選ぶ勇気」が無いと、スクリプトドクターに頼った物の提案を受け入れる事が出来ないなんて事態に陥る事があるので、その点は注意が必要だ。
あと、
- 言っている意味が伝わらない
- 急に冷める
は、冗談みたいな話だが、時々ある。
これは、作者様の中に「こうに決まってる」と言う、強烈な思い込みがあったり、問題解決を自分で考えるのを放棄されると、以降はこちらの提案が役に立たなくなる事がある。
思い込みは、特定してほぐせればどうにかなるけど、モチベーションが下がったり面倒になられるのは、どうしようもない時が多い。
急に連絡が取れなくなるとかも、稀にある。
前提として、作者様側に「作品を良くするぞ」と言うモチベーションが無いと、スクリプトドクターは無力と言える。
終わりに
どうだろう。
スクリプトドクターへの誤解があった人は、誤解が解けただろうか?
スクリプトドクターの事を、少しでも身近に感じて貰えれば嬉しい限りだ。
と言うか、スクリプトドクターの日本での普及率を上げて、もっと身近にするには、どうすれば良いだろうか。
アイディアがあったらコメントでもメールでも教えて欲しい。
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